気がついたら童磨だった。転生特典に優しさが溢れていた。
でもよくよく考えると、殺しに来ている気がするものばかり。
どうするかと考えていたら、原作の死亡者を吸血鬼にしてしまっていた、そんな転生者のアレやコレの続きです。
後悔は後からするものであって、先に来るものじゃない。何か物事が起きてから、こうすれば良かったとか、ああすれば良かったなんて思ったことが後悔ならば、今の自分は確実に後悔している。
ふ~~~よし、現実逃避は止めよう。よしよし、記憶をちょっとずつ思い出していこう。忘れてないから確実に思い出せる。条件反射を記憶できるって、第四真祖ってスゲェー。
俺の中って第四真祖と、サイタマと、魔王達の魔力と。
うん、この段階で気づこうか。俺って本当に人外、いくらここが鬼滅の刃の世界だったとしてもだ。
戦争みたいな眷獣を持った第四真祖と、ワンパンチで山を削れるサイタマと、なんか大勢の魔王達の魔力が入った上に、流刃若火と乖離剣エアだぜ。
あ、これって上弦の鬼でも勝てるなぁ。それ以外に、デスザウラーと。
ズシン!
なんか音がしたけど、俺は振り返らない。
それとマクロス・エリュシオンだっけ?
ドゴン!!
じ、地面が揺れるなぁ。最近は地震が多いみたいだから注意しないと。というわけで、あのマクロス級なのにバルキリーみたいにデタラメな動きをする母艦がある。
ここまではいい。使わなければ俺に被害はない、むしろ俺に対しては有効な力だ。力だよな、本当に俺が使える力だよな、使えるって思えるけど、これって実は催眠術か何かで思い込まされているだけで、本当は使えないってことはないよな。
「ねえ、そろそろ振り返った方がいいんじゃないかしら?」
隣でカナエさんが、優しく微笑んでいる。うわぁ~~可愛い、いや綺麗かな。でもまだ二十歳になってない女性だよな、これでこんな包容力があるって凄いなぁ。
俺なんてまだまだ。
「移動した方がいいって言うべきかしらね?」
あ、困った顔も可愛い。うんうん、やっぱり鬼滅の刃の世界って、女性陣が可愛いなぁ。まあ、マンガやアニメの世界ってそういうキャラが多いけどさ。
本当に俺は転生して、鬼滅の刃の世界に来たんだなぁって実感がわいてくるけど、楽しいとか嬉しいって気持ちより先にさ。
「どちらにしても、頑張って振り返りましょう、主様」
「いや、止めて、そんなこと言わないで、お願いします」
「でも、私にとっては貴方が『親』になるのよね? 私の血を吸って吸血鬼にしたのは貴方だから」
「はい、すみません」
「いいのよ。あのままだったら私は死んでいたから」
鈴のように笑うって、こう言うことだろうな。とてもいい笑顔のカナエさんに、俺は頭を下げようとして思い出してしまう。
白い細い首筋に、そっと牙を。
「あああああああ!!! 俺は犯罪者じゃない?! 俺って変態かぁ?! 十七歳だよな?! 未成年の首筋にかみつくって俺は変態で犯罪者で!?!!」
思い出しちまったよぉ!!
せっかく、忘れていたのにさ! だって胡蝶・カナエだぜ、あの美少女にさ、俺は噛みついたんだよ。凄く甘い匂いとか、血の香りに酔ったとか、吸血鬼の性とか、言い訳は思いつくんだけどさ、それって俺の自己欺瞞的な何かで言っているだけで、彼女としては納得できる理由じゃないから。
「大丈夫だから、本当に気にして・・・・ないとは言えないけど、あのままあの鬼に殺されていたら、妹にも色々と残しそうだったから」
「うう、すみません、ごめんなさい」
「本当にいいから。それよりも、そろそろ」
カナエさんが鋭く顔を背けた。
「いい匂いだなぁ!!」
「女だ!! 女がいるぞ!」
「うまそうな男もいるぞ!!」
あ、鬼だ。
「こんな時に」
カナエさんが身構える。今の彼女は刀を持っていない。鬼殺隊の刀は特別製らしいけど、俺が思わず踏んでパキンと折ってしまったので。
「おまえ食わせろ!」
「は?」
え、なんて言った?
いやいや、相手は鬼だから人肉を食うのは知っているけど。今の俺とカナエさんは吸血鬼だから、人じゃないけど。
でもさ、このカナエさんは俺の従者で、血の繋がりで一族になって。
「誰が誰を食うって?」
よし、こいつら消そう。
俺はゆっくりと右手に乖離剣エアを抜いた。
「俺の所有物をどうするって? 鬼ごときが増長したな、雑種どもが」
消そう、滅ぼそう、こいつらは存在する価値がない。
「死して仰ぐがいい。
「所有物って」
「はい、すみません」
「ちょっと嬉しいって思えるのは、私が吸血鬼として貴方の血の従者だからかしら?」
「そうなんでしょうかね。いや俺も真祖の血を受けて吸血鬼になるのか、それとも吸血鬼に血を吸われたら、吸血鬼になるのか解らないけど」
「貴方の能力なのに、曖昧なのね」
いや俺の能力じゃないんだけど。
「それで、これって何処まで逃げればいいのかしら?」
「誰も知らないところまで行きたいです」
もう俺、泣いていい?
なんだか、鬼が向かってきた時にちょっと金髪の王様の気配とか、そんなの感じたような気がするけど。
なんで俺、乖離剣エアを使ったんだろう?
いやまさか、転生特典に引っ張られたとか。いやあの英雄王ならあり得る、エアを握ると思考を支配されるとか、ないよね。今の俺はエアを握っているけど、特に変な考えはしてないし。
「また使うつもりなら、全力で止めるから」
グッと拳を握るカナエさんに、ちょっと殴られてみたいとか思った自分は、変態なのでしょうか。
「それにしても、綺麗に山が消えたわね~」
空中を駆けながら、俺とカナエさんは後ろを振り返った。
うん、デスザウラーとマクロス・エリュシオンでボコボコになっていた山が、もう跡形もないのです。
いや、エアを使ってエヌマったにしては被害が少ないとか、俺はそんな風に思いこんで罪悪感を忘れようとしていますけど。
「これが吸血鬼の力」
「いや、その、ハハハハハ!」
い、言えない、これは違うって。眷獣を使ってないから、まったく違う力だなんて言えない。でも眷獣を使ったら、もっと違う被害になっていたんじゃないかって、俺はちょっと不安になったのですが。
「あれ、あのままだと不味いかなぁ」
山が一つ消えたら、さすがに鬼舞辻・無惨が気づくよな。どうにかできないかな。
眷獣の中には再生能力を持った奴もいるけど、これは無理だよな。
山の再生、時間の逆転、魔王の中には魔法でそれをできそうな奴もいるけど、俺はその魔法を知らないし。
「天照でご都合主義とか」
「天照って?」
「俺の能力で、内容が解らない・・・・・・あ」
天照って『どれのこと』だ?
ゲームや漫画、実際の神様って可能性もあるけど、俺の転生特典の天照ってどれなんだろう。まさか、某自分の忍道を曲げないの忍術じゃないよな。あれって確か。
いやいや、そんなバカな。
「ねぇ、山が元に戻っているのだけど、それが天照の力?」
「へ?」
言われて振り返り、俺は言葉を失ったのでした。
天照(万物の再生、復元、ついでに色々なアニメを見て頑張って時間操作も付与しました!)
俺の脳裏に、嬉しそうな顔でピースサインする、天使が映りました。
『これで貴方に何があっても大丈夫!』なんて、裏側なんてないとても優しい笑顔の女神さまも一緒でした。
俺は切実に思う。
最近、優しさがとても辛い、と。
「吸血鬼って日の光が弱点じゃないのかしら?」
「あ~~第四真祖って倦怠感はあっても、日光とかで弱体化しないらしいので」
「だから私もちょっと疲れたけど、お日さまの下を歩けるのね」
「まあ」
あれから頑張って走って。いや、空中って走れるのか。ひょっとして死神の能力も付加されているのか。でも、俺はそれで説明がつくけど、カナエさんも同じだったのはどうして。
あれ、待った。まさか、親が使える能力って子も使える。血の従者って吸血鬼の親子関係に似ていたりする。
ってことはだ。
「カナエさん、これって持てる?」
「これってあの怖い刀よね。持てるけど・・・・・・・あ、私も使えるわ」
「次はこっち」
「普通の刀ね。これは、本当に怖い炎の刀なのね」
うん、両方とも使える。え、ってことは俺の転生特典がカナエさんも使えるってこと。
うわぁ~~~マジかぁ。
「でも、カナエさんなら、斬魄刀で持たせるとしたら、千本桜だよな」
「何それ?」
花つながりで桜って、俺も安直だよな。
ドス!
「・・・・・・・・」
「まあ、刀が降ってきたわね。最近は物騒なのね」
『貴方がそう望むならば! 我ら天使一同、頑張ってみました。どうぞ!』なんて、俺の脳裏に笑顔でガッツポーズする天使たちが映りまして。
『ついでにあったほうがいいと思います。完全催眠!』なんて、力説する女神様までいました、とさ。
「千本桜はまだいいとして」
「この刀ってそういう名前なのね」
「鏡花水月はやりすぎでしょうがぁぁぁぁぁ!!!」
嬉しそうに刀を握るカナエさんを前にして、俺は自分のストレージに追加された刀に膝を折ったのでした。
「姉さん」
その日、胡蝶・しのぶは折れた姉の刀と、血まみれの羽織を握りしめ、決意を新たにした。
絶対に仇を討つ。姉を殺した鬼を、必ず見つけ出して、殺してやる。
「姉さん、必ず私が仇を討つから」
妹が悲壮な覚悟で、姉の仇討を決意した頃。
「えい!」
「カナエさん待って! 本当にそれは待って!!」
「上手くできないなら特訓よね!」
「だからっていきなり振り回さないで?!」
手に入れた斬魄刀で嬉しそうに訓練するカナエと、その被害で細切れになった童磨がいましたとさ。
胡蝶カナエに千本桜、誰もが思いつく斬魄刀を渡してみました。
転生時にミスったから、オリ主の童磨に対して、天使と女神が優しいので気遣いのつもりで刀を上げたら。
難易度が下がる変わりに、精神的ダメージが増加されました。
ではでは、このあたりで失礼いたします。