ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:END

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ちょっと4.5巻の話をしますけど、龍園クラスの山脇が出てたんですよね。今後イラスト化されて原作に関わってきたらどうしよう。

まあ須藤退学させたんで何とかすると思いますが。


佐倉との話し合い

龍園達の策略を暗示魔法によるゴリ押しで打ち負かした翌日、俺は普通に授業を受けていた。

 

俺の忠告通り龍園達は学校側に訴えなかったのか、朝のホームルームで特別棟の件が説明される事や俺個人を呼び出すなんて事もなかった。どうやら大人しく従ってくれたらしい。

 

だがそれも当然と言えるだろう。あのメンバーの中で一番腕っ節のあったアルベルトの一撃を止めた上に催眠術といって仲間を襲わせたからな。摩訶不思議な現象を起こす奴に首を突っ込む程馬鹿ではなかったのだろう。

 

 

「(まあ、仮に訴えたとしても関わったやつ全員退学させたけどな。あまりやり過ぎると学校側に嗅ぎつかれるからある意味助かったが…)」

 

 

俺は内心でそう思いながらも手に持ったペンをクルクル回す。兎も角Cクラスのいざこざを心配する必要はもうないだろう。そう判断した俺は視線をある生徒に向けた。

 

 

 

目線の先には先日の件を隠れて見ていた女子生徒ーー佐倉愛里の姿があった。その顔は見るからに暗く、気分が悪そうなのが分かる。普段から感情を表に出す生徒ではないので違和感は小さいが間違い無いだろう。恐らくは石崎達と暴力沙汰を起こしていた俺と関わった事が原因だ。そんな奴と今日話をする事になったのだから元から気の弱い佐倉には酷なのだろう。

 

もしかしたら仮病で休むと思っていたが、後が怖くなると判断したのか怯えながらも登校してきた。それが不審に思ったのか櫛田などに心配されていたが大丈夫とだけ伝え、後は一人で過ごしているようだった。

 

 

「(あの様子なら誰かに話した様子はないだろう。後は再度釘を刺す程度で十分だ)」

 

 

そう思いながら俺は佐倉への意識を離し授業を聞くのであった。

 

 

 

 

 

そして授業が全て終わりホームルームが終わった後、放課後になった教室は生徒達の声で騒がしくなった。その中で俺は席を立ち歩き出すと佐倉の席の前に立つ。

 

 

「じゃあ佐倉。一緒に行くか」

 

「ヒッ!?……は、はい……」

 

 

呼びかけに驚きながら佐倉はビクビクした態度で下校の準備を始める。教室にいた生徒は先程までの騒ぎをぴたりと辞め、その光景を神妙な視線で見つめていた。須藤の一件以来俺と関わりを持つと危ないと思われていたせいで誰とも交流していなかった。それがクラスでも印象の少ない佐倉と話した事により驚きを得たのだろう。佐倉もそれに気づき注目が浴びるのが嫌なのか準備を急いで行い始めた。

 

 

それが終わればすぐに教室から出られたのだが、ここで邪魔が入る。

 

 

「ちょっと待ってくれ。一体佐倉さんに何をするつもりなんだ?」

 

 

俺を目の敵にしている平田が肩を掴みそう質問してきた。結構な力で掴まれてるので多少不快に思いながらも俺は平田に目線を向ける。

 

 

「いきなり掴みかかんじゃねえよ平田。俺はこれから佐倉と予定があるから話しかけただけだ」

 

「その言葉を信じると本気で思っているのかい? まさか佐倉さんまで退学にする気じゃないだろうね」

 

「そんな訳ないだろう。佐倉が今まで目立った行動を取ってたか? 特に何もしてないのに退学させる程俺は外道じゃねえよ。やるなら馬鹿で間抜けで短気だったせいで退学になったあの猿みたいなやつだな」

 

「……黙れ!」

 

「おお怖い怖い。何とか取り繕ってたのに言葉が荒々しくなったな」

 

 

須藤の事が禁句だったようなのでそれは仕方がない。とはいえそんなの俺には関係ないので掴みかかった平田の腕を払うと簡潔に説明してやった。

 

 

「まず勘違いをしているようだからいっておくが、今回の件はむしろ佐倉の方から俺に関わってきたんだ。俺から接触した訳じゃない」

 

「何だって……佐倉さん、本当なのかい?」

 

「え……あ、う………はい」

 

 

平田の確認に佐倉は弱々しくもコクリと頷く。本当は石崎達との現場を偶然見ただけなので積極的に関わった訳ではないが、詳しい事情を話すと俺に何かさせると思ったのか俺の言葉を肯定したようだ。

 

 

「な? これで分かっただろう? 佐倉から関わってきたから俺は話をするんだ。何も問題ないだろう?」

 

「…待ってくれ。なら僕も一緒に同行する。佐倉さんに全く被害が出ないと決まったわけじゃない」

 

「嫌だよ。何で無関係なお前を連れて行かなくちゃいけねえんだよ。あ、もしかしてお前佐倉のこと狙ってたとか? 軽井沢みたいなギャルと付き合うからもしかしてと思ってたが、爽やか面して意外に節操なしなのか?」

 

「っ!? ふざけるなっ!!」

 

 

俺の煽りに我慢の限界が来たのか目に見える怒りを見せ、正に一触即発の事態。教室に不穏な空気が広がり他の生徒たちもどうすればいいかオロオロとしていた。

 

と、ここで佐倉がビクビクしながらも俺たちの間に入ってきた。

 

 

「ひ、平田君…わ、私は大丈夫、ですから。心配しないで…ください……」

 

「さ、佐倉さん……」

 

 

思わぬ人として俺を弁護した佐倉に平田は驚きを隠せないでいた。

 

 

「で、でも佐倉さんーー」

 

「ほ、本当に大丈夫ですから! 放っておいてください!!………あ」

 

 

佐倉は自分が大声で叫んだ事に気づき顔を真っ青にする。今の発言では誤解を生んでしまうと思ったからだろう。佐倉はそこで弁解しようと口を開こうとしたが、俺は丁度いいタイミングだと思い台詞を遮った。

 

 

「ぷははは! 振られてやんの〜。まあ安心しろよイケメン君。こいつが俺のこと馬鹿にしない限り手は出さねえからな。ほらいくぞ、佐倉」

 

「あっ…え……あ……し、失礼します!」

 

 

俺が歩き出すと佐倉は弁解できていない事に迷いを見せていたが、俺に逆らうと怖いと判断したのか平田にペコリと頭を下げると、その場から逃げるようにして教室から出て後をついてくるのであった。

 

 

 

◇◇◇

綾小路side

 

 

村上と佐倉が教室からいなくなると平田は肩を落としながらも悔しそうに顔を歪ませる。それを見た軽井沢は恐る恐る平田に寄り添った。

 

 

「ひ、平田君……大丈夫?」

 

「……ごめん軽井沢さん。今は一人にしてほしい」

 

「あ……うん」

 

 

平田はそれだけ告げると教室から出ていった。軽井沢はそれを見て心細そうにすると仲の良い女子生徒達に慰められていた。

 

 

「心配しないでいいって軽井沢さん。平田君だって別に軽井沢さんが嫌いになった訳じゃないし」

 

「そうそう。今はそっとしておいた方がいいよ」

 

「……そ、そうだね。うん、また機会があれば話しかけてみる」

 

「うんうん、その意気だよ。てか佐倉さんのアレなに? 平田君が助けてあげようとしてたのにあんな言い方ないでしょ」

 

「もしかして村上君と交流があるのも媚び売って自分だけが助かろうとしてるとか?」

 

「まじ? ちょーあり得ないんですけど」

 

 

女子生徒は佐倉に対して言いたい放題。村上について言及しないのは須藤のようにされると思い強く言えないからだろう。だとしても余りにも言葉が苛烈すぎる。男子生徒も女子の台詞に若干引いているようだった。

 

 

「くだらないわね。人をあれこれ言える立場でもないでしょうに」

 

 

オレの内心を悟ったのか、堀北が呟く。須藤の一件で最近はオレの呼びかけにもあまり反応していなかったが今日は珍しく話しかけてきた。

 

 

「堀北…お前は村上と佐倉の事について気になっているのか?」

 

「興味がないと言えば嘘になるわね。佐倉さんは元々人との交流を避けていた。それがよりにもよって村上くんに関わるなんて普通はありえないもの。それにあの怯えた表情を見れば一目瞭然ね」

 

「佐倉が村上と関わったのは本人の意志じゃないってことか?」

 

「ええ。最悪、問題を起こしてDクラスのポイントがさらにマイナスになるかも知れないわ。でも下手に介入すれば痛い目に合う。故に今何かするつもりはないわ」

 

 

経験者は語るといったところか。堀北にしては弱気な発言をした。寮裏で何があったのか知らないが一悶着あったのは確かだろう。加えて須藤の退学を通して村上との距離を測れないでいるようだ。

 

そんな堀北にオレはもう少し質問をしてみる。

 

 

「“今”はって事は村上を野放しにするつもりはないって訳か」

 

「当たり前でしょ。これ以上彼が好き勝手にされたらこのクラスは修繕不能なまでに潰れてしまう。そうなる前に手を打つ必要があるわ……そしてあわよくば彼をクラス間の戦いに上手く介入させる」

 

「……正気か?」

 

「ええ、悔しいけど彼に実力があるのは事実。学力・身体能力は勿論大量のプライベートポイントを持つ程の手腕を持っている。彼を上手く使う事ができればAクラスになる事も夢じゃないわ」

 

「確かにそうだが危険すぎる。それに誰かの言うことを聞くような相手じゃないだろう。そもそも奴は単独で2000万を集めて他クラスに移動する可能性だってある」

 

「彼が他クラスに行って敵になる事こそ最悪の展開だわ。でも移動に必要な大金をすぐに集められる訳ない。それまでに彼を動かせる材料さえ掴めれば……」

 

「……」

 

 

オレは堀北の考えに内心無理だと決めつけた。村上の行動は高円寺と同じで己の意志のままに動いている。加えて気に食わない奴を退学させるのだから高円寺よりも悪質だ。

 

それを他人の事を一切考慮しない堀北が制御できる訳がない。このままではただ虎の尾を踏むだけだ。

 

 

だがそのままにしておく事はオレの選択肢になかった。

 

 

村上はどうやらオレに対して嫌悪の感情を抱いている。初めて話しかけた時からそれが続いていることから改善も期待できない。

 

 

それに村上の言ったあの言葉……

 

 

ーー俺はお前みたいな本気を出さない奴が嫌いだーー

 

 

まるでオレの実力を知っているかのような発言。もしかしたらホワイトルームと何らかの繋がりがあるかもしれない。

 

加えてオレのやる事に邪魔をしたという事は今後オレの敵になる可能性もあり得る。堀北の考え同様野放しにしておくのはよろしくない。

 

 

「……探る必要がある、か」

 

 

オレはそう独り言を呟いた。

 

 

◇◇◇

 

教室での一幕を終えた俺達は、話し合いの場に適したケヤキモールにあるカフェに足を運んでいた。本来聞かれたくない事ならカラオケや部屋といった選択をするのだろうが【気配感知】で盗み聞きした奴は判明できるので俺には問題ない事だった。

 

店員に空いてある席に誘導され腰をおろすとメニューをとって佐倉に渡した。

 

 

「好きなのを頼めよ。ここは俺が奢ってやる」

 

「そ、そんなっ。別にいいです……」

 

「厚意は素直に受け取れよ。それを無駄にするのも人を不快にさせて逆効果だからな?」

 

「っ!? は、はい。頼みます……」

 

 

佐倉は俺の言葉に怯えながらメニューを見始めた。少々脅した感じになってしまったが、あのまま拒否られるのも面倒だったので強硬手段に出たわけだ。そんな事を考えていると佐倉は決まったようで店員に声をかけ、互いに品を頼んだ。(因みに俺はいつものクリームソーダ)

 

店員が奥にはけていくのを確認すると、俺は改めて佐倉と向き合った。

 

 

「さて、ひと段落ついたところで話を始めるとするか。まず先に確認するけど昨日の件を誰かに話してないだろうな?」

 

「は、はい。言ってないです…そもそも私、話すような友達いませんし」

 

「だろうな。お前教室でいつも一人でぼっちなのは分かってたよ。まあ俺も同じだけど、アハハハハ」

 

「……」

 

 

佐倉はどう応えたらいいか分からず言葉が出ないようだった。

 

 

「悪い悪い、話が脱線したな。まあそこについては疑ってねえよ。誰かに相談する度胸があるなら既に学校側に訴えているだろうしな」

 

「そ、そうなんですか……」

 

「ああ。で、話を続けるが何故誰もいない特別棟に足を運んでいたんだ? あんな所用事がない限り一人で来る場所じゃないだろう」

 

「っ……ち、ちょっと、忘れ物をーー」

 

「ダウト。いや〜俺に嘘つくなんて根性あるなお前。あんな所に忘れ物をする機会なんて早々ないだろう。あんまりふざけてるとイライラが溜まってくるぞ?」

 

「わ、分かりました! 話しますっ、話しますから!!」

 

 

佐倉は叫ぶようにして声を上げるとカメラを取り出した。俺はそれを奪うように手に取ると保存された履歴を確認する。殆どが眼鏡を外し着飾った佐倉の自撮りだった。

 

 

「……中学の頃、雫って名前でグラビアアイドルやってたんです。今は活動休止してるんですけど、写真の公開はしていいからブログに載せてて」

 

「ほう……そうなのか」

 

 

意外すぎる告白に俺は少なからず驚いた。【鑑定】で佐倉愛里のステータスを把握していた事により身体付きが同年代に比べ発達していたのは知っていた。だが精神値が異常に低い為グラビアアイドルをする度胸があるとは思わなかったのだ。

 

俺はデジカメを操作しながら自分の端末でグラビアアイドル雫と検索して出てきたブログを見てみる。コメントの評判は良さそうで、ツイッターのフォロワーも結構いる。

 

 

「へ〜割と有名なんだなお前」

 

「……私の事、知らないんですか?」

 

「知らねえよ。グラビアアイドル気にするほど世間に興味ないからな。でも何でわざわざ地味目にしてまで隠してんだ?」

 

「目立つのが…嫌いなので。人前で話すのも苦手だし、私はただ平穏に生活できればそれでいいんです」

 

「グラビアアイドルやってたのにか? 矛盾してるだろーーお、見つけた」

 

 

そんな話を聞きながら俺はとある一枚の写真を見つける。そこには石崎に雷魔法を行使している俺の姿が映っていた。

 

 

「やっぱりな。隠れてたのを見つけた時バツの悪そうな雰囲気だったからもしかしたらと思ったが……証拠を写してた訳か」

 

 

俺はそのデータを削除して佐倉に手元に放り投げる。突然の事で驚きながらも佐倉は何とかキャッチした。

 

 

「俺に見つかった時点で消そうとは思わなかったのか?」

 

「その……なんか消すのも怖くて。村上くんが気づいていたなら直接確認すると思って残しておきました。だ、だから、消したならもういいですよね……?」

 

「いやいや無理だろ。その言葉を保証する材料はないし、もう既に自前のパソコンに保存してる可能性だってある。あの場の光景を見た時点でお前は俺を避ける事はできなくなった訳だ。諦めろ」

 

「そ、そんな……じゃあ私はどうすれば」

 

「簡単さ。これからは俺の側で行動しろ。なあにそんな固くなることはない。単に話し相手になってくれればいいだけだ。最近ロクに人と話さないせいで暇なんだよ」

 

 

そう、俺はただ日常生活に刺激が欲しいだけ。Cクラスと揉めたのもそれが理由だし、わざわざ特別棟で見つけた佐倉のデジカメに触れなかったのもこうして逃げ道をなくして人選を確保する為だ。

 

 

「あ、因みにいうと拒否権はねえぞ。お前はただ俺の提案に従うしか道はない」

 

「…あ……う……は、い」

 

「よし、決まりだな。じゃあとりあえず他愛もない話でもするか。お前のブログコメントなんだけどーー」

 

 

それからしばらく店員が運んできてくれた飲み物を飲みながら俺たちは話をした。といっても俺の一方的な話を佐倉が従順に応えるだけだったが。

 

しばらくしてそんな状況が続くと、ブログのコメント欄をスライドさせていた俺はあることに気づいた。

 

 

「おいおい、このアカウントのやつなんてしょっちゅう投稿してヤバイな。内容も『やっと会えたね』とか頭イッてんだろこいつ」

 

「ーーー」

 

 

俺の言葉に佐倉はピクリと反応する。それを見た俺はどうしたかと思ったがある仮説が浮かび確認してみた。

 

 

「もしかして、このアカウントのやつに被害でも受けてんのか?」

 

「………はい。実は最近ストーカーじみた事もされててーー」

 

 

その後佐倉から詳しい話を聞くと、放課後に後をつけられたり寮のポストに大量の手紙が届いていたりなど結構な被害を受けているようだった。

 

 

成る程成る程。それは実に……

 

 

 

          面白そうだ

 

 

 

暇つぶしとしては十分すぎる話と思った俺は、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「じゃあこいつにちょっと関わってみようか。それもグラビアアイドル雫ちゃんとしての姿で」

 

「……っ!?」

 

 

俺の言葉に、佐倉は今まで見せた中で一番顔を強張らせた。




この場を借りて報告があります。最近更新が遅いんですがこれからもっと遅れるかもしれません。大学で試験やらインターンシップやらあるんで時間が取れない可能性があります。ご了承ください。
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