ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:END

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よう実2期やるかってYouTubeでも話題だけど、実際どうなのかな。もしやるとしたら綾小路が片鱗を大きく見せる7巻ですかね。


特別棟と感電

俺は3人の生徒に連行され、学校の敷地内にある特別塔に足を運んでいた。施設内に入るとモワッとした空気を感じ取り俺は眉を顰める。

 

 

特別棟の廊下は校舎と違い冷暖房の設備が存在せず夏特有の熱気が立ち込めていた。さらに制服のブレザーを着ている状態なので汗がダラダラと滴り落ちワイシャツが纏わり付く。正直不快でしかなかった。

 

 

「(いらねえと思ってたが、ポイントで夏服買うかねぇ……。それにしても話し合うにはちょっと場違いな所だな)」

 

 

そう思いながら俺はあたりを見渡す。ここは家庭科室や視聴覚室など特別な授業でしか利用されない為、放課後になれば人の気配は全くない。監視カメラも廊下には設置されていなかった。もし仮にここで悪巧みをしても、誰にも介入されない場所として有効に利用できるだろう。

 

そう思っていた俺だが、ふと【気配感知】に反応があるのを感じた。

 

 

 

「(この気配……覚えがあるな。確か同じクラスにいた奴だ)」

 

 

寮の裏手で起きた堀北兄妹の一件以降、俺は【気配感知】の訓練を行い異世界の時の感覚を取り戻そうとしていた。理由としてはあの時背後に感じた気配から誰かを認識できなかった為であり、今後そんな失態がないよう常日頃気配を感じ取って生徒を識別していた。今現在では気配の揺らぎである程度どの人物か把握できるようになっている。

 

そしてこの気配はDクラスの生徒であり、オロオロと気配が揺らいでいることからこの3人とは無関係だと分かった。

 

 

「(偶然この場に居合わせたってか? 一体何の目的で……てかこいつの名前なんだっけか。確かサクーー)」

 

「ーーおい、ボーッとしてんなよ。舐めてんのか」

 

「あ?」

 

 

俺が気配の人物の名前を思い出そうとしていた最中、立ち止まった3人生徒がこちらを睨みつけてきた。どうやらこの暑苦しい環境の中で用事を済ませるらしい。

 

 

こちらが考え事をしていたというのにそれを中断させられたのはイラついたが、今回は彼らに呼び出されたのが発端なのでそちらに意識を向けることにした。

 

それにしてもこの状況……こいつらが何をしたいのか十分に察することができる。人気のない校舎・監視カメラのない区域・そしてガタイ良い3人の生徒に敵意のある瞳。明らかに何かを企んでいると分かった。

 

勿論俺はこの時点で指摘できたが、ふと思い至って声を紡ぐ。企みに乗るのはあまり納得しなかったが、悟られて対策を立てられるのも面倒だったので気付かぬフリをしながら会話をすることにした。

 

 

「別にただボーッとしてた訳じゃねえよ。暇だから考え事をしてただけだ……で? こんな場所に連れ出して何の要件だよ。てかいい加減自分の名前くらい名乗ったらどうだ?」

 

「はっ、偉そうな態度しやがって、まあいい。俺はCクラスの石崎だ。こっちも同じクラスの小宮と近藤。今日お前を呼び出したのは他でもねえ、退学になった山脇の件だ」

 

 

何とも想定通りというか……やはり彼らはCクラスの生徒だったのかと思った。入学して暫く経ったが、俺がCクラスと交流があったのは山脇くらいだったからだ。しかしそれを馬鹿正直に認めるのもどうかと思ったのでまずは知らないフリをする。

 

 

「確か俺のクラスにいた須藤と同じタイミングで退学になってた生徒だな。そいつがどうかしたか?」

 

「惚けんなよ、こっちも色々調べたんだ。お前と山脇が試験期間の最中に言い合いになったことをな」

 

「あぁ…あの間抜けか。いや悪い、今の今まですっかり忘れてた。だがそれがどうしたんだ?」

 

「お前が退学に追い込んだんじゃねえのか? 色々調べたぞ。お前、須藤の点数を下げる権利を買って退学させたそうじゃねえか。そんな奴と言い合いになった後山脇は学校を去った。普通に考えればお前が嵌めたと考えるのが妥当だろ」

 

「へ〜…よく調べてるじゃねえか」

 

 

感心したように俺は声を上げる。

 

山脇の寮部屋に侵入して退学させるように仕向けたのは事実だ。だが今の言葉ではいそうですかと認めるわけもなく、すぐに鼻で笑ってやった。

 

 

「まあ、だとしてもお前の言ってることって全て憶測だろ? 物的証拠もないし俺も認めるつもりはない。犯人探しをしてるなら諦めることだな」

 

 

「言う気はねえってことか……なら、力づくで聞き出してやるよ!」

 

 

石崎はそう叫ぶと拳を握りながら俺に殴りかかってきた。何とも想定内の展開につい呆れた表情をつくる。そのまま石崎の拳は俺に向かってきたが、身体に触れそうなギリギリの距離になるように避けた。

 

 

「おいおい、いきなり殴ってくることはねえだろ。というか俺が怪我したら困るのはお前らだろ」

 

「へっ、馬鹿が。この特別塔には監視カメラはねえ。証拠がなけりゃ一方的には裁かれねえよ! 小宮、近藤!!」

 

「「おうっ!!」」

 

 

石崎の声に残りの二人も反応してこちらに殴りかかってきた。俺一人に対して三人殴りかかってくるとは……このままでは一方的なリンチになってしまうだろう。

 

 

 

 

俺による蹂躙でな(・・・・・・・・)

 

 

 

 

「まずは……お前から、だっ!!」

 

「ゴハッ!!」

 

「「っ!?」」

 

 

俺は一番近くにいた小宮の懐に入ると、ガラ空きになっている腹に拳を叩き込んだ。小宮は呻き声をあげることも束の間、殴られた勢いで後方へと吹き飛ぶ。

 

 

「小宮っ! 大丈夫か!?」

 

「人の心配してる暇はねえぞ、馬鹿が」

 

「なっ、グハァッ!!」

 

 

後方へ吹き飛んだ小宮を見て完全に油断していた近藤にそう忠告すると、丁度後頭部になる部分へ回し蹴りを喰らわせた。近藤は何が起こったか分からない様子で地面に叩きつけられる。

 

そして残るは石崎だ。奴は俺の豹変ぶりに驚きを隠せないでいたが、すぐに二人がやられたのを認識したのか俺を睨みつけてくる。

 

 

「よくもやりやがったな! 絶対にぶっ飛ばしてやる!!」

 

「そっちから仕掛けてきたくせによく言うぜ」

 

「黙れぇっ!!!」

 

 

そう叫びながら突っ込んでくる石崎。先程よりも覇気がある攻撃だが、所詮チンピラに華が飾られた程度で俺にダメージをつけるような攻撃ではない。今度はそんな攻撃をあえて避けることなくその場に立ち尽くすと、俺は片手で石崎の拳を掴んだ。

 

一瞬のことで石崎は何が起きたか分からないでいたが俺はそのまま間抜けな石崎の顔面に一発、拳をお見舞いしてやった。

 

「グボッ!」と生々しい音と断末魔が聞こえる中、俺の拳に肉特有の感触が伝わり、水気がついたように感じる。石崎の鼻から滴り落ちる血が流れているのを確認した。殴った箇所が石崎の鼻らへんだったのでそれがついたのだろう。若干と不快感を感じる。

 

 

その後小宮・近藤は倒された順番に起きあがり勢いが削がれた力で襲いかかってきたが、俺はその二人に瞬時に駆け寄ると殴打や蹴りを改めて喰らわせた。

 

 

 

時間にして数分と言った所だろうか。その間で決着……石崎達はその場へ血や打撲痕を残してその場に倒れているのであった。

 

 

「ふう。これで一通り終了っと。それにしてもお前ら…マジで馬鹿なのか? 俺のことを調べたんなら、クラス同士で喧嘩になった話も聞いてただろう。その時俺が腕っ節が強いって聞かされなかったのか?」

 

 

正直言ってこいつらの戦闘力は異世界で戦いに明け暮れていた俺と比べるまでもなく話にならない。精々初心者冒険者の中堅クラスの実力しかない。加えて人数さのアドバンテージを活かした連携技すら見せないことを見てもこいつらは弱すぎた。

 

だが石崎は倒れながもニヤリと笑いこちらを見てきた。

 

 

「へへ、そんなこと、最初から分かってたぜ……ここまで強いとは思わなかったが、そんなの知ったこっちゃねえんだよ!」

 

「……やっぱりか。序盤の威勢と比べて随分と消極的な攻撃かと思ったら、山脇の件は建前で狙いは暴力事件として学校に訴えるためか」

 

 

序盤の方から石崎達は何か企んでいるかのようにニヤニヤしていたので薄々感づいてはいた。監視カメラのない所で暴力を働くメリットとして考えられる一手であり、俺は面倒そうにため息を吐いた。

 

それを見て俺が後悔したと勘違いしたのか、石崎達はさらに笑みをこぼした。

 

 

「今更気づいたって遅いぜ? 無傷なお前に対して俺たちはこんな大怪我をしたんだからな。このまま学校側に訴えたらDクラスにダメージが入る。クラスポイントがさらにマイナスになるだろうよ」

 

「まあ、そうだな」

 

 

三人がかりで俺に攻撃してきたと主張しても、傷を与えた事実は変わらないので互いに停学は喰らってしまう。少なくともダメージは避けられないだろう。

 

 

 

だがそんなの、俺は最初から気づいている。知っててこいつらを傷みつけたのは、それを悪用して恐怖を与えることにしたかったからだ。

 

俺は3人中で特段頑丈そうな石崎に標的を定めると、歩み寄って首筋にある物を当てた。

 

 

「……あ? 何する気だ?」

 

「何って……こうするんだよ」

 

 

 

ビリビリビリビリッ!!

 

 

「ガァアアアアアッ!!!」

 

 

感電するかのような雷音が廊下に響き渡ると同時に石崎は声を上げる。身体は小刻みに震えながら白目を剥き、石崎にダメージを与えていた。

 

 

「こ、こいつスタンガン持ってやがったのかよ!?」

 

「はあ!? 何でそんなもの持ってんだよ!」

 

 

小宮と近藤はそう叫ぶ。どうやらうまく勘違いしてくれたようだ。

 

本当の事を言うと、俺が今使っているのは雷初級魔法の電撃だ。魔法の存在を悟られないように、一応オモチャの機械を当てている。しばらく当て石崎の意識が途絶える前を見計らうと、俺は雷魔法を中断しておもちゃのスタンガンを離す演技をした。

 

 

「別に驚くことじゃねえ。ケヤキモールに売ってるぞ。まあ少し改造して電力は引き上がってるけどな」

 

「て、てめえっ!? 自分が何をしたか分かってんのか!!」

 

「うるせえな〜。大声出すんじゃねえよ。鼓膜に響くだろうが。さて、ここから本題を言おうーー今ここで訴えを出さないと確約しろ。学校側に問題さえ提出しなければポイントにダメージは入らないからな」

 

 

おもちゃのスタンガンを見せつけながら、俺はそう告げる。簡単に言ってしまえば、これはただの脅しだった。

 

 

「ふ、ふざけんな! はい、そうですかって認めるかよ!!」

 

「そうだ! てかそんなもの使ってタダで済むと思ってんのかよ! それが見つかればお前は犯人確定だぞ!!」

 

「黙れ。答えはイエスしか聞いてねえよ。さもないとーー」

 

「ガァアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「ーーこいつの命が危なくなるぞ?」

 

 

電力を引き上げた雷撃を発動し、石崎は先程より悲痛な声をあげる。それを聞いた小宮と近藤は顔を強張らせる。

 

 

 

この時の二人は村上に向けてどちらも同じ想いを抱いていた。暴力による脅迫はリーダーの龍園がしていた事であり、その凶悪さから武闘派の生徒はある程度恐怖に対して耐性を持っていた。仮に恐怖を感じることが起きようとも、龍園の怖さには劣るだろうと。

 

しかし、今はそんな考えが浅はかであったと知り、小宮と近藤の中にある龍園の恐怖は次第に村上の恐怖に塗り替えられていた。

 

 

「……ぁ………」

 

「あ、気絶しやがった。ふざけんな、起きろよコラ」

 

「ゴハッ!? ゴハッ……!!」

 

 

俺は動かなくなった石崎を仰向けにさせると鳩尾ら辺を脚で力一杯踏みつけた。石崎は苦しく咳込みながらも覚醒する。それを確認した俺は改めて脅迫した。

 

 

「もう一度言う。訴えを出さないと確約しろ」

 

「だ、誰が……そんな…」

 

「はい、正しい答えじゃない。ペナルティ発生っ…と!」

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

俺の望んでいない回答だったため、再度スタンガンに偽装した雷魔法で石崎を感電させる。勿論威力も上げてだ。

 

間髪入れずこうしているのは、小宮たちに無駄なことを考えさせない為だ。再び意識を失ったのを確認すると、また鳩尾を踏みつけて意識を覚醒させた。

 

 

「ガ、ハッ……もう、や…め……」

 

「なら訴えないと確約しろ。そうすればやめてやる」

 

「…そ、んなーー」

 

「だから…イエスしか聞かねえって言ってんだろうが!」

 

 

それから同じやりとりを5回程繰り返した。この時既に小宮達は目の前の俺にかつてない恐怖を覚えていた。石崎の方は感電するにつれ声が小さくなっていき、今ではぐったりと力を失い呼吸も虫の息だった。

 

 

「ヒュー……ヒュー……」

 

「あ、呼吸だけになったのはあぶねえぞ。このままだとこいつの意識、本当にやばいな」

 

「もうやめろぉ! このままだと本当に石崎が死んじまう!!」

 

「死んだら死んだで別にいいじゃねえか。そうすれば俺は間違いなく退学でDクラスにダメージが入るんだからな」

 

「クラスポイントとかの話じゃねえよ! 殺す程やるなんて、お前頭おかしいのか!?」

 

「その頭のおかしい奴に先に絡んできたのはお前らだろ? 自業自得じゃないか」

 

 

小宮と近藤にキョトンとした顔を向けながら、俺はそう告げる。話が噛み合っているようで噛み合っていない。何とかこれ以上石崎を感電させまいと、二人は話をしだした。

 

 

「そ、そもそも確約ができねえんだよ! 俺らは指示されて動いているだけだ! それに刃向かったらそれこそ何されるかわかんねえんだよ!!」

 

「ならお前らの親玉を連れてこい。そいつと話をつける」

 

「そ、それはっ…」

 

「何だ? お前らで決められないんだろ? なら連れてくればいいじゃねえか。ほら、やるのか、やらないのかどっちだ? ああ?……返答はないみたいだーー」

 

「わ、わかった! すぐに呼んでくる!! だからもうやめてくれ!!」

 

「お、おい小宮! 何勝手に決めてーー」

 

「そんなこと言ってる場合か! はやくしねえと石崎が大変なことになるぞ!!」

 

 

どうやら脅迫はうまくいったようだ。俺は虫の息である石崎の胸ぐらを掴むと、倒れる二人の間に投げ飛ばす。

 

 

「ほら、速くここにお前らの親玉連れてこい。もしこのまま学校側に報告したら……分かってるな?」

 

「「ヒィイイッ!!!」」

 

 

小宮と近藤は俺の脅しに悲鳴を上げながら石崎を抱え、逃げるように特別棟の階段から降りていくのであった。

 

降りて行ったことで姿が見えなくなったのを確認すると、俺は力を抜くように息を吐いた。

 

 

「ふう…久しぶりに人を痛めつけたな。やっぱり調子に乗ってる奴の苦しむ顔は何度見ても爽快だ」

 

 

そう呟きながら、俺は魔法で廊下や壁についた血の血痕などを綺麗にして痕跡を消していく。

 

 

これは“生活魔法”といって本来は冒険の際に生じる汚れを消し清潔を保つ力だ。しかし応用する事でこうした隠蔽工作にも利用することができる。因みにこれは山脇の部屋に侵入した際にも使った力で証拠を消すにはうってつけだ。

 

 

「よし、綺麗になったな。後はCクラスの親玉を待つだけだが……いや、もう一つあったな」

 

 

俺はそういうと、特別棟に入った時から気づき、()()()()()()()()()気配の方に声をかけた。

 

「最初から隠れてんのは気づいてたぞ、佐倉。そろそろ出てきたらどうだ?」

 

「……っ!?」

 

 

そうやってしばらく気配の主ーー佐倉は驚きながらも動けないでいた。だが次第にゆっくりと気配は移動していき物影から姿を現す。眼鏡をかけ暗そうなイメージの彼女は、見るからに怯えているようだった。

 

 

「そんな怯えるなって。別にとって喰おうって訳じゃねえんだからな……まあ、今のを見てたんなら色々と確認する必要はあるけどな」

 

「っ!? わ、わたしっ! 絶対に、言わないので…!!」

 

「それを信じる程俺はお人好しじゃねえんだよなぁ〜。まあ今日の所は色々見て疲れただろうし、また明日にでも話そうぜ……それまでに他の奴に言わない事を祈ってるよ」

 

「……ッ!?」

 

 

佐倉はその言葉に驚愕や恐怖が混ざった表情を見せる。これくらい脅しておけば気弱な性格のこいつが誰かに漏らすことはないだろう。

 

そんな事を考えていたら佐倉はブンブンと頭を縦に動かすと俺から逃げるようにその場を去っていくのであった。それを愉快そうに見ながら、俺は廊下の窓を開けCクラスの連中を待つ事にした。

 

 

「……あっつ」




今回は異世界要素を強めに出した感じですね。これで3人をぼかし切れたか不安ではありますがそれなりにかけたと思います。てか戦うシーンて描くの難しいんですよね。批評にならないか不安です。

次回は急展開、龍園との会談ですね。
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