童磨転生にしちゃったよ、誰かタスケテ(泣)   作:サルスベリ

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 何かが暴走した結果、何やら怪しい姉妹の再会になってしまいましたが、望んでいたカナエさん登場シーンが書けて、大変に満足したサルスベリです。

 そんな念願が叶った後に、呆然となって読み直して。

 頑張りました結果の大暴走です。








闇より深き深淵より出でし、人と似た鬼のような何か

 

 

 

 

 

 

 

 何処までも深く、何処までも高い夜の闇の中、信じられないほど大きな月が夜空を照らす中で、月の光を従えた彼女は穏やかに微笑んでいた。

 

「どうしたの、しのぶ?」

 

 軽やかに彼女は地面へと降り立つ。

 

 自らの前に、人とは思えないほどに軽やかに降り立った女性は、赤い瞳をしのぶへと向けて、一歩一歩と近づいてくる。

 

「お姉ちゃんの顔、忘れちゃったの?」

 

 声は、懐かしいもので。昔から聞いていた、何処か嬉しそうであり、何処か不満を含んだような、そんなからかっている音色で。

 

「もう、本当に忘れてしまったの?」

 

 懐かしい、本当に懐かしい。あの頃、最後に会った時と同じ姉の姿をして、同じ声を出して、まったく変わらない顔をしているというのに。

 

「本当にどうしたの?」

 

 変わっていない姉で、こちらを心配する彼女を見間違えることなんて、あり得ないというのに。

 

 しのぶは体が固まったように動かない。

 

 心臓が早鐘のように鳴り響き、全身を血液が巡っていく。呼吸をしているはずなのに、口を開いても空気が入ってこない。必死に口を開き、どうにか酸素を吸おうとしても、肺が何も取り込めない。全身が寒い、彼女が近づいてくるたびに、全身が震えてしまう。まるで真冬の中、雪の中に放り出されたように体温が下がっていく気がする。

 

 そんなことは、実際にない。肺は今も呼吸をしている、全集中の呼吸をしているはずなのに、体は動かないままで指先さえ動かせない。

 

 気温は下がっていない、体温も下がっていない。いつもと同じ夜なのに、真冬のように感じられるのは、きっと。

 

 きっと、としのぶは知らず知らずのうちに下げていた顔を上げた。

 

 そして後悔が全身を貫く。

 

 怖いと思った。

 

 逃げたいと思ってしまった。

 

 姉なのに、死んだはずの姉に会えたはずなのに、しのぶの全身が叫び続けてしまう。逃げろ、今すぐ走り出せ、あれは姉ではない。

 

 あれは、あれこそが。

 

「まったくもう、どうしたの?」

 

 あれは、鬼ではない。鬼以上の、鬼など比べ者にならないくらいの。

 

「お姉ちゃんよ、しのぶ?」

 

「あ・・・・・・ああああああ?!」

 

 思わず胡蝶・しのぶは叫んでしまった。あれは、本当の闇。夜の闇に潜む鬼など比べ者にならないほどの、深き闇の底にいる存在。

 

 人を食らう鬼を恐れない鬼殺隊の、その中でも最高峰の剣士である柱であっても、恐怖に全身を竦ませ、恐れに膝を折って怯えてしまうほどの。

 

 人類の天敵だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胡蝶・カナエは、進めていた足を止めた。

 

 目の前で泣き叫び、膝を折った妹の姿に、少しだけ首をかしげた。

 

 怖いことがあったのだろうか、先ほどまで鬼がいた、それも上弦の参という強い鬼がいたから、妹は恐怖を感じて、必死に精神を繋いでいたところに、安心するようなことがあったから、緊張の糸が切れてしまったのか。

 

 いや、違うか。

 

 カナエは自分の考えを否定した。

 

 きっとこの恐怖は、まったく違うものだ。妹が感じている恐怖は、鬼とは違う存在を前にしたもので。

 

「・・・・・・・あ、私って真祖だったわね。そうよね、ごめんなさいね、しのぶ。怖かったわよね、ごめんなさいね、私としたことがうっかりしていたわ」

 

「はい?!」

 

 溜息をついて頬に手をあてたカナエの姿に、しのぶは思わず声を上げて体を起こした。

 

「えっと、そうね、そうよね。これかな? それとも、このすきるかしら? ごめんなさいね、千本桜の訓練しかしてこなかったから、それ以外の真祖のすきるが手付かずなのよね」

 

 どれをどうすればいいのか悩むカナエ。スキルのことを把握はしているが、未だにカタカナや英語が上手く発音できないので、中々にスキルをのONとOFFができないでいる。

 

「絶望のおーら? を切ればいいのよね。それとも、真祖の波動かしら?」

 

 うんうんと唸って虚空に手を触れるカナエの姿から、次第に剣呑な雰囲気が消えていき、やがて彼女を見ても怖くなくなったしのぶは、思わずその場から飛び退いた。

 

「姉さん、なの?」

 

「そうよ。何処からどう見ても貴方の姉じゃないの」

 

 腰に手を当ててプンプンと怒る彼女は、確かに姉の胡蝶・カナエに見えたのだが、まだまだしのぶの心は警戒をし続けていた。

 

「でも、姉さんは死んだはずじゃ」

 

「酷い?! 貴方を姉を勝手に殺すような妹に育てた覚えはないわよ?!」

 

 カナエは何処から出したのか、ハンカチを口にして地面に座り込んだ。何処かの演劇で見れるような、見事な嘆く女性の姿に、妹は『あ、これは間違いなく姉だ』と確信できたという。

 

「解った、解りました! でも姉さん、あの時の姉さんは・・・・・」

 

「あ、私って吸血鬼になったの」

 

「え?」

 

 笑顔全開で周囲に花を飛ばしているカナエに、しのぶはそれってどんな存在なのかと疑問を浮かべ。

 

「しかも真祖! あの人と同じでね、不老不死で拳で山が消せるのよ」

 

「え? はい?」

 

「えい、やあ! って感じで気合を入れて殴ると、ワンパンなのよ! 凄いでしょう!」

 

「え、はぁ」

 

「それにこれ!」

 

 スッとカナエが引き抜いたのは、桜色の刀身を持った日本刀。

 

「千本桜って言うのよ。綺麗でしょう、これがあれば鬼なんて細切れよ、細切れ。それに」

 

 フッと刀身が消えた後、近場の木が粉砕されて崩れ落ちた。

 

逃げようとした鬼も、こんな風にね

 

 うっすらと笑うカナエの瞳は、血のように赤く染まっていた。

 

思わずしのぶは身構えて、腰の刀を引き抜くほどに、姉の姿は生物としての生存本能を刺激してくる。

 

「上弦の参、本当にしぶといのね」

 

「おまえ、おまえは何なんだ?」

 

 首と片腕のみとなった上弦の参は、怯えたように体を下げていく。

 

「なんだと言われてもねぇ。私の名前は胡蝶・カナエ、『第二真祖』よ」

 

 再びカナエは千本桜を振るう。

 

 桜色の刃が津波のように上弦の参へと向かい、寸前のところで襖のような何かが開いて、上弦の参を吸いこんで閉じた。

 

「またそれ。貴方は本当に芸がない人ね」

 

 くすりと笑ったカナエは、まだ消えていない襖を見据えた後、左手の別の日本刀を引き抜いた。

 

 ゾクリと、しのぶの背筋が震えた。

 

万象一切

 

 それは、最古の斬魄刀にして、最強の炎熱系の刀。一度振るわれれば、すべての水が消え。

 

灰燼と為せ

 

 瞬間、しのぶは魂が叫ぶままに全力でその場から逃げ出した。

 

流刃若火

 

 全力で走るしのぶの背後で、夜の闇が消え去り、巨大な炎が周辺を蹂躙していく。

 

 木も草も、岩も大地も、すべてを燃やし尽くし消滅させるように、炎がすべて薙ぎ払い、灰と化していく中で、胡蝶・カナエは襖があった一点を睨んでいた。

 

「逃げられたわね。まあ、私だとまだ乖離剣エアを扱いきれないから。あら、しのぶ」

 

 ふっと彼女が視線を向けた先、必死に逃げている妹の背中が見えた。

 

「私がいない間、必死に努力したのね」

 

 少し嬉しそうに微笑んだカナエは、すぐには悲しそうな顔を浮かべた。

 

「でも、私はあなたにはもっと普通の」

 

 普通に生きてほしかった。

 

 心の中で最後の言葉を紡いだカナエは、すぐに表情を引き締めた。

 

 彼女の周囲に開いた襖の数々、そこから出現した鬼達を見据えて、右手の千本桜を振るう。

 

「せっかくの姉妹の再会を邪魔するなんて、本当に無粋な鬼達ね」

 

 彼女の周囲を流れる桜の刃は、彼女の意思のままに鬼達を蹂躙していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、カナエが嬉しそうに鬼を狩っていることを、童磨は止めるべきか悩んでいたのだが、ここにきて止めたほうがいいと確信を持った。

 

「なんで流刃若火を使うかなぁ」

 

 ストレージから消えていた刀に、本気で泣きたくなった。

 

 今のカナエは手がつけられなくなってないか。なんで最初は千本桜だけだったのに、今ではサイタマの身体能力とか、第四真祖の眷獣とか、流刃若火や乖離剣エアまで使えるようになっているのか。

 

 それも、手元にないのに召喚するとか。そんなスキルなんて何処から手に入れたのか。そもそも、魔王達の魔力も使えるようになっている上に、魔王達が持っているスキルの一部さえ身につけていて。

 

「自分がいるだけで人間は恐怖で震えだして動けなくなって、精神的に死ぬことさえあるって、どうして解らないかなぁ」

 

 童磨は嘆きながら、カナエを目指して歩き続けて。

 

「こんなところで何をしている童磨?」

 

「・・・・・・鬼舞辻・無惨?!」

 

 何故か、ラスボスに出会ってしまった。

 

「貴様、私の名前を口にしたな? いや待て、貴様、呪が発動しないとは、何をした?」

 

「え、いや・・・・・・・・」

 

 なんて言い訳したらいいか、どうすればいいか。必死に考える童磨の視界に、古びた家が映って。

 

 そこに倒れている血だらけの家族が見えた。

 

「原作開始って今日だっけ?」

 

「貴様、私の質問に・・・・・・・・」

 

「そこにいたのね」

 

 無惨が童磨を睨みつける中、空からゆっくりと舞い降りる影が一つ。

 

「こんにちは、いい月夜ね。そして、死ね

 

「鳴女!!」

 

 流れる桜の本流、寸前で叫んだ無惨が襖の奥に消えていく。

 

「また逃げられた」

 

「カナエさん、やり過ぎって言葉を少しわね」

 

「真祖になった私にしては、被害が少ないからいいじゃない。それよりも、ね」

 

 カナエはゆっくりと雪の上に倒れている家族を指差した。

 

 全員、死んでいるだろう。童磨はそう答えようとして、小さな鼓動を耳にした。

 

「一人、生きているわね。でももう死にそうだけど?」

 

「・・・・・・・同族を増やしたら、またカナエさんみたいになりそうだなぁ」

 

「そうかしら? まだ二人だけの血族だから、もっと増えてもいいんじゃないの?」

 

「俺としては、もう増やしたくないけどさ」

 

「では見捨てるのかしら?」

 

 悪戯っ子のように問いかけるカナエに、童磨は深くため息をついて。

 

「男なら可愛い子は手元に置いておきたいものじゃない!!」

 

 バンバンと背中を叩いて笑うカナエに、何処の知識だろうと呆れながら。

 

 童磨は、生き残っていた少女の首筋に牙を突き立てて。

 

「・・・・・・穪豆子に何してるんだ?!」

 

「あ、こっちは私が」

 

「え?」

 

 怒鳴りこんできた兄は、カナエが捕まえましたとさ。

 

「え?」

 

 童磨、訳がわからずに困惑を顔に浮かべて、自分の理不尽な運命に文句を言いたくなったのでした。

 

 『こんな運命は組んでません』と、何処かの女神と天使たちが騒いでいても、童磨には理不尽な運命に感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、なんで俺と穪豆子が吸血鬼になっているんですか?」

 

「説明を求めます。どうしてですか?」

 

 その後、半眼で怒っている竈門兄妹に、童磨は深く頭を下げていくのでした。

 

 『やったね、童磨さん。血族が増えたよ』なんて、脳裏に天使たちの祝福が届くのだが、ふざけんなと怒鳴るしかできませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

















 言い訳をさせてください。

 当初の予定では、しのぶを吸血鬼にして、蝶屋敷を吸血鬼の屋形にして、童磨をそこに放り込んで、周りから怒られてアタフタなんて考えていたんですが。

 書き終えたら、何故か竈門兄妹が吸血鬼になっていたんです。

 勢いのままに書いたら、こんな話になっていたんです。

 もういっそのこと、片っぱしから血族にして、鬼舞辻の鬼の一族と、鬼殺隊と、吸血鬼の血族の三つ巴に変更しようかと考えてしまうのです。

 ではこのあたりで、失礼いたします。




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