なんでこんな変なヤツを出した!言え!
「おはよー」「おっはー昨日のアレ見たー?」「よう、おはよう」「おはよう」「グモーニン」「やば、今日の課題やってない」「マ?逃げる?」「逃げる!」
時刻は早朝。寮や自宅から学園へと登校して行くウマ娘達が談笑を行いながら歩く姿が見られる時間帯。
そんな仲睦まじい光景が広がる片隅にて。謎の茂みから高性能カメラで無断撮影を行う不審ウマ娘が居た。
「ハァ、ハァ、ハァァァァァ……!今日もウマ娘ちゃん達の尊みが深くて堪らないィ〜〜!」
彼女はアグネスデジタル。自分の事を一般平凡ウマ娘だと思い込んでいるオールラウンダー(変態勇者)である。
日々徳を積み、一枚越しのフィルターで他のウマ娘ちゃん達の吐息を間近で感じる事を幸せと称する100人に聞けば100人が変態と答えるであろう彼女はその美しい景色を写真に収めて行く。
「ぐ、ぐぅぅぅ…!フィルムがッ!フィルムが足りないィィ!かくなる上はデジタンアイに収めた上で脳内メモリーに焼き付けるしかッ‼︎うおおおおおおおお!唸れ私の脳細胞ォ!」
理想郷かな?否、既に理想郷定期。
全身の血が沸騰しそうな勢いで網膜と言う名のカメラにウマ娘達を焼き付けて行く中、ふと声が聞こえた。
「やぁ皆。息災で何よりだ」
「会長!おはようございます!」
「ッ!!!!???」
我々はこの声に聞き覚えがあるッ!この凛々しくも猛々しい清廉潔白な声色を我々は知っているッッ!
(パターン青⁉︎ この声はまさか、シンボリルドルフ会長ッ⁉︎)
シンボリルドルフは多忙の身である故か、最近では学園にてその姿を見た者は居ないと言われている。
その為、近日中のデジたんファイルにルドルフ記録が途絶えてしまっている……が、その断絶した記録も今日までの話。
「これは是非とも目に焼き付けたい…否、焼きつけなくてはッ!」
そうして生徒会長の姿を視界に捉えようと、己が双眼を声の響く元に向けた、その時。
「───ん?」
アグネスデジタルは訝しむ声を上げた。
はて?生徒会長のシンボリルドルフの姿が何処にも見当たらない。自分で言うのもなんだがデジたんイヤーは地獄耳、デジたんアイは透視力(当社比)と言ったように自分の感覚機能は他より秀でていると自負しているつもりだ。
それなのに一体、生徒会長は何処にいるのだろうか? 先程のウマ娘ちゃんが嘘をついていたとも思えない……。
「んんんん???」
ふと、気がつく。デジタルの視界に謎の物体が入り込んだソレはフォルムとしてはドラム缶に酷似しており、ガションガションと音を立てながら安っぽい四肢を動かしている。
「…え、何ですかあのテキトーな部品を寄せ集めたようなロボット…ってロボット?なんで???」
……まさかアレが? あんな安っぽいデザインのメカがシンボリルドルフとでも言うまい?
草葉の影にて疑問符が尽きないデジタルを他所に1人の生徒がそのドラム缶ロボの元に駆けていく。
「おはようございます会長!」
「やぁおはよう。意気軒高の様を見れて私は嬉しい(cv 田所あずさ)」
「嘘だァァアアアア‼︎」
そんな、嘘だ。あのシンボリルドルフ会長があんな哀れな機械へと変わってしまったとでも言うのか?
嗚呼、三女神様。彼女が一体何をしたと云うのですか?
「うるさいよ、そこの変質ウマ娘」
「ヴェポッダヴェァァーーーッ!!」
「うわぁ落ち着け!人体から発しちゃいけない声出てんぞ⁉︎」
「なんだ用務員さんじゃないですか〜!あなたもウマ娘ちゃんの観察ですか?やはりトレーナーさんの言う通り貴方も
「サラリと俺を変態の一括りにするな。茂みで奇声を上げながらこっちを睨んでくるって生徒達から通報されたから駆け付けて来たんだよ」
訝しむような視線をデジタルに向ける用務員。自分をも変態の1人に数えられた事に不服なのか青筋を立てている。
そんな彼を他所に「そんな事よりも!」と口にしながらデジタルは立ち上がる。
「用務員さん!あそこに変なロボットが会長さんに成り切ってウマ娘ちゃん達に混ざってるんです!アレなんなんですか!」
「アレかい?…そっかアレかぁ……」
ガションガションと音を鳴らしながら多数の生徒に囲まれるシンボリルドルフに似ても似つかない何か。
それに対し遠い目をしながら用務員は口を開く。
「簡単に説明すると…まぁ、新しい生徒会長だな」
「ちょっと何言ってるか分からないです(真顔)」
「あー、待て。もうちょっと詳細に説明する。アレは昨日の出来事だ……」
Now Loading……
「発表ッ! 現在行方知れずのシンボリルドルフの替玉を用意したッ!」
「「ルドルフ会長の替玉⁉︎」」
俺とエアグルーヴは揃って叫ぶ。理事長室にエアグルーヴと共に呼ばれた時は何事かと思ったがまさか影武者を用意する事となるとは誰も思うまい。
「近日、生徒会長の行方不明を勘付く者達が現れ始めてだな…目安箱にも『会長何処行ったの?』『最近、会長の姿見ないよね?』『もしかして会長ズル休み?』『会長のダジャレ正直寒いよね』『あの人いつから生徒会長やってるの?』などの言葉が見受けられる」
「でしょうね。と言うか後半おかしくありませんでした?」
「シッ、黙ってろ」
「話は分かりました。つまりは、会長不在により起こるであろう事態を避けようと言う事ですね」
「然りッ!話が早くて分かるッ!ファン感謝祭も控える今、混乱が起きるのは学園側としても良い事では無いからなッ!」
「成る程」
その直後、ガチャリと理事長室の扉が開かれる。俺達がそちらに視線を注ぐと、そこにはシンボリルドルフなりきりセット衣装を見に纏ったトウカイテイオーが立っており、キメ顔で次のように呟いた。
「ボクを……呼んだかい?(精一杯のイケボ)」
「そこでッ!先日、用務員に運搬搬送させてもらった資材を活用して前々より計画していた替玉計画を行う事となったのだ!」
「あの作業ってこの日の為のものだったんですか⁉︎」
「ちょっと!皆して無視しないでよーーーッ!」
「たわけ、誰もお前を呼んでいない。我々は今大事な話をしている最中だ。早く部屋から出て行け」
「いーじゃん別に!僕だって会長の替玉作戦にちょっと興味あるし」
「部外者はさっさと外に行っていろ!」
エアグルーヴに首根っこ掴まれるトウカイテイオー。猫のようにジタバタと抵抗するものの、そのまま部屋の外に叩き出されるのは時間の問題だった。
「おおっと、すまないがそこを退いて欲しい。理事長、目的の物を持って来たよ!」
「歓喜ッ!遂に来たかッ!」
「なっ、アグネスタキオン⁉︎」
そんなエアグルーヴの元に扉を開けてやって来たのはアグネスタキオン。学園では専らヤバい方のアグネスその1とも呼ばれている彼女はシートを被った何かを荷台で押しながらこの部屋に来た彼女を俺は訝しんだ目を向ける。
「おいタキオン。それはなんだ?」
「まぁ慌てる事は無いよ用務員君。この正体もすぐに分かる事だからねぇ…トウカイテイオー、よければ君も見ていきたまえ」
「え、いいの?やったぁ!」
「な、そんな勝手に……」
「許諾ッ!トウカイテイオー、君も見ていくと良いッ!」
「ぐ…理事長まで……」
苦虫を噛み潰したような表情を見せるエアグルーヴ。
まぁ別に耳元で怒鳴り散らすような真似をする訳じゃあるまいし。こっちが駄々捏ねても仕方ないだろ。そう俺が言うと一理あると納得したのか渋々と引き下がる。
「で?理事長。タキオンが持ってきたコレは一体…?」
「シーツに包まれていますが…円柱型の機械に見えますが…」
「では改めて発表ッ‼︎ これぞ我がポケットマネーを注ぎ込む事により開発した替玉!」
バサリと理事長の手によってシーツが剥がされ、その中身が明らかとなる。鋼鉄の輝きを持ち、一昔前のロボットのような四肢を持つそれを前に俺達は驚愕を隠せなかった。
こ、これは──ッ⁉︎
「その名もメカルドルフッ‼︎」
「「「メカルドルフ!!!???」」」
え、何?なんだって?メカ…え、なに⁉︎これが替玉なの?これが⁉︎
こんなドラム缶ボディがシンボリルドルフ会長の替玉って冗談ですよね理事長⁉︎
「…? 冗談ではないぞ」
「嘘だァーーーッ!」
「いいや本当の事さ。そして侮るなかれ用務員君。このメカルドルフはトレセン学園スタッフ研修生クラス高等部のユニチャンハクシ君の技術力とこの私アグネスタキオンの知能を掛け合わせる事で生徒会長そっくりそのままのコンセプトで開発した人造ウマ娘なのだよッ!」
「いや何をコンセプトにしたらこんな寸胴体型になるんだよ!絶対にバレるだろコレ!今からでも遅くありません理事長!そんなお菓子の箱でも簡単に作れそうなフォルムなのよりも、こっちの威厳と切実さとナイスバデーを削ぎ落とした方にしましょう!」
「削ぎ落とした方って何なのさ‼︎」
テイオーが何か言ってるが無視。そんな…えっと、ユニチャンだっけか?そんな奴とタキオンの知性が悪魔合体したような作品を会長に代わりにするなんて事、俺は認めんからな!
「それに生徒会長の座はウマ娘の幸福を願っているルドルフのものだ。こんな訳も分からない
「用務員、お前…!」
ジンとした表情を向けるエアグルーヴ。そんな俺達にふむ、と顎に手を当てながら理事長が向き直る。
「そちらの言い分は良く分かった。ならば試そうではないかッ!このメカルドルフが君達の期待に値するかどうかをッ!」
「え、つまり…どう言う事?」
「決定ッ‼︎明日、用務員は休暇を取らせよう。そして!このメカルドルフが悩めるウマ娘達を導く様を見せようではないかッ!」
「ウワァーーーーッ‼︎この人、権力を盾にゴリ押しで来たんだけど⁉︎」
「くっ…、そうだった。この人が暴走するとタチが悪くなる事を失念していた…ッ!」
クソッふざけやがって理事長!つまりアレか?俺の代わりにそのロボットが業務をこなそうって言う事なのか?
ふざけるなそんな事───ッ!
「認めると思ってんですか!でも今後の生徒達の幸福を願うならばアップデートも必要不可欠!近代化サイコォー!休暇サイコォー!ヒャッホイ!!」
「用務員お前ェェーーーーーーッ!!」
Now Loading……
「と言う訳で奮闘虚しくメカルドルフが会長の座に就く事になって…」
「最後の方賛成してたじゃないですか‼︎何してるんですか用務員さん貴方‼︎何で勢いで賛同してるんですか⁉︎」
「わ、悪かったって。だからこうしてオフの日にも関わらず様子見に来たんだろ。と言うか毎日をウマ娘を尊ぶ勢いで過ごしてるお前だけには言われたくないんだけど」
そう言う用務員だったが、途端に力が抜けたような素振りを見せ溜息を吐く。
「と言うか今更だけど俺、ここに就職して良かったのかなぁ?いや忙しいけど給料はいいよ?うん。けどこの学園にいる人達って知能指数が高い程変な人の割合が多い気がするんだけど…」
東条先輩も何で傍観してんだよ…と呟きながら項垂れる彼に思う所があったのか、デジタルは告げる。
「まぁまぁ、十人十色で一望無垠。個性豊かなウマ娘ちゃん達が集っていると思えば苦ではありませんよ」
「それを苦と思ってないのはお前だけだよ」
未だ用務員を変態の仲間入り認定しているデジタル。生物学上、人は愚かウマ娘も尊みを摂取する事で有りと凡ゆる疾患、病態に効く訳ではないのだ。勿論、過剰摂取により尊死する事態もあり得ない。
デジタル?あれはもう埒外の存在だから。
だが、そんなウマ娘の頂点に立つと言っても過言ではない生徒会長の座はあのロボットのものに。認めない、断固としてあのような手足の生えた無機物が会長の代わりなどと認めてなるものか。
「良くぞ言ったデジタルッッ‼︎」
「うぉあァ‼︎ な、何だ突然⁉︎」
「ウ゛ォァァァーーーーッ⁉︎ エッ、エエエエエ、エアグルーヴさん⁉︎」
直後、デジタルが潜んでいた茂みとはまた別の茂みから現れたエアグルーヴ。何故そんな所に居たのか?と言う疑問を他所に彼女は狼狽える2人に向き直る。
「やはり会長の座にあのような鉄屑は相応しくない。我々は断固としてこの状況を打破せねばなるまい!」
「そ、その通りですッ!ウマ娘ちゃん達が集う此処では上に立つ者はやはり同じウマ娘でなければならないですよねッ!」
「(教師陣とかトレーナーに関してはどうするんだろうか…)まぁ確かにね。あんなドラム缶型ロボを会長ってのは流石に放っておけないし」
「その通りです!アレを放っておいたらウマ娘ちゃんの概念定義が崩れちゃいますよッ!尊みと尊みの双子山の間にあのような異物を放り込むだなんて…ッ‼︎神が認めても私はぜっっっっったいに認めません‼︎」
「いやそれに関しては俺は別にいいかなって」
「は? ウマ娘ちゃん舐めてんですか?バ刺しますよ?」
「えっ、急にキレたんだけどこの娘。こわ……」
と言うかバ刺すって何?と用務員が疑問符を浮かべている間に、エアグルーヴは「よし」と頷き、沈黙を破る。
「それでは我々『機械を生徒会長とは認めない会』の力を持ってあの機械を会長の座から引き摺り下ろすッ!」
「「機械を生徒会長とは認めない会!?」」
端的に言おう、エアグルーヴは疲れていた。
生徒会長不在により執務活動が前の数倍忙しくなり、その影響もあってか彼女の思考能力が大幅に低下してしまっているのだ。
元理事長代理であった樫本トレーナーが真顔で「は?」と呟きそうなサークルの誕生に用務員は頭を抱える。
Q.エアグルーヴってこんな奴だっけ?
A.てんとう虫を管理する会と呼称される謎サークル作ってるから今更である。
「デジタル。お前は栄誉ある会員No.4を授けよう」
「一桁代⁉︎ ひょぉぉおおおお!感激過ぎますぅ〜〜!」
「うわ、入りたくねぇ…」
「ちなみに用務員、お前の場合は会員No.2だ。誇ると良い」
「あれーー⁉︎俺の知らない間に加入させれられてるんだけど⁉︎」
ついでに言うとNo.3はトウカイテイオー。余談だが、この事に関して「ボクガ順位デ用務員サンニ マケルナンテー」とコメントしている。
それはそうと、ガシャンガシャンと足音を鳴らしながら学生服に身を包んだメカルドルフは生徒達を掻き分け進んでいく。
そんなシュールな光景を前に用務員達が眺めていたその時、ふと声が聞こえる。
「ううっ…うう〜〜!届かない…届かないよ〜〜!」
「うーん、どうやって取ろうかな〜?」
声の主を辿ると、そこには黒鹿毛の髪を肩より下に伸ばしたウマ娘と桃色の髪に赤いハチマキが目立つウマ娘の2人が木の下で何やら困った様子を見せていた。
「ひょあッッ!あの脳を溶解させてしまうと言っても過言ではない声色はライスシャワーさんッ!そしてすぐ隣にいるのはハルウララさんッッッ!はーーーーッ!無理無理駄目です!エモショナリーコンロ点火ッ!エエエエエエエエ\
「どうした急に?いやホントどうした急に⁉︎」
「ええい黙ってろ!たわけ共!そんな事よりアレを見ろッ!」
エアグルーヴの催促により視線を戻すと、そこには鉄の身体を駆動させ2人の元へと近づくメカルドルフの姿があった」
「どうしたんだ2人共。艱難辛苦の様子だが…良ければ私が力になろう」
「うぅ、その……え?あ、えっと……ん⁉︎え、ルドルフさん?え、いやその…ルドルフさんなの!?(震え声)」
「あ、カイチョーさんだ!実はね、ライスちゃんの帽子が木の上に引っかかってね。困ってるんだ…」
「帽子…アレの事か」
頭上にあるライスシャワーの藍色帽子。強い風に飛ばされ、木の枝に引っ掛かってしまい小柄な2人では取る事が難しいと一目であるその状況にエアグルーヴは口端を吊り上げる。
「クク…いいぞ。あの様なドラム缶ずんぐりむっくりボディでは頭上にあるライスシャワーの帽子を取る事も出来まい…愚かなりメカルドルフッ!」
「た、確かに。あのサイズではあの高さにまで届きませんね」
「遠回しにライス達がとばっちり喰らう事になるけどそれでいいのかエアグルーヴ」
「必要な犠牲だ。致し方無い」
「曲がりなりにも生徒会なのにそれでいいのかお前…と言うか今更だけど何で殆どの生徒達はアレを会長と認識してるの?なんで?本当になんで???」
何故か一部を除いた全生徒がシンボリルドルフ(ロボ)を会長と思い込んでいる異常事態。そんな一部に含まれるライスシャワーはガクガクと震え、生徒会長の不審(しかない)点への指摘が出来ない状態となっている。おお哀れ。
そして正気に戻れ、ウララを筆頭としたウマ娘達。お前達が会長と慕っている人物はどう見ても機械仕掛けだぞ。
謎の洗脳電波でも発しているのか疑いたくなる光景を前に如何にしてウララ達のトラブルを乗り越えるのか?
心音を高鳴らせて観察していると……
ギュィーーーーーーン(腕が伸びる音)
「「「あっ」」」
そのまま伸縮性アームを使い楽々とライスシャワーの帽子を取って上げたのである。
流石は学園に存在する高い知能指数を誇るウマ娘達が製作したロボットだけの事はある。寧ろ、これくらい簡単に出来なければ理事長が替玉として抜粋した意味が無い。
「え…え⁉︎あの、今腕が……」
「すっごーい!カイチョーさんって腕伸びるんだね!」
「ハハハ、なに。これくらい生徒会長ともなれば簡単な事さ」
(((いや、簡単じゃないだろ!)))
誰もが生徒会長になれば腕を伸ばせる訳では無い。仮に伸ばせるとしても生物学的枠組みから外れた者だけだろう。目の前の鉄塊にガタガタと震えるライスを他所にウララは呟く。
「私も腕伸ばせるようになるかな?」
「フフ、私のようになりたいならば腕を伸ばすよりも自身の長所を伸ばす事が私は大切だと思うぞ」
「私のちょうしょ?んー、何だろう……」
「その答えはいずれ分かる時が来るさ。さて、ライスシャワー今度は風に飛ばされないよう気を付ける事だ…それでは失礼するよ」
「え、あ、ハイ」
怪訝な目を向けるライスシャワーに対して目をキラキラと輝かせるハルウララ。
対照的な反応を示す2人を置き生徒会の業務に戻る鉄の塊はウマ娘では無いとは言え、良い働きをしたと言えるだろう。
そんなシュールさもある光景に用務員は思わず声を上げる。
「す、すげぇ!こなれたジョークに厳格さもありつつも親しみやすさを爆発的に醸し出してやがるッッ!」
「しかもロボの癖して去り際が物凄いクールですッ!」
「ぐぐぐ…ま、まだだッ!まだ終わってない…!如何に外面を取り繕うとも突けばボロを出すに決まっている!」
悔しそうに歯軋りをする女帝。時折、頭のハッチを開けて油を刺すロボットを前に鬼の形相を見せる彼女を用務員は敢えて何も言わない事にした。
Now Loading……
「会長ー!この資料なんですけど」
「ああ、私が受け取っておこう。君に感謝を述べないといけないな」
「会長ー!校舎裏に狸が住み着いてるらしいって友達が」
「ふむ、野生のものが迷い込んだのか…気性が荒い場合は不味いな。ありがとう。他の生徒に注意喚起しておこう」
「ルドルフさん、タキオンさんが大農園に謎の液体サンプルを散布していたようなのですが」
「それは不味いな、早急に対策しよう。早期報告感謝するよマンハッタンカフェ」
その場を隠れ眺めていた用務員とデジタルは感心の意を示す。最初はどうなる事かと思ったが予想を裏切り、とても良い働きをしてくれている。
理事長投資によるアグネスタキオン+その他の製作となると嫌な予感しかしなかったが、流石はウマ娘第一に考える者と天才と言うべきか。
そんな良い結果を今、自分達の目の前で見せてくれている事実に彼は呟く。
「なんか気鬱だったみたいだな。凄いバリバリ働いてるじゃん」
「ですね、最初はウマ娘ちゃん達の間に入り込む不届き物と思いましたが絶妙に適切な距離感を保っています。300デジたんポイントですね」
「なにそれ」
「ウマ娘ちゃんを愛する方への敬愛の証ですよ。1万デシたんポイントに到達する事で同志になれます…ちなみに用務員さんは現在7920デシたんポイント溜まってますのでもう少しです、頑張ってください!」
「何が⁉︎」
既にデジタルによって同類判定を受けているのにも関わらずこれ以上の変態へとグレードアップされてしまう謎のポイント判定に億劫してしまう。ちなみに
「ぐ、ぐぐ……!」
「…あのさエアグルーヴ。もう認めたら?別に悪い事してる訳じゃないんだからさ」
「しかしだな…!」
彼の一言に納得のいかない様子を見せる女帝だが、それと同時に用務員の言う事にも一理ある事を彼女は理解している。
先までのルドルフ(メカ)の行動は会長として相応しいものだった。生徒達に平等かつ親身に接し、ギリギリ皆に受けるラインのギャグを混ぜる事でかつての会長には無かったユーモアさを実現する事に成功。
特に花の水やり時に見せたスプリンクラー機能(※首部分が伸び、虫避け用のトウガラシエキス入りの水が噴出)はエアグルーヴまでもが「なんだアレは凄いな!」と叫んでいたものだ。
「だが少しは認めてやらんでもない。奴は紛い物とは言え、その根本は会長そのものに違いない…たった1日の出来事だがアイツから感じる生徒達へと愛は本物だろう」
「エアグルーヴさん…」
アグネスデジタルは彼女の心情を察する。かつてのエアグルーヴとシンボリルドルフは今のような主従的関係では無く、互いに生徒会長の座を争った仲だと聞く。
どちらが優れているのか競い、高め合い、その果てに認め合った。故に横からしゃしゃり出て来たあのロボットを毛嫌いしていたのだろう。
だがそんなメカルドルフこそ、認めた筈のシンボリルドルフを
何だこの展開は
「分かります…分かりますともエアグルーヴさん!ですがその試練を乗り越えた先にこそ、きっと貴女が
「デジタル…!」
謎のすれ違いが起きている気がするが、きっと我々の勘違いだろう。
「…ま、まぁ そうだな。少しは奴の事を認めてやらんでも無い」
「流石はツンデレに定評のあるエアグルーヴ。ウマ娘界の染岡さんと呼ばれる事だけはある」
「おい用務員、何だそれは(半ギレ) 誰だ?誰からそんな事を聞いた?」
「えっと、テイオーだな」
「ハハハ成る程、奴には後でキツい折檻を食らわさねばならないな───」
「あとルドルフ会長(本物)もそう言ってた」
「会長ォォォッ⁉︎」
女帝の慟哭が切っ掛けとなったのか、会長(メカの方)達の方に異変が起きる。
「へぇ、いつもは高みの見物をしている会長サマが随分熱心となってるじゃないか。何の気紛れか…まぁそんな細かい事はどうでも良い」
その一言が剣のように長蛇のウマ娘達を二つへと切り裂く。その声の主は大胆不敵にもルドルフの声のする元へと歩み、進んで行く。
「あ、あの人は…ッ‼︎」
「知ってるのかデジタル⁉︎」
「はい!日本ダービー制覇後にヨーロッパへ渡り、数多の強豪達と競り合った経歴を持つ唯我独尊の開拓者ッ!その名を」
───シリウスシンボリッ!
《キャラ紹介》
『メカルドルフ』CV:田所あ○さ
見た目はクロマティ高校のメカ沢君にルドルフ会長のカツラを被せたような感じ。理事長のポケットマネーとタキオンの頭脳とユニチャンなる者の発明が悪魔合体した末に誕生した生徒会長(のパチモン)。
これが本当の鋼鉄(
「エアグルーヴのやる気が下がった」
『ユニチャンハクシ』
名前のみ登場した謎のウマ娘。モデルはプリンセスコネクトRe:diveのユニ。
トレセン学園スタッフ研修生クラスの高等部所属だが見た目は中等部の者にしか見えない。その優秀な頭脳から授業は免除されており自室に引き篭もっては研究・論文執筆に没頭しているらしい。
(おや?タキオンかな?)
現段階では名前だけの存在であり実際に出て来るかは不明。
もうちょっとだけ続くんじゃよ。