やはり葉山の親友が武内Pなのは、間違っているだろか   作:阿保パンマン

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こうして彼は決断する

 

ふと思い出した

職場見学で先に行ってしまった他のメンバーの代わりに由比ヶ浜が迎えに来た時のことを

『お前は行かねぇの?』

『え!?あ、あたしは・・ヒッキーを待ってたというか、その・・・置いてけぼりは可哀想だなーとかなんとか』

胸の前で人差し指どうしを突き合わせて、ちらりと由比ヶ浜は比企谷を見る

その姿を見て比企谷は思わず微笑んだ

『・・・由比ヶ浜は、優しいな』

『へ!?あ、え!?そ、そんなことないよっ!!』

顔を真っ赤にしながら由比ヶ浜は、ぶんぶんと全力で手を振って否定する

けれど、比企谷は由比ヶ浜を優しいと思った

だからこそ、口にした

『あのさ、別に俺のことなら気にする必要ないぞ。お前んちの犬、助けたのは偶然だし、それにあの事故がなくても俺、たぶん高校でボッチだったし。お前が気に病む必要まったくないし。あ、いや自分で言うのもなんだけどよ』

『ヒッキー・・覚えてたの?』

『いや、覚えてないけど。一度、うちにお礼に来てくれたんだってな。小町に聞いた』

『そっか・・・小町ちゃんか・・・・』

由比ヶ浜は、それを聞いて納得したように頷いた

そしてーー

『ごめんなさい!』

ばっと由比ヶ浜は頭を下げた

それを比企谷は冷めた目をしながら見下ろす

『今まで黙ってて・・謝るのが恐くて・・・後回しにしちゃってた。へへ、変わろうと努力してるんだけど・・結局、ヒッキーにバレるまで言い出せなかった』

声が徐々に小さくなっていく

けれど、自分の伝えたいことを誤魔化さずに由比ヶ浜は話した

『・・・本当にごめんなさい』

『・・・・・』

由比ヶ浜の言い分を聞いた比企谷は大きな溜め息を吐いた

『悪いな・・逆に変な気遣わせたみたいで。まぁ、でもこれからは、もう気にしなくていい。俺がボッチなのはそもそも俺自身が理由だし事故は関係ない。負い目を感じる必要もない・・・気にして優しくしてんなら、そんなのやめろ』

徐々に語彙が強くなっていく

自分でも驚くほど、目の前の少女に苛立ちを覚えた

それだけ期待していたのだろう

そして、そんな身勝手な自分自身を露見させてしまったことに嫌気がさす

『・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・』

2人の間に気まずい沈黙が流れた

普段からこういうことには、なれている筈なのに何故か胸が締め付けられているように苦しい

『まぁ、その、なんだ・・・』

口を開くが言葉が続かない

どうすればいいかわからなくなった比企谷は由比ヶ浜に視線を向ける

由比ヶ浜は俯いたままだった

「っ」

その姿を見て比企谷は由比ヶ浜に手を伸ばしそうになった

けれど、その手を伸ばさずに握りしめた

同情からくる優しさなんていらない

だからこそ、由比ヶ浜にこの話をしたのだ

それなのに手を差し伸べるなんてことなど出来る筈がない

・・・この場から去ろう

比企谷は俯きながら由比ヶ浜の横を通り過ぎた

『待って!』

『!』

由比ヶ浜の声に比企谷の足が止まる

この声を無視すれば由比ヶ浜との関係は切れるだろう

関係の解消

自分が望んでいたことだ

それなのに比企谷は振り向いた

「・・・・っ」

そこには今にも零れ落ちそうな程、涙を溜めている由比ヶ浜が立っていた

『ヒッキーの言う通り・・負い目があったからかもしれないけど・・・それが全部じゃない』

弱々しい声音

けれど、ハッキリと比企谷の言葉を否定した

『例え・・偶然だったとしても助けてくれた比企谷君のことを知りたかった』

『ーーーー』

真実が残酷なら、きっと嘘は優しいのだろう

だから、優しさは嘘だ

なら、今の由比ヶ浜は一体なんだというのか?

駄目だと思いながらも胸が高鳴ってしまう

目の前の少女から目が離せない

『あたしは、優しい子なんかじゃない。我が儘な子なの。だから・・・迷惑なら・・もう、関わらないから・・・・』

やめろ・・やめてくれ・・・

いつだって期待して、いつも勘違いして、いつからか希望を持つのをやめたんだ

それなのに・・そんなことを言われたら、また同じ過ちを繰り返してしまう

俺は訓練されたボッチだ

二度も同じ手に引っかかる訳がない

それなのに必死で泣くのを堪えている由比ヶ浜を見て酷く動揺してしまうのは何故だ?

そしてーー

『比企谷君がどう思っているのか聞かせて?』

その言葉を聞いて彼女の笑顔を思い浮かべてしまったのは何故なんだ?

『っ』

比企谷は爪が食い込むほど拳を握り締めた

自分の欲しいものは、わかっている

けれど、その勇気がない

だから、離れて欲しかった

これ以上、自分勝手な期待を積もらせないように・・

『・・・嫌じゃ・・ねぇよ』

『え?』

ぽろっと口からこぼれた言葉を自覚した比企谷は、馬鹿がと自分自身に罵倒をした

『それって・・あたしのことが迷惑じゃないってこと?』

『別に・・迷惑とは言ってねぇだろ。同情は鬱陶しいからやめろとは言ったけど・・・つうか、早く行こうぜ。あんまり遅くなると三浦にキレられそうだし』

考えてもないような言葉が次から次へと溢れ出てくる

自分のことなのに制御できない

誤魔化すように頭をかいて由比ヶ浜から視線を外す

そんな比企谷を見て、由比ヶ浜は嬉しそうに微笑んだ

『うん!行こう!』

由比ヶ浜の笑顔を見て比企谷は心が温かくなるのを感じる

これがどういった感情なのかわからない程、彼は鈍感じゃない

けれど、それを認める勇気がなかった

だから、彼は目を背けた

自分の想いから・・

しかし、いつかは向き合わなくてはいけない日が来る

時間は有限で、残された時間が僅かなのかもしれないのだから

 

 

 

 

 

 

 

ひきつった顔をしながら財布を触る武内と、大量にお菓子が入っている袋を持った留美が呆れた顔をして帰ってきた所で比企谷達は店を出た

「わざわざ遠い所に呼び出して悪かったね」

そう言って葉山は千円札を留美に渡す

「あの・・これは?」

「交通費だよ」

「・・・多すぎるんですけど」

「貰えるものは貰っときなよ。それじゃあ、また」

「さようなら」

「え、あ、あの!・・・・ありがとうございました!」

お金を留美から返される前に早々に街の方に歩き出した葉山と武内に留美は慌ててお礼を言った

駅の前に残されたのは留美と比企谷の二人

「帰ろっか」

「・・・・・」

「・・・・八幡?」

「・・・・・・・・」

呼んでも返事をしないので留美は比企谷の肩を叩いた

すると驚いたように留美を見た

「へ!?な、何だ?」

「帰ろう」

「あ・・・そうだな」

どこか上の空の比企谷と一緒に留美は電車に乗り込んだ

「・・・八幡、大丈夫?」

「・・・・あぁ」

「話し辛いこと?」

「・・・・あぁ」

何を話し掛けても同じ返答しか返さない比企谷を留美は小突いた

驚いて振り向く比企谷の目を見て留美は語りかけるように言葉を紡ぐ

「何か悩み事があるなら相談してよ。話すだけでも、かなり楽になるからさ」

比企谷は目を丸くして笑った

ようやく自分の言葉が届いたのだと留美は感じる

すると比企谷が留美の頭を撫でた

妹の頭を撫でるように優しく

「悪いな。心配させちまって・・けど、これは俺自身が答えを出さなくちゃいけない問題だから相談は、またにする」

「・・・そっか。でも、次に同じような顔したら無理やりにでも話し聞くから」

「・・・さんきゅー」

気持ちの整理がついていない

けれど、もう逃げるのはやめよう

だって・・俺の欲しいものは本物だから

比企谷が顔を上げると電車の窓に映った自分と目が合った

その顔は、いつも鏡で見る自分よりもマシなように思えた

「あ、今回は特別に許したけど。今度、髪に触ったら八幡でも許さないから」

「ア、ハイ」

真顔で淡々と話す留美に比企谷は恐怖を覚えながら彼女の頭から慎重に手をどかした

その日、比企谷は留美の目を見れなかったという

 

 

 

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