ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:END

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二章の序盤なんで短くしようと努力しましたが結局長くなりました。

テヘペロ!


第2巻
暴露とポイント


7月1日。この学校ならではのポイント支給の日がやってきた。殆どの生徒はこの日を待ち望んでいるに違いない。だがDクラスはそこでポイントを貰える機会はなかった。

 

 

Sシステム。

 

 

5月初めに公開されたこのシステムはリアルタイムで生徒の実力を測り、クラスポイントを増減される。

 

それによりDクラスは、4月中の生活態度でポイントの全てを失い失意のドン底に突き落とされた。

 

それを打開すべく、中間テストで良い成績を収めようとしたが不良である須藤が赤点を取ったことによりテストの評価ポイントは0。極貧生活が続くことになったのである。

 

 

「(まあ、その機会を奪ったのは俺だけど…)」

 

 

俺ーー村上光太はそんなことを考え軽く吹き出す。

 

 

何故なら須藤の退学は俺が横槍を入れなければ取り消させるはずだったからだ。綾小路と堀北が須藤の点を購入することでそれは一時防がれた。しかし俺が須藤の点数を下げたことで赤点に戻り再度退学が決定したのだ。そんな哀れな顛末を須藤は知らないと思うとついおかしくなり、吹き出してしまったのである。

 

 

「(それにクラスとしてはもう須藤のことなんて気にしてないだろう。今も騒ぎまくってるしな)」

 

 

そう思いながら、俺はクラス全体を見回す。

 

 

 

本来であればポイントが貰えないDクラスの様子は、落ち込むような雰囲気を発しているだろう。しかし生徒たちは端末を見ながら喜びに包まれていた。

 

 

「ねえねえ、今日ケヤキモールで遊びに行かない?」

 

「え〜。あんまり無駄遣いしたら良くないよ」

 

「それはそうだけど、いつも節約生活してたらストレスになっちゃうよ。1日くらいハメを外したってバチは当たらないって!」

 

「そっか…じゃあ、行こうかな!!」

 

「「「イェーイ!!」」」

 

クラスの女子からそんな声が聞こえるのを俺は聞き逃さなかった。男子もそれは同様で、朝からコンビニで買ったパンやおにぎりを食べている面子も少なくない。ポイントがないDクラスとは思えない光景だった。

 

 

何故クラスポイントがないはずのDクラスがこれだけポイント使用で騒いでいるか。それは須藤の退学が決まった日に遡る。

 

 

◇◇◇

 

 

放課後のホームルーム前。

 

本来なら能天気な活気しか取り柄のないDクラスは、教室内が静寂に包まれていた。その場にいる生徒全員に元気がない。

 

特に酷いのは平田であり絶望した顔で俯きながら席に座っている。恋人の軽井沢をはじめとして多くの女子生徒が平田に声をかけたが反応は見られず、クラスの雰囲気はより暗くなった。

 

 

その原因は教室にある机ーー生徒の姿がないポツンと佇む空間にあった。

 

 

須藤の退学。

 

 

問題児である生徒が退学になった事で安堵した生徒もいたが平田の態度により段々とその感情が変化して今では失意の想いが募っていた。

 

 

「(絶望は伝染する……て昔やったゲームで聞いたことあったが、割と本当なんだな。シナリオ考えた人ってやっぱプロじゃね?)」

 

 

俺はそんな某デスゲームを思い出しながら呑気に席に座っていた。須藤を退学させた張本人の癖に何てクズな態度なんだと思われるかもしれないが、所詮他人事なので既に俺の中には須藤に対する感情など何もなかった。

 

 

そんな俺の心情を察しているかのように堀北はたまに此方を睨んでくる。須藤を退学させたことに対する怒り……も少しはあるだろうが、結局はAクラスへの道が遠のいたことに対する怒りが殆どだろう。堀北も所詮他人を思いやる感情は乏しいのだ。

 

 

そんな堀北を内心小馬鹿にしていると茶柱が教室に入ってきた。

 

 

「ではこれよりホームルームを始める。今日は学校からの連絡事項はないが試験の事で話がある。先程、赤点を取ったCクラスの山脇、Dクラスの須藤の退学手続きが完了した。これにより両クラスのクラスポイントはマイナス100。保有ポイントが0のお前たちは将来加算された際に精算される」

 

 

茶柱の発言に、クラスはさらに落ち込んだ雰囲気になる。分かりきっていた事とはいえ、その事実を突きつけられたのは今のDクラスにとって痛手だ。それを茶柱も理解していたのか複雑な目線で生徒たちを見た。

 

 

「質問もないなら、これでホームルームは終了だ……そういえば綾小路、堀北、村上。預かっていた端末を返そう。各自取りに来い」

 

 

その言葉に俺は「は?」と間抜けな声を上げてしまった。何故今このタイミングで言うんだとすぐに思う。そのセリフをこの場で言えば簡単に分かるであろう展開に陥るからだ。

 

案の定櫛田がその発言に反応した。

 

 

「せ、先生……何で堀北さん達の端末を持っているんですか?」

 

「それはだな。こいつらが特別な買い物でポイントを利用することになった為、私が預かったからだ」

 

 

その言葉にクラス全員が反応して、茶柱の方を見つめた。それを確認した茶柱は少しばかり笑みを浮かべる。

 

 

「この学校でポイントで買えないものはない。それにより綾小路と堀北は須藤の一点を購入して退学を阻止しようとした。だがそれは失敗に終わったんだ」

 

「えっ! それって…」

 

 

櫛田がハッとした声を上げる。それはつまり、ポイントさえあれば須藤の退学を阻止できると分かったからだ。

 

それにすぐ気づいた生徒はDクラスに何名かいたが、すぐさま平田が席を立ち教室全体を見渡した。

 

 

その表情は一握りの希望を掴んだ亡者のようだった。

 

 

「みんな頼む! 須藤くんの点数を買う為に僕のポイントは全て使うから足りない分を貸してくれ! お願いだ!」

 

「ひ、平田くん……」

 

「無駄だ平田。既に須藤の退学手続きは済んでいる。今ポイントを集めたとしても手遅れだ。諦めろ」

 

「そ、そんな……」

 

 

茶柱の言葉に平田は再び絶望した表情を浮かべ、力なく席についた。それを聞いた他の生徒も元気を失う。

 

 

それを見た茶柱は、俺の状況が不利になる爆弾発言をかました。

 

 

「それにまだ話は終わっていない。綾小路と堀北はポイントを支払い須藤の一点を購入できた。その時までなら須藤は今その席に座っていただろう」

 

「……え?」

 

「な、ならなんで須藤は退学になったんだ…?」

 

「一人いたんだ。私にポイントで購入してきた生徒がな。その生徒はなんと須藤の点数を下げる権利を買った……だろう村上?」

 

 

そう言って俺を名指しで呼んだ。

 

 

このクソ教師…やりやがったな。最悪情報が露見する可能性はあったがこのタイミングで宣言されるのは非常に面倒だ。

 

何故ならここにはクラス全員がいてその誰もが退学者が出たこと、ポイントが貰えないことを嘆いている。つまり、ここで俺はそんな心理状態が良くないクラスメイトから敵判定を受けることになるのだ。

 

俺はそんな末路を思い浮かべながら、茶柱を睨みつける。

 

 

「……何ともいい性格をしていますね。教師であるあなたが生徒を追い込む発言をするとは」

 

「何のことだ? 私は教師として生徒の疑問に応えたに過ぎない。むしろ当たり前のことをしているだけだ。それに結果として須藤を追い込んだのは事実じゃないのか? では私はこれで失礼する」

 

 

そんな無責任な物言いをして、茶柱は教室を後にした。あのクソアマ、言いたい事だけ言って帰りやがった……。

 

 

これによって話題の矛先は俺に向けられる。

 

 

「なんて事してくれたんだよ村上!! 何でわざわざ須藤を退学にさせたんだ!!」

 

「そうよ! あんたが余計なことしなければポイントだって貰えたかもしれないのに!!」

 

 

案の定、騒ぎ出す生徒達。取り返しがつかないことに内心ため息を吐きながらも、俺はいつものように実力行使で黙らせようとした。

 

 

 

しかしそれは、思わぬ介入により遮られる。

 

 

「村上! 何でっ、何でこんな事したんだぁっ!!!」

 

 

大声で叫んだのは……平田。ものすごい形相で睨みつけながら俺の胸ぐらを掴んだ。

 

 

いつもの雰囲気が皆無な事で女子生徒はもちろん、この場にいた全員が平田の行為に驚愕して騒ぎは止まった。

 

 

「また俺に掴みかかるのかよ平田。よく飽きねえな」

 

「そんな事はどうだっていい! 僕は須藤君を退学させた理由を聞いてるんだ!!」

 

「はあ……これは綾小路と堀北にも話したが、単に須藤が嫌いだったからだ」

 

 

ここで綾小路の事を言っても話がややこしくなるので、俺は理由の一つを話し始めた。

 

 

 

「須藤の今までの行動を見て何も思わなかったのか? ロクに自己紹介もしないでクラスをガキ扱い。遅刻欠席は当たり前で、授業でも居眠りしてやがった。最後には短気で素行の悪さが目に余る程だ。こんな問題を抱えた奴がいたら誰だって消したくなるだろう。それなのに退学を阻止されたら俺の高校生活に支障が出ちまう。だからやった。それだけだ」

 

「そんなの…退学させた理由になってない! 第一お前は勉強を見たり過去問だって渡したはずだ!! それは助けたかったからじゃないのか!!」

 

「全然違うね。それだって俺の気分でやった事だ。他人を助けたいからなんて気持ちはサラサラなかった。てか、別によくないか? 今回の試験で俺の渡した過去問に頼らなかったら結局須藤は退学になっていた。もしかしたら池や山内だって同じ末路だっただろう? 同じ末路なら、それを自由にできた俺がどうしようと文句言われる筋合いなんかねえよ」

 

「こ…この、クズがぁあああっ!!」

 

「平田君やめて! 一回落ち着いて!!」

 

「そうだよ! 村上君を離してあげて!!」

 

 

軽井沢や櫛田が止めに入るが、言葉遣いも粗悪になり怒りで我を忘れている平田にその声は届かなかった。このままヒートアップして暴力沙汰になりそうな雰囲気に、生徒たちはどうすれば良いか混乱していた。

 

 

だがここで、思わぬ助け舟が入る。

 

「いい加減にしないか平田ボーイ。今君のやっている事は美しくない。むしろ醜いと言ってもいい」

 

 

手鏡を見ながら髪を直している生徒ーー高円寺は足を机に乗せながら話しはじめた。

 

 

「彼は美しくなかった。変わる機会は何度もあったはずなのに己の欲を優先し続けた。そんな彼を村上ボーイはこのクラスから消しただけ。これは喜ばしい事じゃないのかい?」

 

「そんな事ない! 彼は醜くなんかなかった、変わる機会もまだあったはずだ! 今の発言は取り消せ!」

 

「私は事実を言っているだけだ。取り消す理由などサラサラないね〜。それに赤髪ボーイと同じで怒鳴り散らしているだけなのもどうかと思うよ」

 

「ふ、ふざけーー」

 

「いい加減俺から手を離せ、よ!」

 

「ぐはっ!!」

 

 

高円寺と話している間も胸ぐらを掴み続けられたので、俺は無造作に平田の腕を解くと、そのまま教室の壁へ投げ飛ばした。

 

突然の事で抵抗なく叩きつけられた平田は強い衝撃を受けてズルズルと床に倒れる。それを見た軽井沢は平田の側に駆けつけ「しっかりして!」と介抱し始めた。普通なら学校側のペナルティを考慮してこんな強引な手段は取らなかったが、平田から攻撃を仕掛けてきたので問題ないだろう。

 

そんな事を考えながら、俺は乱れた服装を直した。

 

 

「高円寺。お前が弁護するとは思わなかったぞ」

 

「何のことだい? 私は本当のことを言ったまでさ。それはそうと村上ボーイ。いくら彼が不良品だったとしても、君の個人的な理由でクラスポイントは実質マイナスになってしまった。これに関して我々に何も無しというのもどうかと思うのだが、何か弁明はあるかい?」

 

「……て、俺を助ける発言をしたと思ったら目的はそれか。はあ…仕方ないな」

 

 

俺はため息を吐きながら端末を取り出して手早く操作をする。そして工程最後のボタンを押すと櫛田の端末に着信がなった。

 

 

「櫛田、今のは俺からの着信だ。確認してくれ」

 

「え、う、うん……ええっ!? 38万ポイント!?」

 

『ッ!?』

 

 

櫛田の声にクラス全体が驚愕する。Dクラス、いや個人でも手に入れられそうにない金額を俺が持っていて、それを櫛田に渡したからだ。

 

 

「お前ら全員櫛田の連絡先は持ってるだろ? 櫛田から1万プライベートを受け取れ。櫛田も手間だろうがそこは頑張ってくれよ」

 

「ほう、これは嬉しい事だね。これは毎月貰えると思っていいのかな村上ボーイ?」

 

「……チッ、めんどくせえな。ならクラスポイントが0である限り1万ポイント渡してやるよ……これでまだ反論する奴はいるか?」

 

「全くないね〜。ポイントをタダで貰えるのにまだここで反論をする生徒がいたら、それは不良品以外の何者でもないだろう。そうではないのかな、君たち?」

 

 

高円寺の言葉を聞いてクラスは黙り込む。それにポイントが貰える事実を突きつけられ、彼らの怒りは完全に収まってしまった。

 

だが平田だけは納得のいかない態度で頭を振っていた。

 

 

「……おかしい。おかしいんだよ…ポイントだけで解決することなのか? 違うだろう。クラスの仲間がいなくなったのにっ、こんな簡単に済む話じゃないはずだ!!」

 

 

平田の叫びは黙り込んだ生徒たちに響き渡り、その心に突き刺しただろう。だがそれに便乗する生徒は見られない。

 

俺はそんな光景を見て鼻で笑ってやった。

 

 

「ま、結局こいつらの仲間意識なんてそんなもんなんだよ。あんな不良を思いやる気持ちなんざ不良品のこいつらになかった。それだけの話だ。ていうかこの話は終わらないか? ポイントは払ってやったんだし文句なんてねえだろ」

 

「ふざけるな!! 僕は…僕はお前を絶対に許さない…っ!! 

 

「……あっそ。別にいいぞ。お前が許さない所で、俺の生活になんら支障はないからな」

 

 

俺はその言葉を最後に平田から興味をなくし教室を後にするのであった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

ーーとまあそんな事があった。

 

俺はクラスポイントが0である限り、Dクラス全員に毎月1万ポイントを支給する事になったのである。7月の分は中間テストが終わった際に渡したが来月になればまた渡すことになる。

 

 

「(こいつらにポイントを渡すのは癪だが、別にいいだろう。8月にはポイント増減の行事があるだろうからな)」

 

 

そこでポイントを稼いでやれば解決する話なので、俺は割り切ることにしたのだ。

 

そんなことを考えていると平田が登校してくる。相変わらず平田は俺を睨みつけていて敵意剥き出しの状態だった。それを見たクラスメイトは騒ぎを抑え黙り込む。あれからというもの平田の前でポイントに関する話題はタブーとなっていたからだ。

 

 

「朝から何ガン飛ばしてんだよ平田。俺が何かしたか?」

 

「……」

 

 

俺の言葉を無視してそのまま席に座る平田。睨みつけてきた癖に失礼な奴だ。最近ではこのやりとりはお決まりになっていてDクラスの雰囲気を悪くしている。恋人である軽井沢との折り合いもつかないようで、距離感ができているらしい。まあ俺には関係のない話なのですぐにこの話題は忘れた。

 

 

しばらくして朝のチャイムが鳴り、俺の暗躍を暴露した茶柱が入ってきた。

 

 

「では朝のホームルームを始める。今日はクラスごとのポイントの発表だ」

 

 

茶柱はそう言うと持ち込んでいた模造紙を黒板に張り出した。

 

 

Aクラス 1004

Bクラス 663

Cクラス 340

Dクラス 0(一100)

 

 

各クラス中間テストによりポイントに変化はあったが、クラス変更は見られなかった。

 

退学者を出したCクラスとDクラスはポイントが支給されず100ポイントを失っている。Dクラスは実質マイナスなので現状最悪だろう。

 

しかし気になったのはCクラスが退学者分に加え50ポイントマイナスになっていることだ。他にもBクラスが13ポイントしか上がってないところを見るに両クラスに何かがあったのではないかと推測できる。

 

 

「今回でAクラスは1000ポイントを超えお前たちとさらに差をつけただろう。お前たち不良品には絶望的な数値だがこれからの生活で頑張ってほしい。ではこれでホームルームを終了する」

 

 

茶柱はそう言うと教室から退出し、その後の授業が始まる。そうしたいつも通りの日常が過ぎていき、あっという間に放課後になった。

 

 

 

 

 

 

俺は鞄を持ちながら帰路につきながら、考え事をする。

 

 

「しかし最近面白いことないな〜。平田や堀北が睨みつけてくるだけで他の連中は俺に話しかけてすらこねえし(自身が引き起こした現状)…なんか青春ぽいイベントでも起こらねえかね〜」

 

 

そんなことを呟きながら様々な展開を思考する。例えばこうして歩いている途中で女子生徒から声をかけられ告白とか……いや、俺に好意を持つ女なんている訳がないだろうが。

 

 

もう自分から何か行動してみようかと思い立ったが、ふと足を止める。

 

 

何故なら俺が歩く方向に3人の男子生徒が立ちふさがったからだ。

 

 

「村上光太だな? ちょっと面貸せよ」

 

「……思ってたんと違う」

 

 

本音は女子からの呼び出しが良かったと、俺は盛大にため息をついた。




クラスポイントについては原作の流れを変えたのでいくらか変更しました。
まず、中間テストで得たポイントは
Aクラス 64
Bクラス 63
Cクラス 0(退学者一名によりマイナス100)
Dクラス 0(退学者一名によりマイナス100)

それからBクラスとCクラスの揉め事で両者、ダメージを負った。
Bクラス マイナス50
Cクラス マイナス50

という感じです。こんなイメージでクラスポイントは考えてください。
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