ようこそ異世界帰還者がいる教室へ   作:END

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数日間投稿停止して申し訳ありません。帰省の件やバイト、大学のレポートにエイティシックスのラノベを読んでたら更新が遅れました。
さらに区切りの良い所まで書いたら6000字になってしまったのも遅れた理由です。本当にすみませんでした。


過去問と須藤の点数

範囲の変更が須藤達に認知されてから数日、試験期間も今日で終わり、明日から本番になっていた。

 

それまでの時間はDクラスにとって苦痛だっただろう。なんせ余裕のないテスト勉強で切羽詰まっていたのだから。

 

平田達にもテスト変更の情報は回り、須藤達同様なリアクションで悲惨な声を上げていたが、そんな事をしている暇もない為急ピッチで勉強をやり直した。

 

だがこのままでは得られるポイント少なくなるだろうし、それ以前に退学者が出て0ポイント生活が続くかもしれない。そんな思いをクラス全体が抱いているだろう。

 

 

 

 

そして、放課後。俺はクラス全員が残っている内に教卓の前に立つととあるプリントを掲げた。

 

 

「さてお前ら。今回の試験のキーアイテムを渡そう。前の奴から渡していけ」

 

 

言われた通り俺が渡したプリントを前から配り、生徒たちはそれに目を通す。

 

 

「これって、テスト問題……?」

 

 

誰かがそう呟いた。ま、何も知らなければそう思っても無理はないだろう。俺はそう思いながら、今の呟きを否定した。

 

 

「いや、違う。これは過去問だ。そんなもの貰って何になるんだと思う奴はいるだろうが、今回の中間テストはこれを手に入れる事が攻略法になっている。事実、過去数年の中間テストもこれと同じ問題が出題された。つまりこれを暗記すれば高得点間違いなし、少なくとも赤点はないって事だ」

 

「ま、まじかよっ!!」

 

 

その言葉にクラス全体が驚愕、その後プリントを持ちながら歓喜していた。

 

しかし俺が指導していた池が声を上げる。

 

 

「てか、この過去問があるなら何で俺たちに勉強させたんだよ!!」

 

「……もし仮に、早い時期に過去問を渡したらお前らは集中力を損なわず、真面目に勉強したか? 絶対にないだろう。今回黙ってお前らに勉強させたのはお前らの自己学習能力を高めるためだ。これでも文句あるか?」

 

「そ、それは……」

 

 

この言葉に池は口籠もり、他の面々は俺に意外そうな顔を向ける。Dクラスを見放したと公言していたのに協力したらここまでの助力をしたんだからな。

 

俺はそれをなんとなく察するが、特に気にする事なく話を終わらせる。

 

 

「ま、これで俺の協力は終了だ。ここまで尽力してやったんだ。これで退学を受けたらもう二度とお前らに協力はしない」

 

「んだよ、冷てえ言い方だなぁ」

 

「何度言わせるんだ山内。見放したお前らを助ける義理なんてそもそもなかったんだ。むしろこれで赤点取ったら許す訳ねえだろ。まあ、俺に最大の敬意を示すなら話は変わるがな」

 

「だ、誰がお前なんかに媚びるか! この過去問で高得点取って見返してやるからな!」

 

「過去問に頼ってる時点で粋がんじゃねえよ……まあ、お前に負けることなんて天と地がひっくり返ってもあり得ないがな」

 

 

俺はそんな事を言ったが、大半の生徒は過去問に浮かれていて聞いていないようだった。

 

 

「(もしこれで赤点を取るなら……いや、今それを考える必要はないか)」

 

「村上君……」

 

 

俺が内心で浮かんだもしもの未来(・・・・・・)を思考していると、テスト問題を抱えた堀北が俺の元に来た。

 

 

「何だ堀北。過去問を使うなんてズルだとでもいいに来たか?」

 

「ち、違うわ……。これを利用することは、私の中にはなかった。そしてタイミングとしても須藤君達にとっては今後のためになる。それが有効だということをクラスに教えてくれたことには……その…感謝するわ」

 

 

その言葉に俺は驚いた。他人を顧みない堀北の口から感謝という言葉が出てきたからだ。

 

 

「でも、だからこそ疑問だわ。貴方、何が目的でこんな事したの?」

 

「ハッ、簡単だ。馬鹿にしてる奴に自分のやろうとしていた事を平然とやって退けたら、お前はどう思う? 悔しいだろ? 俺はそんなおまえのプライドをへし折りたいからやったんだ」

 

「そ、そんな理由で……!?」

 

「俺には重要な事だ。だから櫛田の懇願に乗ったんだよ。それに健気な少女に手を差し伸べるのも青春っぽくていいと思わないか?」

 

「……おかしいわ、貴方」

 

「そんなおかしい奴に負けたお前は、それ以下だな」

 

「……ッ!」

 

 

堀北は俺の言葉に反論しようとするが、何を言えば良いか分からず口をつぐむ。それを鼻で笑った俺は早急に教室から出ていくのであった。

 

 

◇◇◇

 

そして試験当日。

 

俺が配った過去問を見て対策はバッチリなのか、Dクラス全体が自信に満ち溢れていた。試験時刻数分前になり教室へと入ってきた茶柱もそれを感じ取ったのか、愉快そうな笑みを浮かべる。

 

 

「さて、お前たちが立ち向かう最初の関門がやってきたわけだが、満足な勉強はできたか?」

 

「僕たちはこの数週間真面目に取り組んできました。このクラスで赤点を取る生徒はいないと思います」

 

「随分な自信だな平田。それが見栄でない事を祈るぞ。もし、お前たちが夏休みまでに退学者を出すことなく乗りきることができれば、夏休みにはバカンスに連れてってやろう」

 

 

その言葉にクラスの男子生徒達が反応した。

 

 

「ば、バカンス?」

 

「ああ。青い海に囲まれた島で夢のような生活を送らせてやろう」

 

 

茶柱の言葉に、男子生徒たちは一気にやる気のオーラを漲らせた。

 

 

「な、なんだこの妙なプレッシャーは...」

 

 

茶柱もそれを感じとり、男子からの尋常ではない圧に怪訝そうな顔をしながら一歩後退りした。

 

 

「皆.....やってやろうぜ!」

 

「「「うおおおおおおおおお!!!」」」

 

 

「うるせえな〜……そんな上手い話ある訳ねえのに」

 

 

そんな事を俺は耳を押さえながら呟いたが、男子生徒たちの声にかき消され、誰も聞くことはなかった。

 

この学校なら、そのバカンスとやらでなんらかのポイント増減がある行事を開催するに違いない。散々学校に痛い目を合わせられてきた癖にそんな事も分からないらしい。

 

 

 

そんな出だしで中間テストは開始された。一時間目は社会。茶柱の号令によりクラス全員が裏返されたプリントをめくり内心喜んだ。

 

俺が宣言したとおり、殆どの問題が渡された過去問から来ていたからだ。クラス全員は暗記した通りテストの空欄に答えをスラスラと書いていく。

 

 

国語、理解、数学……各時間のテストがその後も続きクラス全体は過去問の恩恵に救われていた。

 

そして残すは英語のテストだけとなり、休み時間池、山内、櫛田が集まっていた。

 

 

 

「楽勝だったな! 中間テスト!」

 

「俺もしかしたら120取れちまうかもしれないぜ!」

 

「みんな良かったね。須藤くんはどうだったの?」

 

 

櫛田は一人過去問に向き合う須藤に声をかける。そんな中、須藤は櫛田の声が聞こえていないように険しい表情で英語の過去問を読んでいた。

 

 

「……あ? ああ、わり。ちょっと忙しい」

 

「須藤君、もしかして…過去問やらなかったの?」

 

「これまでのテストはやった。でも寝落ちして英語だけはできてねえ…」

 

「「「ええっ!?」」」

 

「クソッ! 全然頭に入らねえよ……」

 

 

……

 

 

      はあ…やっぱりお前か須藤。

 

 

 

案の定というべきか、想定できた結果に俺は呆れた。勉強会でも須藤は寝落ちすることが多く前日に過去問を渡したとしても回避は難しいだろうと俺は思っていた。

 

俺がそんな事を考えながら須藤を見ていると、堀北が須藤の席に近づく。

 

「須藤くんっ。点数の振り分けが高い問題と答えの極力短いものをーー」

 

「う、うるせえ堀北! テメェの指図なんか受けねえ…」

 

「いいから聞きなさい! 退学になりたいの!?」

 

 

堀北の大声に須藤をはじめとしたクラス全員が驚きの表情を浮かべた。

 

 

「……私を嫌いなのは知ってるわ。私は貴方の将来を馬鹿にしたもの。でも今は、私の言った範囲を覚えて」

 

「……クソッ! 分かったよ…」

 

 

須藤は悪態をつきながらも堀北の言う通りに従う。流石に自分の状況を弁えたからだろう。

 

 

そして無常にも時が経ち、テストは開始された。

 

しばらくして英語のテストは終わったが、須藤は不安で冷静さを欠きながら貧乏ゆすりをするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、運命の日。

 

 

 

茶柱は教室に入るとまず先に驚いた表情を浮かべた。テストの結果を待ち望んでいたクラス全体の空気を感じ取ったからだ。そんな中で平田がまず質問する。

 

 

「先生。本日採点結果が発表されると伺っていますが、それはいつですか?」

 

「そこまで気負う必要はないだろう平田。お前にとってはあれくらいのテスト、余裕だろ?」

 

「……いつなんですか?」

 

「喜べ、今からだ」

 

 

茶柱はそういうと持ってきた模造紙を黒板に貼り出す。クラス全体としては満点が10人以上。他の生徒も高得点を記録していた。それを見たクラス全員は歓喜した。

 

 

そして肝心な須藤の英語の点数は……39点だった。

 

 

「っしゃ!!」

 

 

須藤は喜びのあまり立ち上がって喜ぶ。

 

 

「どうだ見たか! 俺だってやればーー」

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

 

俺は須藤の声を遮り、大きな声で狂ったように笑った。それにクラス全員がギョッとした目で俺に注目して、さっきまでの歓喜をなくし不穏な雰囲気を全員が感じ取った。

 

そんな中で俺は笑いを少しずつ抑えると須藤の方に顔を向けた。

 

 

「いや〜須藤。お前はつくづく救えない奴だよ。あれだけの助力をして退学になるとは、不良品すぎるだろ」

 

「あ? 何言ってやがる。俺は39点取ったぞ。だよな?」

 

「ああ。須藤、確かにお前は頑張った。だが……」

 

 

茶柱は赤いペンを持つと須藤の名前の上に横線を引いた。

 

 

「村上の言う通り、お前は赤点だ。須藤」

 

「……は? 嘘だろ? ふざけんな! 何で俺が赤なんだよ! 31点以上取ったんだからそれはないはずだ!!」

 

 

とことん無知な須藤をはじめとして、他の面々も同様の疑問を抱く。その分かりやすい思考を読んだ俺は仕方なく教えてやった。

 

 

「この学校の赤点は31点じゃねえんだよ。正式な求め方は平均点を2で割って出た数字。それを四捨五入したものになる。つまり今回は平均点79.6÷2=39.8……40点未満が赤点て訳だ」

 

 

その言葉にクラス全員が騒然とする。

 

 

「は、はあっ!? 何でそんな大事な情報を言わなかったんだよ!」

 

「教える必要なんてないだろ池。俺の出した攻略法は満点近い結果を残せる方法だ。赤点を気にするような試験じゃないのにわざわざ言うかよ……それに、俺は櫛田に退学阻止を手伝うように言われたが、テスト自体に助言してくれとは言われてないからな」

 

「そ、そんなの屁理屈だ! デタラメだ!!」

 

「黙れ。てか須藤が退学になるのはいいことだろう。現にホッとしてる奴らもいるしな」

 

 

俺の言葉に一部の生徒達が目線を逸らした。この反応を見れば明らかだろう。Sシステムを知っても授業中寝てた須藤の自業自得だ。

 

だが諦めきれていない平田が声を上げる。

 

 

「先生、須藤くんのテストを見せて貰えないでしょうか?」

 

「採点ミスはないぞ? ま、抗議があるのは分かっていたがな」

 

 

茶柱は予期していたように須藤のテストを渡し、平田は視線を落とす。だかすぐに暗い表情を見せた。

 

「採点ミスは……ない」

 

「納得がいったなら、ホームルームは終了だ。須藤、放課後職員室に来い」

 

「うそ、だろ……俺が、退学…?」

 

「残念だったなクズ。退学した後でも頑張れよな? まあっ、お前みたいな奴がバスケのプロになるなんてあり得ねえから、精々夢見てろよ。アハハハハハハハッ!!!」

 

「クソッ…クソォォオオッ!!」

 

 

その場に崩れ落ちる須藤を見下しながら、俺は笑い続けたのであった。

 

 

 

 

 

 

……その時、綾小路が教室を出るのを見逃さなかった。

 

 

 

◇◇◇

綾小路side

 

 

オレは教室から出て行った茶柱先生の元を追いかけると、誰かを待っていたかのように立ち尽くす姿を捉えた。

 

 

「どうした綾小路? もうすぐ授業が始まるぞ?」

 

「すぐに済みます。先生、今の日本は、この社会は平等だと思いますか?」

 

「随分とぶっ飛んだ話だな。私がそれに答えて意味があるのか?」

 

「大事なことです。答えてもらえませんか?」

 

「私なりの見解で言えば、当然世の中は平等じゃない。少しもな」

 

「同感です。平等なんて言葉は偽りだと。でも、俺たち人間は考えることのできる生物です」

 

「……何がいいたい?」

 

「ルールは平等に適用されるように見えなければならない、ということですよーー須藤の英語の点数。一点売ってくだい」

 

 

「…ハハハハハッ! 面白いなぁお前は。まさか点数を売ってくれというとは」

 

「先生は入学式の際にいいました。『この学校で、ポイントで買えないものはない』と。ならそれも購入できるはずです」

 

「なるほどなるほど。確かにそうだな……だが、お前が買える金額だとは限らないぞ?」

 

「いくらですか?」

 

「そうだな……今この場で払うというなら、10万ポイントで売ってやろう」

 

 

その言葉にオレは意地が悪いと感じる……そんな金額をすぐに出せるやつなど、Dクラスでは村上くらいしかいない。万事休すか……そう思った時だった。

 

 

「ーー私もっ、払います!!」

 

「……堀北」

 

 

振り返ると、息を切らした堀北が立っていた。どうやらオレの行動を見て何かを察知して動いたようだ。

 

 

「まさかお前がそんな事を言うとはな……Dクラス配属の撤回を直談判しに来た時とは大違いだ」

 

「……自分でも、変わったと思います。今までの私は、他人を見下し、足手纏いだと決めつけるばかりで人をまともに見てませんでした……そんな自分が、嫌になったのかもしれません」

 

 

堀北の言葉に、オレは何となく一人の生徒を浮かべた。そいつを見て堀北は自分の行いに疑問を持ったのだろうと推測する。それに今回の英語の点数でも、堀北は51点をとり平均点を下げていた。小さいことだが、堀北は確実に変化しようとしている。

 

堀北の言葉に茶柱先生は不敵に笑うと、オレたちの端末を預かった。

 

 

「いいだろう。須藤の一点、確かに受理した。お前たちから10万ポイント徴収しよう」

 

「…いいんですね?」

 

「約束したからな。それにしてもお前たちは面白い。もしかしたら、本当に上のクラスに上がれるかもしれないな。まあ、不良品のお前たちにはその可能性は低いが」

 

「彼はともかく、私は上がります。不良品はほんの少しの変化を与えれば良品へと変わる。私はそう考えます」

 

「なら、それを楽しみに見させてーー」

 

 

 

「それは違うな堀北。いくら良品に変えても、品質が低ければ不良品は不良品なんだよ」

 

 

 

突如として響き渡った声に茶柱先生や堀北は勿論、オレでさえも驚愕し声の聞こえた方へ顔を向ける。

 

 

そこには今回の試験で絶大な助力をして、堀北に自分の欠点を感じさせた生徒ーー村上光太の姿があった。

 

 

「(気配が全く読み取れなかった。堀北と生徒会長の一件と同じだ)」

 

 

数日前の夜、偶然見かけた時も村上の気配は全く感じ取れず、あまつさえ同じく気配を消していたオレを感知する索敵能力ははっきり言って普通の高校生ができることじゃない。

 

だがそんなことよりも俺はこの場に来た村上の目的に勘づいた。

 

 

「……村上、なんのようだ? もしやお前も須藤の点数を買いに来たのか?」

 

「まさか。あんだけ須藤を馬鹿にした俺がそんなことする訳がないでしょう先生。むしろ……その逆ですよ」

 

 

そういった後村上は、オレが予想した最悪のセリフを口にした。

 

 

 

 

 

 

 

「須藤の一点を下げる権利を売ってください」

 

 

 

その言葉に、堀北と茶柱は目を見開かせた。




次回、須藤死す。
デュエルスタンバイ!!  …何つって。

てか犠牲者はまだ存在している。
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