トレセン学園用務員は休みたい   作:ゴランド

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デジたん当たって良かった。何ヶ月もガチャ禁止した甲斐があると言うもの。
次はタマかターボ師匠が来るまで石を貯めていきたい……タマ来るよね?タマ実装されるよね?このまま桜の木の下で終わりを迎えないよね???


6話 不退転theタンポポイーター

「用務員さん、例のモノは?」

「クク…分かる、分かるよグラスワンダー…この粉末が欲しいんだろ…?」

 

 嗤う用務員、焦燥に駆られしウマ娘が暗く翳る一室で邂逅する。男はグラスワンダーをまじまじと眺めた後、言葉を紡ぐ。

 

「だがコレが欲しいと言うならば対価が必要…分かっているね?」

「こちらを」

「おお、随分奮発した山吹色のお菓子じゃないか」

 

 グラスワンダーが手提げ袋より取り出したのは箱菓子。中身に何が入ってるのか知ってるかの如く用務員の口端が更に吊り上がる。

 

「こちらと引き換えにアレをどうか───」

「いいや駄目だね」

「は?一体何を、ちゃんと対価は持って来ました。それに何が不満があると言うのですか」

「おっと言葉を選んだ方が良い。これも数に限りがあってね、今月は手元にあるこれで最後なんだよ」

「そんな…ッ⁉︎」

 

 絶望に打ちひしがれる顔。それに追い討ちを掛けると言わんばかりに彼は更なる言葉をグラスに送る。

 

「無論、新しいモノを用意するつもりだが時間は掛かるだろう…と、ここまでは良いとして俺の言いたい事は分かるかな?」

「…何が目的なのですか」

「足りない分を賄って貰うんだよ…君の身体でね

「ッ!」

 

 瞬間、少女の面に赤みと熱が宿る。

 

「用務員さんっていつもそうですよね!ウマ娘をなんだと思ってるんですか!」

「どうとでも云うと良い。それならば今後コレを手にする機会は少なくなるだろう」

「〜〜〜〜っ、分かり…ました……ッ!」

 

 激情に駆られたとしても用務員はその態度を崩す事は無い。これは罪だ。コレ無しでは生きられない身体となった自分に落ち度がある。

 

こうなる事は予想出来た筈だ。このような道へ足を踏み入れてしまう事は不退転の覚悟を持った上で承知した筈だ。嗚呼しておけば良かったと言うか悔いは自身を惨めにするのみ。ならば彼女に残された選択肢はこの男の言う事を聞くことだけ。

 

グラスワンダーは首を縦に振りその身を男に委ね─────

 

「うまぴょい警察ですわッ!」

「大人しく手元にある山吹色の菓子をよこしなァ!」

 

「なんだ急に⁉︎」

「あ、貴女方は……‼︎」

 

 そこに現れたのは何故か警帽を被ったメジロマックイーンとゴールドシップだった。

何故2人がここに居て、何故警帽を被っているのかは定かではないがこの状況は不味いと判断。用務員はその場から脱兎の如く逃げ出そうとした瞬間。窓の外より光を背にした来訪者が現れた。

 

「そこまでデース‼︎」

「誰だお前…ってホントに誰だお前⁉︎」

「正義の覆面レスラー『ジャスティス・エル・コンドル』参上ッ!」

「え、不審者?こわ……」

「えっと…何をしてるのですかエル」

「ノンノン、私はジャスティス・エル・コンドルであってエルコンドルパサーではありまセーン!」

 

 マスクの上から更にマスクを被っているウマ娘の登場に驚きを隠せないグラスと用務員。そんな驚愕の表情を浮かべる男にメジロマックイーンが言葉を投げ掛ける。

 

「用務員さん貴方にはウマ娘への脅迫及びうまぴょい疑惑、そして洒落にならないヤバい薬物所持が掛けられています。既に場は抑え、先程までの一連の行動も録画・録音させて貰いましたわ」

「くっ、おのれメジロ家!どう言う状況か未だに分からないけど、その行動力を脂肪燃焼に活かして欲しいものだなッ!」

「黙りなさい!それとこれとは全く無関係であってそもそも私は太っておりませんと言うより私の体重が増減した証拠など何処にもありません!ハイ論破!(わたくし)大勝利でこの話題は終了ですわ!(早口)」

「どうした急に」

 

 焦りを見せ己に言い聞かせるように口早に言葉を紡ぐマックイーン。完全に図星だと言うのが容易に判断できる。

そんな令嬢に呆れの表情を向ける用務員だったが、それが災いしてか後方にて待機する怪鳥から注目を外してしまった。

 

「隙を見せましたね!必殺ッ!フライング・コンドル・エル・クロスチョーーーップ‼︎」

「え、何その名前長…って背中痛ァ⁉︎」

「ナイスですわエルコンドルパサーさん!そして確保ですわーーーーッ!」

「っしゃ、菓子折りも押収じゃーーーーい!」

 

 背中に衝撃を受けた後、追撃のメジロ家令嬢によるボディプレスが用務員を襲い「ぐぇ」と潰れたカエルの如き、絶命声を上げる。

そんな光景を前にグラスワンダーは困惑と混乱が交わる声を上げる。

 

「エ、エル⁉︎コレは一体……!」

「おぉーっと、私は通りすがりの正義の覆面レスラー。決してターフの上をコンドルの如く駆け抜ける怪鳥ではないのデース」

「いやですから…」

 

 決して己の事をエルコンドルパサーと認めない覆面ウマ娘。そんなやり取りを前にマックイーンは声を荒げ、男の胸倉を乱暴に掴み迫る。

 

「見損ないましたわ用務員さん!まさか貴方のような方がこんな事をするだなんて…ッ!」

「何が?」

「コレに関してはメジロ家及びURA本部と理事長の指示を仰ぎ処分を下させていただきますわ!」

「だから何が⁉︎」

「ここまで来てシラを切るとは…ゴールドシップさん、押収した山吹色のお菓子を此処に!」

ほう(おう)ふぁふぁったー(わかったー)

「……あの、ゴールドシップさん?何を食べてますの?」

「山吹色のお菓子」

「…はい?」

 

 やましい金銭的なアレをバクバクと食べるゴールドシップ。そんな彼女の言葉を皮切りにグラスワンダーが言及する。

 

「あの…先程から何か勘違いしていませんか?」

「「えっ?」」

 

 メジロマックイーンと謎の覆面ウマ娘(エルコンドルパサー)の腑抜けた声が重なる。

 

「いや、だって…グラスは用務員さんに脅されて…って!そんな事よりも!何でそんな危険なモノに手を出してしまったのデスかグラスぅ〜〜!」

「危険な?……えっと、もしかしてタンポポ茶の事?」

「ケ?」

 

 グラス達の視線の先。用務員の手にはヤバい粉…ではなくタンポポ茶用の紙袋が収められていた。するとマックイーンは顎に手をやり暫し思考の海へと沈む。

 

「…えーと、山吹色のお菓子と言うのは?」

「私が取り寄せた黒胡麻クリームのダックワーズですけど」

「…賄賂的な意味ではなくて?」

「いえ、お歳暮的な意味ですね」

 

 山吹色のお菓子と言うのは実際に販売されているお菓子であり、決して袖の下や切餅と言った時代劇に出て来る隠語のヤツでは無い。

 

「で、でも!ゴールドシップ先輩から聞きましたよ!グラスが用務員さんとコソコソ怪しい取引をしてるって!もしかしたらグラス、大変な事に巻き込まれてるかもって!グラスの身が危ないって!」

「んあ?確かに怪しい取引してるから押さえようぜって言ったけど別にグラスが危険なんざ言ってないぞ」

「……」

「……」

 

 部屋に沈黙の空気が漂う中、用務員の一言が室内にて響く。

 

「……あのさマックイーン、取り敢えずどいてくれない?」

「あ、はい」

 

 

 

Now Loading……

 

 

 

 うまぴょい警察なるモノが押し寄せて数分が経った今、お互いに状況整理をする事となった。ところで『うまぴょい』ってなに?

 

「つまり私達の勘違いと言う訳でしょうか?」

「そう言う事になりますね」

「それじゃグラスに身体で〜云々と言ったのは?」

「そりゃ茶を作るのに必要な分のタンポポの補充だよ。春の感謝祭が近づいて来てるから、その準備に手間取ってるから収穫しようにもできないんだよ」

「それでグラスワンダーさんに直接やらせようと…」

「そう言う事。あと『うまぴょい』ってなに?」

 

 そう俺が問うとエルコンドルパサーが呆れた様子を見せながら口を開いた。

 

「それならそうと早く言ってくださいよー…でも、そんな簡単な事グラスに頼むなんて、全く用務員さんは意外と怠け者なんデスねぇー」

「ハハハ、そうかハハハ東京ドーム17個分の敷地を持つトレセン学園で数ヶ月分、煎茶用のタンポポを大量に探し摘み取るのは簡単と言うかハハハ。お前代わりにやるか?

Lo siento(ごめんなさい)

 

 エルコンドルパサー。ラテン系のウマ娘の彼女が見せたのは、それはそれは見事な土下座だったそうな。日本の文化が良く刻まれてる…グラスの影響かな?それはそれとしてうまぴょいって何?

 

「こちらも勘違いとは言え手荒な真似をしてしまい申し訳ありません」

「わり」(お菓子頬張りながら)

「ん、まぁいいよ。そもそも友達助ける為の行動だし勘違いされるような俺にも非がある訳だし…ただしゴールドシップ。テメーは駄目だ」

「んだとコラ」

 

 エルは許すマックイーンも許す、ただしゴルシは許さん。オメー確信犯だろ、こうなる事絶対予想してただろ俺ァ詳しいんだ。

 

「そもそも2人は何故こんな所で茶菓子を?」

「私達はただお茶菓子をゆっくり食べる為に集っていたので」

「そう言うこと…俺はお茶を、グラスは菓子を持ち寄って分け合ってたんだよ。余ったら来賓用の茶菓子にも出来るし」

「それでは何故このような場所で隠れながらやっていたのですか?」

「見つかったら十中八九、九分九厘で菓子全部食われるから。特にスペとかオグリとか沢山食べる系辺りに」

「あぁ…」

 

 マックイーンが納得の表情を浮かべる。まぁそう言う君も全部食べそうなウマ娘なんだけどね。減量をドブに棄てて食うスイーツは美味ぇですわと言いながら全て喰い漁りそう(偏見)

 

「まぁ折角だし茶だしてくれよ」

「よくもそんな事堂々と言えるなゴルシお前…まぁいいや。折角だしエル達もお茶飲んで───あっ」

「どうしまし……あっ」

 

 俺達の視線の先。そこには無惨にも床へ散らばった茶葉(パウダー状)の姿があった。

悪寒を感じ振り返ると表情筋がセメントで固められたのかと疑うレベルでグラスワンダーは凄い無表情だった。

 

「……用務員さん。在庫は?」

「無いよ」

「本音は?」

「無いです」

「そう言って実は?」

「無いね」

「からの?」

「だから無いんだって」

「………」

 

 何も言わずギギギと錆びた歯車のようにエルへとグラスは向き直る。そもそも、タンポポ茶が辺り一面に散らばる結果となったのは彼女のフライング・コンドル・クロスチョップが原因だ。ワザとでは無いとは言え、これは運が悪かったとしか言い様が無い。

 

「エル」

「ピェ」

 

 コンドルは果たして何処に?そこに居るのは鬼を前に縮こまるヒヨコの姿。怯えるエルコンドルパサーの肩に不退転を掲げるウマ娘が手を置いた。

 

「人は誤ちを犯すもの、何がどうあれ形在るものは無くなる定めなのです。それに元々は私の為にこうなったのでしょう?私は赦しましょう」

「グラスぅ〜〜〜!」

 

「感動的な話ですわね…」

「ロングセラー間違い無しだわこりゃ」

「いい話だったなー」

 

 これで一件落着だな。いやぁ意外にも怒ってなくて良かった。ヨシ!それじゃさっさと散らばった茶葉を集めてと……ん?どうしたグラス。徐に薙刀を持ち出して。

 

「ですがこちら(薙刀(私物))が赦しますかね…⁉︎」

「ディオスミーオ⁉︎」

 

 駄目だこれ!グラス確実にブチギレてるわこれ!

 

「ガッツリ怒髪天突いてますわ⁉︎」

「止めろォ!グラスを止めろォォーーーーッ!」

 

 

 

Now Loading……

 

 

 

 グラスを落ち着かせた後 マックイーン達と共に俺達は学園に自生しているタンポポを収穫する為に外へと赴いた。

 

「タンポポっつーとこんくらいでいいか?」

「ふぅ…結構な数が集まりましたねぇ…」

 

 日本古来より伝わりし(多分)伝統のジャパニーズ背負い籠スタイルでトレセン学園のあちこちに群生するタンポポを数時間に渡って摘み取っていく俺達。無論、全部は収穫せず幾つかは残しておいている。ひとつ残らず摘み取ると学園からタンポポが消えてしまうし、そもそも全て収穫するのは無理だと思う。

 

「さーて、グラス。そっちの進捗はどうだ?ノルマの量は収穫できたか?」

「たんぽぽ…タンポポ…た、んぽ…ぽぉ………」

「え、どうしたのお前こわ……」

 

 虚な目でジッと目の前のタンポポを見つめてるんだけど。マジでどうしたの?お腹痛む?薬飲む?怪しい笹針の人呼ぶ?

 

「不味いデース…グラスからタンポポ依存症が見えマース、早くタンポポをキメないと大変な事になりそうですよこれ」

「それは困った事になりましたわね」

「タンポポをキメるとは(哲学)」

 

 タンポポに中毒性は無い筈だけど?まさかエルの言霊が影響及ぼした可能性がワンチャン…?

 

「つーか言う程タンポポって美味いか?煎茶したり和え物ならまだしも食いつくレベルじゃないと思うけど…」

「あー、そういや学園に自生してるタンポポは品種改良を行い、味を追求した結果めちゃくちゃ美味いって聞いたことあるな」

 

 そう言いながらゴルシは毟ったタンポポを俺の前に差し出して来た。

 

つー訳で食ってみろ。な?

「な?じゃねぇよ。ウサギを前にそこら辺の雑草やる子供かお前は」

「何だよ折角の私の好意を無下にする気かよ。ゴルシちゃんの毟立てホヤホヤのタンポポを め・し・あ・が・れ」

「………」

 

 まぁいいや、そこまで言うなら食ってみよ(脳死)

いただきまーす…と。うん、青臭ぇ!

 

「え、お前マジで食うの?引くわ……」

「そうか?タンポポって食用で使われるから生でも行っても問題ねーだろ」

「お、それならゴルシちゃん特性香辛料使うか?ヴィクトリアの滝みてーに全身から汗が噴き出て大瀑布間違い無しだぜ?」

「それ全身の水分全部持ってかれんじゃねぇか。干からびて死ぬわ」

「貴方達は何を遊んでらっしゃいますの…」

 

 マックイーンがそう言っている間も俺は口の中でタンポポを咀嚼し続ける。ふぅン?青臭いながらも意外と癖になる味だな。どれ、もう一本口にしてみるか。

 

「……美味い」ムグムグ

「側から見るとすげー笑えるな」

「落ちぶれた大人みたいな光景デース」

「はっ倒すぞ」

 

 しかしこれは予想以上だ。こんなに美味いタンポポなんて初めて食べた。子供の頃タンポポは食べれるってネットで見て口にした時以来だけど、その時の比にならない旨さだ…!

 

「これは確かに美味しいですわ…!」

「だろ?」

 

「んじゃワサビとかカラシ付けて食ってみようぜ!絶対合うって!」

「エル御用達のデスソースも捨てがたいデース!」

「生クリーム!カスタード!甘味も良いと思いますわ!」

「お前等はタンポポをなんだと思ってるんだ(真顔)」

 

 何なんだよその食べ方、タンポポを侮辱してんのか。そんなゲテモノより魚卵を合わせて食べた方が絶対合うって。

 

「お前も大概ゲテモノじゃねーか…って、お?」

「ん?どうしたゴルシ」

「いや…なんか籠ん中のタンポポ無くなってね?」

「え」

 

 そう言われて籠の中を覗くと彼女の言う通り、そこには初めから何も無かったかのように収穫した筈のタンポポは消え失せていた。

え、どうなっているのこれ?

 

「どう言う事ですか!あんなに沢山あったタンポポがすっからかんデース!」

「オイオイ用務員よ。あまりの美味しさに全部食っちまったのか?マックイーンじゃあるまいし」

「なんで俺に矛先が向くんだよ。あんな量のタンポポそう簡単に食える訳ないだろマックイーンじゃあるまいし」

「貴方達、随分と良い度胸ですわね(半ギレ) グラスさん、この不届き者達を成敗して……グラスさん?」

 

 先程からやけに大人しいグラスワンダー。マックイーンの呼び掛けにも応じない彼女に向かって俺達は視線を向けるとそこには……

 

「タンポポ美味しい!タンポポ美味しい!びゃぁあああ美味いぃぃ!」

「「「グラスが壊れたッ⁉︎」」」

「どう言う事ですの⁉︎」

 

 なんと籠の中に頭を突っ込んで暴走する栗毛のウマ娘の姿があったのである。

なんだこれはたまげたなぁ(唖然) と言うか、え?どうしたグラスお前⁉︎腹を空かせた野犬の如く黄色の花を喰らいつくしてるんだけど。いや本当に何やってんのお前⁉︎

 

「そ、そうかッ!分かりました!グラスはタンポポ依存症の末期に入った事で視界に映るタンポポを貪り尽くすマッスィーン(ネイティブ)になってしまったのデース!」

「なんだそのアホな設定は!」

 

 そんな事を言っている間にも収穫した蒲公英はどんどん消えて行く。あ、あああああ!折角集めたタンポポがグラスの腹の中にィィィ!

 

「数時間に及ぶ俺達の作業がァーーーッ‼︎折角作業に余裕が出来たのにクソがァァァアアア‼︎」

「ケ⁉︎用務員さんも壊れそうデース!」

「落ち着け用務員!」

 

 はぁ…はぁ…落ち着いてるが⁉︎(ムキ)

 

「ポポーーッ!」

「グラスが四足歩行で逃げ出しましたッ!」

「不味いですわ!これ以上は(主に彼女へのイメージが)危険ですッ!」

 

 確かにあのカサカサとした動きはまるでチャバネとか、そう言うタイプの黒光りした虫のアレにそっくりだ…ウマ娘の姿かコレが?

と言うかタンポポが原因でこれになるってどう言う事?これタキオンが原因じゃないよな?

 

「タンポポ!タンポポ美味しい!タンポポ美味しいィ!」

「ああっ!グラスがそこら辺に生えてるタンポポに齧り付いたデース!」

「不味いな、ちょっと他のウマ娘には見せられない光景だぞこれ」

「一種のホラーだな」

 

「おやおや〜?用務員さんこんな所でサボりですか〜?」

「君は…ウンス!」

「あの、その呼び方はやめてくれません?せめてセイちゃんって呼んでくださいよ」

 

 そこに現れたのは透き通る水色をした髪が特徴的なウマ娘のセイウンスカイ。彼女もスマートファルコン同様、俺がいない間の用務員室を勝手に使用している生徒の1人だ。

 

「すまんウンス、今お前に構ってる暇は無いんだ。なのでサッサと寮でも担当トレーナーの元に行ってくれ」

「えぇ〜〜?こんな所で皆さま方が楽しそうに何かをしてると言うのに帰れだなんて酷いのではないでs「タンポポ!タンポポポポッ!」え、何あのグラスちゃん怖っ⁉︎」

 

 あーあ、だから言ったのに。これを友人に見せたらショックが大きいと思ったからはぐらかそうとしたんだけどなぁ…。

 

「…あの、用務員さん。ちょっとよろしいですか?」

「ん?どうしたマックイーン」

「グラスさん…こちらを見てませんか?」

「えっ」

 

 先程までの雑草をバリバリ食べていた意地汚い姿から一変、品定めするように彼女はこちらジッと見つめている。

 

「なんだ、急にどうした?」

「そりゃタンポポを生のままで食ってたんだから腹壊したんじゃね?」

「おっと生の人参に齧り付くウマ娘らしからぬ発言だなゴルシ」

「なんと言うか、今のグラス。セイちゃんに対して目線を向けてる気が……あ!」

 

 ん、どうしたエル?急にウンスの方を見ながら声を上げて……あっ。

 

「あー、はいはい成る程。そう言う事か」

「え、え、なに?セイちゃんの方向いてどうしたの皆?」

 

「これってさ。完全に狙ってるよね?」

「狙ってますねー…」

「ですがセイウンスカイさんの髪飾りって確かタンポポではなく菊だったのでは?」

「タンポポも菊も同じキク科だからなぁ…」

「なんで私を見ながらヒソヒソと話してるの⁉︎」

「タンポポ…タンポポ……ほぼタンポポ…!」

「グラスちゃんもなんかにじり寄って来てるんですけど⁉︎」

 

 うん、これは確定だ。グラスは次の標的としてセイウンスカイ(の髪飾り)に狙いを定めたのだと考えられる。

 

「ウンス、色々省いて説明するが今からお前はグラスに襲われる」

なんで⁉︎

「色々あってグラスは今タンポポ中毒になって末期症状が発生。今やタンポポだけを食い潰すだけのマシーンなってマース!」

「え…タンポポちゅうど…えっ、なに?」

 

 エルコンドルパサーが発した単語に困惑するウンス。まぁそうなるよね、そんな造語聞いた事無いし、そんなあるかも分からない症状にグラスワンダーが陥ってると言うのがホント意味不明だよね。

 

「まぁ話は大体分かった(気がする)けど、具体的にどうするの?」

「そりゃ…突っ込んで来た所を返り討ちにするとか?」

「何故ウマ娘相手に力技を選ぶのですか!」

「今のグラスに対して勝てる自信が無いデース!」

 

「オイオイ2人共、コイツ(用務員)の溢れ出るゴリラパワーを舐めんなよ。立てばエイプ、座れば大猩々、歩く姿はクロスリヴァーゴリラ 別名ゴリラゴリラデリー!コイツが本気を出しゃあドラミングでモーセの海割りなんか、なんぼのもんじゃーい!」

「おっと、たった今ゴルシに対して溢れ出るゴリラパワーを発揮したくなったぞ歯を食いしばれ」

「ちょっと2人共⁉︎」

 

 俺とゴルシが相対する最中、マックイーンが仲裁しようと破って入る。が、しかし目を離した瞬間にグラスワンダーが石火の勢いでこちらとの距離を詰めて来たのである。

 

「って、来た!グラスちゃん来たよ!」

「うぇぇ!マジかよ、ゴリラパワーの出番だぞ何とかしろ用務員!」

「おいふざけるな!終始笑顔でタンポポ貪る生徒なんか怖いから相手にしたくないんだけど!」

 

 そう言ってる間にもグラスは長柄武器を手に迫って…いやどこから出したんだよその薙刀⁉︎あ、ちょっとやめて!それ持ったまま俺に向かって突撃かますのは勘弁してくださ──「きゅう…」──あれ?

 

「グ、グラス?」

 

 突如として薙刀を手にしていたグラスワンダーがその場で崩れ落ちた。あまりにも突然な事態に俺達は唖然とするしかなかった。

 

「…か」

「はい?」

お腹が…痛い……

『……』

 

 図らずともゴルシの言う通りグラスワンダーは腹を壊す結果となった。

今更ながらこれは必然的だったのかもしれない。いくらウマ娘の胃袋が人間と比べて数倍もの伸縮性と消化率を持っていたとしても、自身の許容量を大幅に超えた食事…食事?をすればそうなる。

例外こそはいるものの(スペとかオグリとかオグリとか)彼女は限界を迎え今に至ったのだ。

 

「えっと…グラス大丈夫ですか?」

「エル…その、はしたない所を見せました」

 

「どうやら元に戻ったようですね」

「だな。一件落着って事で!」

「うーん…これセイちゃん必要でした?」

 

 まぁ必要(な犠牲)でした。とりあえず元に戻ってくれて良かった…東条先輩が見たらどうしようかと思ったけど無事、杞憂に終わってくれた…いや本当に取り越し苦労で良かったマジで。

 

「あの用務員さん。厚かましいのは承知でお願いしたい事が……」

「ん、どうした?」

 

 俺を呼び掛けるグラスは恥ずかしそうにすると、次のように言葉を紡いだ。

 

「腹痛を和らげる為に迎えタンポポを口にしたいのですが…」

保健室行ってろ!!

 

 




ウマ娘アプリ一コマ的なヤツ

用務員① 
大好物は魚卵系統。
いくらをオカズに、かずのこを主食にするレベル。
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