ポケモン不思議のダンジョン時の探検隊・闇の探検隊・空の探検隊~暗黒の未来で~もう一つの選択 作:東海鯰
(・・・・そう言えば、クリスや団長たちもこうして手を合わせていたわね)
最終作戦決行前日の夜
「・・・・・これが時空のオーブか。」
ヒビキは彼らが囲むテーブルの中央に置かれた一つの古びたオーブを見てそう呟く。
「ええ。時限の塔を強行偵察した時に闇のディアルガの背後にあったのを見てね、重要な物ではないかと思って。」
「強奪してきたのね。」
「まあね。最初は分からなかったからアリゲイツと考古学の資料を漁りに漁りまくったわ。そしたらね。」
クリスは一冊の古びた古文書の一文をヒビキとコトネの前に指し示す。
「何々・・・・時空を超えて心を一つにせしめた時、オーブは輝きを放ち未来への懸け橋を切り拓くであろう・・・・か。」
「この時空を超えて心を一つにってのが気になるわね。」
「それは私も気がかりなのよね。この時空というのは過去と未来を示しているんじゃないかって。」
「・・・・となると過去に僕達のように星の停止を食い止めようとしている者が、それも僕らと志を共にしている者がいないとオーブは何もしない・・・ということかな?」
「・・・・・残念だけどそうよ。」
「・・・・・そうか。」
ヒビキはそう言うと席から立ち上がり、コトネとクリスに背中を見せながら指示を出す。
「コトネ・・・・各部隊に作戦開始の準備をするように下知を出してくれ。」
「・・・・・うん。」
「クリスには指示文書の作成を頼む。」
「・・・・・ええ。」
「言っておくが、その指示文書は時空のオーブに関する物だ。この作戦で生き残った者でもう一つの選択作戦を開始させる。」
「!! でも団長!! 今回は私達星の停止調査団総員を使い潰すはずじゃ。」
「・・・・僕も非情にはなり切れないんだ。」
ヒビキは泣いている。後ろ姿でも分かるくらい小刻みに揺れていた。
「・・・・クリス、アリゲイツを作戦から外したまえ。要件はそうだな・・・。」
「戦果確認ってことにしたらどうかな?」
「それだコトネ。という訳だクリス、アリゲイツは待機させる。そして。」
ヒビキはコトネとクリスの方に振り返る。
「マグマラシとベイリーフ。この二匹を生き残らせつつジュプトルとユウキを過去に送り込む。その為に僕はこの命を捧げる。」
アリゲイツは扉越しに団長たちの最期の会議を聞いてしまっていた。
(・・・・団長達はここで死ぬ気なんだ・・・)
「それに、僕達人間はもう四人しか残っていない。時の歯車が狂い、食料不足から核戦争が起きて、多数の人間が死に絶え、環境の変化に強いポケモンだけが生き延びた。僕達だってそう長くは生きられない。もう、希望のない生き物なんだよ。」
アリゲイツはヒビキの言う悲しい現実に心が割けそうだった。星の停止を科学では特定することが出来ず、それぞれの国の指導者や国民は相手国を罵り合い、やがて不足した食料を奪い合う為に戦争となった。ヒビキやコトネ達はその中で助け合うことで今日まで生き延びて来た奇跡の人間であった。
「既に不治の病に侵された体である以上、いつ動けなくなるかなんてわかったものじゃない。なら。」
「魅せてやろう・・・ってことね。私達の。」
「生きざまを・・・ね。」
「ああ。それじゃあ、あとは頼むよ。」
そう言うとヒビキは部屋から出て来た。
「あ。」
「・・・・・聞いていたのか。」
「・・・・はい。」
「なら、丁度良かったな。何をするべきか・・・それが伝わったことだろう。」
「・・・・やんわりとは。」
「まあいい。詳しい内容は追って指示する。さて・・・・ごほっ・・・。」
急に咽るヒビキ。
「・・・・はあ、はあ、はあ。見ただろうアリゲイツ。これが僕達生き残った人間の最期だ。このまま生きていても苦しむだけだ。ならその生きざまを君達の心に刻み込んでやろうってね。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
ヒビキは笑みを見せアリゲイツの頭を優しく撫でた。
(・・・・ああ、この人はやっぱり本当に死ぬ気なんだ。そしてそれを全く後悔していない。まるで仏のような澄んだ表情・・・でもそれが何故かやるせないようにも見える・・・)
そんなことを想いながらアリゲイツはオーブに手を置く。
キラン!!
すると眩い光と共に三匹の視界を完全に奪う。
「うわああああああ!!」
「な、何なのこの光は!!」
「・・・・これが時空のオーブの力・・・。」
???
「何? 時空のオーブが発動しただと?」
「はい。何度も解析を行いましたが間違いなく時空のオーブは発動しているとのことです。」
「ぬう・・・厄介な真似をしてくれるな。星の停止調査団・・・死をも恐れぬ自殺願望者共よ。折角時渡りに介入してやったと言うのに・・・。しかし発動したということはつまり過去の世界でも歴史の改変作業が始まっているということか・・・。」
「如何致しましょうか。」
「ふうむ、この私自らが過去に飛び、ジュプトル達を始末する予定であったが、計画を変更しなくては。まずは足元の火から消すとしよう。」
黒い影は目の前の像に向けてあくのはどうを放つ。
「・・・・これで時空のオーブも大人しくなったことであろうな。しかし未だに抵抗するとは。流石は創造神も伊達ではないということか。これは徹底的に封印しなくてはな。」
森の高台
「・・・・うう、一体何だったんだ今の光は。」
「何か四つん這いのポケモンが見えたけど・・・それに天空に伸びる階段が見えたかと思ったら消えちゃって・・・。」
「それよベイリーフ。その四つん這いのポケモンこそがこの世界を変える鍵よ!!」
アリゲイツは一枚の紙を二匹に見せる。
「こんな感じのポケモンじゃなかった?」
「「ああ!!」」
「どうやらビンゴみたいね。このポケモンはアルセウス。この世界を創ったと言われるポケモンよ。そして天空に伸びる階段。それはアルセウスのいる場所へと繋がる道。まあ、何者かによって閉ざされてしまったみたいだけど。」
「なら、直接アルセウスのいるところまで殴り込めば良いわけだな!!」
「マグマラシ・・・流石にそれは無理でしょ。」
少々呆れながら話すベイリーフ。
「いや、マグマラシの言う通りよ。光は弱くなったけど、オーブは私達が進むべき道を示してくれているわ。」
弱く光を放つオーブは遥か彼方へ向けて一筋の光を放っていた。
「ベイリーフ、この光の筋の先には何があるか分かるか?」
「ええと・・・ちょっと待っててね。」
直ぐに地図を漁り出すベイリーフ。
「・・・・あ、あった!! ここじゃない?」
(続く)