□王都アルテア 【──】
管理AIの猫に紐なしバンジーをさせられ、降り立ったのは草原。少し先を見ると立派な城門らしき建物が見える。
僕がチュートリアル空間で選んだ所属国、『アルター王国』。白亜の城がトレードマーク。まさに西洋ファンタジーといった国であり、騎士の国と呼ばれたりもするらしい。
なお今の僕の格好は、紺色の剣道着みたいな初期装備『和装』と、『木刀』なので見た目的には天地─和風な国─の人みたいなので、街に入ったら浮きそうだ。
西洋ファンタジーと和風の国だったら大体後者を選ぶのだが、天地は修羅の国らしく、流石にいきなり初心者が魔境に飛び込むのはなあ…という事で選ばなかった。ので次に興味があり、比較的平和そうなアルターを選んだ。
現実では中々感じることのできない景色を全身で楽しみながら城門へ歩いて進む。
「やっぱすげぇなぁ…!」
思わず声に出してしまうくらいリアルだ。風も、土も違和感のかけらもない。
数分歩くとアルター王国の王都アルテアに到着。めっちゃ大きい門にはやはりと言うか門番さんがいた。でも人の流れを見るに出入りは自由で、毎回門番さんに荷物チェックを受けるとか、そういうのは無さそうだ。ちょっと無防備じゃないのぉ?テロとか起こし放題じゃん。
なんて物騒な事を考えながら門を潜ると、そこにはファンタジーが広がっていた。
中世っていうのかなぁ?白色の目立つ、日本ではお目にかかれない街並みだ。
街の人つまりNPC─デンドロではティアンと呼ぶ─の格好も中世ヨーロッパ風?僕はナーロッパしか知らないんだけどそんな感じ。
「おーい!そこのマスターさん!ウチの店よってかないかい?今ならサービスしとくよ!」
屋台にいる元気そうなおばさんに話しかけられた。第一村人発見!
「へぇ。これ焼き鳥ですか、美味しそう。何リルですか?」
「一本30リルだよ!カッコいいマスターさんは特別に二本で50リルでいいよ!」
高いのか安いのか分からないが、とても美味しそうだし、おばさんも良い人そうなので2本買ってみる。
「まいどあり!熱いうちに食べとくれよ!」
受け取ったその場で頂く。
「あつッ。でも美味ぇっす!」
「ははは!そりゃ良かった。ゆっくり噛んで食べなよ」
はぇーすっごいAI。流石デンドロ。ちゃんと会話が成立するんだねぇ。しかも不自然さがない、中に人とか入ってないんだよね?にしてもこの焼き鳥ガチで美味い。現実の近所にある焼き鳥とは比べ物にならない。
「ごちそうさまでしたー」
買い食いも済んだところで、まずはジョブに就こうか。デンドロはジョブに就いてないとレベルが上げられないらしいからね。
『メインメニュー』と呟くと、ゲーム画面のウィンドウ的なやつが出現する。そこには自分のステータスや、装備、道具などを確認出来る。今回使うのはマップ機能。チュートリアルで王都の地図を貰ったので、僕は目的地を探した。
発見。目的地はクリスタル。よく分からんがこのクリスタルに触るとジョブに就けるらしい。まぁゲームだし深く考えなくてもいいか。
時々ティアンに話しかけられたり、他のマスターの様子を伺いながらジョブクリスタル、もといハ◯ーワークへと足を進める。
ハ◯ワに到着。空いていたのですぐにクリスタルに接触、するまえにデンドロのジョブについておさらいだ。
ジョブには下級職と上級職、超級職と三つの段階がある。
下級職はほとんどの場合無条件で転職出来るが、その分大して強くはない。そしてレベルの上限は50で、六つまで就くことが出来る。
上級職は強いが転職の条件が厳しく、サービス開始2日の時点ではまだ誰も就けていないようだ。そしてレベル上限は100、二つまで就ける。
超級職については…よく分かってない。まだ誰も就いておらず、ティアンからの情報しかないので。ただめっちゃ強くて、レベル上限がない事は判明している。
さて。おさらいもこの辺で良いだろう。僕はクリスタルに触り、出現したウィンドウに表示されたジョブを眺める。
「えーと、いちにいさんしーごー…何個あんのコレ?」
ジョブ多すぎィ!確実に500は超えてるぞ?デンドロぱねぇわ。さすがルイス・キャロル。略してさすルイ。
ジョブの数が多すぎて頭が痛くなりそうだが、何とか僕は御目当てのジョブを見つけた。
ジョブ【
初期スキルは《剣術》。戦闘系はんようスキルで、効果は簡単に言えば『剣が使える』。レベルを上げていけば属性を纏った剣とかも使えるようになるだろう。多分!
飯も食った!ジョブにも就いた!エンブリオはまだ孵化しないけど多分だいじょーぶ!
それじゃあ……
「一狩りいこうぜ!」
────────────────────────
□イースター平原 【剣士】
東門を出た先には〈イースター平原〉が広がっている。ここで出現するモンスターはレベルが低く、弱い。つまりここは初心者用マップだ。
僕は木刀を肩に担いでちょうど良さそうなモンスターに近付いていく。そのモンスター【リトルゴブリン】は小学一年生くらいの背丈をした小鬼だ。他には少し遠くにウサギもいるな。後で狩ろう。
リトルゴブリンとの距離は大体十メートル。全速力で駆け寄、木刀を頭部目掛けて振るう。途中で向こうもこちらに気がつき、警戒体制を取ったが大した抵抗を見せることもなく僕の木刀が頭にクリーンヒット。
「Gy!」
死んだ。
何か思ってたんと違う…。ブナハブラでももう少し手強いぞ。まぁいい。次!
「Gyaa!」次!
「gyh次!
「g次!
「次!
……
それから1時間ほどイースター平原でモンスターを狩った。成果はレベルが5上昇し、スキルも一つ獲得した。
ステータスはこちら。
レベル:5(合計レベル:5)
職業:【剣士】
HP(体力):258
MP(魔力):36
SP(技力):61
STR(筋力):41
END(耐久力):25
DEX(器用):28
AGI(速度):39
LUC(幸運):17
強くはなってるが、急激ってほどではない。まあ?僕のさいきょーエンブリオが孵化したらもう俺TUEEEしてやりますよ。エンブリオを持つだけでステータスに補正が入るからね。
それと獲得したスキルは《パワー・スラッシュ》と言って、自身のSTRに応じて威力が高くなるという序盤らしいスキル。
1時間狩りをしたわけだけど、現実だと20分しか経ってないんだよな?何これ最高かよ。1日が72時間になってしまったァ!!まぁログイン時間には制限があるんですけどね?
つーかゴブリンとウサギ狩りにも飽きたな。一回街に戻ってご飯食べよっと。
【メニュー】を閉じ、東門へと足を進めようとしたその時。
左手の甲、つまりエンブリオが光を放ち始めた。きたきたエンブリオきたよコレ!!アームズこい!太刀こい!
光が収まり、孵化したエンブリオの姿が現れる。
そこには。
ドラゴンがいた。大型犬ほどの、銀色に輝く鱗で覆われた流線型の体躯をした4本足のドラゴン。鋭い眼。
何よりも特徴的なのは槍のような、現代兵器ミサイルのように尖った大きい翼。
僕はこのドラゴンを知っている。
──バルファルク
前世の記憶によると、『モンスターハンターXX』のメインモンスター。ゲーム内では古龍種という規格外の生物に分類され、【絶望と災厄の化身】【銀翼の凶星】と称されるモンスター。
今世ではアフリカの伝説『狩人と竜たち』において龍という生物ではなく、世界に災厄をもたらす赤い彗星として登場していた。
「キュィイイー!」
バルファルクが飛びついてきた。大型犬くらいの大きさなのでバランスを崩すくらいで済んだが、鱗が刺さって痛い。でも可愛いなぁコイツ。ゲームだと音速で飛行して文明破壊したりするんだけど。
えーと、モンスター型のエンブリオはガードナーって言うんだっけ。とりあえずステータスを確認しよう。僕は戯れてくるバルファルク(とてもかわいい)を撫でながら【メニュー】を操作した。
【天彗竜 バルファルク】
TYPE:ガードナー 到達形態:Ⅰ
ステータス補正
HP:F
MP:F
SP:F
STR:F
END:F
DEX:F
AGI:C
LUC:F
「なるほどな…バルちゃんは優秀だねぇ」
「ピュィイ!!」
あぁ、鱗で腕が削られてく。痛覚切っといて良かった〜。HPは減ってくけど気にせず撫でる。後でポーション買わないと。
それで。ステータス補正ってのは名前通り僕のステータスが強化される。そしてバルファルクのステータス補正は見事にAGI特化。モンハン最速の古龍らしくていいね。
固有スキル
《龍気》LV:-
アクティブスキル。MPとSPを龍気エネルギーに変換し、操作する。
《赤き彗星》LV:1
パッシブスキル。飛行時、AGIが100%上昇する。スキルレベルによって倍率は上昇する。
「ほーん、赤い彗星と龍気ねぇ。よし、バルファルク!あそこのゴブリンを
──キュィイイイー!!
膝の上でキュイキュイ鳴いていたバルファルクは僕の命令を聞くや否や、槍の様な翼を広げて地面に降り立つ。そして猛禽類の鳴き声と機械音が混じったような高音で咆哮。
翼から赤い炎の様なエネルギーを放ち──
数秒後、ゴブリンは爆散。
血と臓物に塗れたバルファルクは嬉しそうに跳ねながらこちらに帰ってきた。僕はバルファルクを無言で撫で回し、HPがけずれすぎて瀕死になった。
To be continued
ステータスは適当なので、余程おかしかない限りは許して…ユルシテ