東方庭球録   作:東方好きのSEN

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genius3 博麗霊夢の才能

「ゲーム華扇!5-0!」

「はぁ、はぁ……やっぱり強いわね」

 

霊夢は左右に振ったり、ロブやドロップショットを打ってみたりしたが、どれも華扇から点を取るには至らなかった。だが、スプリットステップのおかげか、華扇とのラリーの時間が伸びた気がする。

 

(まさかスプリットステップを見ただけで習得するなんてや。もしかして霊夢はとんでもない才能を持っているのか?)

 

ともかく、私は感動で打ち震えていた。スコアこそ圧倒されているが、初心者であった霊夢は凄まじい速度で成長し、あの華扇と十分にやり合えている。これなら、しっかりと練習すればかなり強くなれる筈だ。

 

(いけ、霊夢。このままいけば1ポイントは取れる!)

 

残り1ゲームしかないが、1ポイントさえ取れば勝てる霊夢には関係ない。それに、1ポイントでも取られれば負ける緊張感と、メキメキと成長する霊夢からのプレッシャーを同時に受ける華扇は相当精神的に追い詰められている筈だ。

 

しかし、その想定は大きく外れることになった。

 

「なっ!追いつけない!?」

 

霊夢が急にさっきまで追いつけていたボールに追いつけなくなった。よく見ると、どうやら華扇の球速が上がっているようだった。

 

(なるほど、さっきまでのは本気じゃなかったのか。そりゃそうか。初心者相手にいきなり100%の力を出すわけがない。にしても、あんな際どいコースを狙うなんて。もしかして、華扇はプレッシャーを感じていないのか?となると、霊夢もここまでか)

 

1ポイントくらいならと希望を持っていたが、所詮初心者は初心者。経験者、しかも上位層のプレイヤーに勝てるわけがなかったのだ。諦めて肩の力を抜き、背もたれに寄りかかった。だが次の瞬間に、私、おそらくは華扇も度肝ぬかれることになった。

 

「ボールに追いついている……?そんな馬鹿な。緩急をつけられてすぐに対応できるわけがない。えっ?いや、そんなまさか……片足でのスプリットステップ!?」

 

信じられなかった。おそらく霊夢は「あと少し足りないならさらに無駄を減らそう。そうだ、片足でスプリットステップをすればいいじゃないか」単純にそんなふうに考えたのだろう。しかし、それを難なく実行できてしまうのは明らかに異常だ。

 

片足でのスプリットステップはついた足によって行く方向が決まってしまう。それ故に片足でのスプリットステップを操るには、どちらに行けば良いかを瞬時に判断できる反射神経が必要だ。初心者なのにも拘らずそれを可能にしているのは、異変の時に強敵達と幾度となく弾幕を交えてきた経験か、あいつ自身の才能か、その両方か。ともかく、あいつの反射神経は人並外れている。

 

「そこ!」

「さ、30-0!」

 

華扇はチャンスボールを見逃さずスマッシュを決めた。霊夢の片足スプリットステップに驚いて一瞬コールが遅れた。華扇の方を見ると、明らかに焦りが顔に出ていた。残り2ポイント、華扇の本当の戦いはこれからだ。

 

霊夢のサーブからラリーが始まる。華扇が際どいコースを狙っても、霊夢はそれを全て拾う。だが、霊夢が打つボールも全て読まれて得点にはならない。

 

(やっぱり、技を使う気はないか。相手が初心者だから卑怯だって思ってるんだろうな)

 

テニス歴1日だが、有名選手については調査済みだ。華扇が本気を出して技を使えば、霊夢は試合を最後で続けることすら叶わなかっただろう。真っ向勝負を旨とする彼女に感謝しつつ、二人の勝負を見守る。

 

「隙あり!」

「なっ!?」

 

華扇の放ったロブが霊夢の頭を越していく。霊夢が懸命に追いかけるが、間に合わず得点を許した。

 

「40-0!」

 

泣いても笑っても次が最後の一球だ。お互いの緊張感が高まり、表情も険しくなった。霊夢が今回の試合で最もキレのあるサーブを打った。

 

(このタイミングで最高のサーブを打ってくるなんて……しまった!返球が甘く)

 

この試合の中で初めて華扇が明確なミスをした。霊夢はそれを見逃さず、強烈なドライブボレーを放った。それは一瞬華扇の横を抜いたが、華扇は無理矢理体を捻ってラケットをボールに当てた。だが……

 

(あれじゃ入らないな)

 

空中に放り出されたボールの軌道を見れば入らないのは明らかだった。それには華扇も気がついているようで、膝をついて悔しそうに空中のボールを睨みつけていた。

 

その時だった。コートに一陣の風が吹いた。その風に流されたボールは、見事にコートのライン上に着地した。

 

「……魔理沙、今の入った?」

「えっ、あ、あぁ、ギリギリ入ってた」

「だったらさっさとコールしなさい」

「え、はぁ……ゲームアンドマッチ、ウォンバイ華扇!6-0!」

 

呆気にとられていた私にコーラを促した霊夢は、私のコールを聞くと完全に力が抜けてその場に座り込んだ。

 

「あーあ、負けた負けた。強いわね華扇」

「えぇ……まぁ……とりあえず水分補給しときなさい」

(もし風が吹かなかったら負けていた。私もまだまだ未熟ということね)

 

少し開かない顔をしている華扇に、水を飲みながら霊夢が指をさしてこういった。

 

「次は負けないわよ」

「どうやら煩悩は消えたみたいね。いいわ、次は大会で会いましょう」

 

霊夢からの宣戦布告を受け取った華扇は嬉しそうに笑うとコートから出ていった。

 

「それじゃ、少し休憩したら紅魔館に道具もらいに行くぞ」

「わかったわ。あーあ、つかれたー」

 

こうして霊夢の初試合は敗北に終わった。しかし、霊夢の情熱は熱く燃え始め、人並外れた才能も開花を始めていた。




ちょこっとキャラ情報

茨木華扇
前大会ベスト4チームの主将。真っ向勝負を旨とし、その圧倒的な力で相手を正面から叩き潰す。前大会では準決勝まで無敗を貫いていたが、依姫に6-2で大敗を喫した。ただ、その大会で依姫からセットを取る事ができたのは彼女のみだ。

勘のいい人なら彼女がどんな技を使うか予想できると思います。
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