はじめての戦闘描写です。
でも今までで一番力が入ってる(気がしてる)と思います。
お手柔らかにお願いします。
怖い。
風は素直にそう感じていた。
当然である。
十代の折り返しにも満たないほどの少女が、敵意剥き出しで迫ってくる圧倒的巨躯の異形を前にして、恐怖しないほうがおかしい。
食物連鎖のカースト上位の生物に睨まれた草食動物の気分。捕食者に対する被捕食者。
多少超常の力を手にしたところで、生物としての本能は抑えられない。
そしてなにより、最愛の妹も同じ状況下にいるということ。
自分が巻き込んだせいで、樹が傷を負ったら、怪我をしたら、
死んでしまったら。
そう考えると余計に不安と恐怖が押し寄せる。
「くっ!」
自身を狙ってくるヴァルゴの砲撃を躱しながら、風は自分たちの能力の確認をする。
勇者の力を使う時に現れるマスコットのような生き物を《精霊》と呼び、風たちの能力を強化してくれる。
そして先ほど超人的な跳躍力を使って移動した際、着地に失敗した樹が地面に打ちつけられる瞬間、薄緑色の障壁のようなものが発生したのを確認した。
話には聞いていた、あれが所謂《精霊バリア》というやつだろう。
あの恩恵が得られている間は多少攻撃を受けても致命傷にはなり得ないはずだ。
しかしそれがいつまで
最後に、戦う上で重要となってくる攻撃手段について、どうやら確認したところ自分の得物は大振りの諸刃剣のようだ。それもある程度までなら巨大化させることができるらしい。
とは言えいくら伸びても剣は剣。手で振るい相手を斬るのが主な用途。
それはつまり攻撃が当たる距離まで接近しなくてはならないということで、当然、そんな距離まで移動することは危険が伴う。
そう考えていると、敵の砲台が樹に標的を変えた。
「樹!!」
「うわぁーん!こっち来るよぉー!」
半泣きになりながら腕を振り回す樹。その右腕にはリング状の装飾が備えられており、さらにそこから植物の蔦のようなものを伸ばして自身を狙う攻撃を撃ち落としている。
どうやらあれが樹の武器のようだ。
自分のよりはリーチがありそうだが、破壊力には欠けるか。
ならば樹がヤツの動きを封じている間に自分が。
そうして敵を止めるための策を練っていると、
「お姉ちゃん!!」
「!?」
いつの間にか自分がロックオンされていた。
作戦を立てることに意識を削がれて、敵の動きを把握できていなかった。
完全に出遅れた。
「やっちゃった…!」
回避は間に合わないと咄嗟に剣を盾にする。
直後、爆発。
「お姉ちゃん…っ!」
姉の安否に気をとられた樹も砲弾の餌食になる。
「くっ……!」
幸いにも精霊バリアのおかげで二人とも無事だったが、その衝撃までは殺しきれず、女子中学生の身体からしたら相当なダメージを負う。
剣を盾にした風はなんとか意識を保っていたが、直撃を食らった樹は気を失っていた。
倒れた風は立ち上がろうとするが思うように力が入らない。
自分が思っている以上に堪えたようだ。
(まずい…!)
風たちを無力化したと認識したのか、ヴァルゴは次の標的へと狙いを変える。
その照準の先には、防衛対象である神樹、ではなくその根元にいる友奈たちであった。
意識が朦朧とし目も霞んでいる風にはその姿は見えないが、それでもなんとなく敵が友奈たちを狙っているのがわかった。
(友奈…東郷…っ!)
立たなければ。
立って守らなければ。
自分が巻き込んだせいでこんな怖い目にあわせ、その上命まで奪ってしまったら。
それ以上は考えたくない。
だからここでアイツを止めねばならないのだ。
しかし少女の体は言うことを聞かない。
(逃げて…っ)
願いも虚しく、バーテックスは無慈悲にその引鉄を引いた。
爆音。
それが何を意味するのか。
愛する後輩たちの死。
それも自分のせいで。
戦う力を持たないあの子たちが生き残る術はないだろう。
絶望と自責の念に押し潰されそうになる風。
その時だった。
まだ霞む風の視界に、爆発のほう、友奈たちがいた方向から『何か』がこちらへ飛んで来るのが見えた。
意識を取り戻した樹も、『それ』を確認した。
真っ直ぐ前を見据えたゼロワンは、助走をつけ、ヴァルゴ目掛けて跳躍する。
飛蝗の脚力を有した彼は、紫電を纏う弾丸となり、一直線に目標へと向かっていく。
一跳びで目標地点に到達し、衝撃を殺しながら着地する。
そして、黒と黄色のボディに真っ赤な
ヴァルゴは予想外の邪魔者の登場に、未だ対応できずにいる。
動きが止まっているのをいいことに、ゼロワンは左手に持っていた四角い箱状の機器を展開する。
《アタッシュモード》から《ブレードモード》へ切り替わり、鋭利な直剣と化した《アタッシュカリバー》でヴァルゴの砲台を斬りつける。
幾度か跳躍しながら攻撃を繰り返すと、砲台が破壊され、ヴァルゴの活動が停止した。
「だ、誰なの…?!…友奈…?」
ボロボロになりながらも立ち上がった風は、目の前の怪人に問いかける。
友奈、と問うたのはあそこにいたのは友奈と美森だけであり、美森は二足で立てる状態ではないことを知っていたため、希望的観測からのことであった。
風からしてみれば、突然自分たちの目の前に現れた異形であり、バーテックスとなんら変わらない。もしかしたら第三勢力、なんてことも考えられた。
しかしその考えはすぐに否定されることになる。
「ん?…あ!君、大丈夫?!…あの二人から話は聞いたけど、怪我とかしてない?!」
その無機質な仮面からは考えられないような感情に富んだ声が聞こえてきた。
「え?えぇ、アタシは大丈夫…」
あまりにも真剣に自分を心配する声に、素っ頓狂な返事をしてしまうが、相手に敵意はなく、言葉が通じることがわかったなら、最優先に確認すべきことがある。
「…ってそれよりあの二人は、友奈と東郷は無事なの?!」
そうだ、こいつがやってきたのは二人がいる方向だった。
先ほどの言葉からすると二人と面識があるようだったが。
「あ、あぁ、バッチリ大丈夫だ!」
ゼロワンは風の迫真の詰問に一瞬たじろぎつつも、親指を立てながら二人の無事を伝える。
「!…そうなの…良かった…!!」
その事実を伝えられ、風はほっと胸を撫で下ろす。
直接的な要因ではないにしろ、それでも風は友奈たちが死んでしまったらそれは自分のせいであると本気で背負い込んでしまうだろう。
ひとまずは安心を得られたようだった。
と、そこへ、
「お姉ちゃーん!」
覚束ない足取りで樹がやってくる。
しかし、ゼロワンとの間に風を挟むようにして立ち止まった。
「その人、だれ…?」
元来より人見知りの気がある樹からしてみればゼロワンは、人かどうかも怪しい人型の何かである。警戒するのも無理はない。
「おう、そういえばこの姿での自己紹介はまだだったな。」
できる限り警戒されないように、持ち前の明るさを見せつつ応答する。
「改めまして、俺は邑楽郁人。んで、この姿の名前は仮面ライダーゼロワンだ。」
「おうら、いくと…って、昨日ウチの学校に来た新しい先生?!」
「そうそう。」
普段の調子で郁人、ゼロワンは語るが、風は驚きを隠せない。何せ、大赦からはこの樹海に入れるのは勇者に選ばれた者のみで、その勇者も十代前半の若い少女にしかなれないと聞かされていたからだ。
予想外の人物の登場により、呆気にとられていた風であったが、そうこうしている内に砲台器官を修復したヴァルゴが活動を再開する。
「おっと…!」
「第二ラウンド開始ね!」
「来るよ!」
今度は最優先にゼロワンを狙うヴァルゴ。
単騎で自分を沈黙させるほどのダメージを与えた彼を最大の脅威と見なしたらしい。
「ほっ、よっと。」
その攻撃を軽快なステップで躱すゼロワン。
執拗に狙うヴァルゴ、しかし悉くが虚空を撃ち抜く。
「よそ見してんじゃないわよっ!」
ゼロワンに翻弄されている内に接近していた風が、巨大化させた剣で叩く。
バーテックスの巨体すらも押し返す
「さっきのお返し、えぇーいっ!」
樹が複数の蔦を巻き付けて敵の自由を奪う。
「そりゃそりゃーっ!」
倒れたヴァルゴに飛び乗り、その頭部とおぼしき器官を斬りつけまくるゼロワン。
「ただ無闇に攻撃しててもコイツは倒せないわ!」
夢中で暴れまわっていたゼロワンに風から怒号が飛ぶ。
「え?そうなの?!じゃあどうすればいいんだ?!」
「封印の儀式っていう、特別な手順でヤツらの弱点である
「それをやるにはどうすればいいんだーっ?!」
「まずはコイツを囲んで、それから
「のりとぉー?!なんだよそれぇー?!」
「スマホに書いてあるから…ってアンタスマホないじゃない!どうすんのよ?!」
「俺に聞かれてもわかんねーって!!」
「二人とも何してるのーっ?!」
土壇場に来てトラブル発生。何気に相当なピンチだというのに言い争っている姉と新米教師を見かねて緑の番人が檄を飛ばす。
「ああーっ、もう!封印の儀はアタシと樹でやるから、アンタはアイツを食い止めてて!」
「お、おう!」
蔦の拘束を破って再び動き出したヴァルゴ。
封印の儀を成立させるまでの間、二人に手出しはさせまいと、ゼロワンは縦横無尽に動き回りながら悉くの砲弾を斬り落としていく。
「お姉ちゃーん!これ全部読むのー?!」
樹がスマホを見ながら呼び掛ける。それに対し風は、
「大人しくしろっ!!」
「えぇー?!」
すると、ヴァルゴの頭部らしき器官が割れ、中から四角錐の物体が出てきた。
「魂が籠ってれば、言葉なんてなんでもいいのよ!」
「それ早く言ってよぉ…」
破天荒な姉に辟易する妹。
「とにかく、今出てきたあれが御霊よ!あれを壊せばコイツらは止まるわ!」
「合点承知!」
ゼロワンはアタッシュカリバーを一旦畳み、エネルギーをチャージする。
そして再び展開。
跳躍力を活かし御霊に肉薄する。
圧倒的な切断力を持つ一閃。
しかし、御霊の外殻に弾かれる。
「くっ、かってぇな!」
「お姉ちゃーん、なんか減ってるけどこの数字なにーっ?!」
樹が姉に呼び掛ける。確かに見てみれば、儀式の中心となっているヴァルゴの真下に白い文字で書かれた漢数字が浮かんでいる。
しかし気になるのはその動きだ。かなりの速さで数字が小さくなっていっている。
「あー、それはアタシたちのパワー残量!
「時間制限付きとかまじかよ!?」
刻一刻と減っていくカウントダウンの漢数字。このままではジリ貧、今
「なら、これで沈めてやるぜ。」
一度安定した地面に降りると、目の前の異形を終わらせるため、ゼロワンはドライバーに装填されているキーをもう一度押し込む。すると、右足にエネルギーが収束されていく。
バーテックスの攻撃をも上回るエネルギー量で、エネルギーを蓄えたゼロワンの右足が光りだす。
臨界点に達すると、飛蝗の脚のビジョンとともに強く地面を蹴る。
ゼロワンシステムの奥の手にして真骨頂。
被害者にとっては死の宣告が、戦いの場に不釣り合いなほど明朗に鳴り響く。
倒れたヴァルゴを見下ろす高さまで跳び上がると、脚に充填されたエネルギーを少し空間に放出させ、虚空を蹴って対象へ向かって加速。
並の人間には閃光にしか見えないほどの
「ハアァァァァァーー!!」
そして、右足を前に突き出し、ヴァルゴの御霊を捉える。
正に目にも止まらぬ速さで繰り出された蹴りは、そのまま斜めに的を撃ち抜いた。
自身の核を砕かれた巨獣は、至るところから崩壊を始めて砂になっていく。ヤツらにとっての死ということなんだろう。
そしてそのトドメを刺したゼロワンはというと、並の攻撃では傷すらつかない堅牢な核を貫いてもなお、その勢いは死なない。
本人もビックリなほどに。
「ちょ、うぇぇぇぇえええええ!?!?」
接地すると同時に激しく転がっていくゼロワン。
「「ええええええええ!?」」
姉妹、愕然。
あれだけの強さを誇っていたゼロワンがあまりにも無様に転げ回っている。
「「ふふっ、あはははは♪」」
それが可笑しく、戦闘のダメージで立っているのもやっとなはずの姉妹に笑顔をもたらす。
「あ、友奈さんたちを迎えにいかないと!」
「あー、その心配はないわよ。樹海化が解けるときはみんなだいたい同じ場所に戻されるの。」
バーテックスは完全に消滅し、花弁が舞う。
樹海化が、解ける。
今回も読んでくださりありがとうございます。
さて、第4話も終了して一件落着ですかね。
戦闘描写って難しすぎやしません…?(戦慄)
地の文で呼称を郁人ではなくゼロワンにしたのは、装着型といえども『変身』しているわけで、その存在も別のものとして扱うべきかなという勝手な解釈です。
この作品においてライジングインパクトは一回の変身で一回きりの大技で、一発に多大なエネルギーを有すると設定しております。「原作にそんな設定ないやろ!いい加減にしろ!」というお声があるかも知れませんが、ゼロワン単体によるインフレを防ぐためですのでご了承ください。(←初陣から大暴れさせといて何を言うとるんや)
次回はまた日常に戻りますので、よろしくお願いいたします。
vシネバルカン/バルキリーはやく観てぇなぁ。