有馬記念編に向けてストーリーを動かそうとすればするほど色んなキャラクターの心情を考えてしまって、前に進めないです...申し訳ありません。
有馬の出走人数は16人に変更しました。
ライスの一人称を、私、に変更しています。
ウララちゃんの部屋の設定も変えてます。
12月。クリスマスまだまだ遠いというのに周りはクリスマスに向けてソワソワし出している。そんな中、私達はそんな雰囲気とは無縁の、それぞれのレースに向けた練習の毎日を送っていた。
ウララちゃんとは別のターフ場で、私はトラックを走っている。
....ここだ!
トレーナーさんのアドバイス通り、ラストの直線で腕振りをより大きくすることを意識してみる。体がより前傾姿勢になり、加速力が上がるのが体感できた。けど....
足が、もた、ない...
その加速力に自身の足が追いついてこない。残り200メートルはほぼバラバラの走りで終えてしまった。
それでも、私はその日の練習で自己ベストを作り出すことができた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ...ライスの、課題、だね。」
ラストのスプリントに足りない筋力。それをどうカバーできるかが私の課題だ。
「走った感じは、どうだったか?」
「うん、前よりもタイムは縮んでるし、よくはなってきてるけど...やっぱり、最後のパワー不足が、心配かも。」
一通りメニューとコースを走り終えた私の元に、トレーナーさんが、おつかれ、と手を上げながら聞いてきた。
私は、そんな彼に隠すことなくそう伝えた。きっとトレーナーさんなら何か打開策をくれるに違いないと、暗に期待しているからだ。
しばらく無言になった後に、トレーナーさんは何かを思い付いたようで
「...っし、ライス、悪いけどストレッチとかしながら少し待っててくれないか?10分程度で戻ってくる。」
そう言い残して、急ぎ足で器具室の方へと向かっていった。
やっぱり、トレーナーさんは凄いや。
私は、すぐに打開策を思いついた彼に、純粋な尊敬の念を改めて抱いた。
練習メニューも、その言葉も、一つ一つが私達に寄り添ってるものを伝えてくれるトレーナーさん。少しそっけないところもあるけど、改めて、この人と共に歩んできたと思えるような、私にとって、彼はそんな存在だった。
彼にそう伝えても、当たり前のことをしてるだけだと話を流してしまうけど...
そんな所も、私は好きだ。
言われた通り軽くストレッチをしながらトレーナーさんの帰りを待つ。
スマホもなにもない10分というのは意外と長くて、私は手持ち無沙汰になりコース外にある青色のベンチに腰をかけて、長い息をついた。
「おやおやー、ここにいるのは、ライスシャワーさんじゃないですかー?」
「!?ひ、ひゃい!」
完全に気を抜いていたから、急に話しかけられて思わず変な声を出してしまった。
声の主の方に恐る恐る顔を向ける。
短い、少しだけ青みがある白髪、ひまわりの髪飾りをつけて、青色の目をしたウマ娘...
「あ、初めましてですよね。私、セイウンスカイっていいます。有馬記念でご一緒するので、以後お見知り置きを〜。」
ひらひらとした声音で彼女はそういうと私の隣に座った。
「あ、あの、私はライスシャワーっていいます。よ、よろしくね。えっと、ライスでいいよ?」
私もとりあえず自己紹介をして、彼女に微笑んだ。
セイウンスカイちゃんは私の笑みを受けて
「では、私のこともセイちゃんとお呼びくださいな〜。」
と、ひらひらした声音でそう言って、にゃははは、と変わった笑い方をしていた。
「いや〜、いいですよねー、このベンチ、練習をサボって休むのにはちょうどいいところにある。トレーナーがきたら直ぐにコースに戻れるし、昼寝に最適です。」
「だ、ダメだよ!セイちゃん!そんなことしたら!練習はサボっちゃダメ!」
「おおー、やっぱり真面目な方だなぁー、ライスさんは。」
セイちゃんはそう言うと、休憩がてら世間話でもしないかと、私を誘った。私はトレーナーさんが来るまでならいいよと答え、その会話に付き合う事にした。
「ウララちゃんから、ライスさんの話はよく聞きますよ。とっても速くて優しいウマ娘なんだって、よくクラスで自慢されてます。」
「そうなの!?えへへ〜、ウララちゃんに自慢されてるのかぁー...恥ずかしいけど、嬉しいなぁー。」
「やっぱり、ライスさんはウララちゃんと仲がよろしいんですね。」
「うん!...親友、だと、私は思ってるよ。」
「なるほど、親友、ですか...。」
しばらく、セイちゃんとウララちゃんの話や最近のトレーニングの話をしていた。トレーナーさんは、まだ帰ってこない。
「ふむふむなるほど、やはりライスさんはお優しい方だ。...私の期待通りです。」
「期待、通り?」
「ええ、そうです。優しくて純粋で、真面目であるほど、ありがたいんですよ。」
ある程度会話が進んだ所で、セイちゃんはそう言った。
小さな掛け声と共に彼女はベンチから立ち上がって、私の方に振り返ることなく、コースを走るウマ娘達を眺めていた。
「そんな真面目で後輩思い。優しい、優しいライスさんだからこそ聞きたいんですけど〜」
コースをかけていく蹄鉄の音が徐々に大きくなってくる。周りのみんなが目の前のコースをかけた行くからだ。それをセイちゃんは呆然と見ながら
「貴方に、倒せるんですか?...ウララちゃんが。」
そう、静かに、冷たい声音で、私に聞いた。
「...それは、私がウララちゃんに勝てないってこと?」
私は、そんな彼女に怯むことなく、その背中に声を強めて聞いた。
私は、負けるつもりなんて微塵もない。例えウララちゃんがどんなに強くなったとしても、私は
「いや〜、その逆ですよ〜、ライスさん。」
改めて勝つ決意をしていた私の思考を、セイちゃんの言葉が遮る。
「...逆?」
言葉の意味がわからなかった。小首を傾げる私に、セイちゃんはゆっくり振り向いて、そして彼女は
「ええ、そうです。貴方は勝つ。少なくとも、ウララちゃんが勝てる可能性はない。だから聞いてるんです。ライスさん、貴方は...」
その言葉で揺れ動く私の感情を見て楽しむように
「ウララちゃんと、貴方のトレーナーさんの夢を...壊せますか?」
恍惚な笑みを浮かべて、そう聞いたのだった。
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私には才能がなかった。
グラスちゃんのような相手に食らいつき、最後に追い抜く差し足も、スペちゃんのような、強引な走りも、私にはできなかった。
努力の量だけではどうにもできないものがあると、自覚している。
だからこそ、私は頭を使う。
レースにおいて勝つ条件というのは、走る能力だけではない。
厳密に言えば速いウマ娘が勝つ。当たり前の世界。当たり前のルール。
...けど、それはウマ娘が機械であれば成り立つ世界だ。
私は知っている。感情が、言葉が、走るという世界の常識を覆すと言うことを。戦略が、レースというものの常識を変えるのだと。
だから、不安要素は消すのだ。
...レースは、出走前から勝負が始まる。
私は探していた彼女を見つけた。その走りを影からしばらく見ていたが、やはりいい走りだった。それもただ良いだけではない、まさに、『天才』のそれだ。この距離を走ったことのあるウマ娘なら、誰もがそう評価するだろう。
ベンチに座り一呼吸置いている彼女に声をかける。
案の定、私に声をかけられたことに彼女は困惑していた。
それもそうだ、そもそも、揺動作戦なんて、ウマ娘がやろうなんて普通は考えないからだ。
「ウララちゃんと、貴方のトレーナーさんの夢を...壊せますか?」
機会を見計らって、私はそう聞いた。
この言葉は、きっと具体性を持たなくても彼女には伝わるだろう。
同じクラスの同級生の私ですら、ウララちゃんが有馬という舞台での勝利を望んでいること、そして、ウララちゃんのトレーナーもまた、ウララちゃんの勝利を望んでいるのだと、行動やインタビュー、発言、接し方、様々な面から予測し、感じることができたのだから。
「...夢?」
それなのに、彼女はそれを理解していないようだった。素っ頓狂な顔をする彼女に対して、私はリズムが狂わされたことに対する多少の苛立ちを隠して改めて口にすることにした。
「そうです。ウララちゃんの有馬記念で勝つという夢。トレーナーさんの、ウララちゃんに勝って欲しいという願い。きっとそこに向けて、彼女達は足掻き、苦しみ、そうしてようやく有馬という舞台で戦います。そんなウララちゃんの努力を知っていて、トレーナーさんの気持ちを知っていて、ライスさんは全力でウララちゃんを倒せますかと聞いているんです。」
極めて直接的に表現した私の言葉に、ライスさんは今度はピンっときたようで、長い耳をヒクヒクさせながら、
「あー、なるほど。」
と一人で納得していた。そして
「...うん。そうだよね。きっと私が勝てば、色んな人が傷つくと思う。それは、ウララちゃんやトレーナーさんだけじゃ無くて、もっと多くの、それこそ、私以外の勝利を望んでる世界中の人が、傷つくと思う。...その事実に、前の私は耐えられなかった。」
そう、静かに語り出した。
予想していなかった言葉に、私は何もできなかった。彼女はそんな私の内心を知ってか知らずか、優しい笑みを浮かべて言葉を続けていた。
「でもね、こんな私のことを、好きだって言ってくれる人がいるの。こんな私に、勝って欲しいって、そう思って、願って、信じてくれる人が、たくさんいるの。....私は、その人達に、応えたい。」
そう語るライスさんの声音は、とても穏やかで
「走りで、結果で、私は、みんなに応えたい....例え、その先で誰かを傷つけるのだとしても...友達の夢を、大切な人の夢を、壊すことになったとしても、私は勝ちたい。」
そして、とても力強かった。
「にゃははは!なるほどです!ライスさんの意気込みはわかりました。では私は次の用事があるので...」
ライスさんの内面を揺さぶる作戦はこれ以上してもうまくいかないと、私は彼女の発言や声音から理解できた。だから次のプランに移ろうとその場を動こうとした...なのに、その目を見て、体も、声すら発することができなくなった。
....こわい。
これは、本能の反応なのだと、すぐに理解できた。私達がもっている、強者に対しての反応...恐怖だ。圧倒的な何かを前にした時に抱く感情。
それが全身を駆け巡り、全てを硬直させる。
「..,あのね、セイちゃん。私さ、楽しみなんだよね。」
ライスさんはその、まるで獲物を狩るような目のまま、ゆっくりとベンチから立ち上がった。
「ウララちゃんが、どんな走りをするのか。どこまで、私に追いついてくるのか。...それを、全力でねじ伏せるのが。」
湧き上がるようなプレッシャーが、ライスさんから伝わってくる。まるでレース直前のような、そんな雰囲気をもつ彼女に、思わず足がすくんだ。
「...うん。だから、私は大丈夫だよ!セイちゃん!」
けどそれは一瞬のことで、すぐにライスさんは先程のような優しい雰囲気になり、私に微笑んでくれた。
「あ!でも、練習する場所にね!その...制服で来るのはあんまり良くないと思うな!それだけちゅ、注意します!」
そして、後半になるにつれて自身なさげになりながらも私にそう注意して、ライスさんはコースに戻っていった。
「...にゃはは...私達は、眼中にないってわけね。」
私は、走り去る彼女の背中を見つめながら
未だに収まらない恐怖心を抑えるように、小さく呟く。
けどその声音はコースを走る彼女達の蹄鉄の音に消されていった。
「あれは、やばいね。」
ようやく収まってきた恐怖心を抑えて、そう自分に言い聞かせる。
あくまでも、マークするウマ娘の一人とだけ考えていた。
けど、それは間違いだった。
間違いなく、ライスさんはレースを動かす、恐らく、誰よりもその可能性が高い。
ストレッチをしている彼女を見つめながら、私は、今までにないほどの焦燥感に駆られながら、担当トレーナーの元へと歩き出したのだった。
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「わぁ、疲れる所が全然違うや。」
トレーニングを終えてお風呂に入り、自室でストレッチをしている時、自分の筋肉の、今までと違う所に痙攣が走っている事に私は気づいた。
長距離をトレーニングしていく中で、気がついたことがいくつかある。
まず、走行中の疲れ方だ。短距離みたいなレース後にどっとくる疲れ方じゃなくて、レース中に疲れがくる。そして、その疲労の溜まり方が短距離と比較して長いせいかとても重たく感じた。
次に、フォームを変更していく中で生まれた違和感。長距離を走る上で大切なのは、いかに力を最後まで残しつつ先頭に躍り出るか、というところにあるとトレーナーが言っていた。その為にはそれを実現するためのフォームと体力が必要だ。腕振りの大きさ、足の運び方...短距離とは、同じ走るという事でも、異なることが山ほどある。
「あら、ウララさん。練習終わりですの?」
「キングちゃん!うん!さっき終わってね!お風呂から出たところなの!」
私が長距離について色々考えていると、部屋の扉が空いた。
同居人の都合と、私の部屋の広さの都合でキングちゃんが私の部屋に来てくれたから、もう随分と経つ。キングちゃんに、寝ている時に抱きつくと、あったかくていい匂いがするから、私は今の時間が大好きだ。
「髪、ちゃんと乾かしましたの?」
「あ!忘れてたや!」
「はぁ...今乾かしますから、そこに来てください。」
キングちゃんにこの前、お風呂からでると髪を乾かすように言われていたのだが、私は殆どそれを忘れてしまっていた。
キングちゃんがベッドに座って、隣に座るように言ってきたので私はストレッチをやめてすぐに隣に座った。キングちゃんもお風呂上がりなのか、とてもいい匂いがする。目の前にある鏡に私を写しながら、キングちゃんはドライヤーを始めた。
「全く、あれほどウマ娘の毛並みは大切だと言っていると言ったでしょ?」
「うぅ〜、わかってるよぉ〜」
以前もキングちゃんにドライヤーをされながらそう言われたのを思い出しながら、私は思わず唸ってしまった。
正直、髪を乾かすのは面倒だ。けれど、こうしてキングちゃんに乾かしてもらうのが嬉しくて好きだから、思わず笑みが溢れてしまう。
「はぁー、何が楽しいのやら。」
そんな私を見てキングちゃんはため息をつき、そして呆れながらも私の髪を優しく撫でながらドライヤーを続けてくれた。
強すぎず、弱すぎないドライヤーの風が、少し冷めてきた肌に心地よかった。
「...長距離には、慣れましたの?」
「うーん、どうかな。最初よりは上手く走れてると思うけど...正直、まだ自信ないんだよね。」
ドライヤーをしながら、キングちゃんがそう聞いてきた。短距離レースしか経験がない私を、気遣ってくれているのだろう。私は、そんなキングちゃんの質問に正直に答えた。
体力にはライスちゃんと地道にしていた特訓や自主練のおかげであまり問題はなかった。けれども、短距離とは違うスピード感やフォーム、疲労の溜まり方に最初よりはマシになってはいるが、体が慣れていない。
「そ、まあ、そのうち慣れるますから、安心しなさい。」
キングちゃんはそう言うとドライヤーの風を切った。
「....それだけ?」
だから、私はそんなキングちゃんを意外に思った。
キングちゃんなら、絶対何か言ってくると思ったからだ。まだ慣れてないのかとか、呆れましたわとか、そんな感じの言葉が来るんじゃないのかと思っていた。
「...なんですの。私が何か失礼なことを言うとでも思いまして?」
「!?ち、ちち違うよ!思ってないよ!そんなの!」
キングちゃんは私の表情からそう思ったのか、少しだけ不満げに頬を膨らませた。私は慌ててそれを否定したけどかえって逆効果だったようで、キングちゃんがため息をついてしまった。
「はぁ...あのね!私はそんな嫌味を言うような...い、言うかもしれないけど!...とにかく!言わないの!もう!」
「う、うん!わかったから、お、落ち着いて!キングちゃん!」
キングちゃんの喋り方がいつもの高貴な話し方じゃなくて、砕けた感じになった。それを嬉しく思いながらも大きく肩を揺すられてしまい、私はなんとかキングちゃんを落ち着かせようと言葉をかけた。
「...けど、本当に、貴方にそんなことを言う必要はありませんわ。」
しばらく私の肩を揺すり続けて、キングちゃんはようやく落ち着いたのか、いつもの丁寧な喋り方に戻って、ゆっくりと語り出した。
「貴方が長距離に慣れてなくても、例え、本番までそれが続いてしまったとしても...私は、信じていますから。」
「信じる?」
「ええ。信じています。貴方が、有馬という舞台で、必ず勝つのだと。」
その言葉に、私は何も言えなかった。真っ直ぐに、私の目を見てそう語るキングちゃんの声音が、あまりにも優しくて、その言葉が、私の全てを信じてくれているのだと、そう言ってくれているようで
嬉しくて、嬉しすぎて、何も言えなかった。
「....な、何か言ってもらえます!?恥ずかしいのですけど!」
そんな私の反応を見て、キングちゃんは再び落ち着きを失って私の肩を揺すり出した。
「ぷ、あはははは!ははは!」
「な!笑った!?今貴方!笑ってるわよね!?」
いつもの落ち着いている姿じゃなく、たくさん慌てているキングちゃんが面白く、可愛らしくて、私は思わず吹き出してしまった。
キングちゃんはもう丁寧に話すことをやめて、貴方って人は、と説教を始めている。
「だ、だってー、キングちゃん、たくさん慌てて可愛いもん!」
「か!可愛い!?あ、あなたね!うぅうう〜!」
私は説教中のキングちゃんに思ったことを伝えると、キングちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
それからしばらく、2人でたわいもない話をしていた。今日あった出来事、レースについて、好きな服の話、ドラマの話、そうやって2人で話して、笑って、あったかい時間を過ごした。
そういう、幸せな時間がすぎるのはあっという間で、気がつけばそろそろ消灯時間になる頃だった。
フクキタルちゃんは遠征でいないから、今日は2人部屋だ。3人部屋のこの部屋に2人で寝るとなると、この狭い部屋も意外と広く感じる。
本来なら自分のベッドに入って寝るが、今日はキングちゃんのベッドにお邪魔することにする。
「...せまい、です。」
キングちゃんはそう言いながらも私の寝れるスペースを作ってくれた。
その優しさに甘えて、私はキングちゃんの横に飛び込んだ。
「まったく、いつまでも子供なんだから...」
キングちゃんはそう言うと、微笑んで、私の頭を軽く撫でてくれた。
「...ありがとね。キングちゃん。私を、信じてるって言ってくれて。」
そんなキングちゃんの目を見て、私はようやくさっきのお礼を言うことができた。
「い、いきなりお礼をするなんて、少しびっくりしますわね。」
「えへへー、ごめんね、言いそびれちゃって。」
「...ふん、いいですわ!別に、お礼が欲しくて言ったわけではありませんもの。...本当に、心から、そう思っているから言ったまでです!」
キングちゃんはそう言うと、少し赤くなった頬を私から背け、私の反対方向を向いてしまった。
「...うん。本当に、ありがとう。」
「....おやすみなさい。」
私は、またも嬉しい言葉をかけてくれたキングちゃんに、お礼をした。
キングちゃんはそれに何も言わずに、寝たふりをし始める。
だから私も、キングちゃんに習って寝たふりをする事にした。
静寂が、私達を包む。
どれほど寝たふりをしていただろう。トレーニングの疲れから、私は本格的に眠気に襲われはじめた。
それでもその言葉は、薄れていく意識の中で、確かに、私の耳に届いた。
「...信じるしか、私にはできないもの。....これぐらいしか、私にはできないから...だから、絶対、貴方を、不安になんてさせない。」
ああ、そうか。私は、今、キングちゃんがどんな気持ちでいるのか、ようやくわかった。
キングちゃんは、怖くないわけじゃなかった。私が負けることを、考えていないわけじゃなかった。それでも、私を必死に支えようと、信じてる、そう言い切ってくれて、自分に言い聞かせてるんだ。
....なんて、優しいんだろう。
誰よりもプライドが高くて、負けず嫌いで、それでいて
誰よりも、他人の事を心配してくれる。
そんな娘が、私の友達でいてくれる事に、私を信じていてくれることに、幸せを感じる。
布団の温もりと、キングちゃんの体温を感じながら、私はゆっくりと意識を、微睡みの中に落としていく。
幸せな温もりに包まれたその夜は、とてもよく眠れた。
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「よし、ウララもライスも、お互い順調だな。」
俺は2人の成長に大きな満足感を抱きながらトレーナー室で作業を済ませた。
ウララの走りは元々体力がついていたこともあって長距離の走りに徐々に変わっている。まだ確かなものにはなっていないが、それでも、着実に前に進んでいる。有馬記念で戦えるものに、きっと仕上がるはずだ。
ライスは言わずもがな、彼女の転生の才能にウララに負けないほどの努力が重なり、正直負けなしと言えるような走りになっている。彼女の中で、最高峰の走りを体現していると言ってもいい。最近は声をかけてもその声が聞こえなくなるほど集中してトレーニングをしている時もある。
俺はそれぞれの成長を振り返りながら日付を確認する。
12月15日
...残り、一週間弱。
あまりにも、時間がない。
「くそっ。」
その時間のなさに対しての焦りで、思わず舌打ちをしてしまった。
わかってはいた事だ。レースのスパンで1ヶ月空けずに次のレースに出る。それも、『今まで走ったことのない距離を』だ。
正直、いくら時間があっても足りないだろう。
「...それは、あいつが1番わかってるよな。」
ライスは走り慣れてるから良いとしても、ウララにとってはあまりの短期間での調整、フォーム改善、そして練習期間だ。
それは、きっと本人が1番感じていることなのだろう。
だから、俺はそれを絶対にあの娘の前で口にはしない。焦りを加速させて良いことなんて、起きないからだ。
苛立つ自分を深呼吸して何とか抑えて、俺はパソコンを閉じた。
彼女達の走りのデータの書類をまとめ、トレーナー室を後にしようとする。しかし、部屋の扉がノックされ俺はトレーナー室に残らざるを得なくなった。どうぞと返事をしようとしたが、こちらの返事を待たずにその扉が開く。
「よ、元気してるか?」
「...田辺さん、あのですね、ノックしたら返事待ってから入らないと」
「なーんだお前、堅苦しいこというなよ!せっかく俺がこうして面倒見に来てんだ!ちったぁーありがたく思え!」
田辺さんは豪快に笑いながらそういうと、トレーナー室に入ってくる。俺はそれを渋々受け入れて、ソファーにかける彼にとりあえずコーヒーを出した。
「お、コーヒーか、サンキュー。」
田辺さんはそれに気軽にそ応えると、ゆっくりとコーヒーを飲み出した。
「最近、どうなんだ?ハルウララの調子はよ。」
田辺さんはコーヒーを飲みながら俺に何気ないようにそう聞いてきた。
「どうもなにも、順調ですよ。確実に有馬記念に向けて戦える脚になってきてます。このまま行けば間違いなく有馬で戦えるはずです。」
「...そうか。」
俺の答えに田辺さんはそう短く反応すると、手に持っていたコーヒーのカップをテーブルに置いた。
田辺さんはタバコを取り出して吸おうとしだし、それを途中でやめた。
「そういや、禁煙だったな。昔の癖がでやがる。」
田辺さんはそう愚痴るとタバコのケースを胸ポケットにしまい、ため息を一つついて背もたれにゆっくりと体を預けていた。
「...田辺さん、本題は何ですか?まさか、ウララの調子を聞きに来ただけじゃ、ないですよね?」
「なんだよ、それだけじゃダメなのかよ。」
「だったらもう用は済んだでしょ、お帰りください。」
「ははは!冷たいなお前は!」
俺は多少の苛立ちもあり、本題をなかなか言わない田辺さんに強めに声をかけた。しかし、彼はそれを気にした様子はなく、再びコーヒーをすすりだした。
「...ま、実のところを言えばハルウララの調子を聞きに来るって言うのが、本題っちゃ本題なんだよ。」
田辺さんはしばらくしてそう言いい、俺の目を真っ直ぐに見つめてくる。その視線に、俺は思わず目を背けてしまった。
そんな俺に、田辺さんは少し低くなった、冷たい声でこう聞いた。
「お前、有馬で戦える脚になる、そう言ってたよな?...それは、事実か?それとも...お前の、願望か?」
「そ、それは!...」
その質問に、俺は答えることができなかった。
たった一言、事実だ、そう言えば良いだけなのに。
口が、動かなかった。
言葉が、詰まってしまう。
何でだ、俺は、信じてるんだ、ウララの走りを、今までだって、何度も、見せてきたじゃないか、あいつは、あいつは....
「今週、明日でもいい、キングとレースをしろ。場所はトレセン学園の中等部のターフコース。レース内容は2500だ。」
何かを言わなければ、そう必死に口を動かそうとした俺よりも先に、田辺さんが言葉を挟んだ。
「キングは、元々長距離を走っていた。適正こそなかったが、決して弱いわけじゃない。並のウマ娘よりかは充分に走るさ....ただ、有馬じゃ恐らく、歯がたたねーだろうよ。そんなキングとレースをして、もし、勝てないようじゃ...ハルウララに、道はない。有馬で、無駄足使って地に這いつくばるのが決定したようなもんだ。」
俺はいきなりの田辺さんの申し出に多少の困惑したが、すぐにその強引さに苛立ちを覚えた。
「な、いきなり何なんですか!こっちにだって予定があるんですよ!それを無視していきなりレースだ?あんまりにも強引じゃないですか!」
「強引?強引なのはお前だよ。短距離レースしか経験のないウマ娘を有馬記念に出す?ふざけたこと抜かすんじゃねーぞ。それこそ、あの娘に対しての侮辱に値するんじゃねーのか?勝てるどころか、惨敗するのがオチのレースに出走させる....お前は、あの娘が傷つく所をまた見たいのか?」
「それは...それは、極論ですよ!走る事にだって意味はあるはずです!有馬記念という舞台に立つ、それだけでも、ウララにとっては立派な...」
「...お前は、思い出作りの為に、ハルウララをレースに出すのか?...いつから、勝ちを無視した考えをしている?」
「!?」
無意識だった。無意識に俺は、レースに出る、ただそれだけのことに満足してしまっていた。
有馬記念。数々の強豪ウマ娘の中から、選ばれた者だけが走る事を許されたレース。そこに、彼女が出る事に、ただそれだけのことに満足しようとしていた。
...本当に、情けない。
「...まあ、レースの件はお前に任せるよ。ただ、もう一度言うが、今のキングにすら勝てないようじゃ、有馬の出走は見送るべきだ。....これは、ハルウララの為に言ってるわけじゃない。あいつに負けた、全ウマ娘のために言ってるんだ....敗者の想いを、無駄にするような事はするな。」
言葉を失ってしまった俺に、田辺さんはそう語るとコーヒーを一気にあおいで
「コーヒー、ご馳走さま。」
一言そう言い残して、トレーナー室を後にした。
その背中を見ることすらできずに俺は
忘れてしまっていた思いが何なのかを、無力感に苛まれながら
誰もいないトレーナー室で1人、考えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「キングちゃんとの模擬レース!?長距離の!?やるやる!絶対にやる!」
ウララの午前の練習が終わった後、俺はウララに先日の話をした。
彼女はその話を聞くなり目をキラキラ輝かせて食い気味にレースに出たいと言った。
「ウララ〜♪」
ウララは楽しそうに鼻歌を歌いながら整理体操をしている。
「よし!今日はいつもよりも練習、頑張るぞぉ〜!」
ウララは整理体操を終えるとそう言って大きな伸びを一つした。
伸びをしながら、ウララはライスがトレーニングしているダートコースを眺めている。
「...ライスちゃん、頑張ってるなぁー。」
ライスはまだトレーニングメニューを終えていないようで、ダートコースで筋力トレーニングを続けていた。
ウララは、そんなライスを見ながらポツリとそう呟いた。
最近のライスはオーバーワーク気味になるから、彼女の練習はよくみておかなければならない。
「ウララ、ライスの練習が終わるまで2人で話さないか?」
俺は、真剣な目でダートをかけるライスを見ながら、ウララにそう提案する。いつもは練習が終わると更衣室でライスが来るのを待つウララは、俺の提案に一瞬首を傾げたが、すぐに頷いて
「いいよ!話そ話そ!何の話する?」
と、楽しそうにターフに腰をかけて俺にそう聞いた。
冬休みの朝、高等部のターフ、それに雪が降っているということもありウララとライス以外に走っているウマ娘はいなかった。
本当はコースの上に座る事はNGだが、俺もその状況を確認した上で今日はウララの隣に座る事にした。
冬のターフは夏よりも冷たく湿っていて、コートが濡れてしまったことが少し悔やまれた。
「そうだな...有馬記念についてでも話すか。」
「おお!いいね!いいね!」
俺は楽しそうにしているウララに有馬の話をしようと提案した。彼女はそれを喜んで受け入れ楽しそうに笑っている。
「ウララ、お前、覚えてるか?有馬記念に出たいって言ったの。」
「うん!もちろん!インタビューの時でしょ?ついに叶ったよ!」
エルムステークスに出走する時に受けたインタビュー。その時の記者からの質問に、ウララの最終目標としているレースは何か、というものがあった。それにウララは有馬記念に出たいと、そう記者達の前で答えた。そこで1番をとりたいのだと、そう語った。記者達はウララのその返答を笑っていた。誰一人として、その答えをまともに受け止めた者はいなかった。
「トレーナーはね!私が有馬に出て1番になったら、めっちゃ喜ぶって言ってたよ!私、覚えてるもん!」
「お前...意外と記憶力いいのな。」
「えへへ〜、偉いでしょ!」
「...ああ、偉いな、ウララは。」
俺の発言を意外にもきちんと覚えていたウララに、俺は少しだけ驚いた。撫でて欲しそうに頭を差し出すウララを愛らしく思いながら、俺はいつものように手を乗せて頭を撫でながら、あの時の言葉を思い出す。
あの日、ウララは、自分が有馬に出ると言うとどう思うのかと、俺に聞いてきた。俺はその言葉に、まあ、笑うよな、そう返した気がする。有馬記念に、ウララが出る。その現実味のなさを想像して、笑うだろうと、そう答えた。そして、そこにもしウララが立つのであれば、そこで勝つのであれば、それは俺にとって凄く嬉しいことだと、そう答えた。
「...笑ってた奴ら、これでとりあえずは見返せるな。」
「???笑ってた奴ら?見返す?」
「...いや、何でもない。」
あの時の記者達を思い出すとなんだか腹が立ってきて、ウララの出走が決まってどんな顔してるのやら何て考えていたが、当の本人はその日の事を全く気にしていなかった。
...いや、ウララは誰かを恨んだりするような奴じゃないか。
誰かを好きになる事はあっても、嫌いになる事はない、ウララは、そんなウマ娘なんだ。
ウララの純粋さを改めて俺は理解し、思わず笑ってしまった。
あまりにも優しくて、純粋で、そんな彼女が俺みたいな大人をトレーナーと慕ってくれていることが、不思議と面白く感じたのだ。
ウララは突然笑い出した俺を不思議に思ったのか首を傾げた。
そんな彼女に何でもないと告げて、俺は頭を撫でるのをやめる。
「...なあ、ウララ。」
「ん?なーに?トレーナー。」
「...お前は、俺がトレーナーでよかったって、心からそう思えてるか?」
俺は、今のウララにふさわしいのか、田辺さんに模擬レースを挑まれたあの日から、ずっと考えていた。
有馬という舞台に立つ事に満足し、勝負を放棄しようとした、そんな俺が、今の彼女にはどう見えているのか、知りたかった。
今思えば、これまでの勝利だって、結局は彼女一人で掴んだようなものじゃないか。俺の戦略やメニューが役に立った瞬間なんて、あったのだろうか...俺が、ウララにしてやれた事なんて...
「ぷ、あはははは!トレーナー!変なのー!」
俺が思考にふけているとウララは突然大声で笑い出した。
「な、何が変なんだよ!別に、良いだろ!気になったんだからよ!」
俺は、そんな笑う彼女に対してなんとも言えない羞恥心を抱いて、大声で言い返す。しかし、ウララは笑う事をやめずに、お腹をかかえて笑っていた。
「っち、もういいよ。好きなだけ笑いやがれ。」
俺は、止まらないウララの笑い声を放っておく事にした。少しだけ恥ずかしいが、彼女の笑い声が止むのを待つ事にする。
ウララはひとしきり笑った後、ふぅー、とひとつ息をついた。
「...トレーナーはさ、私の事、一度も馬鹿にしなかったよね。」
そして、ゆっくりとウララは語り出す。その時の横顔は、初めて彼女と真剣に言葉を交わした、あの日の横顔と、似ていた。
「私が一番を取りたいっていうとね、沢山の人が、無理だって、そう言って笑ってたんだ。商店街のみんなからはね、無理しなくても良いよって、悲しい顔で励まされるの。私はそれでも、諦めなければいつか、一番になれるんだって、皆んなをたくさん喜ばせれるんだって、そうやって信じて、走り続けてた。走るのが好きで、みんなの笑顔が大好きだから。....トレーナーと出会う、あの日まで、ずっとそうやって、走ってたの。」
ウララと出会った日。デビュー戦で、惨敗したあの日。医務室で、彼女のトレーナーになろうと決めたあの日。その時の記憶が、鮮明に蘇る。
ウララは、あの時、走るのが好きで、誰かの笑顔が見たいという一心のみで走っているのだと、そう思っていた。
けど、違った。ウララは、自覚していたのだ。笑われている事も、情けをかけられている事も...誰からも、信じてもらえなかった事も。
「けどね、トレーナーが言ってくれたの。一緒に1番を目指そうって。私、初めてだったんだ。誰かにね、一緒に頑張ろうって言ってもらえたのも、一番を目指そうって言ってもらえたのも...誰かから、勝利を信じてもらえた事も。」
ウララは走るライスを見ながら、優しく微笑んでいた。それは、母親のような優しさを感じさせる表情で、ウララが心から懐かしんでいるのだと、伝わってくる。
「何度もその信頼を裏切って。裏切って、たくさん嫌な思いをトレーナーにさせて、それが、嫌で嫌で仕方ない時もあった。レースの残酷さを知って、逃げ出した時もあった。それでもね、何度負けても、逃げても、トレーナーは私を待ってくれた。取り戻してくれた。...信じてくれた。それがね、心から嬉しかった。」
風が吹く。冷たい冬の風だ。その風が、ウララの髪をかすかに揺らす。
綺麗だと、そう感じた。風の冷たさを忘れるような、そんな景色だった。
「私は、トレーナーが、私のトレーナーでいてくれて、本当に良かったと思ってるよ。...ううん、トレーナーじゃなきゃ嫌だ。」
真っ直ぐに、ウララは俺の目を見てそう言った。だからこそ、俺の心が痛む。
「...俺は、有馬で、お前が勝つ事を自然と諦めようとしていた。出るだけで満足しようとしてた。それを知っても...お前はそう言えるか?」
「言えるよ。何度だって、何千回でも、私は言える。」
俺は、罪滅ぼしのように、自身の考えていた事を伝えた。しかし、彼女はそれを真っ向から受け止めて、俺にそう伝えた。
「有馬記念で勝つ事。それがどれだけ難しいかなんて、私には想像もつかない。だから、トレーナーからそう思われたって、仕方ないと思う。
...それでもね、私は勝つよ。信じてなんて言わない。ただ、見てて欲しい。」
いつになく力強い声で、ウララは俺にそう宣言した。
その声が、瞳が、あまりにも大人びていて、俺は何も言えなかった。
ただ、黙って彼女の言葉を聞くことしか、できなかった。
「私の勝つところを、有馬で1番になるところを、トレーナーには、見てて欲しい。...誰よりも、トレーナーに、見てて欲しいの。だからね、トレーナー。」
ウララはそこで言葉を区切り、立ち上がって、俺に手を差し出す。
そして...
「まだこれから先、長くなると思うけどさ...私の事、最後までちゃんと、見届けてね?」
そう、笑って俺に伝えたのだった。
「...お前、かっこいいな。」
俺は素直にそう思って、彼女にそれを伝えた。差し伸ばされた手を掴み、地面から立ち上がる。
「えへへー!たまには良い事言うでしょ?」
「....調子に乗るな、テイ!」
「いたい!何するの!」
嬉しそうなウララが本当にかっこよくて、俺は苦し紛れに彼女の頭にチョップをした。
ライスがようやく練習を終えたようで、俺たちの元に手を振って走ってくる。
3人で話をしながら、練習場を歩いて後にして、二人は更衣室へと向かった。
俺はトレーナー室に向かい、パソコンデスクの前にある椅子に腰をかけた。
「...信じなくても良い、ただ、見ていて欲しい、か。」
ウララの言葉を、俺はトレーナー室で口にする。
それは、自分自身に相当な覚悟がないと言えない言葉で、あまりにも勇気がいる言葉だと思う。
信頼がなくても、誰からも期待されなくても、頂点を取る。
それも、有馬という大舞台で。
ウララは、それがどれほど過酷なもので、どれほど辛い事なのか、もうわかっているはずだ。
だからこそ、その言葉を口にする重みが、伝わってくる。
どれほどの覚悟を、どれほどの想いを、このレースにかけているのか。
それが、真っ直ぐに伝わってくる。
「...本当、カッコ良すぎるぜ、ウララ。」
俺は、そんな彼女にもう一度同じ言葉を放った。
誰もいないトレーナー室で、俺の言葉だけが、無機質に響き渡る。
その音が消える前に、俺の中の迷いは、消えていた。
ご愛読、ありがとうございます。キャラクターの口調や設定を多々変更してしまって、申し訳ないです。感想お待ちしております。