【天彗龍 バルファルク】   作:ナガレッ伽

5 / 6
RISEにバルファルク来ましたね。しかも特殊個体。
もう皆さん狩りましたよね?最高でしたよね?
間違いなくRISE最強格のモンスター、バルファルク。防具も強いし。完璧ッす。新しいモーションに翻弄されたし…。初見は2乙しました。楽しかった!





第五話 亜竜猛虎

□山道 【騎兵】XX

 

 僕の言葉に応えるようにバルファルクは高音を響かせた。その音に魂が刺激でもされたのか、前世の記憶が蘇る。

 

 立ち塞がる銀色の龍。槍であり、刃であり、砲でもあるその翼。

 赤く染まる胸部に、噴出される赫き龍のエネルギー。

 

──【天彗龍 バルファルク】

 

 かつては討伐対象()であった龍が、今では最も頼れる相棒か。

 

 「バルファルク、全速力で頼む!」

 

 僕は【騎兵】に転職し、バルファルクは第二形態に進化した。《騎乗》スキルは未だLV3だが問題ない。しがみつくだけだから。僕はバルファルクの背中に跨り、飛行の邪魔にならないよう姿勢を低く、腕は太い首に回して固定する。

 

 バルファルクのAGIは約600、そして《赤い彗星》の効果により飛行中はAGI+100%。よってバルファルクのAGIは1200まで跳ね上がる。

 詳しい数値は分からんが、秒速30メートルくらい?まあ、とにかくクソ速い。

 今襲われてる人達とは500メートルは離れてるが、僕という重りがあっても20秒有れば到達できる。

 

 

──KYUYYYY!

 

 二回目の咆哮と共にバルファルクの胸部が空気を吸引する。これは本気で龍気を扱う為の前準備。SPとMPの変換が完了すると、槍翼から龍気が漏れ出していた。ああ、ちなみにバルファルクの槍翼が後方を向いている状態を「彗龍形態」と呼ぶ。移動特化の形態で、ミサイルや戦闘機を連想させるフォルムだ。

 この形態で龍気を噴出すると──

 

 バルファルクが駆け出し、軽く身を浮かせた瞬間

 

 

 気が付けば僕は山道から、開けた平原にいた。

 意識が飛んでいた訳ではない…筈だ。そう、バルファルクが速すぎる。AGIに4倍の差が有ればそれはもう別世界って事か。

 振り落とされないよう強くしがみついたせいで、バルファルクの鱗が刺さってダメージを負う。やっぱ格が違うんすねェ…。

 

 さて、モンスター達まで残り100メートル程度。残り5秒くらい。4、3、2……!

 

 衝撃。

 あまりの衝撃に今度こそ意識が飛んだ。一瞬で戻れたけど。

 

 どうやら、えーッと。ティアンを襲っていたモンスターにそのまま突っ込んだらしい。お陰で一体のモンスターをかなりのダメージを与えると同時に吹き飛ばし、ティアンから距離を取らすことが出来たが……。

 

 こちらも瀕死です。

 

 僕のHP 24/464

 バルファルクのHP 17/841

 

 僕は急いでアイテムポーチから【HPポーション】を取り出し、自分とバルファルクに使用した。HPが30%を下回ったからバルファルクの〈怒り〉スキルを発動するが、今攻め込んでも返り討ちだろう。待ったをかける。

 

 「びっくりしたクマー…けど助かった、XX(ダブルクロス)

 

 「その声に4980リル(ヨンキュッパ)で売ってたクマのきぐるみはッ…!()()()()()!」

 

 キャラクリでミスって着ぐるみプレイを強制されてるシュウ・スターリングさんじゃないか!可愛い着ぐるみに似合わないイケボとゴツい銃をぶん回すファンタジー壊し屋のシュウ・スターリングさんじゃないか!

 

 「失礼な事考えてないクマ?まあ、それよりもだ。XX、今吹っ飛ばした方任せてもいいか?」

 「オッケー。モンスターのステータスは分かります?」

 「ENDは低め。STR、AGIは800は堅いな。亜竜級…ボスモンスタークマ」

 

 名前は【亜竜猛虎(デミドラグタイガー)】。名前の通り、虎だ。ただサイズはバルファルクより一回り大きい。体高2メートルはありそうだ。

 つーかAGI800!?素のバルファルクより速いのかよ。僕の3倍くらいか?よくシュウさん生き残ってんな。確かAGI100前後だろこの人。

 

 「ティアンは?怪我とか」

 「軽症だ。隙を見て逃げるよう伝えてある。…そっちの奴が復帰してくる。任せるぞ」

 

 そう言うとシュウさんはゴツいガトリングをぶっ放す。そして「やっぱり大したダメージにならんクマ…。殴るか」って呟いてた。もはやクマじゃなくてゴリラじゃん…

 

 「KYUYY!」

 「ああ、分かってる。スリーカウントで仕掛けるぞ」

 

 手に握るのは新調したばかりの【アイアンソード】。少し大きめの片手剣だ。防具も勿論初期装備から二回更新して【ソードマン】シリーズだ。今は【騎兵】だけど。

 …どうでもいい事で思考が埋まる。緊張してるんだろう。亜竜級との遭遇は初めてでは無いが、前回はすぐに逃げた。絶対に敵わないと遠目から見ても判断したから。

 

 目の前の【亜竜猛虎】だって格上だ。僕もバルファルクもステータスは劣っている。勝ち目は薄い…デンドロのデスペナルティは現実で24時間のログイン不可だ。楽しみが減るが我慢は出来る。

 だがティアンが助からないかもしれない。それは、何か嫌だ。

 

 ティアンはただのNPCで、データだけの存在かもしれない。もしかしたら本当に、僕らと変わらない魂がある人間なのかもしれない。

 でもいま、ティアンの真実なんて関係ない。どうでもいい!

 

 僕が、ノーノが、シュウさんが!助けたいと思ったから助ける。だって、()()()()()()()()()()()()()

 

 「今ッ!」

 

 剣を構えて走り出す。それと同時に後方で控えているバルファルクが槍翼を前方に展開し、龍気を溜めミサイルのように十発ほど放った。僕では目で追うのも難しい速度で迫るそれを【亜竜猛虎】は全てを回避する。

 

 「GWOOO!!」

 

 咆哮と共に【亜竜猛虎】が僕に向かってくる。推定AGI800、その速度はやはり僕が対応できるレベルじゃない。ステータスも技量も、戦闘経験も何もかもが不足している。

 1秒と掛からずに眼前に迫った【亜竜猛虎】の牙。ピクリとも動かぬ腕と脚。お飾りとかした剣。

 

 「KUYYYY─!」

 

 一撃で僕のHPの全てを掻っ攫うであろう攻撃を避けれたのは、バルファルクによる僕への体当たり。

 吹き飛ばされた僕を置いて始まったのは獣同士の殺し合い。

 

 【亜竜猛虎】の殺害に特化したような爪による引っ掻きをバルファルクは紙一重で回避し、龍気の放出で加速した槍翼による突きで反撃。槍翼は【亜竜猛虎】の肩を掠りHPを僅かだが削った。

 

 「GRRRU…」

 「PUYY…」

 

 一瞬の攻防。それを見て僕は悟った。

 

 「これ、無理ぞ?」

 

 えぇ〜?何アレ速くない?僕のAGI300くらいよ?一応【剣士】カンスト、バルファルクのステータス補正はAGI特化なんですけど…ついていける気がしない。

 むぅぅん。全速バルファルクよりは遅いが、対応できるかと言われると厳しいな。もう少し慣れが必要だ。

 

 ちらりとシュウさんの様子を見る。まだ、生きてますか…?

 

 「シィッッ!」

 「GAAッ!?」

 

 えぇ〜…シュウさん殴ってるし蹴り入れてる。AGI差10倍近くだよね?ナニあれ?攻撃避けてるし、反撃もしてる。えぇ…?

 

 ま、まあ。やれる事をやれば良いさ!ぼかぁバルファルク様のサポートに専念しましょうかねぇ!?

 

 

 僕の役目はバルファルクのサポート。敵の妨害、消耗を狙い、バルファルクの回復、いざと言うときの盾。

 

 ゆっくりと、ヘイトを買わないように猛虎の側面に回る。それに猛虎は反応するが、バルファルクの方を向いたままだ。…脅威度の判定は済んだのだろう。雑魚はどうでもいいようだ。

 静かな睨み合い。それを崩したのは……

 

 「今のうちに逃げるぞっ!走れ走れ!」

 「ぉおっ、お!くそったれ!死にたくねぇ〜!」

 

 竜車から逃げ出したティアン。荷台を引く竜は既に殺されているので走って逃げるしか無いんだろう。

 猛虎にティアンを襲う様子は、ない。『勿体ねえ』みたいな顔をした気はする。反対にバルファルクはティアンに目もくれず駆け出している。

 ティアンに意識を割いた猛虎は必然、遅れをとった。

 

 地面から両脚が離れ飛行判定のバルファルクは〈赤い彗星〉の効果が乗る。更に彗龍形態での龍気放出による加速も合わさり猛虎を余裕で上回る速度で突撃した。バルファルクのぶちかまし。 

 バルファルクにも反動でダメージが入るが、それ以上に猛虎がダメージを負い、大きく怯む。

 

 その怯みを逃さずバルファルクは追撃する。爪で引っ掻き、噛みつき、槍翼で肉を穿つ。【亜竜猛虎】は恐らくAGI、STR型のステータス。ENDつまり防御は低めだろう。HPはかなり削られたはず。

 

 僕も一応攻撃したんだからねっ。バルファルクのぶちかましで怯んだ隙に背後に回って猛虎の尻尾を切り落としてついでに後脚を軽く切った。

 

 デンドロはリアリティが高い。それには戦闘のシステムも含まれる。現実的に考えて尻尾と脚を切られたら痛いし血が出るさ。猛虎に状態異常【出血(小)】が追加される。

 そしてそれは猛虎を怒らせるには十分だったようだ。

 

 「GRRRRAAA!!」

 

 咆哮。

 

 スキルの効果によるものかビリビリと身体が震え、動かない。バルファルクも同様だ。

 動かない格下なんて案山子ですよね。そして猛虎さんは弱い方の案山子から減らしていくらしい。つまり……僕だッッ。

 

 「GRRRRAAA!!」

 

 猛虎が駆け出すと共にスキルの効果が解除、身体が動く!

 

 「うぉッおおぉ…!」

 

 構えた剣で前脚の振り下ろしをギリギリで受け止めた。STRでは大きく劣る。力比べは愚の骨頂!受け流す技量はないので剣を手放し、後ろに飛び退く。

 

 猛虎の追撃。

 

 相手は自分より3倍以上速く、一撃で僕は瀕死もしくは即死。だから相手の動きを視て、攻撃を予測するしかない。無駄な思考は一切止んで生存への道だけを模索する。

 

 右上からの振り下ろし、バックステップで回避。

 連続で左から引っ掻き、バックステップで回避。

 噛みつき、横に飛んで回避。

 噛みつきからの体当たり、両腕を交差し防御。敢えて踏ん張らずにそのまま吹き飛ばされる。一撃でHPが二割を切った。

 硬い地面と衝突、HPが一割を切る。

 

 猛虎が迫り、トドメを刺さんと爪を振り下ろす。転がって回避。

 連続で爪が振り下ろされる。緊張も合わさり息は切れ、回避もままならない。

 詰みだ。

 

 僕が一人だったなら。

 

 「バル…ファル、ク…!」

 

──KYUYYYY!!!

 

 僕を守るように槍翼を大きく広げて構えた。バルファルクの翼は飛行と攻撃の為のものであり、防御に用いられる事は殆どない。故に。

 猛虎の一撃を受けた槍翼の鱗には罅が入り、所々剥がれ落ちる。血も流れ出し、バルファルクのHPは一気に()()()()()()()

 

 スキル〈怒り〉の発動条件は、最大HPの30%以下。

 効果はSTR、AGIへの補正と攻撃力の上昇!

 

 バルファルクの頭部と翼が黒化し、龍気が過剰なまでに放出される。

 

 その姿を見た者は、不吉さを感じるかもしれない。凶兆だと言う者もいるだろう。だが僕にはその姿が、何よりも輝いて見えるのだ。

 

 

 

 

 





矛盾点等ありましたらどうぞよろしくおねがいします〜。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。