【天彗龍 バルファルク】   作:ナガレッ伽

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第六話 彗星

□ネクス平原

 

 決闘都市ギデオンへ続くネクス平原、そこで二人の〈マスター〉と二匹の【亜竜猛虎(デミドラグタイガー)】が死闘を繰り広げている。

 

 熊の着ぐるみを着た男、シュウ・スターリング。シュウのステータスはSTR(筋力)特化型であり、AGI(速度)は100にも届かない。対する【亜竜猛虎】のAGIは800を上回っている。

 常識的に考えて、自身の10倍の速度で動く虎に襲われた人間は殺され食われているだろう。

 

 その筈だった。

 

 シュウは戦闘開始から5分経った今、受けたダメージはゼロ。それどころか亜竜猛虎のHPを7割削っている。それを成したのは〈エンブリオ〉による力でも、ジョブの力でもない。

 技量。鍛えられた格闘技術によって格上を追い詰めていた。

 

 (今まで遭遇した中で一番速いクマー…。ステータスはほぼ負けてる。STRだけは僅差か)

 

 「GRRRRAAA!!」

 

 猛虎が振った爪はシュウの身体を無惨に引き裂──かれる事はなく、その攻撃を先読みし待ち構えていたシュウの拳と衝突し、破壊された。爪は折れ、肉は裂け、骨は砕かれる。それだけのSTRをシュウは有している。

 

 (相手が10倍の速度で動くなら…()()()()()()()()攻撃を置いておけば良い)

 

 意味が不明だった。その光景を見ていたもう一人のマスターが「えぇ…?」と首を傾げたのは当然だろう。彼の戦闘技術は人類最高峰、神業と称される領域なのだから。

 

 (あと十発も入れれば倒せるか。アレはまだ温存だな、当てにくいし。状況は…ティアンは無事に逃げられた。あとは XX(ダブルクロス)の方か)

 

 後ろに飛び退き距離を取った猛虎への警戒は緩めず、シュウはもう一つの戦場に目を向ける。

 

 

 隣の戦場では赫黒き"龍"と血塗れの"虎"が殺し合っていた。

 龍は空を舞いながら赫い雷の如きエネルギーを放つ。対する虎も負けじと大地を駆け回り牙が爪が空気を切り裂いている。

 

 そしてその横には怪獣大戦を目の当たりにし、死んだ目をして立っているマスターがいた。偶に「助けて…」と呟いている。

 

 シュウは助太刀に来てくれたマスターに少し同情した。

 

 

 

 赫く黒い銀翼の龍──【天彗龍 バルファルク】は彗龍形態へ変化、翼から龍気を放出し空へ飛び上がり【亜竜猛虎】に攻撃を開始する。

 

 まず放たれたのは圧縮された龍気の砲弾(XXは龍気弾と名付けた)。通常時であればゴブリン程度のモンスターを瀕死に追いやる程度の威力しか持たないが…、今のバルファルクは《怒り》状態。

 MPとSPを変換して生む龍気エネルギーの変換率が跳ね上がり、更に攻撃力が30%上昇する。結果、【亜竜猛虎】も無視出来ない程の威力になった龍気弾が空中から一方的に二十発ほどばら撒かれる。

 

 命中した龍気弾は肉を焦がしHPを削り、外れた弾は大地を吹き飛ばした。猛虎は痛みで多少怯んだ様子を見せたが脚は止めずに移動を続け、まさに虎視眈々と反撃の機会を待っている。

 

 《怒り》状態で理性が薄れているバルファルクだがこれ以上空中に留まるのは龍気が持たないと判断し、龍気形態へ変化しながら地へ降りた。

 

 その瞬間に猛虎が脚に溜めていた力を一気に爆発させ、バルファルクへと襲い掛かった。飛行をやめた事で《赤い彗星》が停止しAGIで劣るバルファルクだが猛虎の攻撃を龍気を放出して回避。爪が僅かに掠るが致命傷は避け、すれ違いざまに槍翼を伸ばして刀のように斬りつけた。

 

 睨み合い威嚇し合う二体の怪獣。

 

 「PYUYYYYY!!!

 「GRRRRAAAAAA!!!

 

 怪獣同士の咆哮は、ぽつんと立っている人間(マスター)をビビらせる。

 

 「やばい」

 

 (頼む……!こっち来るなよこっち来るなよぅ…。てか何なの?これじゃあもうデンドロじゃなくて絶対絶命都市的なゲームになってるじゃん!つーかバルちゃん僕のこと分かる???さっき龍気弾が僕を掠めたんですけど謀反ですか…?)

 

 マスターが現実逃避している間も戦闘は続き、最終局面へと突入した。

 

 

 バルファルクのHPは先程の擦り傷で残り2割、MPSPは龍気の多用によって尽き掛け、短期決戦しか道はない。

 対する【亜竜猛虎】もバルファルクの攻撃によりHPが残り3割を切り、動きが鈍くなるほど全身に傷を負った。そして駆け続けた事によりSPを消耗している。

 

 互いに満身創痍。手負いの獣。

 

 高まる凶暴性、極まる野性、燃え上がる執念。

 

 砕け血塗れた銀翼槍翼、砕け血塗れた鋭爪鋭牙。

 

 

 

───決着は、一撃で決まる。

 

 

 

 一瞬の静寂、達人同士の立ち合いに似た空気を破ったのはバルファルク。動きが鈍る猛虎は先手を譲る形となった。

 バルファルクは残るMPSPを振り絞り全て龍気に変換、噴出。赫い尾を引き上昇した。

 【亜竜猛虎】はバルファルクを迎え撃つ為、体を低く低く構える。それはまるで限界まで引き絞られた弓のよう。

 

 飛翔するバルファルク。50メテルを超え、70、80……100メテルへと達す。そこで龍気の噴出を一時止める。空中で身体を捻って、真下へ方向転換。その槍翼は【亜竜猛虎】を貫かんと定められた。

 

 爆発。超加速。残る龍気は全て加速に回され、最高速度で落下する。

 

 その姿はまさに。

 

 

 「()()()()……」

 

 

 

 

──平原に堕ちた赫い彗星は、一体の獣を打ち砕いた

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

□決闘都市ギデオン 【騎兵(ライダー)】XX

 

 

 「乾杯クマー!」

 「うぇーい!お疲れー!!俺何もしてねーけど!」

 「…かんぱい」

 

 その後ギデオンに辿り着いた僕とノーノ、それとクマさんも一緒に冒険者ギルドへお届け物クエストと護衛クエストの達成報告をしに行った。あと【デミドラグタイガー】に襲われたことも。

 

 「いやぁ〜まさか亜竜と遭遇するとは。正直死んだって思ったけど案外何とかなって……無いんですけど!?」

 

 ギデオンに辿り着いたとは言ったが、無事に辿り着いたとは言っていない。この通り、僕もノーノもクマさんも五体満足で飯食ってるんだが。

 一人、否。一体足りないよね?

 

 そう。僕の相棒バルファルクが、いない。

 

 「ははは、彗星みたいに虎を倒したと思ったら、本当にお星サマになっちまった……なんてな?」

 「ぶっ殺すぞ!!!」

 「ごめーーんっ!」

 

 つまりはそういうことだ。まあ上空100メートルからジェット噴射で加速して衝突したらバルファルクのENDじゃ耐えられないよね…。

 

 「まあまあ、これでも食べて落ち着くクマー」

 

 クマさんから注文したあったかいホワイトシチューを受け取り食べる。マッッジで美味い。ここの店のシェフは【料理人】の上位職にも手が届きそうなレベルで、大人気なんだとか。

 

 「ハァ〜…バルファルクの復活は現実時間で24時間、こっちだと3日。泣きそうなんだが」

 「24時間か、実質デスペナだな。俺の知ってるやつはデンドロ時間で1日だったぜ?やっぱりエンブリオごとで復活時間も全然違うんだな」

 

 「そう言えばXXはもう【亜竜猛虎の宝櫃】はオープンしたクマ?」

 「いや、まだだよ。折角ならシュウさんと一緒に開けようかなって」

 

 【亜竜猛虎の宝櫃】…一言で言えば宝箱だ。ボス級のモンスターを倒すとドロップして、アイテムが最大5個?入っている。

 

 「じゃあせーので開けるクマ。ノーノ頼むクマ」

 「おう。いくぞー…せーのッ!」

 

 

 《【亜竜猛虎の短剣・ネイティブ】を獲得しました》

 《【亜竜猛虎の短剣・ネイティブ】を獲得しました》

 《【エメンテリウム】を獲得しました》

 《【エメンテリウム】を獲得しました》

 

 短剣が二つに、エメンテリウム(換金アイテム)が二つ。

 

 「あ、神引きしたクマ」

 「あ、ダブった」

 

 …まぁ僕も全然引き悪く無いし?気にしてないし?

 

 「XXは何が出たクマー?俺はネイティブの鎧と剣だったクマ。それとエメンテリウムが二つ」

 「短剣2本とエメンテリウム二つッすねぇ」

 

 「いーなーいーな俺も欲しーな」

 「お前見てただけじゃん。精々ソロで亜竜狩れるように頑張れ」

 「確か剣も鎧も売れば百万リルくらいにはなるクマ。俺は剣も鎧もいらんしすぐ売るクマ。それに必要レベルがまだまだ遠いしな」

 

 この短剣装備制限レベル合計200!?えっぐいなぁ…あと150レベルも必要なのかか。どっちも売ったろ。その金でいま自分に必要な装備を整えればいい。これでバルファルクが復活するまでの予定が一つ埋まったな。

 

 「この後どうする?解散か、それともギデオン名物の決闘でも見るか」

 「あー…僕ぁもう疲れたし、今日は落ちるわ。リアルも良い時間だしな」 

 「そっか、日本は深夜か。シュウはどうする?」

 「俺は闘技場行きたいクマー。夜はまだまだ始まったばかりクマ!」

 

 日本時間は深夜の一時ですけどね。身体に気をつけてね。廃人クマさん。

 

 「じゃ、今日はお疲れー。またヨロシクねー」

 

 僕はログアウトした。その後、泥のように眠って。

 

 

 To be continued

 

 

 





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