たぶんよくある留学したヒッキーがお金持ちになって帰ってくる話   作:小鳥と点心

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26話 ゴールデンウィーク⑦

 

 

 あの後、少しして小町とことりさんが寝落ちしたのでお開きになった。

 みんなが布団に入った頃、俺は旅館の前の砂浜にいた。しかし、5月とはいえ流石に少し寒いな。

 

 

雪「風邪ひくわよ」

 

 雪乃がタオルケットを持って来てくれた。

 

 「ありがと」

 

 受け取ってすぐに羽織った。

 

雪「あなた、変わったわね」

 

 「罵倒のしがいがなくなったってか?」

 

雪「なぜそうなるのよ、被虐性欲者君」

 

 「なぜそうなる。あと、俺はマゾじゃねえ」

 

 それに原型が無くなっているじゃねえか。

 

 「それで何の話だ?」

 

雪「八幡がアメリカに行く一週間前のこと覚えているかしら」

 

 「あのときのか、あれは忘れられないよ」

 

 

 あの日、千葉を色々と連れまわされた。そして、一緒にいた全員から告白された。俺はそれをすべて断った。これから留学するのにこんな大事なことは答えられないからと。これは建前で、本当は怖かったのかもしれない。少しずつ人から向けられる好意に向き合えるようになったが、それでもまだまだあのときの傷は癒えていなかったらしい。今まで逃げて来たけどそろそろ向き合わなければならない。

 

 

 「で、その事で何かあったのか?」

 

雪「ええ、あったわ。あなたが帰ってきてから何度も話し合ったわ。あなたが留学を終えて、会社を作って帰ってくるなんて予想外だったから」

 

 「で、どんな話になったんだ?」

 

雪「あなたは今、会社をこっちに持ってくるという大きな計画をしているじゃない?」

 

 「ああ」

 

雪「それで私たちは答えをすぐに求めないことにしたわ」

 

 「え?」

 

 俺はてっきり、すぐにでも決めろと言われると思ったので驚いた。

 

雪「当然じゃない。あんな大きな会社の将来を左右する大切な時にこっちの私情を挟むのは間違っていると思ったのよ」

 

 「それでいいのかよ」

 

雪「あら、あなたはこんな大事な時に会社とは全く関係ないことで労力を増やす人なの?」

 

 「いや、それは嫌だけど」

 

雪「それに由比ヶ浜さんがそれでいいって言ったから」

 

 「なんであいつが」

 

雪「由比ヶ浜さん私たちの中であなたのことを一番早く好きになったのよ?彼女が待つと言っているのに私たちが出来ないなんて言えないわ。まあ、あなたの状況を理解したうえでそう判断しただけだけど」

 

 「そうか」

 

 そこまで考えてこの答えを出したんだろうな。いつもなら絶対に誰が抜け駆けするかを伺っていそうなのにな。

 

雪「当然よ。あなたのことが好きなのだから」

 

 「こころを読まないでもらえません?」

 

雪「この状況で考えることなんて限られるわよ」

 

 「それもそうか」

 

雪「その代わり、ガンガンアピールしていくから」

 

 「ある意味で面倒なんだけど」

 

雪「なら今ここで選んでもいいのよ」

 

 「…………」

 

雪「それもそうよね。あなたはそんなに軽く決めたりしないもの。だから、あのときも先送りにしたのでしょ?」

 

 そう、あのとき告白されて保留にしたのは留学があっからだけじゃない。この関係が好きで壊したくなかったから。返事をして、他の二人を傷つけたくなかったから。そして何より、自分が傷つきたくなかったから。そんな自分勝手な理由で保留にしたのだ。そしてまた、こいつらは待ってくれる。だから

 

 

 

 「ありがとう。ちゃんと答えを出す」

 

雪「期待しているわ」

 

 

 

 

 しばらく二人で海を眺めていた。

 

 

 

雪「そろそろ私は戻るわ。あなたはどうするの?」

 

 「もう少しここにいる」

 

雪「そう、風邪引かないようにね」

 

 

 そう言って、雪乃は戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 「ちゃんと決めなきゃな」

 

 

 

 

 

 

 俺は思考の海に沈んでいった。

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