エイティシックス全巻読みました。
シンエイ・ノウゼンの声優って綾小路と同じなんですよね。
クールなところも似てるしアニメ見てるとよう実を思い出す。
綾小路がレギオンと戦ったらどうなるんだろう?
ーー須藤の一点を下げる権利を売ってくださいーー
俺が言ったその一言に、茶柱と堀北は目を見開き驚いているようだった。それは仕方ないと言える。10万を払って助かるはずの須藤をわざわざ退学させようとしているんだからな。
綾小路はいつも通り無表情だったが少し俺を睨みつけているようにも感じる。そんな考察をしたが今は権利について確認がしたかった為、反応がない茶柱に意識を向けた。
「聞こえませんでした? 須藤の点数を一点下げる権利を売ってくださいって言ったんですよ。何ポイントですか?」
「ま、待ちなさい! なぜそんな事をするの!? 退学者が出ればクラスポイントが0でもマイナスが存在するっ、貴方は自分でそう言ったはずよ!」
堀北が焦りながらそう叫ぶ。だが俺は小馬鹿にするような顔でわざとらしく惚けた。
「確かに言ったが、だからってやらないとは言ってないぞ? クラスがどうなろうが俺の知ったこっちゃないからな。で、先生どうなんですか?」
「……いくらポイントで何でも買えると言っても、他者を退学させる様な権利が認められる訳がないだろう」
「あれれ〜? 嘘はよくないな〜先生。こっちはちゃんと調べてるんですよ。数年前、あるクラスが一人の生徒を追い込む為にそういった取り組みが計画された事を。当時の生徒が教師に確認した時、その権利は購入可能でも一点が高額だった為に断念したらしいじゃないですか。もしかしてど忘れですか?」
「……よく知っているな」
セリフとは裏腹に茶柱は顔を顰めた。一応教師なりに退学者を出させるのは嫌だったのだろうか? いや、だとしたらポイントで買える要素についてもう少しクラスに情報を渡したはずだ。もしかしたら、綾小路達が対処すると鑑みていたのかもしれない。
だがそれは俺にとって関係のない話なので話を続けることにした。
「改めて聞きます先生。一点を下げる権利は、何ポイントですか?」
「……50万プライベートポイントだ。それで指定した者の点数を一点下げる事ができる」
「それはそれは、何とも高額ですね。一点で50万ならクラス全員で賄わないと戦略として利用できませんし。まあ、今回みたいな事例なら俺でも払えますけど」
俺は100万ポイントを超えた端末を茶柱に渡す。その際茶柱は俺の数値を確認したが驚いた様子は見られない。事前に把握していたからなのだろうか。
「……確かにあるな。これなら須藤の一点は元に戻り退学になるだろう」
「ま、待ってください! 村上くんっ、いい加減ふざけた事はやめて! こんな事をして何になるっていうの!?」
「ハハハッ、そんなの、嫌いな須藤を消して俺が嬉しくなるからに決まってるじゃねえか」
堀北の発言を馬鹿にするかのように笑いながら俺はそう告げる。あんな不良野郎が同じクラスメイトなのは元から腹が立っていた。
確かに須藤は俺の指導によって勉強していたし今後成長の余地はあったかもしれない。だが人様に迷惑をかけてきた不良が人並みのことをしただけで褒められる。それがそもそもおかしいんだ。人並みのことを真面目にやってる奴が一番立派であり、学生の本分である勉強を今まで怠ってきた須藤はそのツケを払わされただけ。言ってしまえば自業自得だ。
「元々俺は須藤が嫌いだった。そんなクラスの邪魔者がいなくなるんだから、このチャンスを逃さない理由はないだろう。全ては俺の望み通りって事だ」
「……それが、須藤君を退学させる理由なの?」
「あぁ、もう一つあるぞ。それは……綾小路、お前が気に食わないからだ」
「何だと……?」
突然白羽の矢が立った事に綾小路は気の抜けた声を上げた。そんな綾小路を睨みつけながら俺は指をさす。
「俺はお前みたいな本気を出さない奴が嫌いだ。入学当初からカメラやSシステムについて気付いてた癖に知らないふりをしてたよな? 他にも勉強や身体能力も強靭にも関わらずそれを示さない。挙げ句の果てには須藤の一点を買うなんていうまどろっこしい方法でクラスメイトを救おうとした……俺はそんなお前のやり方が気に食わねえんだよ!!」
俺は段々と怒りが沸き起こり怒気をはらんだ声を発しながら叫んでいく。
思い出すのは異世界での出来事。毎日がモンスターの戦闘や人間の欲望が俺に襲いかかり油断すれば致命傷を負った。本気を出さなければ死と隣り合わせだった日々を思い出すと綾小路のやっている事は俺の戦いへの侮辱と言ってもよかった。
「だからお前が裏でやろうとしていた事を妨害してやったんだよ。実力を隠すお前に一泡吹かせたかったからな。まあ端的に言えば……ただの嫌がらせだ」
「……そんな理由で、クラスメイトを……貴方、どうかしてるわ!!!」
「……アハッ、今更気づいたのかよ。そうさ、俺はきっとどうかしてる。ただの感情だけでポイントを貰える機会をなくして一人の生徒を退学させるんだからな。並の人間がやる事じゃねえのは確かだ」
そこは俺も自覚はしている。だが俺はあの世界の戦いを通して誓った。
信じられるのは己の力。どんな卑劣なやり方だろうが俺が楽しい人生を送れるなら何をしたって構わない。
スキルや魔法…それらを駆使しててでも俺は好き勝手に生き続ける…それが俺、村上光太だ。
そんな事を思いながら俺は愉快な笑みを浮かべた。何故なら……
「兎も角これで須藤は退学だ。俺としては清々したぜ。……まあクラスポイントの差は気にすんなよ。退学者は須藤だけじゃねえからな」
俺の言った一言にそれまで傍観していた茶柱が間に入る。
「待て村上……Cクラスの件、お前がやったのか?」
「何の事ですか? ここに来る途中でCクラスの叫びを小耳に挟んだだけですよ。では失礼しま〜す」
適当にはぐらかしながら俺はこの場を去るのであった。
しばらくして綾小路が茶柱に問い詰める。
「先生、Cクラスの件て何ですか?」
「……お前達には放課後に伝えようかと思っていたが、仕方ない。後から他の生徒にも教えてやれ」
茶柱はそういうと衝撃の告白をした。
「今回の試験で退学者は2名いる。一人は須藤、もう一人はCクラスの山脇という生徒だ」
◇◇◇
時は少し遡り、朝のホームルーム。
Cクラスの教室では暗い雰囲気を漂わせながら担任である坂上先生の声を聞いていた。
「……よって今回の試験。試験に出なかった山脇くんは退学となります。皆さんも今後のテストで欠席しないように……ではこれでホームルームを終わります」
そういうと坂上は教室から出ていく。するとCクラスの生徒達はクラスポイントが下がったことに対して騒ぎ出した。
「マジで最悪! 山脇のせいでポイント下がっちゃったじゃない!」
「何が高得点を取るための勉強だよ! 退学してんなら意味ねえじゃんか!!」
「信じらんねえ! マジで死ねよ!!」
多くの生徒は山脇への暴言を口にするが、一部には分かり切っていたようでただ落ち込む生徒も見受けられた。
何故かといえば試験当日に山脇は学校に登校せず、自身の部屋で熟睡していたのだ。
何名かがそれを察知して山脇を連れ出そうと寮部屋の合鍵を購入して中に入ろうとしたが、内側からのロックで手間取り、試験時間前に間に合うことはなかった。
当の本人は慌てた様子で学校に駆けつけたがとっくにテストは終了していて、再試験の余地も得られずその場にへたり込んだ。
こうして山脇の退学は以前から確定したのである。
よって現在叫んでいる連中は事情は分かっていても感情が抑えきれず、ただ喚いているだけなのだ。
「クソっ! こんな調子で本当にAクラスになれるのかよ! 大体このクラスは序盤から問題ばかり起きてーー」
ドカンッ!
突如として鳴り響く轟音。それはある一人の生徒が自身の机を脚で叩きつけたからだ。
「黙れ」
Cクラスに君臨する王ーー龍園翔がそう告げると先程の騒ぎが一転、驚くほど静かになった。
「テメェら雑魚が騒いでんじゃねえよ。確かに山脇の馬鹿のせいでクラスポイントは引かれたが、入学早々ならいくらでもやり直しが効く。お前らはただ俺の命令に従ってればいいんだよ」
その言葉にクラスの大半は怯え、反抗の意思のある者も歯を食いしばる。ここにいる全員が龍園の力を恐れ、服従していたからだ。
入学して早々、彼はクラスのリーダーになると宣言し、楯突いた生徒達をねじ伏せていった。中にはアルベルトというハーフの生徒が龍園に勝っていたが、いつの間にか龍園に酔心して今では側近として仕えている。
他にも石崎をはじめとした武闘派数名が龍園側につき、5月に入る頃にはCクラスは龍園に支配されていた。
故に誰も口出しができずにいたのだが、今回の龍園はいつもとは少し違かった。
「だが、山脇の件を割り切れと言われたらそうともいかねえ。加害者には落とし前をつけてやらねえとな」
「加害者…? 今回の山脇氏の退学が人為的なものだと言うのですか?」
クラスで勉強のできる生徒であり参謀の役目も担っている生徒、金田悟が龍園に問いかけた。
龍園はそれに応える。
「山脇は優秀ではねえが赤点を取るほど頭が悪いわけじゃなかった。それが寝落ちする程勉強するなんて普通はあり得ねえ。大方誰かに睡眠薬を盛られて寝過ごしたんだろうな」
「睡眠薬? そんなもの手に入るんですか…?」
「ケヤキモールの薬局に普通に売ってる。手に入れる事自体は難しくねえんだよ石崎」
「で、でも山脇の部屋には内側からロックがかけられていたんですよ! なら完全に部屋は密室だったはずじゃあ!」
「寮部屋のU字ロックなんざ外側からでも取付けられんだよ。密室に見せかけるのは簡単だ。だが山脇の部屋に入り抵抗なく飲ませるのは生半可な芸当じゃねえ。証拠も残さないところを見れば相当なやり手だ」
そういうと龍園は山脇と仲が良く共に勉強していた生徒達を集め問い詰める。
「応えろ。山脇に接触してきた生徒は誰だ?」
わざわざ実力も高くない山脇を退学させたのなら戦略的な意味はない。つまり動機は怨恨か快楽…龍園はそう判断して山脇の交流を探る。
そんな中、一人の生徒が思い出したかのように顔を変化させた。
「あ、そういえば……試験勉強中Dクラスの生徒と揉めた事がありました。その時山脇の奴、Dクラスの奴を馬鹿にして……」
「なるほどなぁ。それならやったのはDクラスで確定だな」
すると青髪のショートヘアの少女、伊吹澪が待ったをかけた。
「ちょっと待って。それで決めつけるのは時期尚早でしょ。関係ない奴の犯行だってあるし、それを見た他クラスの奴が替え玉としてやった可能性もある」
「よく考えろ。Aクラスは今、派閥抗争の真っ最中だ。他クラスへ攻撃する余裕はねえ。それに坂柳や葛城が意味のない戦略を立てる訳ねえしな。平和ボケ共なBクラスの考えるやり方でもない。考えたとしても一之瀬の奴が止める。となるとDクラスしかあり得ねえんだよ。今ので確信に変わっただけだ」
「それは…そうか……でも、だったら誰かそんな事を」
伊吹の疑問に龍園は勉強会にいた生徒に改めて顔を向けた。
「その時にいたDクラスの連中は誰だ?」
「えっと…確か須藤に櫛田ちゃん。堀北っていう性格キツそうな女子と後は男子生徒が何人かでした。そいつらの名前まではちょっと……」
「あ、でも確か。堀北が一人の男子を『村上』って読んでた気が…」
「あっ、そいつだ! そいつと山脇が喧嘩になりそうだったんだ!」
村上と言う名前に、龍園は眉を顰める。Dクラスの村上という生徒の噂が既に耳に入っていたからだ。Dクラスだからとあまり警戒はしていなかったが、今回のことを踏まえると危険度が増したと言える。
「調べろ、その村上って生徒のことをな。遅くなったら…分かるな?」
「「「は、はいっ!!」」」
「坂柳を倒す前の余興にしようかと思ってたが、気が変わったーー場合によればDクラスは、俺の手で確実に潰してやる」
龍園はそう告げると、獲物を刈り取ろうとする獣の表情を浮かばせた。
これで一章は終わりです。二章は須藤の喧嘩イベントですがまるっきり変更になりますね。
どんな展開になっていくのか。これからも楽しみにしてください。