やはり葉山の親友が武内Pなのは、間違っているだろか   作:阿保パンマン

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林間学校6

 

 

次の日

朝食を食べ終えた男子達はキャンプファイヤーの準備を始めた

その作業を終えると夕方の肝試しまで自由時間にしていいと平塚先生からの許しが出た

「じゃあ、俺達は、売店に行ってくる」

そう言って葉山と戸部は、売店に買い出しに行った

「私は、部屋に戻りますね」

「あ、僕も」

続く武内と戸塚は部屋に戻っていった

残る比企谷は、気の向くまま散歩することにした

ふと、小川があることを思い出した比企谷は、小川を目指して歩き始める

しばらく、歩くと水のせせらぎが聞こえてきた

音のする方を目指し、道なりに歩いていくと水音が次第に大きくなってゆく

「おー、こりゃ結構いい感じだな」

比企谷は、足を止める

2メートル程の川幅の川を見つけた

そして例の少女も

少女は、木陰に座って川の流れをじっと眺めている

周りに誰もいる気配はない

「・・・・・」

見つける気は、あまりなかったが見つけたからには、話し掛けない訳にもいかず、比企谷は、溜め息を吐いて少女に話しかけることにした

「おい、こんな所でなにやってんだ」

比企谷が話しかけると少女は、ビクッと肩を震わせて比企谷を見た

「・・・・不審者」

さっと比企谷から離れて警戒する少女

こうなるから嫌だったんだよと心の中でぼやきながら説明をする

「ボランティア活動の参加者だよ」

「あー・・・いた・・かも?」

「いただろ・・・で?なんで一人でこんな所にいるんだ?」

すると少女は、俯いてしまった

どうするかと比企谷が考えていると、少女の口からぽつりぽつりと言葉が紡がれた

「今日、自由行動なんだけど・・朝ごはん食べ終わって部屋に戻ったら誰もいなかった」

あまりのえげつなさに歴戦のボッチである比企谷も動揺していた

「・・・・そっちは、なんで1人なの?」

少しだけ期待しているような表情をして比企谷を見ていることに彼は、気が付いた

その気持ちは、わかる

比企谷もボッチ仮免許だった頃は、自然と同じような境遇の相手を探していたから

「・・1人でいるのが好きなんだよ」

「・・・名前は?」

「・・比企谷八幡。お前は?」

「鶴見留美」

お互いに名前を言い合うと会話が止まった

「・・・・・・」

比企谷は、ぼーっと水面を見詰め始める

水が澄んでいて底まで見えた

「理由・・聞かないの?」

「言いたくなったら言えよ。聞くだけ聞いてやるから」

それだけ告げると比企谷は、無言になった

留美も比企谷を真似するように川を眺め始める

「・・・誰かにハブられるのは何回かあってさ。けど・・その内、終わるし・・そしたら、また前みたいに話したりもする、マイブームみたいなものだったの。いつも誰かが言い出して、なんとなく、そういう雰囲気になってさ」

途中から鶴見の声が震え始めた

その目尻には、涙が溜まっている

「そ、それで仲の良かった子が・・ハブにされてね。私も、ちょっと距離を置いたけど・・・気付いたら、今度は、私がそうなってた。別に・・何かした訳でもないのに・・・・・」

言い終えると留美は、その場で膝を抱えて丸くなった

「中学でも・・こういう風になっちゃうのかな・・・?」

嗚咽の入り混じった震える声音

それを搔き消すように騒ぎ声が聞こえてきた

「・・・・・」

見ると何処か見覚えのある集団が水遊びに乗じていた

その輪から外れた所に1人で立っている大柄な男と目が合った

武内だ

彼の服装は、半袖のシャツに長ズボン

水遊びに来ている訳では、ないようだが、比企谷が頷くと木陰に腰を下ろし、スマートフォンを操作し始めた

「あ!ヒッキーじゃん!そんな所でなにしてんの?」

おーい!と比企谷に向かって手を振る水着姿の由比ヶ浜

比企谷は、2つの実った果実に目がいかないように由比ヶ浜から顔を背けた

すると、その先で留美と目が合う

冷徹な瞳で見詰めてくる留美を見て比企谷は、成長したら雪ノ下とかに並ぶんじゃないだろうか?と戦々恐々としていた

「・・・ふーん、ああいうのが良いんだ」

「や、別にああいうタイプが好きって訳じゃ・・」

「胸」

衝撃すぎる一言に比企谷は、思わず噴き出した

「な、なんで、そんな話になるんだよ」

「だって見てたし」

「み、みみ見てねーし!」

顔を真っ赤にして慌てて否定する比企谷を見て留美は、微かに笑った

けれど、すぐに呆れた顔を比企谷に向ける

「なに顔紅くしてるの?あほくさ」

「お前な・・・」

「留美」

「あ?」

「私の名前、留美なんだけど」

どうやら隣に座る少女は、比企谷に名前で呼ぶことを許したらしい

「・・・留美。これでいいか?」

「じゃあ、私は、八幡って呼ぶから」

「どんな理屈だよ。つうか名前呼び捨てかよ」

「は?名前、八幡でしょ?」

「まぁ、そうだけど・・」

どうして、そこに至ったのか、比企谷には、わからない

けれど、こうやって他人と距離を縮めようとするということは、彼女が諦めていないからだと思った

「ヒッキー!無視するとか酷くない!?」

無視をしたつもりはないが、これ以上、由比ヶ浜を放置すると後々、面倒臭くなると思った比企谷は、覚悟を決めて振り返った

だが、さっきよりも近くに接近してきている由比ヶ浜の水着姿は、比企谷には、刺激が強すぎて再び顔を背けた

何故か、さっきよりも刺々しい視線が留美から注がれたと感じたのは、比企谷の気のせいだろうか?

しかし、これ以上、留美の変化を気にする余裕は、残念ながら今の比企谷には、なかった

「あ!また顔を背けた!それ何気に傷つくんだけどっ!!」

プンプンと怒りながら更に近付いてくる

「や、おま・・・その水着っ、露出が多すぎだろ」

「はぁ?こんぐらい普通じゃない?」

テンパっている比企谷に指摘されて自分の水着を確認する

由比ヶ浜の水着は、フリルスカートのビキニだが、彼女の言う通り露出が多い訳でもない

「変態」

隣に座っている小学生に変態呼ばわりされた比企谷であるが、なにも反論できずに押し黙った

「ん?ヒッキーの隣に誰かいるの?」

比企谷の影に隠れるように座っている留美は、由比ヶ浜の位置からでは、見えないようで比企谷に訊ねる

比企谷は、由比ヶ浜の水着姿を視界に入れないように俯いて答える

「・・林間学校で来てる小学生だよ」

「あ」

それで相手が誰なのか察しのついた由比ヶ浜は、申し訳なさそうな顔をした

「もしかして、あたし・・邪魔しちゃったかな?」

比企谷は、留美に視線を向ける

留美は、顔を背けて由比ヶ浜を見ないようにしている

それは、小さな拒絶であると感じた比企谷は、溜息を吐いた

「邪魔ってわけじゃねぇけど・・・あれだ。遊んでる最中みたいだし、向こうに戻った方がいいんじゃねぇか?」

「・・・うん。そうする」

比企谷の言わんとすることを理解した由比ヶ浜は、とぼとぼと来た道を引き返していった

由比ヶ浜に悪いことをしたと思いながら、それを見送る

すると、由比ヶ浜と入れ替わるように武内が比企谷たちに近付いてきた

「あの・・」

武内に話し掛けられた留美は、ビクッと肩を震わせて比企谷の影に隠れる

「貴女は、林間学校で生徒ですよね?」

「・・・そう・・ですけど」

恐怖から声が上ずっている留美に構わずに武内は、話し掛ける

「・・私は武内です。貴女は?」

「つ、鶴見・・留美」

「鶴見さんですか・・・貴方は、どうしてこちらに?」

留美は、助けを求めるような視線を比企谷に向ける

明らかに武内の存在に怯えているのは、火を見るよりも明らか

「・・・・・」

この林間学校の中で見てきた比企谷の中の武内だったら、こうなる前に撤退している

だが、今の武内は、その真逆

鶴見留美に深く踏み込もうとしている

それは、深く踏み込まなければ、彼女の問題を解決できないと判断したからかもしれない

けれど、昨日の作戦を聞く限り、もう仕込みは、十分に思えた

だから、今の武内の行動がよくわからない

「あの、どうしてでしょう?」

「・・・・朝飯を食い終わって戻ったら部屋に誰もいなかったんだと」

探るように武内を見ながら比企谷は、留美の代わりに答える

「つまり、イジメられているということでしょうか?」

イジメという単語を聞いた瞬間、留美の身体が震える

「おい、幾らなんでもストレートすぎんだろ」

「いえ、必要なことだと思いますので」

そう言った武内の目には、力強い意志のようなものを感じる

それが、かつて自分の背中を少しだけ押したことを思い出して比企谷は、口を噤んだ

「鶴見さん。貴女は、今の環境に満足していますか?」

「いいわけないっ!!」

叫んだ

叫んでいた

留美は武内を睨み付け、武内は真っ直ぐ留美を見る

初めて二人の視線が交じり合った

「では貴女は、どうして変わろうとしないのですか?」

武内の口から放たれた言葉を聞いた瞬間、留美の中の何かが弾けた

「変われるなら最初からやってるよっ!でも・・でも・・・出来なかったっ、余計なことして今よりもひどくなるのが怖いから・・・ねぇ、教えてよ!どうやったら変われるの!?ねぇ!!」

留美は、体当たりするかのように武内に向かって掴みかかった

「私が変わったら昔みたいに戻れるの!?みんなから・・笑われなくなるのっ!?独りにならなくて・・済むの・・・っ!!?そんなこと・・・出来ない・・でしょ・・・っ」

ずかずかと自分の心の中に土足で踏み荒らしてくる男に留美は怒りをぶつける

今まで貯め込んでいたものを総て吐き出すように・・

「わかってる・・わかってるもん・・・っ」

武内は何も語らない

ただ、じっと嗚咽を漏らしながら紡がれる少女の言葉を待つ

「私・・も・・・見捨てちゃったから・・・仲良くできない・・仲良くしても・・また、こうなっちゃう」

途切れ途切れになりつつも留美の口は止まらない

最早、武内に対するーーいや、やり場のない怒りに対するものでは、なくなっていた

己の罪を懺悔する罪人のように、ぽつり・・ぽつり・・・と呟いていく

そしてーー

「もう嫌だよ・・・こんな・・思いするの」

彼女は最後に裸の心を曝け出した

「では、貴女の本心を相手にぶつけてみるのは、どうでしょうか?」

シャツを握り締めている留美の手を包み込むように武内は手を添えた

その温かさに留美は思わず顔を上げる

「貴女の本心を聞いて、それでも傍にいてくれる人がいたら最後まで、その人の味方でいて下さい。その人も最後まで貴方の味方でいてくれる筈ですから」

穏やかな声音で語りかけるように紡ぐ武内の言葉を聞いた留美の表情は暗いまま

それは留美の心に武内の言葉が届かなかったことを意味していた

今の彼女は独りだから

「もし・・・それで誰も残らなかったら?」

だから、留美は、武内に答えを求める

これ以上、独りでいるのが辛いから

すると武内は微笑んだ

「いえ、既に貴女の傍にいます」

信じられないような目で武内を見る

けれど、迷子の子供の様に弱々しい彼女の瞳を真っ直ぐと武内は見つめながら告げた

「貴女の後ろに」

留美は、弾かれた様に、パッと振り返る

そこには、ぽかーんとした顔をした比企谷が座っていた

「・・・・八幡?」

「え?お、おう」

展開についていけずにテンパっている比企谷をよそに武内は、話し始める

「貴女の本心を聞いても離れることなく、傍にいてくれた彼のことを信じてみてください」

そう語りかけると武内は、お辞儀をして去って行った

とんでもない置き土産を残していった武内を恨めしく思いながら比企谷は、空を見上げる

大きな雲が太陽を覆い隠した空と鬱蒼と生い茂った木々

そして、頼りなさげな細い腕を震わせながら手を伸ばしてくる少女の姿が比企谷の目に映った

 

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