リアルが…リアルが忙しい…!
早朝より始めた水道管に染み付いたジュースの甘い香りを消す作業と共にその悪戯の元凶であるゴルシとフジキセキ、シンコウウインディの折檻を終えた後、用務員である彼は用務員室へと向かっていた。
理事長より疲労が溜まった身体を休める為に仮眠を取るべきと告げられ、その言葉に甘える事にしたのだ。
「全く…次変な事したら肥料にしてやる…(殺意)」
ゴルシに対しての愚痴を零しながら部屋の扉を開くと、そこに誰かが立っていた。
「…待ち侘びたよ、ようやく来たね」
「お前…ッ⁉︎」
そこに居たのは鹿毛を揺らし、畳の上にて仁王立ちをしていたウマ娘。トウカイテイオーであった。
そんな彼女に対して用務員は一言告げる。
「畳の上に土足で上がるな。グラス呼んで介錯させるぞ(半ギレ)」
「ピェッ」
用務員の背後に暗黒の微笑を浮かべるグラスが浮かんだ。薙刀を突き付けられるイメージに思わず悲鳴を上げると、テイオーはおずおずと靴を脱ぎ始めた。
「……このボクと尋常に勝負だ用務員!」
「なんで?」
用務員はテイオーの言葉に対してそう返す。朝日が昇るまで排水管掃除をしていた所為か睡眠不足だった彼はテイオーの言っている事が理解出来なかった。
そもそもの話、用務員室に行ったらトウカイテイオーに勝負を挑まれている事自体おかしな話であるが。
そんな彼女の言葉に一呼吸置くと、彼は呟く。
「ごめん、疲れてるから無理。パス」
「え」
「んじゃ」
そう言いながら靴を脱ぎ、ソファに向かってダイブする。労働により疲れた身体に休息を与えるべく彼は眠る。
傍らに居たウマ娘に関しては放っておいても問題無い。変な事を口走っていたが気の所為に違いないと言い聞かせて彼は夢の中へと没入して行く────
ドドドドドドドドッ!
「んがっ?」
眠りかけていた脳が謎の音と振動により一気に現実へと引き戻される。音の発生源に目をやると、そこにはテイオーがしなやかな脚を巧みに扱い足踏みを行っていた。
「え、何やってんの?」
「お前の周りで得意のステップを踏みながら安眠妨害してやる!」
「おいやめろ、こんな無駄な場面で無駄に高度な技術を無駄に活かすな!」
▼ ▼ ▼
「ふあ……、で なんの話してだんだっけ?」
「勝負だよ勝負!僕と用務員の対決をこれからするんじゃないか!」
「あー……」
そう言われれば、そうだった気がする…。
「さぁどうするのさ!僕との勝負受けるのか!受けないのかッ!」
「んー……ちょい待ち。ちょい考えさせて」
「もー早く決めてよね!折角僕がこんな朝早くから起きたんだから!」
うーん、勝負と言ってもなんかテイオーに変な事でもしたっけ俺?思い当たる節なんて全く無いし…うーん…何か…あっ……た…か…な………zzzzz
「………」(無言で高速テイオーステップ)
「うわぁ!ビックリした!?」
「ちょっと!何寝てるのさ!流れるように寝ないでよ!もしまた寝たら今度はこれ以上のスピードでやるからね!」
あー分かった!分かったよ!そのステップ、ドンドンドンドン煩いし畳痛むからやめろホントマジで!
「…と言うか何で俺と勝負する羽目になるの?その理由を簡潔に教えて欲しいんだけど」
「……会長が…」
「はい?」
「…ッ、とにかく!此処でお前を倒してやるんだから!」
なんかはぐらかされた気がする…まぁ勝負するならするで早く決着着くなら別に良いか。そう思っていた矢先の事、バン!と扉を勢い良く開き、部屋に入って来る者が現れた。確か彼女は……?
「話は聞かせて貰った!」
「君は…『ダブルジェット』!?」
「いや『デュアルブラスト』じゃなかった?」
「ツインターボ!両方共違う!」
あぁ、そうそう。そう言う名前だった。青いツインテールをしたウマ娘、ツインターボは俺達の前…いや正確にはテイオーの前に立ち口を開く。
「その勝負ターボもやる!そしてテイオー!お前に勝つ!」
「へー、もしかして僕に勝つ気?まぁ1人くらい増えても構わないけどね。勝負内容はどうする?」
「走る!」
「それじゃ
「逃げる!」
「いやそれ、さっきとあんまり変わってなく無い?」
この後に繰り広げられる議論の末に、我慢強く熱い心を持った者が勝者と言う事となり勝負の幕が上がった。
Now Loading…
早朝、チームカノープスの部室にてナイスネイチャが話を切り出した。
「ねぇ、ターボ何処に行ったか知らない?」
「確か用務員さんの所でテイオーと勝負するーって言ってたよ」
「成る程、道理で見当たらない訳ですね」
いつもならば「ターボが一着!」と言いながら朝練開始前に部室に居るのだが、今日に限ってその姿が見当たらない理由にイクノディクタスが納得の声を上げる。
「それじゃあさ、これからターボの応援に行こうよ!」
「確かにカノープスとして応援しなければなりませんね」
「異議無ーし、と言う訳でレッツゴー」
「「ゴー!」」
えっほえっほと部屋から飛び出す3人。そんな彼女等を見送る南坂トレーナーは「トレーニングは…?」と嘆いていたのは言うまでも無い。
場所は変わって学園の隅に位置する用務員室前。チーム毎に用意される物と比べ一回り大きなプレハブ小屋の前にネイチャ達がやって来る。
「此処で合ってる筈…だよね?」
「私の記憶通りならば間違いない筈です」
眼鏡の縁をクイッと上げるイクノを他所にネイチャは用務員室の扉に手を掛ける。
「まぁそこら辺は確認すれば良いだけの事でしょ…ちわー、ターボいますか──って熱ッ!?何この部屋熱いんですけど!」
突如として部屋の中より噴出してきた熱風に後退するネイチャ。そんな熱気が漂う扉の隙間から、3人はとある光景を目にした。
「あ゛つ゛い゛い゛い゛…」
「ぴ、ぴぇぇぇ……」
「っ゛…!っ゛……!」
そこには凄まじい熱が篭った部屋にて我慢比べを行う用務員、テイオー、ターボの姿が在ったのである。
「テイオーに…ターボ⁉︎あと用務員さんまで!」
「え……何してるの!?」
「地獄ですか此処は」
何故こうなったのか説明しなければならない。テイオー発案の勝負は何をトチ狂ったのか極暑の環境下で長く耐えられた者が勝者と言う事となり暖房・ヒーター・ストーブ等をガンガン使いサウナに似通った状態へと変えて、根比べをしていたのだ。
そんな最中、解放された清涼なる外気と新鮮な空気を感じ取ったウマ娘2人は堪らず外に向かって脚を運んでしまった。
「ターボ無理ィ〜!」
「僕も無理ィ〜!」
「テイオー⁉︎」
「ターボ!?」
ダッと扉の外目掛けて走る2人。
「あつ゛つ゛いいいいい゛て゛ぇ゛⁉︎」
「ターボ何し──て゛ぇ゛ッ⁉︎」
「タンホイザ!?」
タンホイザとの正面衝突事故を起こすターボ。彼女の鼻腔から赤い液体が勢い良く噴射される。
そんな状況の中、最後まで部屋に残っていた用務員は汗に塗れた上着を脱ぎ捨て叫ぶ。
「勝ったッ!」
「う゛ええええええん!(ターボとの衝突により鼻血)」
部屋は熱気に包まれ、ターボは倒れ、タンホイザは咽び泣き、テイオーは何処かへ走り去り、用務員は勝利の雄叫びを上げる。
そんな光景を前に眼鏡が熱気により白く曇る事となったイクノは呟く。
「地獄ですか此処は」
「勝ったッッ!!(2回目)」
▼ ▼ ▼
「んん…、やっぱり明太子は万物に適合する万能の食材だなぁ」
明太子をおかずに炒飯を食べる俺。口の中でつぶつぶとした魚卵が弾けて米と混ざり合うのが実に良き。美味しい。
海からの贈物である宝石を味わっている最中、ドン!と目の前から音が響く。
「やーっと見つけた!こんな所に居たんだね!」
「ん、テイオーか。一体何の用?」
「勿論、今朝の勝負の続きに決まってるよ!」
「えー」
「何さその不満な顔!」
だってさぁ俺が勝ったじゃん。もう決着付いたよね?文字通り暑い激闘で君の負けが確定したじゃん。ハイ、この話は終わり。
そんな訳で俺は明太子をツマミに勝利の美酒(ジンジャーエール)で陶酔するから。
「何さ!生徒の為に少しくらい時間取って上げてもいいでしょ!」
「これでも忙しいの!」
昼食を済ませた後には学園内の中庭にて設置された
「やだやだやだやだやだーーーーッ!勝負しろ勝負しろ勝負しろ勝負しろ勝負しろーーーーーッ!」
「駄々っ子かお前はッ!分かったやるよ!やれば良いんだろ!」
「……もう仕方ないなぁー、そこまで言うならこのテイオー様が直々に勝負してあげようじゃないかー♪」
すげぇな。これが帝王様の手の平返しかぁ……(白い目) で、勝負内容はどうするの?今朝みたいなのは御免だからね?
「大食い勝負はどう?どっちがより多くのご飯を食べれるか競うんだ」
「…そっちが有利な勝負になってない?」
ウマ娘の胃袋の容量、伸縮性、消化率って人と比べて凄まじいって聞くけど公平な勝負になってなくない?
「あれぇ〜?もしかして負けるの怖いの〜〜?まぁしょうがないよねぇ。最強であるこの僕に敵わないのは当たり前なんだから」
「む」
そんな嘲笑うように言われた事に癪に障ったのか俺は眉間にシワを寄せる。
俺は決意した。必ずこのフンゾリテイオーを懲らしめなくてはならないと。勝った暁には満腹で動けないコイツの目の前でうまぴょい伝説を披露してやる。
そう考えながら追加の五目炒飯を頼もうと席を立とうとしたその時だ。
「その勝負待ったーーーッ!」
遠方より青髪を揺らしながら見覚えのあるウマ娘がやって来た。
「その大食いターボもやる!」
「『ツインインパクト』も混ざるの?」
「テイオーに続いて『セカンドバースト』までもが…」
「ツインターボ! とにかくターボがテイオーに大食いで勝つ!」
セカンドバーs…ツインターボの言葉にニヤニヤとした笑みを浮かべながらトウカイテイオーは呟く。
「えぇ〜、また僕に負けるんじゃないの?」
「昨日は噴射しなかったの!でも今回は勝つ!」
「2人とも俺に負けたけどね」
ターボから一体何が噴射される予定だったんだ…?そんな訝しんだ視線を送る最中、またもや来客が現れる。
「なんやなんや?あんま見ない組み合わせで言い争って…」
「騒がしいが…何かあったのか?」
「タマモクロスにそっちは…あ、そうそうオグリキャップか。まぁ色々とな」
「なんでターボの名前はいつも間違えるの⁉︎」
ツインターボの言葉を背景に、芦毛2人にこれまでの経緯を伝えるとタマモクロスは「はー…」と呟きながら頷く様子を見せる。
「なんやけったいな事しとんなぁ。よし!それならウチ等も一枚噛ませて貰おうか!」
「え、マジ? まさかの飛び入り参加?」
「まぁ面白そうやしな、そっちの2人はどうや?」
「別に構わないよ。どうせ僕が勝つんだしね」
「フ、ターボが勝つ」
テイオーとターボが自信満々の口調で答える。でも俺知ってるよ?今朝もそう言って敗北を味わっていた事。
そんな俺の心情を他所に小柄なウマ娘であるタマが大きな声を上げる。
「ええ度胸や、アンタの出番やでオグリ!審判はウチに任せぇい!」
「うん、よく分からないがとにかく頑張るとしよう」
……え、あんな事を言っておきながら他人任せなの?
そんな疑問を振り切るかの如くタマモクロスは右手を上げ、スタート合図の準備が行われる。
…仕方ないか、さっさと追加の炒飯持ってこよ。
「全員準備は良いみたいやな…それじゃ!大食い始めぇーーーーーッ!!」
Now Loading…
「無理ぃ〜〜……」
「ターボエンジン…逆ふん…しゃ……」
開始から10分後、テイオーとターボは腹部を膨張させ屍を築かせていた。オグリキャップのペースに呑まれたのか、2人の胃の容量及び消化に見合わない食事量が一気に押し込まれ、そのままダウンする事となったのである。
「にしても凄ぇな、食事で死屍累々が積まれるの初めて見たんだけど」
「2人して限界超えようとするからやなぁ…」
うん、それはそうなんだけどさ。顔が蒼を通り越して白くなっている2人を他所に隣で明らかに人体許容量を超過した食事を摂っているオグリキャップにも言える事だと思うんだけど。
「……なぁ、少し良いか?」
「ん?」
「その炒飯、食べないなら私が貰っても良いだろうか?」
「え…あっ、ハイ。どうぞ」
限界が見えない胃袋に畏怖しながら俺は炒飯の皿を横にズラす。
やべぇ、断ったら確実に俺自身が食われてたわ(偏見) これが怪物と揶揄されるオグリキャップか……!(偏見)
「……で、勝負結果は?」
「まぁオグリの勝ちやろな。そこで倒れとる2人は…うん、リタイアって事でええやろ」
こうして俺は図らずも大食い勝負で2位になった。ちなみにテイオーとターボを保健室のベッドへ放り込んでおいた。
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「不法建築物は撤去よー」
「私達の占いの館がァーーーッ!」
「救いは無いのですかぁ…」
「ないです(断言)」
マチカネフクキタルの叫びを他所にチェーンソー等の工具を使い、解体作業を行う。…うん、良心の呵責的な意味で心が痛むけど生徒会直々のお達しだから仕方ないよね。
と言うわけで近場に居ると危険だからドトウ、フクキタルを連れて行って。
「わ゛た゛し゛の゛う゛ら゛な゛い゛の゛や゛か゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!」
「……さてと、さっさとこれを終わらせt「なら次はどっちが早く解体出来るか勝負だね!」え゛」
そこに居たのは保健室でくたばっていた筈のトウカイテイオーだった。何故此処に⁉︎まさか自力で脱出を⁉︎
「いやね?知らない仮面を付けた人が『あんし〜ん』って言いながら針を刺して来てね。そしたらなんと!体の不調があっという間に治っちゃったんだよ!」
「……それ、ただの不審者じゃね?」
え、なに?ソイツに何をされたら、あのボテ腹ボディから元の体型へ戻る事になるの?すごいね、ウマ娘の人体。
……あれ、ちょっと待てよ? なんかその人、面識があったような?うーん、何故だろう。本能的に絶対に思い出してはいけないような気が……。
「で、どうするの? 勝負受ける?まぁ、どうせ僕が勝っちゃうけどね」
「…これまで一度も勝ってないのに?」
「これから勝ち越すから!!!」
そんなテイオーが言葉を紡いだ直後、青髪を揺らしながら1人のウマ娘がやって来る。ハイハイ予定調和、予定調和。
「その勝負、ターボもやる!」
「ハイハイ勝負勝負。と言うかあんなに膨れ上がった腹はどうした?」
「なんか仮面付けて『あんし〜ん』って言ってた人に色々してもらって治った!」
「『ツヴァイニトロブレイバー』も保健室の不審者にお世話になった口かよ」
「もう原型残ってないじゃん!何度も言うけど!そんな名前じゃ無くてツインター……」
「…ターボ?」
「どうした?」
「……そっちが良い」
え、なんだって?
「その名前とっても速そう!今日からターボね、ツヴァイニトロブレイバーって名乗る!」
「「ターボ!?」」
「だってそっちがカッコいいんだもん!命名、ツバトロレイバー!……あれ?ヴァイスニロンバーだっけ?」
意気揚々と宣言した割に全然覚えられて無いぞ、この元ツインターボ 現ツヴァイニトロブレイバー。
自身の新たな名前(仮)と記銘力がせめぎ合う中、2人の声が響く。
「その程度じゃまだまだだな」
「そうさ、もっと内なる自分を曝け出したまえ」
「…あれ?ウオッカにテイエムオペラオーじゃん」
「何しに来たの君等?」
先日の後方師匠面ごっこで盛り上がっていた2人の登場に疑問を感じていると彼女達は俺達…ではなく、ターボの方に向かって歩んで行った。
「ターボ、俺ならツインブラスターって付けるぜ」
「加えて明けの
「何それかっこいい!それも付ける!」
「本当に何しに来たの君等?」
俺達をそっちのけで盛り上がる3人。近い将来ツインターボがあの2人によって変な影響を受けないようにと心中で祈っているとトウカイテイオーが置いてあったノコギリに手を伸ばした。
「……よし、それじゃあさ。先にどっちが
「結局やる羽目になるのか…」
「私の占いの館がァァァァ!」
何処からか響くフクキタルの声を他所に俺は溜息を吐く。
…まぁいいか。勝負と言う口実でテイオーは手伝って来れるんだとポジティブな思考で俺は「いいよ」と答える。
「よし決まり!それじゃスタート!」
「早っ⁉︎」
「おいテイオー!それはずるいんじゃないのか⁉︎」
「あっ、ターボも!ターボやるー!」
「よかろう!ならばこの僕が華麗に審判を務めようじゃないか。ああ、ジャッジをする僕!なんて美しい!」
あーもう滅茶苦茶だよ。そう思いながらノコギリを手に取り、解体した木材に鋸の刃を通す。
「あれれ〜?そんなゆっくりなスピードでいいの〜〜?それじゃ、勝ちは貰っちゃうねッ!」
「おお〜〜っと!此処でトウカイテイオーがスピードを上げたーーッ!くぅー、白熱した解説実況する僕!なんて素晴らしいんだ!」
「へへーん、このまま僕が勝利して………あれ?」
そんな台詞を吐いた直後、彼女の動きが止まる。いや正確には彼女の手に持ったノコギリが止まった。
「ぎぎぎぎぎぃ……ッ!?うーごーかーなーいーーー!」
「どうしたテイオー?」
「トラブったのか?」
あー、あれ完全にノコギリの歯が引っかかってるわ。ああなったら無理矢理引っこ抜くのは危ないな。
「ぐぅぅおおおおおおおお!絶対は僕だァァァァァァァァァァァァッ!!」
「あー待った待った、それ無理矢理抜こうとすると折れるからやめt───」
「ふん!!」
バギン!
瞬間、甲高い音を鳴らしながらノコギリの刀身は見事なまでに真っ二つとなった。
「「「「あっ」」」」
「へ?」
反動によってトウカイテイオーが後方へ倒れ込むのは必然的である…が、そこで考えて欲しい。
目一杯踏ん張った状態から解き放たれたパワー+固い地面に向かって行く尻。この後どうなるのか容易に想像が付くだろう。
Q.何が始まるんです?
A.大惨事退殲だ。
ゴシャァ(尻の骨から響く音)
「ツ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!?」
「「「「テ、テイオーーーーッ!?」」」」
この後、トウカイテイオーは本日二度目となる保健室行きが確定された。
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翌日の朝。トレセン学園生徒達の登校時間にてウオッカ、テイエム、ターボの3人に連れられた俺は習字に使われる
そこには『
……ふむ、寿限無かな?(超推理)
「ターボね!今日からこの名前にする!」
「見たまえ僕等の最高傑作!」
「どうすか用務員サン。俺達の魂を込めたネーミングセンスはッ!」
「とりあえず
「「「えー」」」
不満そうな表情を露わにする3人。いや、そんなん認められる訳ないだろ。リアルな話、出バ名簿にそんな長ったらしい名前が入り切る訳無いし。あと解明じゃなくて改名ね、誤字になってるからね?
「とにかく、さっさと校舎の方へ行っt「見つけた!」…オイ嘘だろ」
そこにはオムツ的な、はたまた相撲取の廻しのようなサムシングを装着した愉快なフォルムをしたトウカイテイオーの姿があった。
「す、すげぇ…ある意味で尊敬するよお前」
「成る程、これが帝王たる姿と言う訳だね」
「ふふん、流石テイオー」
「…成る程?これが帝王の貫禄って奴か」
「自分で言うのもなんだけど絶対に違うと思う。とにかく!この程度で僕が折れると思わないでよね!」
尻の骨は折れてるけどね。
「一応聞くけど坐骨をブッ壊したのに勝負とか言って大丈夫?悪化しない?」
「う…こ、こんなの問題無いよ!今度の勝負はスイーツ食べ放題対決だ!」
「スイーツ食べ放題対決!?」
テイオーが取り出したのは超が付く程の人気スイーツバイキング店のチケットだった。
「もう
「す、すげぇ…ッ!もう帝王って言う割に三下のかませとしての雰囲気をここまで醸し出せるとは…!」
「ふふん、そうでしょそうでしょ……ねぇ今何て言ったの?」
訝しんだ表情を浮かべるトウカイテイオー。
そんな彼女だったが俺へ注意を向けている最中、背後から忍び寄る影の接近を許してしまう。
「テイオーさん!その話、詳しく聞かせてください!」
「スペちゃん!?」
涎を垂らしたスペシャルウィークが出現した。
「やはりスイーツですか。いつ出発します?私も同行します」
「マックイーン!?」
加えてメジロマックイーンが耳と尾を揺らしながら現れた。
何という事であろうか、スイーツ食べ放題と言う単語をウマ娘特有の聴覚と食欲によって嗅ぎ付けて来たのである。恐るべしスイーツへの執念。
……あれ?そう言えば明けのツインストリームドライブは勝負に参加しないの?
「ターボ…じゃなかった。明星のデュアルブラスタージェットエンジンは今度、ネイチャ達と一緒に行くから大丈夫!」
「そっか…あと、名前はツインターボに戻しとけな?」
「うん(素直)」
もはや別物と化している名前。後方より「スイーツ!」と轟く謎の連呼を背景に俺はターボの素直さに安堵する。
なんだろう…意外とウララに通ずる所が有るんだねこの娘。
「そう言う訳でスペちゃん参加でいいよね!」
「えっ、あ、うん?まぁいいんじゃないの?」
「「っしゃァ!!」」
「すげぇ、女の子とは思えない掛け声出してる」
しかしスイーツバイキングかぁ…海鮮モノなら俺好きなんだけど、甘い物をそんな大量に食べる自信無いんだけど。
……あれ?
「ちょっと待った。少し良いか?」
「ん、どうしたの急に?……ははーん?さては僕との勝負に怖気ついちゃったりぃ?」
「いや、そうじゃなくてだな」
テイオーが持つチケットを奪い取り、隅に表示されている文字を目に通す。
「ちょっと!何するのs「3人だな」え?」
「チケットの
「「「え!?」」」
その瞬間、3人の雰囲気が一変し殺伐としたモノへと変貌を遂げる。
…え、え?何事!?
「ねぇスペちゃん、マックイーン?ここは怪我人である僕に譲るって言うのはどう?それに2人とも最近太りやすいって嘆いてたし」
「あら、挑発とは良い度胸ですわね。生憎様此度のダイエット期間は停滞期に突入しまして、いくらでもスイーツを口にしても問題ありません事よ」
「
えぇーーーーッ! 何こいつ等怖ッ!?
レース出走前以上にピリピリしてるんだけど!君等同じ
スペシャルウィークに至っては何言ってるのか分かんねぇし!
「いや、レース以外の勝負事じゃ大体こんな感じだぜ?」
「マジかよスピカ殺伐としてんな」
「埒があかないね…」
「で、あれば」
「信じるのは己の拳だけッ!」
三人がそう言うと各々は右拳を前に出すと、口を揃えて叫ぶ。
「「「ジャンケンで勝負ッ!」」」
「え、あ、うん」
あまりの迫力に押されつつも、とりあえず俺もジャンケンに参加事にした。後方で見てるウオッカ達を尻目にスイーツの誘惑に囚われし三人はブツブツと何かを呟く。
「この勝負、絶対に負けられないよ…ッ!」
「メジロ家の誇りに掛けて一世一代の勝負にしますわ…ッ!」
「見ててお母ちゃん。私、絶対に勝つ…ッ!」
レース以上に気合いが入ってやがるんだけどこのウマ娘。え、なに?なんで?この娘等にとって優先順位的にスイーツ>レースって感じの立ち位置なの?
…とりあえず、えーと。
「…さいしょはぐー」
「「「じゃーんッ!けーん───」」」
▼ ▼ ▼
都内のスイーツ店、そこに三人のウマ娘の姿があった。
「私、おかわり行って来ますね!」
「ねぇ、スペちゃん食べ過ぎだよ〜!」
「え?そ、そうかな…」
十数度目のおかわりへ行くスペシャルウィークを咎めるようにトウカイテイオーが呟く。
だが、そんな彼女の言葉にメジロマックイーンが反応を示した。
「今日くらい別に良いではありませんの。好きなモノを食べる事に茶々を入れるのは良くないですわよ」
「でもマックイーンさ。いくら食べ放題と言っても限度があるよ?そんなに食べたらまた太っちゃうんじゃない?」
「なっ!ま、またとは何ですかまたとはッ!今日はチートデイです!なのでいくら食べても平気なんですの!」
「え〜〜?そう言って前もウエスト周りがキツくなったってゴルシに聞いたけど〜〜?」
「なっ⁉︎ どうしてあの方は私のプライベートを熟知してるのですかっ!」
「あ、私おかわり行って来ます!」
「「貴女/スペちゃんはお代わり行き過ぎ!!」」
相変わらずの健啖家を見せるスペシャルウィークに2人は口を揃えて叫ぶ。乙女にとって幸せなスイーツタイムが過ぎて行く。
(何か忘れてるような……ま、いっか!ん〜美味しい〜♪)
そんな空間内に居るトウカイテイオー自身、思い切り目的を見失っている事について言及する者は誰も居なかった。
あとついでに、そんな幸せな空間を視界に捉えたアグネスデジタルはしめやかに尊死した。
Now Loading…
「って、違ぁーーーーーーう!!」
「うるせぇ!」
「ピャァァァァッ⁉︎」
いきなり耳元で大声を上げたのでアームロックを掛けて無理矢理静かにさせる。連日付き纏った挙句、鼓膜を破壊しようと言う魂胆に出て来たのでこちらも実力行使に出た次第。無論、レースに支障が出ないように脚部に対しての攻撃は行わない。
「で? なに?今度はどんな勝負なんだ?もう面倒だからどっちがティッシュで鶴を早く折れるかでいいだろ」
「何か昨日までと比べて雑になってない!?」
ハハッ、気の所為 気の所為。それともう用が無いなら帰った帰った。俺は今回理事長から貰った希少な休みを過ごすつもりなんだ。
つーか、今日は
「ぐぐぐ、そんな訳には行かないよ!僕はカイチョーの仇を取る為に勝負を─「何が勝負だこのたわけ!」
「ピェッ!?エ、エアグルーヴ…⁉︎」
テイオーの振り返った先には怒髪天を突く勢いで仁王立ちをしていたエアグルーヴの姿があった。
「つい先日、
「うぇ!チクるなんてズルいじゃないかーーー!」
「うるせぇ!こっちは何日付き纏われてると思ってんだ!3日だぞ3日!こうしてる間にもゴルシ筆頭の問題児が何をしてるか不安なんだよ!下手したら明日には宇宙人引き連れてインディペンデンスデイの再現をやりかねないんだぞ!そうなったらお前は責任取れるのかよオラァ!」
「逆上!?あとゴルシをなんだと思ってる訳!?」
「第13惑星 ゴルゴル星出身の日本トレセン学園在住のウマ娘型エイリアンだろ?」
「本当にゴルシをなんだと思ってる訳!?…ふぎゃ!?」
そんなテイオーの頭部に怒り心頭のエアグルーヴが拳を叩き込んだ。
「そんな事はどうでも良い…で?何の目的でそんな阿呆な事をしていたんだ」
「う…そ、それは……!」
「もう2発目行くか?」
「い、言うよ!言うからそれ以上殴るのはやめてってば!」
拳が放たれる準備動作に入るエアグルーヴを見てトウカイテイオーはそう言うと、理由はポツリポツリと明かし始める。
「カイチョーが…」
「会長?シンボリルドルフ会長がどうしたんだ?」
「行方不明になっちゃったんだ」
「えっ」
行方不明…えっ?行方不明になってるのウチの生徒会長!?
「カイチョーが行方不明になったあの日、しょうもない駄洒落をエアグルーヴがマスターしちゃったのが原因みたいで…でも、そもそもなんでそうなっちゃったのか僕自身調べてて、そしたらタマモクロスが…!」
『あぁ、エアグルーヴについてやな。ウチが色々と教授してたんやけど、その前に用務員と会長をどうのこうのと色々と話しててな』
「そ、それで!きっとカイチョーが行方を晦ます結果となったのは用務員がエアグルーヴに変な事を吹き込んだからに違いないと思って!だから僕がカイチョーとエアグルーヴの代わりに仇を打とうと思って!それで!」
「トウカイテイオー……」
ふむふむ成る程、成る程……。
「でさ、エアグルーヴ。どう言う事?」
「すまない」
「いやホントマジでどう言う状況?なんで俺の知らない間に生徒会長が行方不明になってんの?え、待って?ホントなんで?」
「…私の所為だ。私がギャグの虎等と豪語し会長のプライドに傷を付けたばかりに……くっ!」
「いや、…くっ!じゃ無いんだよ!なんであの人生徒会長の責務を放り投げてんだよ!と言うかなんでそんなしょうもない理由で行方を晦ましてんだよ!」
と言うか東条先輩や理事長は何か言わなかったのか!?強引にでも連れて戻るべきだったんじゃないの!?
「それについては2人共『シンボリルドルフの事だ、きっと何か深い考えがあるに違いない…』と頭を抱えながら言ってた」
「苦し紛れのフォローになってるじゃねーか!」
つーか、え、大丈夫なの?生徒会の責務ってかなり忙しいって聞いたんだけど。
ヒシアマゾンやフジキセキが手伝ってくれるんだろうけど、それでも結構辛いって会長自身言ってたし……あれ、ちょっと待てよ?
「会長が抜けた分の労働力はどうするつもりなんだ?」
「それに関しては我々が補うしかないだろうな」
「今後の活動に関しては俺も手伝う事になるのか?」
「…情け無い話だが、そうなるな」
成る程、それじゃあ最後に────。
「前回の俺が取る予定だった休暇、何処行った?」
「っ!」(何か察するトウカイテイオー)
「……勘の良い用務員は嫌いだな」
申し訳無さそうな面向きで放たれたその言葉は
「…こんちくしょうがぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!」
俺に悲痛の叫びを上げさせるには十分過ぎるものだった。こうして生徒会の仕事も請け負いとハードスケジュールが確立された俺は慟哭を上げる。
おのれシンボリルドルフ会長ォ!
「えっとさ…、その…はちみつドリンク…飲む?」
「うん、飲む」
慰め代わりでテイオーの奢りで飲んだはちみつドリンク(多め・濃いめ・硬め)は疲労した身体に十分なエネルギーを与えてくれた。
でも、胃が響く程にめちゃくちゃ甘かった。あんなん人が飲むモノじゃねぇなと思った(小並感)
一方その頃。
「あれ?会長だ!」
「……ん?ああ、ハルウララじゃないか。意気軒昂な様子で何よりだ」
「こんな所で会えるなんて!どうしたの?もしかして観光!?」
「そうだな…まぁ、自分探しの旅……かな」
シンボリルドルフは高知にてのんびりしていた。
〜用務員ステータス〜
スピード A
スタミナ C+
パワー A+
根性 B
賢さ F
肉体面がとても優れたヒト。その為、理事長達からは優秀な用務員として
しかし思考能力はバクシン委員長とツインジェット師匠と同レベルであり、ゴルシの事を本気で宇宙人だと思い込んでいる。