モモンとナーベの冒険~10年前の世界で~   作:kirishima13

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第44話 発掘

「うおおおおおおおおお!」

 

 モモンガは100レベルの戦士の筋力を使って怒涛の勢いで穴を掘り進める。  

 ナーベラルたちとともに掻き出した土はインベントリに放り込んでいくことにより運搬の手間を省いているのでそのスピードは尋常ではない。

 

「希少鉱石がないかと昔そこら中を掘りまくったことがあったなぁ……ほとんど何も出てこなかったけど」

 

 モモンガはユグドラシルで仲間たちと共に希少鉱石を探して回っていた頃を思い出す。極まれに超希少金属や鉱山を見つけた時は皆で飛び上がるほど喜んだものだ。

 

「……むっ。これはなんだ?……ただの岩か?」

 

 順調に掘り進んでいたところにガチンと音がしてシャベルが止まる。岩の層にぶつかったような感触だ。モモンガはシャベルからピッケルに持ち替えると地面へ向けて打ち下ろす。

 地中にあった岩が粉々に砕けた。

 

「<上位道具鑑定>」

 

 試しに掘り出したその岩に鑑定魔法をかけてみるが、鉄や銅さえ含まれていないただの石、つまりゴミアイテムである。

 しかし残念がることはない。100に1、1000に1見つかれば大成功というレベルである。

 

 そして掘り続けること数時間、希少鉱石が出てくることもなくついに鉱物以外の物が地面から見つかった。

 

「おっ、植物の根のようなものがあったぞ」

「ちょっとまってーーーーー! なにやってんの!? 本当になにやってんのさ君たち!」

 

 掘り始めてからずっと叫んでいたピニスンがさらに大声を出しているが、残念ながらモモンガたちを力づくで止められるはずもなく……。

 

「モモン様の決定は絶対です。黙りなさい」

「むぐぐ……」

 

 あっけなくナーベラルに口を塞がれ力づくで黙らされる。

 静かになりモモンガは下をあらためて見つめる。巨大な樹木のような肌の一部が見えている。これがザイトルクワエだろう。

 

「もしもし?眠っているところすまないがザイトルクワエ君。ちょっと話が出来ないかな?」

 

 この世界では言語を使うのであれば人外であってもなぜか自動翻訳されている。ならば言葉は通じるのではとモモンガは木の根をノックしたのだが……。

 

 

 

 

───空気まで震えるような地鳴りとともにまるで血管のように根が動き出した。

 

 

 

 

「お、おおおおおお!?」

 

 モモンガに続きナーベラルたちも急いで穴から飛び出す。ピニスンにおいては泣きながら木々の間へと逃げていった。

 

 ズルズルと木の根がまるで手のように地面から伸びてくる。植物のつるで出来た巨大な手が大地に手を突き、ザイトルクワエの頭が飛び出す。

 

「これは……でかいな……」

 

 頭だけでも数十メートルはありそうだ。さらにその口には植物系モンスターであるにも関わらず肉食獣のような白い牙が生えている。

 

「見た目は確かに肉食と言われても頷けるな……。眠ってるところを起こして悪いが話は出来るか?」

「グオオオオオオオオオオオオ!」

 

 どうやらお怒りで話をするどころではないらしい。問答無用にモモンガたちに向けて触手を振り回して打ち付けて来た。

 

「……会話は成立しないようだな。頭の中身はトロール以下か? <生命の精髄(ライフ・エッセンス)>……HPがすごいな。攻撃も上位物理無効化を貫いてくる。ダメージ量から言って80レベル程度といったところか?ふふふふっ、いいな。ちょうどいいじゃないか!」

 

 モモンガが相手の能力を分析していると今度は触手の表面につぼみのようなものが出来上がる。

 つぼみは口をすぼめたように変形すると、その中からバスケットボール大の巨大な種を噴出してきた。

 硬く重量もありそうな種は地面に当たると炸裂して表層を抉ってゆく。

 

「聞いてたとおり遠隔攻撃もあるのか!ナーベラルたちはいったん離れろ!範囲攻撃を使うぞ!そこのトレントの本体も引っこ抜いて持っていけ!」

 

 100レベルのモモンガであれば余裕で耐えられる攻撃だが、ラナーたちには防げないだろう。

 

 しかしそのモモンガの判断は一瞬遅かった。

 

 退避をしつつあるラナーへ向けて種弾が向かっていたのだ。

 

「ラナー様!!」

 

 クライムが吠えるとラナーに向けて飛んできた種の前に立ちはだかる。

 それは一目見て自分の実力をはるかに超えた威力を持っているとクライムに分かった。しかし……。

 

(ラナー様が死んじゃう!)

 

 自分を救ってくれた姫を絶対に死なせるわけにはいかない。

 クライムは右手のバックラーを構えると決死の覚悟で種を受け止める。通常これだけのレベル差があればその時点で右手は吹き飛び、貫通してラナーまで命を失っていただろう。しかしクライムの覚悟は限界を凌駕する。

 

 ギギィンと盾を削る音とともになんと種を弾き飛ばした。ノーダメージ……それは武技の発動であった。

 

「で、出来た!?パリィができたよ!」

 

 嬉しそうに武技の発動を喜ぶクライム。

 しかしそれは悪手であった。

 種弾は一つではないのだ。2つ目の種弾が今度はクライムへ向けて飛んでくる。予測してなかった2つめの種弾にクライムは構える間もなく体でそれを受けるしかない。

 

「ごぼっ……」

「クライム!!」

 

 敵の射程外へと逃げつつあるラナーが振り向くとクライムの胸の中心に大きな穴が空いていた。クライムは口から血の塊を吐くとその場に倒れ伏す。

 

「……クライム……クライムー!」

 

 <生命の精髄>を発動していたラナーの目にはクライムの体力が完全に消え去っていることが確認できている。

 

 

───死んだ。

 

 

 

───クライムが死んだ。

 

 

 

 クライムは……ラナーに取って家族と比べても短い付き合いだった。

 

 情を育むには短い期間だった。そしてラナーにとって情などと言うものは効率の前には優先順位の低いものであった。

 

 しかし……クライムは子供らしく泣いて、そして笑って……自分にないものをたくさん持っていた。人間を愚かと見限ったラナーだが、いつの間にかクライムだけはなぜか心の支えとなっていた。

 

 モモンガたちと共に一緒にラナーに生きる希望をくれた本当の仲間だと思っていた。

 そのクライムが死んだ……。その事実に心が張り裂けそうになりラナーは叫ぶ。

 

「クライムーーーーーー!!」

「おっ、クライムが死んだか!ちょうどいい!ついでに無駄な戦士系職業(クラス)を消しておけ!ナーベ!」

「はっ!承知しております!死者蘇生(レイズデッド)!」

 

 叫ぶラナーとは対照的な冷静な声。

 モモンガとナーベラルだ。さらに死んだことがちょうどいいとばかりにナーベラルにあえて低位の蘇生魔法を使わせる。当初のパワーレベリングの際にLV1で止まってしまった不要職業(クラス)を消してしまおうというのだろうが……。

 

「あ、あれ、らなーさま?」

 

 あっけなく生き返ったクライム。

 魂の海へとたゆたう間もなく現世へ蘇らせられ、弱体化の影響かふらふらとしながら立ち上がろうとする。

 ラナーは思わずクライムに抱きつく。

 

「クライム!」

「モモン様の指示が聞こえないのですか。さっさと離れますよ」

 

 感動的な場面であるはずだが、余韻に浸る間も何もあったものではない。

 ナーベラルはラナーとクライムの首根っこを掴むと種弾の射程外へと引きずってゆく。

 

 ラナーはクライムと共に引きずられながらあらためて思った。

 

(……軽い!モモンガ様にとって命の価値は軽すぎる!でもいつかモモンガ様が言っていたとおりね……。死ぬことなんてモモンガ様にとってはすぐ治せる状態異常の一種に過ぎない……)

 

 クライムに至っては死んだということさえまだ理解していないような有様である。

 感情がないと思っていた自分以上に無情なモモンガに畏怖の念を感じるとともに、生死さえ自由自在に操る超越者……それはまさに……

 

(神!モモンガ様こそ本当の神に違いないわ!)

 

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