□王都アルテア 【剣士】XX
デンドロを始めて5日経った。ゲーム内時間で言えば約二週間だ。毎日毎日クエストを受けながらレベリングを続け【剣士】ジョブはLV50に到達、つまりカンストした。そして僕は予定通り【従魔師】のジョブに…就かなかった。
一緒にレベリングして仲良くなった、クマのぬいぐるみを着たマスターが【適職診断カタログ】という便利なアイテムを貸してくれたのだ。このアイテムを使用し、質問に答えていくと今の自分に合ったジョブを教えてくれる優れものだ。
そして質問に答えた僕にお勧めされたジョブは元々就く予定だった【従魔師】と、【
似たようなスキルに《乗馬》があるがそちらは馬範疇生物にしか乗れないが馬に関しては同レベルの《騎乗》より乗りこなせる。つまり特化型な訳だ。
僕はこの【騎兵】に転職した。僕はずっとバルファルクに乗りたかった!!その夢が叶う!!
けれどバルファルクは大型犬(具体的にはガルク)サイズ。僕が乗ると速度が大きく制限されてしまう…。
だが!それは昨日までの話だ!!
【天彗龍 バルファルク】
TYPE:ガードナー
おめでとう!バルファルク は 第ニ形態に進化した!
大きくなったバルファルクの頭を撫でる。
第一形態の大きさは大型犬くらいであった。具体的な数値は体高約100センチ、体長約250センチ、体重は100キロオーバー。【従魔師】ギルドで測ってもらった。
そんなバルファルクだが第二形態に進化したら一回り大きくなった。可愛いね(母性)。
到達形態Ⅱのバルファルクは体高170センチ、体長300センチ、体重は200キロに近い。つまり、僕の頭とバルファルクの翼の高さがほぼ同じなのだ。
確かモンハンで登場するバルファルクの最小サイズが2000センチ程度だったから、バルファルクはまだまだ大きくなると言うこと。可愛いね(父性)。
さて。バルちゃんのステータスだが、全ステータスが剣士をカンストした僕の2倍程度。AGIは《赤い彗星》スキルの補正が入る飛行中なら僕の4倍……1000くらいだ。クソ速ぇや!
新しく増えたスキルは《怒り》。最大HPの30%を下回ると全ステータスが上昇、加えて龍気エネルギーの変換率が上がるらしい。
ちなみに僕へのステータス補正はENDが一段階上がっただけだった。
近くの露店で買った焼き鳥をバルファルクと一緒に食べる。初日も買った焼き鳥だ。すげぇうまい。
と、ここで声を掛けられた。
「おーい。そろそろ行こうぜ」
「あ、ごめん。もう準備出来たの?」
プレイヤー、『ノーノ』。緑色の髪をした、モブ顔の男。彼のジョブは【
そんな彼と僕は二人で、初日にフレンド登録をしてからパーティーを組んでいる。健全な高校生男子の僕としては、可愛い女性プレイヤーと冒険したい気持ちがある。
せめてクマさんいや、クマさんはぬいぐるみの癖してキャノン砲とガトリングぶっ放すファンタジーブレイカーだからなぁ。
「何で野郎とクエストなんざって顔してんなぁ。分かりやすいぜ、坊や」
「人生経験が豊富なおじさまには分かっちゃうか〜。人生経験が豊富な」
「お、喧嘩か?おじさんに喧嘩売っちゃってるのか?」
「バルファルク、脛を齧ってやりなさい」
バルファルクは僕とノーノの顔を見つめると、溜息を吐くかのように頭を下げて歩きだした。なんか今『しょうもねぇなぁ』って聞こえた気がする!!僕まだ《魔物言語》待ってないよねぇ!?
「…行くか」
「…そっすね」
【配達依頼─決闘都市ギデオン】
【護衛依頼─決闘都市ギデオン】
報酬は合計30000リル。配達物を持ち逃げすると殺されます。
◇
「よいしょォッ!」
掛け声と共に剣を振るう。【ゴブリン・ウォーリアー】を大きく上回るAGIで接近、翻弄。隙を見て腕を斬り飛ばし、首を刎ねる。
【騎兵】に転職したのでパワースラッシュ等のスキルは使えないが、《剣術》スキルとステータスは引き継がれているので十分戦える。そしてなによりバルファルクがいるから、この草原辺りに出現するモンスターにはまず負けない。
「こっちは済んだ!ノーノは!?」
「俺の方も問題ねぇ!商人さんも怪我とかねぇよな?」
「大丈夫ですぞ。いやぁ〜はは、流石はマスター。噂通りの実力だ。6日前に初めてジョブに就いたとは信じられませんな」
「そりゃッ、どーも!」
ノーノは器用に依頼人の商人さんと会話しながら戦闘する。商人さんはティアンで、マスターに護衛を依頼するのは初めてなのだそうだ。マスターはこの世界に訪れ始めてゲーム内だと一週間くらいだし。そしてよくそんな奴らに命を預けられるなぁと思う。
さて。襲ってきたモンスターもあらかた倒し、逃走を始めた数匹もバルファルクが追撃し仕留めた。なので竜車に戻る事にする。
「ではノーノさん、引き続き警戒をよろしくお願いしますぞ」
「おーっす、任せてくださいよ。あ、ダブクロ。バルファルクこっちに付けてくれよ。一人じゃ寂しくて死ぬぜ?」
「えぇヤだなぁ。ほら、バルちゃんも死ぬほど嫌そうな顔してるよ?」
「流石にドラゴンの表情は読めねぇけどよぉ。バルファルク俺にめっちゃ懐いてるからな?マジで」
「ハァ?バルちゃんは誇り高きドラゴンだぞ。ノーノなんかに懐くか!」
「ははは!お二人は仲がよろしいですな!まるで親子のようだ」
結局、まあこれも仕事の内かと割り切ってバルファルクをノーノに預けた。それに進化したバルファルクにこの竜車は狭すぎるからな。
つまりノーノとバルファルクは外で警戒。商人さんは竜に騎乗中なので竜車の中には僕一人。暇なので商人さんと話すことにした。
話しでもしないかと聞くと、快く頷いてくれた。やはり商人、コミュ力が高いな。面白くて会話が途切れない。
「え、娘さんがいる?商人さん結婚してるんですか?」
「おや?意外でしたかな?これでも若い頃はぶいぶいと…」
なんとこの商人さん結婚してると言うのだ。しかも馴れ初めや思い出話など、かなり詳しく設定されている。恐らく商人さんが特別なのではなく、全てのNPC─ティアン─が彼と同じだけ設定されているのだろう。
流石に、異常じゃないか?
現実と変わらないグラフィック。五感の完全再現。時間加速。そして人間と変わらないAI。
デンドロはオーバーテクノロジーの塊だと言った話はよく聞くが、ここまでの物なのか。僕は少しだけ、怖くなった。
デンドロが、本当にゲームなのか信じれなくて。
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□山道 【騎兵】XX
「ん…?商人さん、この山道を抜けたらネクス平原に出るんだよな?」
「ええ、この先はネクス平原ですが…。何かあったのかね」
外で警戒中だったノーノがバルファルクを連れ戻ってきた。一体どうしたんだろう。交代して欲しいのかな?
「どしたのノーノ。あ、それ。もしかしてノーノの〈エンブリオ〉?モノクルだから…TYPEはアームズか」
いつの間にかノーノは左目に
「あ、ああ。これは俺のエンブリオ【全知眼 ウジャト】っつうんだが…今それはどうでもいい。商人さん、この先に
──亜竜級のモンスターがいる。それも2体だ。
「ほ、本当か!?何故だ?ネクス平原には20LV程度のモンスターしか生息していないはず!」
「亜竜級って確か…下級職六人分、もしくは上級職一人分の強さだっけ?まあ、別に遠回りして行けば良いんじゃないの?」
そう言うとノーノは眉を顰めて悩み始めた。そして呟くように、葛藤を漏らすように言葉を発する。
「人が…ティアンが襲われてる。このままじゃ確実に全滅だ。マスターも一人いるみたいだが…流石に亜竜2体相手は無理だろ」
正直、意外だった。ノーノがNPCの心配をするなんて。僕の思う彼は、ちょっとやさぐれた面白おじさん。少なくともNPCの、所詮ゲームの仮初の命を気にするような性格には見えなかった。
「助けたいの?」
僕はただシンプルに。ストレートに質問する。ノーノは驚いたように目を開いた後、ゆっくりと頷いた。
「ああ……助けたい。俺は、俺は。ティアンを──」
「よし、分かった!商人さん、ノーノはここに残していきますから、僕に護衛を一旦離れる許可を貰えませんか?」
「…むしろこちらからお願いしたい。あの竜車、私の知人で違いないだろう。クロスくん。マスターとはいえど少年に命を掛けろなどと言うつもりは全くないが…頼むっ。彼らを助けてやってくれ!」
頭を下げている商人さんの手を見た。力強く、爪がのめり込むほどの強さで握っている。
ああ、全力なんだなぁ。
商人さんは。露店のおばさんは。ギルドの受付さんも。
みんな、今を生きる
「バルファルクッ!全速力で行くぞ!」
これから挑むのは『狩り』じゃない。人を護り、救う闘いだ。
僕の声に相棒は、力強い高音の咆哮で応えた。