モモンとナーベの冒険~10年前の世界で~ 作:kirishima13
第1話 ナーベラル・ガンマ
私の名前はナーベラル・ガンマ。
ナザリック地下大墳墓における最終防衛拠点である第9階層を守る戦闘メイド
我々は至高の存在より創造されたものでありその命は御方のためだけに捧げられる。そのために存在しているというのに鉄壁を誇るナザリックでは一度も我々の階層まで攻め込まれたことがない。それは残念ではあるが誇らしいことでもある。
そんなナザリックは至高の存在により栄光をもたらされ、毎日が光り輝くような日々であった。
私の創造主である弐式炎雷様やほかの至高の御方々はお隠れになってしまっているものの、モモンガ様という最高位の至高の御方にお仕えすることができてこの上ない幸せであったのだが……。
「はぁ……いよいよユグドラシルのサービス終了かぁ……」
モモンガ様のその言葉に心がざわつく。『サービス終了』とは何を指すのだろうか。それはもしかして最後に残られた至高の存在がこの地から去ることを指すのではないかと。
「アルベド……ついにここまで攻めてくる敵はいなかったが……ご苦労だったな」
守護者筆頭であるアルベド様の肩を優しく叩くモモンガ様。そしてセバス様から順にプレアデスにねぎらいの言葉をかけてくださる。
『労いなど不要です。至高の御方々のために働くことこそ我々の喜びです』そう言いたかったがアルベド様が黙っているというのに私程度がモモンガ様に何を言えるというのだろう。
そしてモモンガ様が今伝えている言葉、それはまさに役目を終えた者に対するものなのではないだろうか。
もしかしたらモモンガ様も他の御方々と同様にこの地を去ってしまうのではないだろうか。
───私の肩を叩かないで、どうか叩かないでください
───お願いします、いつまでも仕えさせてください
その願いもむなしくモモンガ様の手が私の肩へと触れる。至高の存在に触れられた喜びとともにたとえようもない恐怖を感じる。
───しかし
モモンガ様との別れは訪れなかった。
♦
「え!?何!?どした!?」
私の目の前でモモンガ様が戸惑われている。いや、モモンガ様が冷静さを失うはずもないのでこれも何らかの理由があっての行動なのだろう。
しかし、私自身は非常に戸惑っていた。それもそのはず玉座の間にいたはずの私とモモンガ様は森の中に佇んでいたのだ。
こんな事態は想定外であるが、こんな時こそモモンガ様をお守りしなくてはいけない。
「モモンガ様!ご安心ください!ここがどのような地であろうともモモンガ様は私がお守りいたします!」
モモンガ様の前で跪き、忠誠の視線を向けるもモモンガ様は顎に手をやって黙り込んでしまわれた。おそらく私などでは想像もできない高尚なことを考えていらっしゃるのだろう。
「NPCがしゃべってるだと……なんだこれは……それにここはどこだ?ナザリックは沼地にあったはず……転移?まさかそんなことが……GMコールも利かないし……」
モモンガ様の言葉に神経を集中するが、その言葉は難しく私の頭ではほとんど理解できない。私ではモモンガ様の質問に答えられない……お役に立てない……、それならば……。
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「えっ!?何やってんの!?」
「モモンガ様には虫一匹近づけさせません!」
「むし!?」
「<
「今蝶々が消し炭になったんだが!?」
「<
「ちょっおまっ!?」
これで一通りモモンガ様に近づく者は排除出来ただろう。モモンガ様もさぞご安心なされたと思ったのだが……モモンガ様は頭を抱えて蹲っていた。どうされたのだろう。
「サービス終了時刻が延びたという可能性……それはありえる。そしてその後別のサーバ……システムエラーによりそこへ飛ばされたとして……問題はナーベラルなんだよ……。勝手に動いてるし……そんなことはあり得ない……では誰かが操作してる?あー、えーっと……あなたはプレイヤーの方ですか?」
モモンガ様がここに来て初めて私を見てくださる。燃え上がるようなその猛々しい眼光に見つめられると自然に鼓動が早くなるような喜びを感じた。
「モモンガ様。私はプレイヤーではなくナーベラル・ガンマ、モモンガ様のしもべでございます」
「えっ!?いや、そんなことないですよね?そんなプログラムが入っているはずもないし……あの……中の人は誰ですか?」
「中の人とはなんのことでしょう?申し訳ございません、モモンガ様の質問に答えられない愚かなこの身をお許しください!」
土下座をするように頭を下げると『ひぇっ』と息を呑むような声が聞こえた。モモンガ様がそのような声を出されるはずがないので空耳だろう。
「ほ、本当にナーベラル・ガンマなのか……?」
「はい!」
「だけどそれをどうやって証明する……?いや、出来るか?ユグドラシルでは18禁行為は禁止されていたはず。電子法でもそのあたりの規制は厳しい。それを超えた行為が可能であるならば……」
モモンガ様がまた難しい話されて考え込んでおられる。さぞ高尚な熟慮をなされているのだろう。理解できればもっとお役に立てるものを。愚かなこの身がもどかしい。
「やるか?いや、やらなければいけないよな……これは……必要なこと……必要なことなんだ……ナーベラル!」
「はいっ!」
「む、胸を触ってもいいかにゃ?」
モモンガ様の言葉に一瞬耳を疑う。しかし至高の御方に必要とされることこそ創造されし者の誉れ。モモンガ様が胸を触ってくださるという行為にどのような意味があるのかは分からないがそれでお役に立てるのであれば至高の喜びである。
「どうぞ!モモンガ様!」
躊躇うことなく胸を差し出す。胸をやや強調しているメイド服であるため御手を触れるのに支障はないだろう。
モモンガ様はやや躊躇した様子を見せた後、私の胸に両手を近づけ、優しく揉み始めた。
「ふむ……ゲーム内であればこのような18禁に準ずるような行為は不可能であったはず……なるほど……であるならば……」
難しい顔をしながらモモンガ様がつぶやく。やはりモモンガ様の発する言葉は難しくてわからない。代わりに私の胸をモモンガ様が揉むことの意味を考える。
モモンガ様の大きな手は私の胸全体を包むように揉んでくださっている。時折指先が胸の先に触れるたびに声が出そうになるが何とかこらえる。
モモンガ様がなぜこのようなことをなさるか。
普通に考えればモモンガ様が私に懸想して……いや、それはありえないことだろう。私程度よりもっと素晴らしい相手がモモンガ様にはいらっしゃるはずだ。
「だがこの手から伝わるぬくもり……こんな機能はなかったはず……それに匂いも……」
モモンガ様が顔を近づけて私の匂いをかがれる。胸を揉まれながらそのようなことまで……。これは私の体をお求めだということだろうか。
守護者筆頭たるアルベド様をはじめ守護者の皆様を差し置いて恐れ多いと思うとともに、この場に守護者の方々がいないのであれば私がこの体を差し出さねばとも思う。
そう思うと急に恥ずかしくなってきた。至高の御方の真意を知らなければ粗相をしてしまうかもしれない。これは確かめねばならないだろう。
「あ、あの……モ……モモンガ様は私の体をお求めなのでしょうか……」
恐れ多くて消え入りそうな私の問いにモモンガ様の手がビクリと震えて止まる。そしてその尊い口から答えをお聞かせいただけると思ったその時……。
「なんだよ、こりゃ!?こんな森の中にメイドと……アンデッドだと!?」
不躾な声とともにそこに現れたのは青みがかったボサボサの髪にナザリックでは見ないようなみすぼらしい服、腰にレア度が最低ランクであろう剣をさした若い二足歩行の生物……人間。
つまり虫けらが現れた。