インフレにインフレを重ねる異世界バトルゲームのモブとして転生してしまった 作:霧夢龍人
「おいおい・・・ラスボスワンパンできるゴブリンとか・・・インフレし過ぎじゃねぇか?」
部屋の暗がりの中、誰もいないにも関わらず一人愚痴をつく。
現在俺がやっているのは、ファイナルフォースタクティクス───通称FFTである。
広大かつ自由度が高いマップに、高グラフィック。豊富な職業とスキル、そして育成によって変わるステータス・・・バトルもターン制ではなくリアルタイムであり、モンスター達との白熱した戦いが楽しめる・・・というのが売りのゲームなのだが、いかんせん評価が悪い。
なぜなら中盤で倒したボス達が、次の章では雑魚敵としてフィールドを徘徊しだしたり・・・レベルを上げまくっても、敵のステータスにごり押しされたり・・・兎も角、兎も角インフレが酷いのだ。
なんなら最終盤面に出てくるゴブリンの方が、ラスボスである魔王をワンパンで倒せてしまう程に、ステータスの上がり幅がおかしくなっていく。
この事から、ゴブリンに倒される魔王さん(笑)と良く弄られているが、魔王は悪くないのだ。
全てはバランス調整がキチッている運営が悪いのである。
「おら!これでどうよ!」
ボタンを押すと、自分の操作する主人公キャラクターが技を繰り出す。
技の熟練度がほぼMAXかつ、カンスト間近のステータスから放たれる技の威力は想像を絶するモノだろう。いくら、ラスボスをワンパンできるゴブリンでも、瀕死は免れないだろう───って、こいつ避けやがった!?
と、驚くのも束の間、強固な鎧に身を包む主人公キャラクターを嘲笑うかのように、防御力無視のクリティカル攻撃を三回連続で浴びせてくる。
「・・・お前本当にゴブリンかよ・・・」
理不尽な結果に涙が出そうだ。勿論、そんな凶悪な三コンボを喰らって生き残れる筈がなく、ゲームオーバーという画面と共に、ゴブリンと戦う前に戻された。
・・・今なら台パンしても許される。ていうか、台パンしない方がおかしいぞコレ。
だがここはぐっと堪えるんだ俺。
大体、こんなクソゲーにここまで時間を割けた時点で俺は良くやってる。うん、きっとそうだ。
と、溢れ出る怒りを何とか抑える。
「・・・あぁもう、頭痛くなってきたぞ・・・」
あまりのストレスで体が異変を訴えているようだ、先程から頭痛が止まらない。
軽く頭を抑え、なんとか気を落ち着ける。
「あれ・・・今度はなんか目眩が・・・」
頭痛に苦悶していたら、今度は突然目眩が俺に襲いかかる。
うっ・・・な、なんだか吐き気も。
暗い部屋の中で、寝転がれる丁度いい場所を見つけ、横たわる。
もしかして、徹夜でFFTを進めたから体が限界を迎えているのだろうか?
冗談じゃない。
たかがゲーム如きでここまで体調が悪くなるものだろうか?
おかしいおかしいおかしい。
寒くて体の震えが止まらない。
しかし、体の震えとは反していつの間にか汗も止まらなくな・・・え?
「・・・これって、汗じゃなくて・・・」
汗をぬぐった手を見ると、そこには真っ赤に染まった俺の手が・・・。
「待て・・・待て待て、俺もしかしてここで・・・死ぬ?」
別に不自由なんてなかった。
そこそこに良い大学を出て、そこそこに良い企業にもつけたし、そこそこに良い給料と生活を送っていた。
まぁ、クビになってからは暗い部屋の中で黙々とゲームをしているだけなのだが・・・しかしそれでも、別に後悔しているところはなかった。
むしろ、まだまだやりたいことがある。
未だに彼女も作った事がないし、両親にも恩返しが済んでない。
ここで死ぬわけにはいけないのだ・・・だが、目蓋は俺の意識に反して、ゆっくりと閉じていく。
もう目を開ける気力もない。
それになんだが、もう何も考えられなくなってきた。
不味い・・・不味いのに・・・。
俺の・・・意識は・・・闇に・・・消えて・・・。