走る
走る
走る!
ひたすら走る!!
後ろから迫りくるアニメの線画の様な畏敬の影、人類の天敵とも呼べる生命体で特異災害ノイズ。その牙は今、私と私の手を必死で握る小さな少女に向けられている。まるで悲劇のヒロインの如く絶体絶命の状況に置かれているが、この状況になっているのは極端に言えば自業自得。
と言うのも経緯は簡単で学校が終わりの帰宅中、遠回りになるが予約していたアニメのサントラ(SP特装版)を受け取りにCDショップに向かっていた。この寄り道は同居人に伝えている為、特に問題は無い。
問題はここからでCDショップが目と鼻の先になった瞬間、私は辺りが静かすぎる事にようやく気が付いた。その時、視界に映ったのは灰の山々。瞬時にノイズが現れた事に気が付き、近くのシェルターに走り出そうと引き返す。しかしながら現実は甘く無く、少女の悲鳴が私の耳に聞こえた。
一瞬、無視して走り出そうかと思ったが『こんな時アニメの主人公ならどうするか?』と考えた時には、悲鳴が聞こえてきた方向へと走り出していた。そこに居たのは今にもノイズに襲われそうな少女。間一髪のところで少女を助けた私はそのまま鞄を持つ反対の手で少女の手を握り走り出す。
何度も出くわすノイズを右へ、左へと蛇行しながら我武者羅に走り回る。元々運動は得でないのもあり息が上がるのは早く、少女の方も体力は限界で今にも転びそうにふらつく。それでも何とか工場地帯へと逃げて来た私達。
「「ふぅ~~~」」
そのうちの一つの建物の屋上へと昇り、少女共々座り込む。ゆっくりと息を吐くと同じく息を吐いた少女と視線が合い、自然と笑みを浮かべる。
「大丈夫?」
自然と零れた言葉。大丈夫どころか首の皮一枚で助かってる今の状態で私は何を言ってるんだと思ったけど、首を小さく縦に振る少女の姿を見て気合を入れなおす。アニメなら安心しきった時に新たな絶望が訪れる展開だなと頭に思い浮かんだけど頭を振り思考を中断させ少女の頭を撫でる。
「ははわっ!」
くすぐったそうに笑みを浮かべる少女。彼女の頭から手を除け立ち上がり、建物内へ続く扉を開けようと試みる。しかし扉はしっかりと施錠されており中に入れない。
(あ~、これはやらかしたな)
「お姉ちゃん!」
なんて考えていたのが良くなかったのか、さっきのフラグ発言のせいか。少女の頻拍した声に慌てて振り返ると大量のノイズが私達を囲んでいた。あわてて少女を背中に隠すけど全身が恐怖で震えているのが自分でも分かる。
「______悠翔」
なんと倒れない様に振るえる足を背にした壁で支え、私より怖いはずの少女を守るためにアニメの主人公の如くノイズを睨め付ける。その一方、私の口から弱々しく呟かれたのは高校受験の最中に新しくできた友人の名前だった。その声は虚しく、風の音によってかき消され夜空の星へと消え行く。
無理だと分かっていても少女を抱きしめ、私がノイズとの壁になる。だけどそれは少女がほんのちょっと長く生きるだけで終わる………
「______っえ!?」
………と思っていた。
「……………………ッハ!」
ノイズの指先が私に触れようとしたその時、空を飛ぶ不思議な機械が瞬く間にノイズは吹き飛ばしチリへと変えた。唖然とする私達の前に機械の上に載っていた影が私達を背に屋上に降り立つ。
夜空に生える金色の装甲、輝く赤い瞳を持ち、腰にはベルトを巻いた2本角の人型。彼か彼女か?僅かな息音では判別がつかず、だけど不思議と頼りになる大きな最中。
「___仮面ライダー?」
無意識に私の口から零れた言葉。それは都市伝説であり友達との会話のネタぐらいの物。
「……………! ……!」
「カッコいい!!」
最小限の動きでノイズをいなしては手足で容易く撃破する仮面ライダー。先程まで視界一面にノイズがいたのが嘘かの様に今はもういない。短時間でノイズを全滅させた仮面ライダーに目を輝かせる少女。
火のない所に煙は立たぬ。そのことわざの意味をこの身で体験した私。だけどこの出来事は日常に隠れたアニメの設定の様な現実への入り口でしかなかった。
スマホ買い換えたらこの作品の設定メモが出てきたので、過去話の細かな修正がてらに。内心この設定どうしようと思ってます。