トレセン学園用務員は休みたい   作:ゴランド

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タマが…タマが出ないんだ……!
貯めに貯め込んだ石が溶けていく…!

それはそれとして今年最後の投稿になります。皆様良いお年をお迎えください。


第10話 恋愛クソ雑魚二重奏

カラン…

 

「お?」

「おめでとうございます‼︎こちら特賞の遊園地ペアチケットになります‼︎」

 

 祝福のベルが俺を讃える。ちょうど商店街の福引券を持っていたので軽い気持ちで回したらまさかまさかの特商。まぁとりあえず一言。

 

「 や っ た ぜ 」(ガッツポーズ)

 

 

 

 

 

 

「と。当てたのは良いものの、正直言って使い所に困るな…そもそもの話。2賞の海鮮の幸セットを狙ってたし」

 

 つーか遊園地ペアチケットて…せめて温泉券辺りなら合法的に休暇を取れるんだけどなぁ。

俺が用務員室でチケットをうちわのように扱っていると、後ろから何者かが現れる。

コイツいつの間に⁉︎

 

「おやおや?用務員さんのその手にあるのは遊園地のペアチケットではありませんか〜」

「ん?ウンスじゃないか」

「だからそのウンス呼びやめてくださいってば…まぁそれはともかく、まさか用務員さんがそんなモノを持ってるとは意外ですね」

「適当に引いたら、たまたま当たっただけだよ。それに今の所使い道は思い付かないし」

 

 偶々買い物を行った商店街では主にハルウララやナイスネイチャによる人気のあるウマ娘の影響により大いに賑わっている。

今までシニア系列の客層から一気に老若男女に人気の活気溢れる地域となったのだ。

 

正直言って、そんなに懐が温まってる状況ならばもっと景品を豪華にして欲しい、つーかしろ。そして俺に合法的な休暇を取れるよう貢献しろ(横暴)

 

「あー、それじゃウンス。このチケットお前に───あ、ごめん今の無しで」

「あの…何で今言い直したんですか?」

「お前じゃ使おうにも使えないだろ」

「はい?それってどう言う…「スカイさん!」げ、キング」

 

 振り返るとそこには用務員の扉に手を掛けたキングヘイローがその姿を見せる。

コイツいつの間に⁉︎(2回目)

 

「ご機嫌よう用務員さん」

「やぁキングヘイロー。どうした、何か用でも?」

「ええ、私との併走練習を放り出そうとしたスカイさんを連れ戻しにね…それで、何か言い分はあるのかしら?」

「いやーははは、見つかっちゃいましたか〜。流石はキング、こう言う探索術に関しても一流だねぇ」

「ホーッホッホッホ!勿論、なにせこの私キングヘイローは一流のウマ娘。このくらい容易い事よ‼︎」

 

 うわ、この娘チョロ過ぎ…? 大丈夫?将来変な詐欺師に騙されたりしない?

 

「っと、まぁ君でいいか。はいキング」

「…? これは何かしら」

「遊園地ペアチケット。それあげる」

 

 キングに券を渡そうとすると隣に居たセイウンスカイがリアクションを見せる。

 

「ちょっと用務員さん?何で私じゃなくてキングに渡したんですか?」

「だってお前、ヘタレじゃん?」

「はぁぁぁ⁉︎ ヘタレってどう言う事ですか!」

「担当トレーナーを誘おうにも躊躇するだろうし」

「そして最後は期限切れってオチになりそうね」

「キングまで⁉︎」

 

 そう、このセイウンスカイは担当トレーナーにホの字である。まぁ俗に言う恋してると言うヤツだ。

ちなみに俺は恋愛的反対派でも推奨派でもない…あ、いやどちらかと言うと推奨派寄りか?不純異性交遊に抵触しないラインでの健全な付き合いなら問題ないと思うし。

 

「まぁとにかく、恋愛面に関して貧弱なスカイよりはキングに渡した方が無駄にならないかなーって」

「用務員さん⁉︎」

「いえ、残念だけど。このキング、他人の施しを受けるつもりは更々無いわ。でも気持ちだけは受け取るわ、ありがとう」

「キングお前…」

「それにッ!福引は自分の手で当ててこそ価値があるのッ!次こそは絶対に特賞を当ててやるんだから〜〜〜ッ!」

 

 キングお前…今もの凄く情けない姿を見せてるぞ。一流と称するウマ娘の姿か、これが?

 

「とにかく そのチケットは貴方が使うべき物。そうね…意中の人でも誘ったらどうかしら?」

 

「成る程。おっしゃ、それじゃあたづなさんを誘うか!」

「即決⁉︎」

「おやおや?…言い切りましたね。ははーん、用務員さんってもしかして たづなさんの事好きだったり?」

「え、うん。好きだけど?(即答)」

「「……へ?」」

 

 俺がそう言うと2人が面食らったような様子を見せる。どうした2人共?俺、なんか変な事言ったか?

 

「い、いやその…えっ、えーとちなみに聞きますが?用務員さんはたづなさんの何処が好きになって…」

「髪、体型、手先の柔らかさ、スラっとした脚のライン。何よりその和やかな人間性に俺は心奪われた…で?なんだその顔は。何か言いたい事があるならハッキリ言ってどうぞ」

「い、いや…随分ハッキリと言うのね貴方…」

「好きな人を好きと言って何が悪いんです?(正論)」

 

 顔を茹でタコのように赤く染める2人。オイ本当にどうした?一応もう一回聞いておくけどさ。俺、なんか変な事言ったか?(2回目)

 

「つ、強い…ッ!何という太々(ふてぶて)しさ…ッ!」

「信じられない…読めなかった!このキングの目をもってしても…ッ!」

「それはただ目が節穴(へっぽこ)なだけでは?」

 

 

 

 Now Loading……

 

 

 

「あのさ何で2人して着いて来るわけ?つーかスカイはともかく何故キングまで…」

 

「いやぁーははは、用務員が果たしてどのような末路を辿るのか気になってですね」

「それに私の一言で貴方が動く事になったもの。最後まで見届けるのもキングの務めよ」

「それは世間一般的に出歯亀と言うものだと思うんだけど…まぁいいか。えーとたづなさんは……居た」

 

 彼の視線の先には緑色の服装で身を包んだ理事長秘書である駿川たづなが歩いていた。

いつ見ても麗しいな…天使だ…好きだ…結婚しt(ry

 

「…っと、そんな事よりも早く行ってこないと」

「お。それじゃ頑張ってくださいね」

「気持ちだけだけど応援はしておくわ」

「よーし、行くぞ!───────」

 

 そう言う用務員だったが、そう言ったきりその場から動かない。まるで岩石の如く彼は微動だにしなかったのである。

 

 

 

「……あの、用務員さん?」

「どうしたウンス」

「いや、なんで行かないんですか?早くしないとたづなさん何処か行っちゃいますよ?」

「………」

「「……」」

「………」

 

「…あの、用務員さん?まさかとは思いますが怖気ついたんじゃ」

「違う」

「えっ用務員さん?何故このタイミングで?と言うか今更?」

「いや違うんだって」

 

 2人は誤解している、と用務員は弁解の意を見せる。確かに(はた)から見ると俺はその場から動こうともしない臆病者に見えるだろう。だが違う、違うのだ。

 

「俺はこの役職に就いてまだ数ヶ月。一年にも満たない若輩者だ…そんな俺が彼女(たづなさん)と釣り合うだろうか…否、そんな事思い上がりも甚だしいッ!」

 

 故にこの手に納められたチケットを使うのは当分先へ延ばす事にしたのだ。いつかたづなさんに相応しい男になる為に…。

 

「用務員さん……そういう人を世間一般ではヘタレと言うのをご存知で?」

「ヘタレじゃない。それに今の俺には時期を見誤る事なくじっくりと慎重に彼女との仲を深める事が大切だと気付いたんだ。具体的にあと5年…いや10年間じっくりと仲良くなってから遊園地に誘ってだな」

時間かけ過ぎなんだけど⁉︎

どうしようもないヘタレじゃないの!

 

 そもそもペアチケットの有効期限も過ぎ去り、誘うに誘う事も出来ないだろう。そんな事も気づかぬまま用務員は言葉を紡ぎ出す。

 

「はぁーーーー⁉︎誰がヘタレだお前等!いいか⁉︎たった数ヶ月の付き合いである俺如きがそう簡単にたづなさんと恋仲になれる訳がないだろうが!今、俺に必要なのは長い期間と慎重さだ!もし今告白してフラれたらお前等責任取れるのかオラァ‼︎ そう言うセイウンスカイこそ、自分じゃトレーナーとの仲を進展出来ないヘタレだろうが!そう言うお前にとやかく言われる筋合いは無い!」

「は、はぁぁぁぁぁぁぁッ⁉︎私の何処をどう見てヘタレって証拠なんですかーーーッ!わわわわ私としては別にトレーナーさんとの仲良いなんてどうと思ってませんーーーー!そ れ に ! 私がトレーナーさんの事を好きなんじゃなくて!トレーナーさんが私の事を好いてるんです‼︎なので私が何もしなくても勝手に好感度がバク上がりって寸法な訳ですので別に私がヘタレと言う関係になるとは筋違いと言いますか!加えて私がいつ何処で何時何分何秒何コンマ地球が何回転した時に私がヘタレって証拠があるんですかーー⁉︎はい、この話しゅーりょー!この話はセイちゃんの大勝利で終了!」

 

「…な、なんて見苦しい争いなのかしら」

 

 ヘタレとヘタレのどうしようも無い言い争いが広がるのを他所にキングが視線を戻すと、そこには駿川たづな以外にもう1人何者かの姿があった。

 

「あれは…スカイさんのトレーナーさん? 一体何を話して…」

「へ? トレーナーさん?」

 

 ジッと2人を見つめるキング。スカイも用務員との口論を打ち切りキングと同じ方向へ注目する。

 

「ではたづなさん。ついでにお茶でもしましょうか」

「いいですね、カフェテリアでお話しましょう!」

 

「「────」」

「あら、あの2人意外と仲が良いのね」

 

 仲睦まじい様子にスカイと用務員が固まる。それぞれ互いに意中の人物同士がそう言う仲疑惑にある事を知った事により思考回路が停止したのである。

 

そんな2人だったが、更なる追い討ちがかかる。

 

「でも、この前みたいに朝帰りにならないように気を付けないとですね」

「もぅ…恥ずかしい事言わないでください!」

 

 まさかの朝帰り済発言である。そんなアダルティな関係を匂わせる台詞に思わず赤くなるキングだったが、ふと気付く。

隣のヘタレ達が先程より静かだ。一体どうしたのだろう?と視線を横に向けると2人は泡を吹きながら卒倒していたのである。

 

「「ブクブクブクブクブクブクブク」」

スカイさんんん⁉︎用務員さんんん⁉︎

 

 

 

Now Loading……

 

 

 

「はぁ…はぁ…すまんキング。何とか平静を保つ事が出来た(震え声)」

「いやぁ、セイちゃんも何とか復活出来たよ。やっぱり持つべきものは頼りになる友人だね(瀕死)」

「とりあえず2人共ダメそうなのは分かったわ」

 

 足がガックガクに震える2人に頭を抱えるキングヘイロー。そんな彼女の隣に並ぶ者が姿を表す。

 

「しかし我が王に呼ばれて何があったのかと来てみれば、こんな事になってたとは…タキオンの薬でも口にしたのかい?」

「いいえ、意中の人が既に付き合っていそうな雰囲気に当てられただけよ」

「……すまない我が王、言ってる意味が分からないのだが」

「言った通りよ。この2人がただ恋愛面に関して脆弱なのよ」

「成る程、まぁ理解はしたよ」

 

 キングの発言にやや納得したような表情を見せる担当トレーナー、キングT(トレーナー)ことウォズトレーナー。日系外国人である彼はキングの王としての素質を見極め己を一流の家臣と称する謎のトレーナーである。

 

「つまりは恋愛経験が疎い故の思い込みだろう、それに駿川たづなの朝帰り騒動に関してはただの勘違いと裏付けが取れている。君達が焦る事は無いと思うがね」

「はぁぁぁあああ?何を安心しろって言うんだお前!それじゃあ、あの楽しそうなたづなさんの表情はどう説明をつけるつもりだコラァ!」

「右に同じく!私"の"トレーナーさんも私に見せた事のない表情をしてるんですけど!なんですか?私達にマウント取ってるんですか⁉︎恋愛経験乏しいからって私達にマウント取ってるんですかッ!」

 

「…我が王、私としてはこの2人は放っておくべきだと思う」

「却下よ、放っておいたら何をしだすか分からないわ。その代わりに私と共にする権利をあげるわ」

「気は進まないが我が王の言葉であれば共にしようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ そうなんですか⁉︎」

「はい、今後のイベント開催予定に合わせて宣伝を行おうと思うんです。それに加えて人手不足や地方のウマ娘達の実力向上に繋げようと打診してる所です」

「それは素晴らしいですね」

 

 数分後、カフェテリアにて楽しそうに会話をするスカイTとたづなの2人を見つけるキング達。

 

「成る程。確かに我が王の言う通り良い雰囲気を出してるじゃないか」

「その通り…なのだけれど……」

 

「嘘だ嘘だ違う違う駿川たづなさんはあくまで事務的な付き合い事務的な付き合いウンスTとはただの知り合いただの知り合い」

「これは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だこれは夢だ」

 

 すぐ横には錯乱状態に陥っている用務員達が居た。目の焦点が合ってない所から察するに脳をやられたのだろう。哀れな。

 

そんな彼等を放ってウォズトレーナーが視線を楽しそうする男女に戻すと、ふとこんな言葉が響く。

 

「ふふ、やっぱり(ウマ娘の事が)お好きなんですね」

「ええ勿論。(自分の愛馬が)大好きですよ」

 

 

ォ゛エ゛ッ

「スカイさんしっかり‼︎」

「はぁ…はぁ……だ、大丈夫。吐いてないから。ちょっと出かけたけどギリギリ押し戻したから」

 

 全然大丈夫ではない(確信) 恋愛耐性が紙装甲が故に致命的なダメージを受けたセイウンスカイ。見ているだけでこの娘の将来が不安になるレベルだ。

 

「しかし良く耐えたぞスカイ、このまま行けbゴプァッ(吐血)」

「用務員さんんんんん!?」

「まさかここまでのダメージを受ける程とは」

 

 床にべっとりと赤い染みを作る用務員。憎むべきはセイウンスカイのトレーナー。おのれ自分が先に好きだったのに…ッ!

と情けない怨みを心の内に募らせる。

ハッキリ言って恋愛弱者の戯言に過ぎない。

 

「はぁ…っ、はぁ…ッ!こ、こうなったらぬ、脱ぐしか…!セイちゃんの女体盛りでトレーナーさんを魅了するしか…!」

「落ち着きなさいスカイさん!」

「そもそもの話、それをしたらトレーナー側にあらぬ疑いを掛ける可能性があるからやめておいた方が良い」

「分かった。それなら暴力の方向性で解決しよう」

「君も落ち着くんだ用務員君。そもそも暴力で一体何を解決しようと言うんだ」

 

 正常な思考が出来ていない二冠ウマ娘と用務員。見苦しい足掻きを前にキングヘイローの堪忍の尾がブチ切れる。

 

「いい加減にしなさい貴方達ッ!そもそも行動1つ移す事の出来ない人が結果を賜わないのは紛れもない事実でしょう!それを怠った上に今更どうのこうの喚き散らすのはただのバカよこのへっぽこ共ォォーーーッ!」

「「 」」

 

 キングヘイローの正論を盾にした致命的な一撃が用務員とセイウンスカイの心を穿つ。おおブッタ、一流のウマ娘による無慈悲な言葉により2人は音も無くその場に崩れ落ちていく。

 

この日、NTRもされてないのに恋愛弱者二人の脳は破壊された…。

 

 

 

Now Loading……

 

 

 

 一悶着あった翌日、ウマ娘養成施設であるトレセン学園にてセイウンスカイを除いた黄金世代メンバーが集っていた。

 

「成る程、それで昨日のスカイさんの様子がおかしかったのですね」

「その通りよ。全く、この一流のウマ娘である私がわざわざ寮まで送る羽目になるなんて…!」

「まぁまぁ…あ、そうだ!実はセイちゃんが元気出るようにニンジンクッキー持って来たんです!」

「コレでセイちゃんも元気100倍デェース!」

 

 積載量300kg超の大量のニンジンクッキーをぶち込んだ袋を背負ったスペシャルウィークとエルコンドルパサー。

正直言って1人に対して贈るには酷な話である為、全員で食べる事となるのは間違いないだろう。この日本総大将、抜け目がない。

 

「ヘェーイ!セイちゃーん!私達から贈り物がありマース‼︎」

 

 豪快かつ大胆に教室の扉を開けるエルコンドルパサー。朝から人一倍の明るさを見せる彼女達はスカイの座る席へと視線を向ける。

……と、そこには黒の革ジャン+大量のシルバーのアクセサリー+サングラスと言ったヤンキーファッションに身を包んだセイウンスカイが居たのである。

 

「「「「セイちゃん(スカイさん)グレた!?」」」」

 

 昨日と今日の間で一体何があったらこうなるのか。そんな疑問の尽きない光景に驚きを隠せない。

恋は人を盲目にすると言うが今回は両目ブチ抜くレベルの惨事である。

 

「えっと、スカイ…さん?」

「キング…君はいいよねぇ」

「え?」

「恵まれた血統、溢れ出る才能…全部私に無いものばかり…どうせ私なんて」

「うわっ、凄い卑屈⁉︎」

「コレは不味いですね…闇の住人へと変貌を遂げてしまっています」

「闇の住人って何…?」

 

 トリックもスターもないんだよ…とやさぐれた彼女。如何にして戻すべきかと思考する一同だったが、ガララともう一方の教室の扉をが開かれる。

 

「話は聞かせてもらったぜスペ先輩!」

「ウオッカちゃん!」

「スカイ先輩!服装をちょっと破いた方がカッコ良く見えるっスよ!」

「ウオッカちゃん⁉︎」

 

 良くも悪くもウオッカは平常運転であった。一体何しに来たんだお前とツッコミたい気持ちを抑えながらキングヘイローは彼女に訊ねる。

 

「んんっ、ウオッカさん。少々尋ねたいのだけれど用務員さんが何処に居るか分からないかしら?」

「へっ?用務員さんスか。それなら……」

 

 

 

 Now Loading……

 

 

 

「すみませんゴミムシです。人の幸せに怨恨を募らせるゲボカス野郎です」

 

「「「こっちは凄い卑屈になってる‼︎」」」

「ああ、もう。だから嫌な予感がしたのよ…ッ!」

 

 頭を抱えるキングヘイロー。先日の一件で脳が破壊された影響がセイウンスカイに出ていたのならば用務員も同じようになっていると考えるのが普通だ。正直嫌な予感は的中して欲しくなかった。

 

「やぁ我が王…と、やはりそちらも同じ事になっていたか」

「あら、トレーナー。やっぱり同じ考えのようね…って、あそこに居るのは…?」

「あぁ。アレかい?アレは……」

 

 キングヘイローの専属トレーナーが指差す方向。そこにはサングラスを掛けたゴールドシップが立っていた。

 

「マルチビタミン!C(スィー)C(スィー)C(スィー)ッ!」

 

 そう言いながらダート内に耕された畑(無断)に植えていくのは割り箸の苗木であった。オーガニックベジタブルアドバイザーの資格を有する彼女の朝は早い。一日の始まりは感謝のヘッドロックを一万回(※飽きたらその場で打ち止め)行う事にある。

 

「どうだ?あのゴルシの行動、お前はどう思う?」

「ウマ娘って言うのは自由に生きるべきですよね」

「あぁ、クソこれでも駄目なのかよ!おいゴルシ!もっと気張ってやる事出来ないのか!」

「ああん⁉︎ トレーナーオメェこのゴールドシップ様が手を抜くと思ってんのか!」

「ほーん?で、実際の所どうなんだ?」

「正直手は抜いてる。だってよォ〜〜、コイツすげぇ無反応なんだぜ?やってるコッチの気が滅入って来るでゴルシ…」

 

「えっと、トレーナーさんに…ゴールドシップさん?」

「お、スペか!丁度良いお前も手伝ってくれ!」

「何をですか⁉︎」

 

 訳の分からない行動に巻き込まれそうになるスペシャルウィーク。一見するとアホな光景にしか見えないが実際は違う。

この学園に於いて用務員と言う存在は欠けてはいけない必要不可欠な存在だ。彼がこの役職に就いた影響と言うのはそれは凄まじいものだった。雑用という雑用を全てを行いつつ生徒会の手伝い及び蹄鉄手入れ、ターフの整備等を行うと言う頭のおかしい功績を誇る。

 

ハッキリ言って頭がおかしい(確信)

 

そんな体力オバケである彼を元に戻す為、チームスピカのトレーナーはゴールドシップを当て刺激させる事により元の性格へ戻そうとしてるのだ。

 

「本当にそんなので戻るのかしら…?」

「昨日のように我が王の強い言葉をぶつけ、ショックを与えると言うのも考えたが…これ以上悪くなる可能性もある」

 

「なぁ、用務員…私の弟になれ。共に地獄に堕ちよう…」

「姉貴…」

 

「正にあのようにね」

「やべぇ!地獄姉弟(してい)になっちまうぞ!」

「いや実年齢的には地獄兄妹(きょうだい)だと思います」

「今、呼び方なんてどうでもいいでしょう!」

 

 このままでは地獄の住人が2名作られてしまう。これだけ見れば大した事ないように見えるが問題はそれが呼び水になってしまう可能性だ。

この学園にはウオッカのように年頃のウマ娘が多数居る。もし純粋無垢な地獄姉弟に憧れでもしたら、それはもう大惨事である。

 

そんな学園の危機に直面している最中、声が響く。

 

「スカイ!」

「……トレーナーさん?」

 

 現れたのはセイウンスカイ担当のトレーナーだ。彼は彼女に近付きながら口を開く。

 

「キングTから聞いたぞ。一体どうしたんだ?」

「…別にトレーナーさんには関係無い事です」

「関係なくないッ!」

「!?」

 

 スカイの肩を掴み、顔を近づける。あまりの距離感にグレたトリックスターは赤面を見せるがそんな事お構い無しにトレーナーは続ける。

 

「僕はスカイのトレーナーだ!僕はスカイと共に在ると決めたんだッ!」

「にゃ…あっ…」

「例えスカイが僕を拒んでも!僕は、君を諦めないッ‼︎」

 

 惜しげもなければ恥じらいも無い心の奥底からのスカイTの叫び。周囲にクラスメイト達が居る最中、こんな事を告げられたセイウンスカイは…。

 

に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛(逃亡術)」

 

 その場から逃げる事となった。

 

「ス、スカイ⁉︎」

「セイちゃんが逃げた!」

「囲むデェース!」

「お覚悟を!」

 

「…随分と短い天下だったね」

「ええ、全く…だけど残ってる方もなんとかしないと」

 

 逃げ去るスカイから用務員の方へ視線を戻すキング達。先とは比べてただ卑屈なだけだが、彼が作業に集中してくれなければトレセン学園の業務事情は再び暗黒期へと突入してしまう。

 

するとウォズトレーナーは「あ」と声を上げる。そのままスピカのトレーナーと何か話し合うとそのままスマホで連絡を行う。

 

「…よし、おーい!これからラーメン食いに行くんだがお前も一緒に来いよ!」

「いやこんなゲボカスが一緒に行っても───」

「先程、連絡したんだがどうやら駿川たづな君も同行するそうだ」

今回は俺に奢らせてください‼︎

 

チョロいにも程があるわよ貴方!?

 

 こうしてスピカTとキングTのフォローにより用務員は無事に復活。

加えて2人のファインプレーにより用務員とたづなの2人でラーメンを食させる事に成功。

セイウンスカイは同期組に捕獲された後に担当トレーナーと買い物デートを行う事となった。

 

いつしかこの2人はトレセン学園における"恋愛クソ雑魚二重奏(デュエット)"と語り継がれるのだが…コレはまた別のお話。

 





『おまけ』

「そうして俺はたづなさんに言ったんだ。ガム要ります?…って」
「ほほうナイスアシストですね…!口臭を気にする女性もいるのでそう言うのは好感度プラスですよ〜〜」
「俺も中々掴めて来た…って訳だな。そっちは?」
「フフ、トレーナーさんとのデート(ただの買い物)でセイちゃん…なんと!お揃いのマグカップを買ったんですよ!」
「パーフェクト…パーフェクトだウンス…!」

 用務員室で自慢にもならない恋愛自慢をする恋愛クソ雑魚達だが、ふとスカイが口を開く。

「あっ、そう言えば用務員さん。あのペアチケットはどうしたんですか?」
「あれか?あれなら俺が相応しいと思った者に託した…他の奴等にも恋愛ってヤツを味わって貰いたくてな」
「フ…、そうですね」

 いっちょ前に恋愛経験者面する2人。もはや呆れを通り越して滑稽なその光景が広がる最中、ガララと扉が開く音が鳴る。
2人の前に現れたのはウマドルを目指す砂のサイレンススズカことスマートファルコンである。

「お、ファルコンじゃないか。遊園地はどうだった?」
「ふむ、成る程ね。用務員さんがペアチケットを上げたのは彼女だったかぁ…で、どう?担当のトレーナーさんと何処まで行った?」

そう聞く2人だったが突如としてファルコンはその場に倒れ込んだ。
 
「ファルコン⁉︎おい、しっかりしろ!」
「ごめん用務員さん…私には…無理…でした……」
「「ファ、ファル子ッッ⁉︎」」

 スマートファルコンは死んだ(※気絶しただけ) 担当トレーナーを誘おうとしたが途中でヘタレてしまいウマドルとファンとしての関係で行く事になったのである。

恋愛クソ雑魚三重奏(トリオ)続く(続かない)





・キングヘイロー担当トレーナー
本名 ウォズ
己を忠実な家臣と称する。謎の本を片手にキングヘイローの横を立つ謎多きトレーナー。祝え!

キングTのヒミツ①
キングヘイローの取り巻き達を家に招きパーティをしている。
(ただしその事をキングヘイローは知らない)


・セイウンスカイ担当トレーナー
天然タラシ鈍感トレーナー。スカイの事が何より大事にしている。
アプリ版のトレーナーに近い性格かも。

スカイTのヒミツ①
セイウンスカイの事を語らせたら最低でも1時間は止まらない。
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