ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:END

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みなさんお久しぶりです。二週間で1話できたので投稿します。とは言っても大学の用事はまだ終わってないのでまた遅れるかもしれませんが……。


とまあ気分を変えて新刊の話を少し。

みーちゃんと高円寺がペアを組む展開がありましたよね!?

も、もしや……みーちゃん×高円寺がある可能性が!


ストーカー撃退と佐倉の矯正

学校の敷地内にはケヤキモールという施設があり、様々な店が並び学生達の娯楽の一つとして利用されている場だ。

 

そこにある家電量販店は利用者が学生のみなので店内はそこまで広い訳ではない。しかし出店しているのは全国でも有名な店舗である為品揃えは申し分ない。

 

そんな所で働く男性店員ーー楠田ゆきつは、勤務中である事にも関わらずスマホであるブログを確認していた。画面には私服姿の女の子が笑顔でピースをしている姿が映っている。

 

 

「(おほ、また雫ちゃん更新してる。今日は校舎の何処かで撮ったのかなぁ? 制服じゃないのは残念だけど相変わらず可愛いなぁ)」

 

 

ねっとりとした感情を画面の少女に向けながら、楠田は気持ち悪い笑みを浮かべる。この男は画面に写る雫という少女にねじ曲がった愛情を持っている。それが最近この学校の生徒として入学していることがわかったのだ。

 

勿論その時の雫(佐倉)は変装をしていたが、長年投稿された写真を見てきた楠田には意味をなさず、それからというもの手紙を送ったり後をつけたりと、アプローチを仕掛けているのだ。

 

現に“君を近くに感じるよ” “今日は一段と可愛かったね” “目があった事に気づいた? 僕は気づいたよ”といったコメントをブログに投稿している。それは完全な偶然であり、全ては行き過ぎた妄想。にも関わらずこの男は本当に運命だと感じている。

 

結論から言えば、楠田ゆきつは完全に性犯罪者の思考を秘めていた。

 

 

「(あぁ雫ちゃーーいや、佐倉。早く僕の愛を受け取って欲しいよ。そしたら僕達は永遠に結ばれて、最高の人生を送っていくんだ……)」

 

 

「ーーおい楠田。勤務中に何やってる」

 

「せ、先輩!?」

 

 

楠田が思いに耽っていると、先輩の店員が睨みつけて注意してきた。楠田は慌ててスマホをしまう。

 

 

「す、すみません先輩。ちょっと連絡が入ったので確認していました」

 

「それにしては随分と気味の悪い顔をしてたぞ? お客様が少ないからって勤務中のスマホいじりはどうかと思うがな」

 

「ほ、本当ですって! 普段ならこんな事しませんよ!」

 

「……まあいい。次から気をつけろよ」

 

 

先輩の店員はそれだけ告げると店内の奥に去っていった。それを確認すると楠田は顔を歪ませ舌打ちをする。

 

 

「(クソがっ、僕より先に入ってきたからって先輩面すんなよ! あの目、絶対に僕を馬鹿にしてやがる……)」

 

 

完全な被害妄想。先程の店員は楠田の業務態度が不適切だと判断した故に注意しただけだ。だが楠田は自分が悪いと全く思わず内心で先輩を罵倒するのだった。

 

 

そんな事をしていると、店舗内の入り口付近から声が聞こえてきた。どうやらその二人はこの学校の生徒であるようで、遠目から制服を纏っているのがわかる。一人は根暗そうな男で、もう一人はアイドルのような髪型をした女の子だった。

 

 

仲睦まじくデートでもしているのかと楠田の内心は嫉妬したが、今は店員なので顔を繕い挨拶しようと歩み寄った。

 

 

「いらっしゃいま……せ……」

 

 

楠田は視界に入った途端営業スマイルは完全に崩れ、言葉を失ってしまう。

 

 

何故なら楠田の視界には入店してきた女子生徒ーーグラビアアイドル雫が、男子生徒と肩を組んで入店してきた光景が見えたからだった。

 

 

◇◇◇

 

村上side

 

楠田との会合から数日前。

 

 

俺は佐倉のストーカーが誰なのかを知る為、調査を行った。まずは寮内の役員を暗示魔法で操り監視カメラの映像データを入手。その後寮のポスト付近の映像を探しフードを被った影を確認した。その後、特定の人物の動向を探れる力ーー【追跡】スキルを使用してそいつを見つけ出した訳だ。

 

どうやらストーカーの正体は楠田ゆきつというケヤキモール家電量販店の店員として勤務している男らしい。この人物は俗にいうドルオタと呼ばれる人種であり、休日はシアタールームで上映されるアイドルのコンサートによく行っているようだ。実に犯罪を犯しそうなプロフィールを持っている。

 

その事を佐倉に伝えると、意外にもハッとした表情をつくった。

 

 

「もしかして、知ってるのか?」

 

「……はい。前にカメラを買った時の店員さんでした」

 

 

怯えた様子で語る佐倉。どうやらその頃から目をつけられたらしい。ドルオタの目は誤魔化せなかっという事だろう。

 

 

「何だ、心当たりあったのかよ。それならお前に心当たり聞いてから動くべきだったな。まあいい。次の休みにそいつに会いに行くぞ」

 

「……わかり……ました」

 

 

佐倉を脅迫気味に誘い、次の休みにその男の元に向かうことにした。

 

 

 

 

 

そして休日。俺はエントランスホームで待ち合わせをして佐倉と合流した。因みに佐倉には雫としての格好をさせている。やはり伊達眼鏡や髪型を変えるだけで地味な印象は一転し、同年代でも人気上位になりそうな容姿をしていた。

 

 

「写真で見るより可愛いじゃん。普段とは大違いだぞ? さて、早速行くか」

 

「あ、あの……やっぱり私」

 

「あのストーカーに会いたくないってか? 却下だ。大人しく着いてこい」

 

「……はい」

 

 

これ以上抵抗しても無駄だと理解したのか、力なく応える佐倉。心配せずとも俺がいる限りストーカーが不貞を働ける訳がないのだが、いちいち説明するのも面倒なので放置することにした。

 

 

そして俺と佐倉はケヤキモールの家電量販店に足を運び、冒頭のような会合を果たした訳である。

 

 

楠田は俺たちの……正確には佐倉を顔を見るなり身体を硬直させ挨拶を中断する。その反応を見て俺は笑いそうになるが、グッと我慢しつつ声をかけた。

 

 

「どうしました店員さん。浮かない顔してますけど」

 

「い、いえ……あの、失礼ですが本日はどのような…」

 

 

 

「あぁ。実は“彼女”のプレゼントでカメラを買おうと思ってきたんですよ」

 

 

「「え……?」」

 

 

俺の言葉に佐倉と楠田は呆気にとられた反応を見せる。前者は名前呼びや突然の彼女宣言に対する困惑、後者は自分のものであるはずの佐倉に恋人がいたという発言を飲み込めてないと言った所だろう。実に分かりやすい。

 

 

「…か、かのじょ……そ、んな、だって、佐倉は……」

 

 

目の前そんな事を呟く店員がいるが、俺はそれを放置して佐倉に顔を向けた。

 

 

「どうした愛里? 今日はお前が使う新しいデジカメ買ってやるって言ってるだろ。遠慮せずに好きなやつ選べ」

 

 

俺は「合わせろ」という目で佐倉を見る。佐倉はそれを察して若干狼狽えたが、すぐに顔をニッコリとさせた。

 

 

「う、うん。ありがとう!」

 

 

若干言葉に違和感はあるし笑顔も引き攣り気味だが、何とか俺の指示に従うようにカメラを選び始めた。意識をできるだけカメラに向けることで現実逃避をしてるようにも見える。

 

そんな佐倉を見て楠田は挙動不審になりながら俺に敵意を向け始めた。

 

 

「ほ、本当に彼女なんですか? それは君の勝手な妄想では……」

 

「はい? いきなり失礼な事言いますね。俺はただ本当の事を言ってるだけですけど」

 

「しょ、証拠は! あの子が迷惑してるかもしれないだろう!?」

 

「しつこいですね。店員であるあなたに関係あるんですか? 正直言って気味が悪いんですけど」

 

「なっ! ふざけっ……!?」

 

 

俺の辛辣な言葉にカチンと来たのか俺に掴みかかろうとする。すると異様な雰囲気を察知した他の店員が此方にやってきた。

 

 

「お客様、どうされましたか? 何やら此方の店員と言い合いに……」

 

「あ、ここの店員さんですか? いや〜すみません。なんかこの人が俺と彼女の関係性について色々と聞いてくるので困ってた所なんですよ」

 

「そ、それは申し訳ございません。あとは私が対応いたしますのでっ!」

 

「ちょ、待っ……」

 

 

そういうと店員は抵抗する楠田を連れていってしまった。予想通りの展開に俺は満足するとカメラを選んでいる佐倉の方に目を向けた。

 

 

「あのストーカー、随分とお前に入れ込んでるみたいだな。あと一押しすれば感情が爆発して襲いかかるかもな」

 

「う、うそ…っ!」

 

「問題ねえよ。そうなれば俺がこの学校から消してやるから。あ、そのまま好きなの選んでいいぞ。ギャラとして俺が買ってやる」

 

「え、あ…ありがとう、ございます。あの、所でさっきの……」

 

「あぁ、彼女発言か。安心しろよ。さっきのはストーカー野郎を刺激したかっただけだ」

 

「そ、そうですか……」

 

 

何処か安心した表情になる佐倉。

 

 

(まあ、今後佐倉の身体を要求しないとは断言しないけどな)

 

 

内心でそう思いながらも、言葉には出さないでおいた。そんなやりとりをした数十分後。佐倉が欲しいというカメラを選ぶと先程楠田を連れていった店員に会計処理をしてもらい無事購入できた。その際に楠田の対応について謝罪され、それに「平気です」と応えると俺たちは店から出ようとする。

 

すると途中、楠田が充血気味の目でこちらを見ている事に気づく。

 

佐倉はそれに気づき俺を盾にするように身を縮める。無論それを見た楠田は我慢できそうにないくらい顔を歪ませる。

 

それを見た俺は、最後の爆弾を投下した。

 

 

 

 

「《……残念だったな、ストーカーキモ男》」

 

 

ボソリと、去り際に耳元でそう呟く。

 

 

 

 

 

 

この時、楠田の何かがプツン…と切れた。

 

 

 

「おい楠田! さっき一体何しようとしてたんだ! 後できちんと説明してもらうぞ……おい、聞いてるのか?」

 

「……うが」

 

「あ? 何だってーー」

 

「あのクソ野郎がああああああああっ!!!」

 

 

楠田は突然怒り狂ったかのように発狂して此方に向かってきた。どうやら俺の最後のセリフで我慢できなくなったようだ。

 

 

「あ…あぁ……」

 

「心配すんな佐倉。すぐ終わる」

 

 

それだけ告げると俺は向かってくる楠田に対してゆっくりと歩みだす。

 

それを油断と捉えたのか楠田は躊躇なく拳を握りしめ俺に放とうとする。しかし俺はそれを難なく避けると慣性の法則で勢いを殺せない楠田をそのまま押し倒して地面に押さえつけた。

 

楠田は声をあげて暴れ出す。

 

 

「は、はなせぇええっ!! お前っ、絶対にぶっ殺してやるぅ!!」

 

「おいおいいきなり物騒な奴だな。いきなり襲いかかってくるんじゃねえよ」

 

「黙れぇええええええ!!」

 

「お、お客様っ。大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫に見えますかね、これ? 取り敢えずこのまま抑えとくんで警備員呼んでくれます?」

 

「は、はいすぐにっ!」

 

 

店員はすぐさま携帯で連絡し、警備員を呼びだし始める。そんな中で俺に抑え付けられてる楠田は高速から逃れようと必死にもがいていた。

 

 

「離せえぇっ!! ぼ、僕の佐倉を汚しやがって!! 佐倉は、僕のものなんだぁ!!」

 

「何言ってんだお前? 僕のものとかキモすぎるわ……いや、もしかしてお前愛里をストーカーしてたやつか?」

 

「違う! 僕はただ、佐倉のそばにいただけなんだぁあああっ!!」

 

 

その日、ケヤキモール全体に無様な悲鳴が轟くのであった。

 

 

◇◇◇

 

 

数時間後。

 

 

 

「あはははははっ!! 楽しかった楽しかった! 見たかよあのストーカー野郎の表情。人が絶望に歪む顔はいつ見ても面白えなぁ!」

 

「………」

 

 

俺は先程の一幕を愉快に話しながら佐倉と共に歩いていた。とは言っても佐倉は先程から顔を暗くして俺の話に乗ってこようともしない。

 

 

 

あの後佐倉にストーカーをしていた楠田という男は警備員に連れて行かれ、俺たちは何が起きたか事情聴取を受けた。

 

その時に俺は今回の件に踏まえ佐倉のストーカー被害も報告して楠田との関連性をほのめかした。当然それを聞いた警備員側も事態の大きさを察したのか、佐倉にも確認を取り今後調べる方針になったらしい。

 

十中八九証拠は出てくるだろうから、楠田がそのまま警察の身に預かるのも時間の問題だろう。これで佐倉がストーカー被害を受けることはないと言える。

 

そんな事を思いながら俺は佐倉に話しかけた。

 

 

「ありがとうなぁ佐倉、久しぶりにいい暇つぶしができた」

 

「……よ、よかったです…あの、私も方からも、犯人を捕まえてくれて、ありがとうございました…」

 

「気にすんな。それにしてもさっきのはいい演技だったぞ? 普段のオドオドしてたお前とは大違いだ。日常でもあんな感じにすればいいのに」

 

「…そ、そんな。私なんて……」

 

「………」

 

 

俺は佐倉の中途半端な返答を聞くと先程までの陽気な態度を消しその場に立ち止まる。それを見た佐倉が突然どうしたのかと此方の顔を見てきて……

 

 

 

「ヒィッ!?」

 

 

佐倉は怯えるように声を上げ、その場に尻餅をついた。何故なら俺の前髪の間から覗く殺意を秘めた鋭い目つきが佐倉を睨んでいたからだろう。

 

 

「……さっきからなんだ? その気の抜けた喋りは。俺との会話はそんなにつまらないか?」

 

「ご、ごめんなさい違うんです!! あ、あの今はそのっ、犯人が捕まってホッとしたというか! これで、安心してブログ活動ができるかもって考えてて……っ!」

 

「……成る程、そうなのか。とは言っても、今日からあのストーカーみたいな奴が現れる可能性があるぞ」

 

 

俺は携帯を取り出し、学校の掲示板を開くと佐倉に見せてやる。

 

 

「ほら、既に学校内の掲示板にお前の写真が載ってるぞ。《グラビアアイドル雫ちゃんがまさか高度育成高等学校の生徒に!?》だってよ。これはもう学校でお前の正体がバレるな」

 

「そ、そんな……」

 

 

佐倉は顔を青ざめながら悲壮感のある声を上げる。あれ程の目立つ行動を学生がよく使うケヤキモールで起こしたのだ。野次馬の中に雫を知ってる奴がいて情報が拡散されるのは必然だっただろう。

 

 

「ど、どうしたら……」

 

「どうにもできねえな。お前が変わらない限り今後こう言った悲劇は続く。そもそもそんな如何にも小動物みたいに弱い生き物です感オーラを出してるから悪いんだよ。そんなんじゃあ余計に色目は向くし狙おうとする連中は増える。デカい胸ぶら下げてるなら余計にな」

 

「っ!?」

 

 

俺の発言に佐倉は自分の胸を押さえ顔を赤らめる。一丁前に羞恥心があるのが余計腹が立つ。佐倉という人間は自分の存在価値を理解できていないのだ。

 

 

「そもそも馬鹿なんだよお前は。容姿やプロポーションだって実力だぞ。アイドルや女優がブスだったら人気が出るのか? 売り子や受付嬢がブスで業務が務まるか? 人は第一印象で人を判断するし、それを知ってるから人は見た目に気を使うんだ。そんな常識があるのにお前は自分が持ってる唯一の長所を潰してるんだよ」

 

 

つまり佐倉は綾小路と同じで自分の実力を隠しているようなものだ。それは俺にとって許されざる行為でもある。

 

 

「だからお前は不良品なんだ。それでも地味な格好を続けるってなら……俺が退学させるかもしれないぞ?」

 

「……む、村上くんだって。人のこと言えないじゃないですか!!」

 

 

佐倉は自分がボロカス言われる事に我慢できなくなったのか、大声を上げ俺に反論してきた。まあすぐに顔を青ざめたが。

 

だが佐倉の言っていることは間違いではない。伸ばし切った髪型を放置しているような俺に容姿のことについて馬鹿にされるのは釈然としなかったのだろう。

 

 

 

だがそれは、少し前提が違う。

 

 

 

「佐倉……これを見ても、同じ事が言えるか?」

 

「な、何を……ッ!?」

 

 

俺は垂れ下がった前髪を手でかきあげ眼を佐倉に見せる。それを見た佐倉は驚愕し、言葉を失った。それを確認した俺はすぐに髪を戻す。

 

 

「……分かっただろう? 俺の場合は見せる事で印象を悪い方向に変わる可能性がある。だからこうして隠してんだよ。だがお前は違う。優れた容姿を持っているならそれを活かせ。まずはその姿で学校に行ってみろ」

 

「………」

 

「……また無言か。まあいい、じゃあまた学校でな」

 

 

俺はそう言うと顔を俯かせる佐倉を放っておき一人で寮に戻る事にした。

 

 

 

「……変わる…しか………」

 

 

別れる直前、佐倉が小声で言ったのを俺は聞き逃さなかったが、特に触れることは無かった。




結構展開がストップし始めてきた。途中で断念しないか怖い。まあ2巻は後2、3話で終わらせるつもりなんで後は頑張るしかない。
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