「あー、今日は思ったより早く終わったァーー!」
本日の業務だがいつもと比較して早く終わった。なんだかやけに運搬作業が多かったが、まぁいいだろう。とりあえず空いた時間は用務員室にて最新作のゲームをプレイするしよう……ん?
「グラスじゃないか。こんな所で何してるの?」
「よ、用務員さん⁉︎」
プレハブ小屋用務員室の前、そこには何故かグラスワンダーが立っていた。なんでこんな所に彼女が居るのでだろうか?
「ほ、本日はお日柄も良く〜」
「おっそうだな。じゃ、ちょっと部屋入りたいからそこ失礼するよ」
そう言い俺が横を通ろうとするがグラスが前に立ち塞がった。
…どうしたのだろう?と思いながら反対側へ回り込もうとするがそれに合わせる形でグラスは俺の前へと移動する。
「……グラス」
「なんでしょうか?」
「なんで俺が行く道を塞ごうとするんだ?」
「気の所為では?」
「うん気の所為じゃないね。完全に俺の行く道を塞ごうとしてるよな?」
「気の所為ですよ」
うーん、そう言われればそうかも……ん?
「あのさ、グラスちょっといいか?」
「なんでしょうか」
「なんか……グラス臭わない?」
「介錯の用意は万端ですよ用務員さん」
おっと、やめたまえ。その物騒な薙刀を持ち出すのはやめたまえグラスワンダー。俺は別に君がドブみたいな臭いが漂って来るとは言って無いんだ。
「そうじゃなくてさ、なんか制服辺りから獣臭い気がするんだけど」
「…えっ」
「いや、正確には鳥臭いが合ってるか? 最近、スペやウンス辺りからその変の事を相談されるんだけど何かあったのか?」
「………」
あ、冷や汗掻き始めた上にそっぽ向いた。うん 何かあるなこれ。さっきから俺を阻んでる理由にも繋がったりするのだろうか?
とりあえず餌で釣ってみるとしよう。
「タンポポ」
「っ!」
「タンポポクッキー、後でいかが?」
「…見くびられたものですね。私がその程度のモノで口を割るとでも?」
「オマケして取り寄せたタンポポ茶をご一緒にいかが?」
「全てはエルに非があります」
わぁ、流石は腹が捩れるまでタンポポを喰らい続ける程のタンポポ狂なだけはある。躊躇いもなく友人の名前を出す姿勢ある意味で尊敬に値するよ。
そんなグラスに感心していると用務員室の扉が開き、中からエルコンドルパサーが現れた。
「ケ⁉︎ 用務員さんがどうしてこんな所に⁉︎」
「用務員が用務員室に行っちゃ駄目なのか?」
「だ、駄目じゃないですけど…今は駄目デース!」
「ちょっと何言ってるか分からない(真顔)」
よく分からないけど、やましい事でもしていたのだろうか?ちょっと中拝見させてもらいますねー。
「ま、待ってくださーい!」
「今度は何?」
「ここを通りたければエルを倒してからにするデース!」
「えい」
「あっ⁉︎」
通りたければ倒せと言う言葉の通り俺はエルのマスクを剥ぎ取る事にした。前にグラスからマスクを剥がせば無力化出来るって聞いたからね、これが一番早いと思います。
「ひ、酷い!マスクを狙うなんてぇ〜〜〜〜〜!」
「はいはい。それじゃここ通るからね」
「あっ、ちょっと待って…⁉︎」
エルの言葉を華麗にスルーしなごら、取手に指を掛け扉を開く。直後バサリと何かが羽ばたく音と同時に鋭い爪のような物が視界に覆われて─────
「ぐおああああああああ目があああああああああああああああッ!」
「「用務員さんんんんんんん⁉︎」」
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「まぁつまりはだ、エルはこっそりペットを寮部屋で飼ってた訳だな。寮長のヒシアマゾンに内緒で」
「う…」
「加えてグラスまでも黙ってたとはなぁ…」
「その、面目ありません……」
目に致命的なダメージを負った為、五条悟ファッション又の名を宇水フォームで俺は2人の前で溜息を吐く。
俺の腕にはエルコンドルパサーのペットである猛禽類が止まっている。どうやらこの子を周囲から隠しながら飼っていたようだ……が。
「でもさ、何で用務員室⁉︎ 何故にどいつもコイツも此処を選ぶんだよ!」
「マンボが快適にコッソリと暮らして貰うには此処が丁度良かったんデース!」
「ここってそんなに快適⁉︎いや確かに快適だろうけどさ!でも鳥住まわせたりする⁉︎」
アイドル事務所にされたと思いきや占いの館。そんでもってまさか猛禽類によって部屋を占拠されるとは思わなかったよ。
「にしてもさ、そう言うのはペットショップとかバードホテルとかで預かってもらうべきだろ普通」
「うう、でも家族と離れ離れになるのは…嫌デース…」
「……エル」
「だからってなぁ、此処で飼ってるのすぐにバレるだろ」
偶々見つからなかったけど本来は他のウマ娘達も頻繁に来るかね?……いや、今更だけどなんで他の奴等も頻繁に来るの???
「…あとグラスお前もだ。同じ国に生まれ同じく日本に渡って来たからこその同情なんだろうがそのままにしとくのは友達として正しい判断とは言えないぞ」
「………」
「確かに同じアメリカ生まれで同じく家族とも疎遠。同じルームメイトだからってソレが良い結果となるとは限らない」
心の底から反省するように拳を握りしめるグラス。
「腹を切らせ打首に晒した後にその臓物を野犬の餌にしますよ…って気概で喝を入れなきゃ」
「もはや恐喝の域⁉︎」
「私そんな事言いません!」
「えぇー本当にござるかぁー?」
まぁ俺も訳あって家族と疎遠になってるし、気持ちは分かるよ。
……そうか家族か、ここ数年顔合わせしてないなぁ。
「……分かった。それじゃ理事長の所行こうか」
「ケ⁉︎ ゆ、許してください!マンボだけは!マンボだけは見逃してください!」
「用務員さん!貴方には慈悲の心は無いのですか!いくらエルが違反を犯したとしてもマンボを殴り殺しその血肉を貪るなど、あまりにも惨たる事です!」
「お前達は俺を何だと思ってるんだ(真顔) そうじゃなくて鳥舎建設の打診をしに行くんだよ」
そう言うと2人は意外そうな表情を露わにする。
…本当に俺を何だと思ってるんだこの2人は。失礼にも程があると思うんだけど?
まぁそれは置いておいて学園長ならきっと打診を受け入れてくれる筈だ。だってポケットマネーでVRウマレーターなんて物を設置する脳内がウマ娘で埋め尽くされた人が、エル達の言い分を一蹴するとは思えないし。
「た、確かに!」
「何と言いますか…珍しく用務員さんが用務員してるなって思いました!」
「オイ、おいマスクのウマ娘。それはどう言う事だ(半ギレ)」
これでも俺、学園関係者ぞ?20代の公務員ぞ?役職からは考えられない程の高額所得者ぞ?ゴルシ筆頭の問題ウマ娘達と追いかけ戯れてると思ったら大間違いぞ?
そう思っているとグラスワンダーが怪訝な表情を浮かべながら俺に向き合う。
「……あの、少々お尋ねしたい事があるのですが」
「ん?どうしたグラス」
「先程から腕にマンボの爪が食い込んでますけど大丈夫なのですか?」
ん?ああ、腕に止まってるマンボの事を心配してたのか。確かにさっきから大人しくしてたし心配なのも頷ける。でも大丈夫、問題無い。
「どうやら俺くらいの腕の太さが止まり木に丁度良い感じで気に入ったっぽいね」
「う〜〜ッ、会って数分足らずなのに…私のマンボを取るなんでズルいですよ!」
「かーっ!出来る用務員は動物に好かれちゃうみたいで困るわー、動物にモテモテ困るわー、かーーっ‼︎」
「いやそう言う意味ではなく…」
するとエルコンドルパサーがテーブルをバン!と強く叩きながらその場に立ち上がる。
「マンボに好かれるからってマウントを取らないたなくだサーイ!所詮、貴方なんかマンボにとっては都合の良い止まり木程度の認識デース! 真の飼い主はこの私、エルコンドルパサーッ!
「なっ…おのれアメリカ出身ラテン系のマスクレスラーウマ娘めが!属性過多による渋滞を起こしてるんだから
「落ち着いてください用務員さん。あとエルの方こそ思い切りマウント取ってますから」
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「と言うわけで。理事長に快くOKサインが出たのでお前等に鳥舎が立つまでにコイツの面倒を見て欲しいんだ」
「一流ウマ娘であるこのキングを何の為に呼んだかと思えば……」
「まさかエルのペットを面倒見る事になるとはねー」
此処に集められたスペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイ、キングヘイロー。この中等部5人のウマ娘達はその強さ、注目度からファン達から黄金世代と称されている。
「この子がエルちゃんのペットなんですね!」
「そうデース!この私に相応しいコンドルのマンボです!」
「えっ?コンドルなのに…マンボウ?」
「マンボデース!」
どうやらスペはマンボの事をフグ目マンボウ科マンボウ属の方と間違えてるらしい。名前的にそう聞こえるけど違うからね?こっちは猛禽類だからね?
「それにしてもコンドルか〜私、実物は初めて見たかも!」
「確かに言われてみれば。コンドルをペットで飼ってるなんて普通の発想じゃないよな」
「ふふん、それほどでもないデース!」
『……(((どう見ても鷹なんだけどなぁ…)))』
何やらグラス、スカイ、キングの3人が訝しんだ目でマンボをジッと見つめている。ははーん?さては触りたくてウズウズしてるんだな(名推理)。
だけど無闇に猛禽類に近づこうものなら目玉を突かれてしまうのではないか?と言う危険思考によって忌避感がバリバリに出てると見て間違いない。
「心配するな3人共、伊達にエルのペットをして来た訳じゃないんだ。人を襲わないよう調教されているに違いないさ」
「いや〜、それは分かってるんだけど」
「私達が気にしてるのはそこじゃなくて…」
うむむ、どうやらまだ警戒心は解けないらしい。このままではこの5人がマンボの世話をするなんて泡沫の夢。仕方ない ここはスペと一緒に本当に安全か見せてあげるとしよう。
「スペ、マンボを腕に乗せてみるか?」
「え!良いんですか‼︎私、やってみたいです!」
「ちょ、ちょっと待った!そもそもマンボの飼い主はこの私!ちゃんと私に許可を取ってからにしてくださいスペちゃん!」
そう言いながらもエルは俺の腕からスペの腕へとマンボを移動させる。バサバサと羽撃かせているのは鳥自身バランスを取る為なのだろう、特に嫌がっている様子には見えない。
…よくよく見ればリードらしき物を付けてないな。随分とエルに懐いてると分かる。
「よーし、後は大きく動かしたりしない限りマンボは逃げたりしませんよ!」
「そうですか?それじゃ……って、いだだだだだだだだ!?」
「スペちゃん⁉︎」
「あ、グローブ渡すの忘れてました」
「いだだだだだ‼︎用務員さんは着けてなかったのになして⁉︎」
「それに関しては単にこの人の皮膚強度がおかしいだけデース!」
おい、それはどう言う事か聞かせてもらおうじゃないか。
そう俺が言葉にする前に腕に猛禽類の爪が食い込み悲鳴を上げるスペはウンスに向かってマンボを投げ渡す。
…って、その状況で他人にパスするの⁉︎
「セイちゃん!セイちゃん変わって!」
「へ?……痛ァーーーッ‼︎肩!肩に爪がッ!爪食い込んでる!食いこんどる!食いこんどるからァーーーーーッ!」
「コンドルだけに?」
「鷹ですけどね」
「やかましい‼︎って痛い痛い痛ィ!キング、パス!」
「はぁ‼︎き、急に言われても…い、良いわ!一流ウマ娘の実力とくと見ると良いわ───ってぐぁああああああああああ!なんで頭に止まるのって爪がぁぁあああああああああああああああああ!」
『キング(ちゃん)ーーーーーッ!?』
慌ただしくなる一方、仮にも黄金世代と称されるウマ娘達が猛禽類一匹によって蹴散らされるの光景が繰り広げられている事実に不思議と笑いが込み上げて来るのは何故だろうか。
「嘲笑ってんじゃ無いわよへっぽこォ‼︎」
「いたた…うーん、結構マンボの世話って大変そうだね…」
「慣れれば意外と簡単なものデース!」
「まぁ寮部屋よりは用務員室の方が広いし、気を付ければ問題無いだろ」
そう言い終えた俺だったが「ああ、そうそう」と言葉を付け加える。
「鳥舎建設の為に俺も手伝う必要があるからペットの世話は基本お前等がやる必要があるけどな!頑張れよ!(満面笑)」
直後、エルコンドルパサーを筆頭にブーイングが雨のように飛び放たれる。
「この人全部私達に押し付ける気デース⁉︎」
「生徒に押し付けるのは学園関係者としてどうなんですか用務員さん!」
「屑め、恥を知りなさい。それが大人のあるべき姿と思ってるのならば反吐が出ます(半ギレ)」
「うっせぇ知った事か!(クズ思考) 大体
「腹を切る覚悟は出来てるようですね(薙刀構え)」
「落ち着いてってば2人共!」
「その通りですグラス!その薙刀を納めてくだサーイ!」
「用務員さんも正論を盾に殴り付けるのはやめてください!」
「貴方達このキングを放っておくんじゃないわよォォ‼︎」
喧しさが増す用務員室を割くようにキングヘイローのヘドバンが披露される。直後、バサリと羽ばたく音と同時に鋭い爪のような物が視界に覆われて─────
「ぐおああああああああ目があああああああああああああああッ!(2回目)」
『用務員さんんんんんんん⁉︎』
2回目!2回も目をやられたんだけど俺‼︎ 大丈夫?明日から失明してない?ンドゥールスタイルで業務しなきゃ駄目だったりする?
後でタキオンの所で良さげな点眼薬貰わなきゃ(使命感)
「キーー‼︎」
「あ‼︎マンボが外に逃げちゃった‼︎」
「早く追い掛けるデース!」
「ほら行きますよ。立ってください用務員さん!」
「俺、目をやられてんのに⁉︎」
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「見つかりましたか?」
「駄目、全然見当たらないわ」
「一体何処へ行っちゃったんですか〜〜〜!」
各自バラけ、マンボの捜索を行ったがめぼしい結果は出ずに女神像前に合流する事となった。
「うーんこりゃ、残りのスペちゃんと用務員さんに期待するしかないね」
「ええ、ちゃんと見つかると良いのだけれど「皆さーん!」と、噂をすればね」
スペシャルウィークが何やら紙袋のような物を抱えこちらに向かって駆け寄って来た。
「これ、差し入れのドーナツ買って来ちゃいました!」
「何してたのスペちゃん⁉︎」
「マンボはどうしたのデース‼︎」
残る用務員に期待を寄せながらドーナツを貪る一同。そんな彼女等の元にサングラスを掛けた帰って来た花京院スタイルの用務員が歩んで来た。
「用務員さん!」
「マンボは見つかりましたか⁉︎」
「あ、ごめん。探してなかった」
『は?』
堂々としたカミングアウトに一同が腑抜けた声を漏らす。
「あ、もしかして用務員さん、サボりですか〜?いやぁ、感心しませんなぁ〜〜」
「いや、普通にタキオンの所行ってたから探してない」
「いや本当にサボってたのこの人!」
「こんな時によくもまぁ堂々と!」
「私達だって爪が深々と刺さってたのにも関わらず探してたのよ、このへっぽこ!」
「俺に関しては重要器官にダメージを受けたから仕方ないだろ…って言うか現在進行形でドーナツ食ってる奴等には言われたくねぇ!」
それぞれが用務員に向かって言葉を投げ掛ける中、エルコンドルパサーはやれやれとした態度を見せる。
「全く、肝心な時に役に立たない人ですネー。これじゃ一体何の為の用務員さんなんでしょうかネー」
その直後。目も止まらぬ速さで用務員はエルコンドルパサーの背後に回ると、ズブリと手刀を彼女の背中に突き刺した。
「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「とにかく、リスクを承知で他の人に聞き込みをして行こう」
「リスク?」
「そりゃ無断でペットを飼ってたなんてバレたら大目玉食うだろ。共謀を図った俺達も連帯責任として」
「があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「うそ、マジ?」
「下手すれば内申点に響くだろうな」
「うう、それは嫌だーー!テストで赤点取ったばかりなのにぃー!」
「やば、私もよく居眠りしてるからなぁ…もしかすると停学になったり…?」
「まぁ、退学までは行かないけど最悪留年するんじゃない?」
「わやだべさーーーーーーッ‼︎」
「皆‼︎ お願いですから私の心配をして…おごああああああああ!肩甲骨の下に手を入れてグリグリするのやめてええええええええええええ‼︎」
しばらくして、痛みが凄い分効能も凄い肩甲骨剥がしを披露し終えた用務員。その犠牲となったエルコンドルパサーは地に伏せる事となった。
「うう〜酷いデース…!」
「ククク、明日からは肩回りの可動性が良くなってるだろうよ。気持ち悪いくらい肩がグリグリ動かせるだろうか覚悟しとくんだな!」
「私貶されてるんですか?それとも褒められてるんですか?」
「2人共、遊んでいないで早く探すわよ!」
「その通りだよ〜?もしもタキオンさんオグリさん辺りにマンボを発見されたらどうなる事やr「私がどうかしたのか?」うぇぇえええええッ!」
「うわっ!オグリ先輩にタマモ先輩⁉︎」
「なんや?うち等がここに居るのにそない驚く事か?」
噂をすれば何とやら。
突如として現れたのは、脅威の速さで芝を駆け抜ける事が可能な脚と美しい芦毛を兼ね備えたウマ娘であるオグリキャップとタマモクロスの2人だ。
「と言うかこんな所に集まってどないした?なんか困り事でもあるんか?」
「あ、あはは〜、まぁそんな所ですかね…ね?用務員さん!」
「(俺に投げるのかよ!)…えーと、実は俺の知り合いが飼ってた鳥がトレセン学園に迷い込んじゃったみたいでな。スペ達の力を借りて探してる所なんだよ」
「そ、そうデース!あくまで知り合いのペット探してる所なのデース‼︎」
咄嗟に出た用務員のフォローによって難なきを得た一同。それを耳にしたタマモクロスは成る程なと呟き頷く。
「そんなら、この辺じゃ見かけない鳥見かけたで。な?オグリ」
「ああ、私達が近くに寄っても落ち着いてたな。多分、用務員さん達が探してるのはその子だと思う」
「マジか!何処で見かけた?」
「あっちの
「そうか助かったタマ!後で大判焼き奢ってやる!」
「あ゛あ゛ん?大判焼きってなんやお前!それ言うなら回転焼きやろがい‼︎」
「うわ、急に面倒くさくなった!」
「用務員さん!大判焼きについてちょっと詳しく!」
「食い付かないでくださいスペちゃん!」
謎の地雷を有するタマモクロスと涎を垂らすスペシャルウィークに挟まれた用務員。彼が困惑していると、少し離れた位置でオグリキャップが何か考えるような素振りを見せる。
「鳥か……」
「オグリ?」
「焼き鳥にフライドチキン、よだれ鶏や唐揚げ。どれもお腹が空く響きだ…」
「オグリ⁉︎」
なんと現在捜索中のマンボから料理を連想し始めたオグリキャップ。冗談で言ったつもりのセイウンスカイの一言が現実のものになり始めている事に悪寒が走る中、エルコンドルパサーが制止の言葉を投げ掛ける。
「マ、マンボは美味しくないですよッ!」
「マンボウ料理は刺身は勿論の事。肝や腸を使った炒り煮は格別だと聞く…ッ‼︎」
「逆効果デースッ⁉︎」
「すみません、その話ちょっと詳しく!」
「食い付かないでくださいスペちゃん‼︎」
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「不味い。このままじゃマンボはウマ娘達の餌(直接的表現)になってしまう…て言うか、この学園にいる生徒達全員食い意地張りすぎじゃない???」
「そ、そんな事ありませんよ‼︎」
「スペ。それお前が1番言えない台詞だからな?否定してもお前が健啖家なのは周知の事実だからな?」
何気ないオグリの一言によって、大至急及び可及的速やかにマンボを見つけねばならなくなった一同。
その内、スペシャルウィークがマンボに(物理的に)食い付きそうなイメージを予感させながらも彼女等は大欅周辺を捜索するが猛禽類どころか鳥の影の形も見られなかった。
「居ないわね…タマモクロスさん達は本当にここで見かけたのかしら?」
「鳥は気分屋だからね。魚のようにとはいかないけど、その場にずっと留まってるわけじゃないから」
「うーん、誰かマンボを見かけた生徒とか居ないのか……お?」
すると用務員が、とある一点に注目した。エルコンドルパサー達も釣られるように視線を向けると黒のポニーテールが特徴的なウマ娘が居た。
そんな彼等の視線に勘づいたのか、こちらに気付くと惜しげもなく歩み寄って来る。
「あむ……なんだ騒がしい。そんなに慌ててどうしたんだお前等」
「ナリタブライアン、いつものようにサボりか?」
「うるさい。なにをしようが私の勝手だ…で、お前達の方は何をしている?」
「にゃはは〜、実は探し物をしておりまして」
「この辺で鳥を見かけませんでしたか? 知り合いの元から逃げ出してしまった猛禽類のペットなのですが」
むっちゃむちゃと
「んぐんぐ…鳥か。悪いが見てないな」
「そうですか……って、あのすみませんブライアンさん」
「どうした」
「いやあの、先程から食べてるのは一体…?」
「見ての通りフライドチキンだが?」
「フライドチキ─────⁉︎」
瞬間、マスク越しでも分かるようにエルコンドルパサーの顔色が真っ青に染まっていく。行方不明のマンボにタイミングよく現れたブライアン。そして今食べているチキン。
現場的証拠を照らし合わせる事で、彼女は残酷な事実にたどり着いてしまった。
「アマさんが作ってくれたんだ。話によると採れたて新鮮の肉を使ったらしいが────」
『マンボォォーーーーーーーッ‼︎』
「うおおおッ、どうした急に⁉︎」
突如として叫び出したスペとエルに驚いたブライアンの手から骨付きチキンがこぼれ落ちる。地に落ち、無惨な姿となった肉に対して2人のウマ娘は悲嘆の声を上げた。
「酷い!酷すぎます!こんな仕打ちッ!」
「これが人のやる事ですかァァーーーーッ!」
「本当にどうしたんだお前等、それはただの骨付き肉(チキン)だぞ⁉︎」
そう言い放つブライアンだが、キッと睨む2人の眼光に思わず身震いをしてしまう。
「肉⁉︎ ブライアンさん!貴方はこれをただの肉だと!そう言いたいのですか⁉︎」
「こんの…!見下げ果てたデース!野菜もロクに食えないウマ娘の面汚し‼︎」
「おい、何故に私はここまで言われないといけないんだ???」
助け舟を求めるかのようにグラスワンダー達に視線を向けるブライアン。
「ごめんなさい。エルとスペちゃんが変な暴走をしてまして」
「思い込みも行き過ぎるとこうなるとはね〜」
「全く、見てられないわね。用務員さん、あの御二方を正気に戻しt」
「マンボォォォオ! ごめんよ!俺がッ!俺が不甲斐ないばかりにマンボォォオオオオオオ!!」
『いやお前もォーーーッ⁉︎』
スペシャルウィークとエルコンドルパサーに並ぶようにチキンに向かって叫ぶ用務員。自分達より歳上で頼り甲斐のある筈の大人が滑稽な姿を現している事実にその場に居た4人は驚きの声を荒げた。
「お、おい。本当にしっかりしろ。お前達の目には何が映っているんだ?」
「黙れこの外道!ウマ娘としての道を外れてまで食う肉は美味いデスかッ⁉︎」
「これ以上マンボちゃんの肉はあげません!!!(迫真)」
黒鹿毛の彼女に詰め寄る2人。今にも殴りかかりそうな雰囲気のエルコンドルパサーだったが、それを止めたのは何と同じく悲しみに明け暮れていた用務員だった。
「落ち着け‼︎冷静になるんだお前達ッ‼︎」
「デスが…ッ!」
「まだだ!まだマンボは助かるッ!今から蘇生儀式を行うぞッ‼︎」
『蘇生儀式ッ⁉︎』
「何を言ってるんだお前は⁉︎」
アホを見る目を向けられる用務員。そんな彼は周囲の視線を気にせず、肉を囲むように謎の陣を描いていく。
「反魂の儀を行う事によりフライドチキンから元の猛禽類へと戻すんだ。多分舞とか踊りとかそう言うアレをやればなんとかなる!」
「成る程!流石用務員さんデース!やる時はやる大人なのですね!」
「ですね!」
『いやそうはならんやろ!』
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「報告ッ!エルコンドルパサーのペットが理事長室に迷い込んで来たので返しに来t───奇怪ッ!何事ォ⁉︎」
ウマ娘達が囲いながら、火を焚き、うまぴょい踊る中。肉を間に挟み込む形で用務員がバジリスクタイムの舞を披露し、南瓜を被ったゴルシが連邦に反省を促す踊りを行うと言った異様な光景に理事長は腰を抜かしたそうな。
余談だがこの一部始終は動画サイトに投稿されると爆発的勢いで再生数が伸び、SNSではトレンド入りされたと言う。
この後マンボは何事もなく?鳥舎に移した。
だがメイショウドトウがタヌキを連れて用務員の元に来るのはそう遠くない未来のお話。