トレセン学園用務員は休みたい   作:ゴランド

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ドーモ=皆様。
待ちに待ったタマモクロス実装おめでとうございます。皆様はタマ貯金を崩し、無事にその濁声をキメる事は出来ましたでしょうか?

…え、自分ですか?無論ガチャを引いて黄金世代の芦毛とメジロの芦毛を手に入れましたよ。つまり実質タマモクロスをゲットした事になります。なので自分は負けてない…負けてねぇから(負け惜しみ)


9話 終撃メカルドルフ

「シリウスシンボリ…だと⁉︎」

 

 エアグルーヴは叫ぶ。海外に渡り世界の強豪達と競り合ったヨーロッパ帰りのウマ娘。その実力はさる事ながらシンボリルドルフと同等にして対局の立ち位置に存在する。

 

シンボリルドルフが等を望むならばシリウスシンボリは個を望む。同じシンボリの名を冠する者であると同時に相容れない思想を胸に宿している。

加えてルドルフを超える俺様系イケメン属性により、彼女が歩んだ後の生徒達からは黄色い声が絶えないと言うのだ。

 

「成る程。謂わばトレセン学園の跡部様って訳か」

「いえ、残念ながら跡部様ポジションには既にテイエムオペラオーさんが抜擢されてます」

「そっかー(無関心)」

「お前達は何を言ってるんだ」

 

 そんな2人に呆れながらもエアグルーヴはふと思考の海に沈む。シンボリルドルフ会長はその圧倒的強さから併走の相手を頼まれれば即断られてしまう事が多々ある。

だがそれは無理もない話。彼女を相手にすれば才能と実力の差を嫌と言う程に思い知らされ恐怖に蝕まれるのは必須。そんなトレセン学園最強を相手に出来るのがシリウスシンボリだけと言うのだ。

 

「話は聞いてる。今日の皇帝様はやけに機嫌が良いらしいな、いつもは玉座でふんぞりかえってるのが下々の元に繰り出すとはな」

「君の言う皇帝に私はなったつもりは無いさ。ただ始めの頃から志していた全てのウマ娘に幸福を。その一心でやっていたに過ぎない」

「ハッ、またそれか。少しは変わったと思ったがまだそんな画一した事を言って───」

 

 ふと、シリウスの言葉が止まる。

よくよく見ると、目の前のシンボリルドルフはどこかおかしい気がする。何と言うか変に角張ってたり円形っぽさがあったり前見かけた時と比べてドラム缶体型のロボット的フォルムに近しいモノになっていたりと著しい変化が見られる。

 

そうして観察と分析を行う事およそ2秒弱。とある結論が彼女の中でついた。

 

 

──あれ?こいつロボットじゃね?と。

 

 

 

 

「用務員さーーーーーん!!」

 

 その時、物陰に隠れていた3人の内、(用務員)を呼ぶ声が響く。声の主は理事長秘書である駿川たづなであった。

彼女の急いだような様子からシリウスを筆頭とした周りのウマ娘達も何ぞや?と集い始める。

 

「用務員さん!大変なんです!」

「たづなさん?一体どうしたんですか」

「それが──────

 

 

 

Now Loading……

 

 

 

ひゃあああああああああああああああああ!

「なんだこの状況⁉︎」

 

 トレセン学園グラウンドコースにて暴走するローラー重機(理事長の私物)。その上には振り下ろされないように必死にしがみ付いてるライスシャワー…いや本当になんだこの状況は⁉︎

と言うか何でさも当たり前のように重機が暴走してんの⁉︎

 

そんな俺の疑問に答えるように、傍に居たゴールドシップが答える。

 

「それがな?ライスの帽子がまた飛ばされちまってよ。重機の操縦席に引っ掛かって、不運が重なった結果あれよあれよで暴走する事になっちまったんだ」

「そんな事が…」

 

そこへ続く形で偶々居合わせたアグネスタキオンが言葉を紡ぐ。

 

「この重要な危機を乗り越えられるのは類い稀なる剛力を持った君の力が必要なのさ。さぁ君の実力を是非とも見せてくれたまえ!」

「ゴルシ、タキオン…!」

 

 

 

 

「よし2人共確保したぞエアグルーヴ!」

「でかしたッ!全員、ゴルシとタキオンを囲んだが油断するなよ、あの2人は少しでも陣形を崩したら包囲網を突破する猪だと思えッ!」

『はいッ!』

「「なんで⁉︎」」

 

 俺が2人の襟首を掴み、エアグルーヴが生徒達による物量作戦で取り囲む。その光景に2人は慌てた様子を見せるがもう遅い。

こんなトラブル引き起こすの大抵はお前等の内、片方か両方だろ。俺は詳しいんだ。

 

「落ち着きたまえ用務員君。なんの証拠も無い限りは私達の所為だと決めつけるのは早計だと思うのだが?」

「そうだゾ。エアグルーヴもそんなカリカリした様子で私等問い詰めても意味無いぞ?」

 

「黙れ。どうせタキオンの実験にゴールドシップが首を突っ込んで大惨事になったのだろう?」

「エアグルーヴ、とりあえずこの2人はどうする?」

「磔にしておけ」

「オイ!私等の弁明無視して刑執行はやめろ!」

 

 でもゴルシとタキオンだからなぁ。生徒会の暗黙の了解として疑わしきは罰せよ(ただしゴルシとタキオンに限る)だからなぁ。

 

うーん、でも2人のこの感じからすると本当に無関係なトラブルって可能性も無くはないからなぁ。

 

ひゃあああああああああああああああああ!

 

「っと、こんな事してる場合じゃない。早くライスを何とかしないと…!」

「では用務員さん。後の事はよろしくお願いします!」

「よし!任せてくださ……いやちょっと待ってください」

 

 たづなさんの言葉に俺は足を止める。あのすみません、何で俺1人だけに頼むんです?そこはたづなさんも一緒に行く流れじゃありませんでした?

 

「と言うかお言葉ですがたづなさん。これならば俺1人を呼ぶよりも、パワー系ウマ娘達を総動員して止めた方が良いと俺は思うんですけど?」

「そうしたいのは山々なのですが…現在カワカミプリンセスさんは教室のドアを粉砕した為に寮内の掃除中。ヒシアケボノさんは伝説のちゃんこ鍋の具を求め秘境のジャングル地帯と化した大農園へ行ったきりなんです。残っているのは……」

 

「此処は私にお任せください。重要ミッションライスシャワーの救出に尽力を注ぎます」

「いや待ってください!ホント待ってくださいブルボンさんライスシャワーさんが心配なのは分かりますが貴女が言ってしまうのは本当に不味いのでやめてくださアッアッアッ、ブルボンさんから良いフローラルな香りがアッアッ(悦楽)」

 

「自信満々で止めに行くつもりのミホノブルボンさんだけになっていまして…」

「あっ…(察し)成る程」

 

 ミホノブルボンはサイボーグ(暫定)である。しかし彼女は何故か機械音痴と言う酷い欠点を抱えておりその酷さは機械類に触れだけで故障させてしまうレベルだ。

つい先日、エアコンのリモコンを触れてしまい学園中の冷房機能がオシャカになったの時は頭を抱えた。

 

しかし不味い事になった。今は半分死にかけてるデジタルによって抑えられているが、このままだと…

 

ブルボンがライスを助けようとする

 ↓

重機に触れる

 ↓

更に暴走。又は爆発オチ

 

と言った展開になるのは容易に想像ができる。端的に言ってクソである…え、待ってくださいたづなさん。今更ですけどアレ止めるんですか?人の何倍の体積を誇る重機を止めろと俺に言ってるんですか?

 

「はい!消極的に用務員さんが選ばれる事になりました。と言うわけで頑張ってください!」

「突っ込めと⁉︎暴走するローラーダンプに生身で突っ込んで行けと⁉︎」

「ウマ娘ちゃんの助けになるのが用務員さんの仕事でしょう!頑張ってください!」

「俺に死ねと⁉︎」

 

 80キロ以上のスピード出てるアレに丸腰で行かせる気かデジタルお前⁉︎俺の事をなんだと思ってるんだよ⁉︎

そんな事を口にする俺だったが、ふと両手が柔らかな感触に包まれる。

 

「今頼れるのは用務員さんなんです!どうか、どうかお願いします‼︎」

 

 その絹のように繊細ながらもしっかりとした芯を感じる心地良さの正体はたづなさんの両手だった。ハッキリ言って彼女は女神と言っても過言ではない人格と美貌さを兼ね備えた人だ。

天使かな?いや女神だ。結婚したい(真顔)

 

「……正面から受け止めればワンチャン」

「やめろ。轢き潰されてミンチになるのが関の山だぞ」

「いやこれでも俺頑丈だし隙間に挟まって重機が止まる可能性が…」

「たわけ!重機の前に貴様の生命活動が止まるだろう!」

 

 おいおい用務員を無礼るなよエアグルーヴ。今の俺は最強だ。あんな重機ごときに負ける筈無いだろ。だから後ろから押さえつけるのはやめろ。しまってるから、首の所しまってるから。

 

やや命の危機に陥っていた俺だったが、横から凄まじいスピード過ぎ去る何かが視界に入り込む。

 

「しゃらくせぇ。こんなものさっさと済ませば良い話だろ!」

「シ、シリウスシンボリ⁉︎」

 

 なんとシリウスシンボリが爆走する重機に向かって走って行ったのである。おいおい!相手はマシンだぞ⁉︎ 同じウマ娘相手との併走とは全く違う、一歩間違えれば大惨事だって言うのを分かってるのか⁉︎

 

「へぇ、流石は自分の命欲しさに躊躇ってる奴の言う事は違うな…まぁ、お前はそこで可愛らしく怯えてるんだな」

 

 こちらに向かって投げ掛けられた 挑発と皮肉が込められているであろう言葉。俺はそんな見下すようなシリウスの態度にぐうの音も出す事が出来なかった。

 

「くっ、反論出来ない!」

「お前、今すげぇ情け無い姿晒してんぞ」

 

 仕方ないだろ本当の事なんだから。

いや俺の事はいいんだ。今はシリウスだよ、アイツ生身のままで重機に向かって突っ込んでいくなんて正気の沙汰じゃ無いぞ⁉︎

 

そんなシリウスシンボリは暴走状態の重機に追い付くとマシンの斜め後方の位置に付き、同じスピードを保ち始めた。一体何を…?

 

「ッ、そうか!コーナーに差し掛かる瞬間、重機がカーブに沿って曲がる。だが彼女はそのまま直線状に走り抜く事で最短距離かつ、タイミング良くボディ側面に乗り移るつもりだ!」

「成る程、考えたな!」

 

 エアグルーヴの予想通りコーナーに差し掛かる手前でシリウスが跳躍の体勢に入る。このまま行けば無事にライスシャワーを助けられる…と思った次の瞬間、重機のボディの一部がスライドしそこから複数の何かが出て来て…ん?なんだあのフワフワ浮遊してる変なのは?と言うか銃口的なのがシリウスの方に向いて───

 

「あ?……うおおおおおおおッ‼︎」

 

 直後、バギュゥン!と言う音と共にターフの一部が抉れる事となった…って、何だアレ⁉︎なんか光ったと思った瞬間、芝を灼いたんだけど⁉︎

 

「むぅ、アレはまさか…!」

「知ってるのか姉貴⁉︎」

「あれぞ正しく理事長が密かに搭載したとされるビーム兵器。通称『UM-A ファンネル05式試作型』!くっ、何という事だ。重機に搭乗してるウマ娘を護る為のシステムが異常動作を起こしているとは…!」

!」

「私の知らない所で理事長ォォ‼︎なんて物を積んでるんですかァァアアア!」

 

 何故ビワハヤヒデがそんな事を知っているか定かではないが、不味い事になった。

近付こうにもサイコミュ兵器モドキが彼女の行く手を遮っtああ゛あああああ゛あ゛あああああッ!どんどん芝が抉られてくゥゥ!らめぇええ!俺の作業量が増えちゃうのぉおおおおお!

 

「オイやべぇぞ。用務員が錯乱し始めた!」

「落ち着いてください用務員さん!」

 

 たづなさんの声によって俺は我に返る。おっと行けない。be cool、be cool…。

 

「ふぅーーーー、ヨシ!分かりました!俺が直接体を張って止めに行きます!」

「全然落ち着いてない⁉︎」

「考え直してください用務員さん!流石にビーム兵器積んでるような重機を相手には無理があります!いや本当に!」

「大丈夫です!要は当たらなければ良いだけですから!」

「催促するような真似をしたのは謝りますから早まらないでください!」

 

 たづなさん達が色々言っている。止めたい気持ちは分からんでもないが、これ以上あのトンデモ重機を放置しておけばライスシャワーは吹き飛ばされ、シリウスはビームの集中砲火に遭い、ターフ上の芝全てを植え替える羽目に…それは許してはならない!最悪、最後の奴だけでも阻止しなくては…!

 

「まぁ落ち着きたまえよ用務員君、よく見たまえ。芝上はあのビーム兵器によって既にボロボロだ。あんな凸凹としたターフを人の足で走るだなんて、とてもじゃないが無謀としか言いようがないよ」

「そう言ってもだな、タキオン…」

 

 

 

「───成る程、足さえ有れば良いんだな?」

 

「っ、その声は…!」

 

 

 

Now Loading……

 

 

 

「う、おっ⁉︎ クソ、どんどん撃ち込んで来やがって…‼︎」

 

 凹凸だらけの芝上を走るシリウス。だが迸る閃光により一向に近付く事が出来ない。そもそも何故に整地用重機なんかにビーム兵器が搭載されているんだ。

よりによって遠隔操作型だ 時代錯誤も程々にしとけよ。

 

その瞬間、一条の熱線がシリウスシンボリの足元を穿つ。先まで緑だった地面が急な変化により彼女の走行テンポが崩されたのである。

 

体勢を整えようとしても時既に遅し。囲うように配置されたサイコミュ兵器の銃口は既にシリウスの身体を捉えている。

 

「ク、ソ─────!」

 

 閃光がシリウスを貫く…と、思われた次の瞬間。彼女の身体はブれ、ファンネルのビームは互いを撃ち貫き爆散する結果となった。

 

「間一髪、と言った所か。無事か?シリウス」

「…! 来たな、皇帝‼︎」

 

 いつもと変わらぬ幼馴染の声。相反する位置にいる二人、だがその目指す先は一つに重なる思想を持つ。

シリウスが見上げた先にはいつもと変わらぬ三日月型の白い流星ラインが入った美しい鹿毛をたなびかせた────

 

「勇猛邁進、共に行くぞシリウスシンボリッ!」

 

 ()()()()()へと変形したシンボリルドルフ(メカ)が居た。

 

──…やっぱりロボットだコレ

 

自身の知らない間にいつの間にか鋼鉄製の身体へとパワーアップしていたシンボリルドルフ。

何故こうなった?まさか数週間の内に全身を機械化したとでも言うのか?銀河鉄道999の旅を終えたとでも言うのかお前?

 

脳内の疑問が尽きないシリウスだったが、ふと男の声が響く。その正体はバイク(ルドルフ)に搭乗した用務員だった。

 

「怪我は無いかシリウス?」

「用務員…色々聞きたいが取り敢えず、なんでバイクに変形したルドルフに跨ってるんだお前?」

「ごめん、それについては聞かないで欲しい」

「と言うかそもそもコイツ、ルドルフじゃないよな?ロボットだよな?なんでルドルフの代わりにロボットが生徒会長の座に就いてるんだ?」

「それ以上聞くなァーーーーッ!」

 

 その慟哭にシリウスは何も言い返せなかった。彼もまた被害者なのだ。こんな訳も分からないドラム缶の騒動に巻き込まれた哀れな子羊の1匹に過ぎない事をシリウスは悟ったのである。

 

「乗り移るぞ捕まれッ!」

 

 ヴォン!とウマ娘の体からは絶対に響く事の無い駆動音を鳴らしながらメカルドルフ二輪モードは跳躍し、重機のボディへと張り付く。

 

「う、うぅ〜〜……ひゃぁ‼︎」

 

 だが、その張り付いた衝撃がトドメと言わんばかりに長時間懸命にしがみついて居たライスの手から力が抜けてしまい、投げ出されてしまう。

時速70km以上は降らない状態から落とされてしまえば、いくら屈強な身体を持つウマ娘でも大怪我を免れないだろう。

 

「オラァ‼︎」

 

 だが、それをただ眺めるだけの用務員ではなかった。ライスシャワーの腕を掴むと同時に重機の頑強なるボティに手刀をぶち込む事で身体の固定化する事で間一髪、救出に成功する。

まさか対ゴルシ用に開発した貫手がこんな場面で活躍するとは本人も思ってもみなかっただろう。

 

そもそも鋼鉄すら貫く程の大技をゴールドシップに対して使う必要性があるか全く持って謎である。

 

「無事かライス!」

「う、うん何とか……⁉︎ 用務員さん、横!」

 

 ライスシャワーの言葉に視線を横にやると生き残りが居たのか、一機のファンネルが銃口をこちらに向けていたのである。

躱そうにも片手はライスを掴み、もう一方の手は重機側面に食い込ませており、両方とも塞がっている状態だ。

 

どちらか一方の手を外す事の出来ない状況に万事休すか?と思った用務員だったが。

 

「フッ───!」

 

 直後、グシャリと音を響かせながらシリウスシンボリの回し蹴りがビーム兵器に炸裂する。

そのまま用務員達を引き上げ、彼等の窮地を救った。

 

「悪い、助かったシリウス」

「気にすんな。それにしても真っ先に助けに行くとはな。ただの腰抜けじゃないみたいだな」

「それはどう言う事だ(半ギレ)…と、そんな事してる場合じゃない。ルドルフ(メカ)!どうだ、コレ(重機)止められそうか⁉︎」

「………無理だ」

「えぇッ⁉︎」

 

 シンボリルドルフの深妙な面持ち(?)な言葉に声を上げるライス。ほぼ万能と言っても過言ではない彼女が匙を投げると言う事態。

この重機はそれ程までに複雑かつ精密な構造をしているとでも言うのか?

 

「理事長がオーダーしたコレ、そんなに難しい操作を要求されるのか⁉︎」

「いや違う、そうじゃないんだ。私は……!」

 

 その場の全員が息を呑む中、ルドルフはその空気を割くように高らかに声を上げる。

 

「私は機械系は苦手なんだッ‼︎」

「「「………」」」

 

──それはひょっとしてギャグで言ってるのか?

 

 用務員、シリウス、ライス3人の心の声が重なり合う。この生徒会長(替玉)は自身の姿を見た事有るのだろうか?

純度100%機械の身体の癖して機械類が苦手とは一体何の冗談だろうか?

 

「い、いやルドルフ。お前…」

「私は機械系統の操作はサッパリ駄目なんだ。私はウマ娘と心を通じ合わせる事ができても機械と心を通じ合わせる事は出来ないんだッッ‼︎」

 

──それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?

 

 用務員、シリウス、ライス3人の心の声が重なり合う(2回目)。

こいつ機械と心を通じ合わせられないと言ってるが、お前自身機械だろ!とツッコみたい心情をグッと堪える。

ここで突っ掛かっては負けだ。そもそもそんな事をしている場合でも無い。

 

「ライス、どっかにスイッチとかレバーとか無かったか?」

「へ?え、えーと…そう言うのは特に見てないかな」

「ああクソッ!緊急停止システム備えとけよ理事長!」

 

 悪態を吐きつつも用務員は床面に手を突き刺した。そのままバリバリと音を響かせながら鋼板を剥がして行く。

 

「用務員君、一体何を…?」

「中身を直接弄って緊急停止させるんだよ。そうすれば……って、何だこりゃ⁉︎」

「どうした?」

 

 用務員の算段としては重機内部に張り巡らされている機械やコードの中から駆動系を司る中枢パーツを無理矢理引き剥がし停止させると言う限りなくゴリ押しに近いものだった。

だが彼の予想を裏切るように、その重機内部にはそもそも中枢系統のパーツが無かったのである。

 

何だこれは手抜き設計か? 否、違う。何者かの手によって重要なパーツが幾つも抜かれているのである。

 

「暴走の原因はこれか‼︎ これじゃ緊急停止すらできない!」

「え?それって…」

「簡潔に言うとこのまま暴走続けるだけだ───⁉︎」

 

 その時、グオンと一瞬浮くような感覚が襲うと同時に、桃色のローラー重機の下よりバキバキと何かを潰すような音を響いた。

それによって今までコース内を沿って暴走していたマシンが外側へ解放されてしまう事態へと発展する。

 

「不味いッ!柵を乗り出したぞ!」

「この方角は…本校舎ッ!このままだと突撃するぞ!」

「ライスの所為だ…ライスの不幸がこんな事に…!」

「こんな時に自分で責任負おうとするな!これくらい俺が責任取ってやる!…クソッ、操作は受け付けない上に今から壊そうにも間に合わない!」

 

 このままトレセン学園校舎に重機が突っ込むのは容易に予想可能だ。だがこの重機は理事長のポケットマネーにより製造された特製チューン済みのスペシャルなマシン。下手をすれば校舎全てを破壊しかねないパワーとスタミナを兼ね備えている。

 

一体どうすれば良いかと考えていると、ふと甲高い駆動音が鳴るのに気付く。

 

「…方法ならある!」

「ルドルフ(メカの方)⁉︎ 一体何を───」

飛行形態変形(トランスフォーム)‼︎」

『今度はジェットに変形した⁉︎』

 

 ギュオオオオオオ‼︎と音を響かせながら校舎の方へ飛ぶルドルフ。そのまま建物の手前へ降り立ち、ガシャガシャと身体を再び組み換えていく。

 

──思えば私の生まれた意味。それはオリジナルの代用でしかないモノだった。

 

 メカルドルフは変形機構を駆使しながら思考回路を働かせる。ただの替玉でしかない替玉がこの自分、メカルドルフだ。

生まれたばかりの自分はただ全てのウマ娘の助けになると言う使命の元で動く人形でしかない。

 

…なのに、この学園の皆は自分を頼りにしてくれた。自分を受け入れてくれた。

 

──我ながら愚かな事をしたものだ。あの重機を止めるには己が全てを賭ける事になる。ただのマシーンとして不合理極まりない事をしでかしたのだ。

 

「ルドルフ‼︎」

 

…だが

 

「ルドルフ!信じて良いんだな!お前を!信じて良いんだな!」

 

 こんな自分を信じてくれる者が居る、私を必要としてくれる者達が居る。ああオリジナルよ、機械でしかない私だが今は貴女を理解できる。

 

遠き果ての理想を目指し、全てのウマ娘に幸福を。

鋼の肉体に内蔵されているコアを輝せ、ドラム缶ボディより砲台が出現する。

 

持ってくれ私の身体よ。

 

我が命に懸け、止めてみせるッ!

 

ウマ娘を無礼るなァァアアアアアアッ!!

 

『とてもウマ娘とは思えない攻撃が出たァァーーーーッ!?』

 

 直後、重機に向かって放たれる粒子加速砲の閃光。

メカルドルフの核を成すコアエネルギーを全て攻撃に転用する事で自身の直線上に存在する有りと凡ゆる全てを灰燼に化す捨て身の固有スキルである。

その荒れ狂う光の奔流は重機をいとも容易く飲み込み、粉砕する事に成功する。

 

※ちなみに用務員達は既に逃げている。

 

「───ぐ」

 

ローラー重機の破壊に成功したメカルドルフ。だが、その代償として身体のあちこちより煙が上がり、火花を散らす羽目となった。

 

限界を迎え、その場より崩れ落ちると思われた次の瞬間。なんとそこへ駆け付けたエアグルーヴが身体を支えた。

 

「しっかりしろ、今お前が倒れてしまっては困る」

「エアグルーヴ…」

 

 そんな彼女に対してギギギも鉄が擦れるような音を響かせながらルドルフは言葉を紡ぐ。

 

「何故だ?何故、君が…」

「最初の方こそ貴様を認めていた訳ではない。寧ろ、貴様を生徒会長の座から引き下ろそうと用務員とデジタルで共謀していた」

「「えっ」」(いつのまにか巻き込まれていた2人)

「だがそれでも貴様の行いは素晴らしいモノだった。故に伝えねばならない───」

 

 そう言うと彼女は傍に居たウマ娘にルドルフを預けると、正面に移動した後に屈み込む。

 

「貴女もまたなのだ…シンボリルドルフ生徒会長」

「…!」

 

 ふとメカルドルフの中で熱いモノを感じる。

嗚呼、そうか。これが感情か。これが、これこそが貴方(オリジナル)が欲していた光景なのだな。

 

己が命を懸けた甲斐があった。機械の身体なのに不思議と込み上げて来るものがある。

 

「…エ、エアグルーヴ…ありがとう…本当にありがとう」

「感謝など…それは私が言う台詞ですよ会長」

「本当ありがとう、ありがとうアりがトうアリガトウアリガトウアリガトウアリガトウ」

「…えっと、会長?」

「アリガトウアリガトウアリガトウアリガトウアリガトウアリガトウアリガガガガガガガガガガガガガ」

「!?」

 

 突然どうした事だろうか。メカルドルフがガタガタと壊れた洗濯機の如く震えだし、目のライトがチカチカと赤く点滅し始めたではないか。

周囲で見守っていたウマ娘達も心配そうにざわつき始める。

 

「どうしたんだコイツ?おい用務員ちょっと見てやれよ」

「えぇ、しょうがないなぁ…と言うか何処をどう見ればいいんだコレ?」

 

 先程の極太レーザーによる影響なのか異様な姿を見せるルドルフ。一体どうしてしまったのだろう?とその場にいるエアグルーヴ、ライスシャワー、シリウスシンボリ、アグネスデジタル、そしてミホノブルボンが見守って───

 

「……ミホノブルボン?」

「はい。いかがしましたか?」

 

 エアグルーヴはふと、視線を移す。そこには女帝に代わる形でメカルドルフを両手で支えるブルボンの姿があった。

 

『………』

 

 その場に居た皆は一瞬で状況を理解する。コアをオーバーロードさせた挙句、度を越すレベルでの機械音痴であるブルボンの体質がプラスされた事により不味い事態が引き起こされたのである。

 

そんな緊急事態にウマ娘達はその優れた脚力を使用し、その場から逃げ始めたのである。

 

「あっ、そうだよ。頭ん所のフタが開くじゃん。えーと、タキオン!これってどうすれば直る…ってあれ、タキオン?と言うか他の皆何処に行っt」

「……自爆するしかねぇ」

「は?」

 

 

 その日、トレセン学園は謎の炎に包まれた。

謎の化学反応(?)によりメカルドルフは暴走。それによる爆発事故があった事を此処に明記する。

 

『会長ォォォオオオオオオオオオオオオオオ!?』

 

 

 

 そんな爆発事故のあった翌日。何故か元気な姿の用務員が目撃された。そして…

 

「取り敢えずバラバラになったメカ会長を何とか組み立て直す事に成功した…けど」

「成る程、これが芝を刈る気持ちか…」

「その代償として芝刈り機と融合する事になったんだよなぁ」

「そうはならんやろ」

「なっとるやろがい」

 

 学園内にて用務員とセットで元生徒会長代理(メカ)が度々見かけられるようになったと言う。

 





【オマケ】

生徒会室にて資料作成を行うエアグルーヴと用務員(手伝い)

「結局、理事長の重機が暴走した原因って何なんだろう」
「む、確かにな。いくらライスシャワーが不幸体質とは言え直接的な原因になる訳ではあるまい。だが主犯にはキツい仕置きを与えねばなるまいな」
「ん〜…まぁ、重機の部品が抜かれてたっていうイタズラの範疇に収まらないし妥当か」

 他愛無い話をしていると、生徒会室の扉が開かれる。すると入ってきたタキオンとゴールドシップの2人が一仕事終えたような様子を見せる。

「やぁ用務員君。言われた通りメカルドルフの修理は無事に完了したよ」
「お、本当かタキオン!」
「オイオイ、お礼なら私に言ってくれよな?伝統ある飴細工ベテランのこのゴルシ様にかかればチョチョイのちょいだぜ?」
「ほう?まさかゴールドシップも手伝ったとは…驚きだな。しかし良くもまぁ早く直せたな?修理はもっと難航するものかと思っていたが…」

 そう告げるエアグルーヴにタキオンが答える。

「ああ、それについては心配ない。破壊された重機のパーツ残骸を寄せ集めれば修理は容易いものだよ」
「え、そんな都合良くジャンク品で修理出来るもんなの???理事長ポケットマネーで製作されたにしては手抜き過ぎない???」
「いやいや、そう難しい話でも無いさ用務員君。なにせメカルドルフにはローラー重機の中枢パーツを組み込んであるから多少の流用は問題ないのさ」
「は?」
「あー、成る程な。タキオンが理事長の重機からパーツ拝借しろって言ってたのはコイツ造る為だったのかよ〜!」
「その通りさ、まぁ何はともあれ修理できて良かった。まぁ結果オーライと言うヤツさ」
「確かにな!これも私がこっそり部品を抜いて来たお陰だな!」
「タキオン、ゴルシ…」




やっぱりお前等の仕業じゃねぇか!
「おっと失礼させてもらうよ!」(迅速果断)
「んじゃまたなー‼︎」(コンセントレーション)

「テメェ等コラァアアアア‼︎」
「逃さんぞこのたわけ共ォオオオオオオ!」
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