やはり葉山の親友が武内Pなのは、間違っているだろか 作:阿保パンマン
すっかり恒例の場所になったベンチに座っている三人
由比ヶ浜が奉仕部に入部してからも度々集まってたわいのない会話を繰り広げるのだが今日は違う
相談があると由比ヶ浜が二人を呼び出したのだ
彼女の相談事とは奉仕部に依頼にきた戸塚彩加のことについてだった
依頼内容はシンプルでテニスが上手くなりたいとのこと
しかし、奉仕部では彼に上手くアドバイスが出来ていない
このままでは彼の為にならないと思った由比ヶ浜は二人に相談することにしたのだ
「なんというか・・・うん」
奉仕部の問題児2名のことを少なからず知っている葉山は苦笑いを浮かべていた
葉山の反応で何となく察しがついた武内は首に手を当てる
「どうにかならないかな?」
眉毛をハの字にさせて困った表情を浮かべている由比ヶ浜
「部員の方には相談しましたか?」
「したんだけど・・ゆきのんもヒッキーもあんまり人を頼りたがらないから」
「成程・・」
そこで行き詰っていた二人とは違い葉山は案を上げた
「やっぱり、人に頼るべきだと俺は思う」
「うーん、やっぱりそうだよね」
「そうですね。他の二人に納得していただければ、心強い助っ人に頼ることも出来ますし」
「え?それって誰なの?」
葉山と武内は顔を見合わせて頷いた
「「三浦優美子」・・さんです」
「・・・・」
思ってもいなかった友人の名前を出されて由比ヶ浜は目をパチクリとさせていた
そして気が付いた
「あ!あぁ!そうだ!そうじゃん!!」
クイズの答えがわかった子供のように由比ヶ浜は、はしゃぐ
その三浦由美子という少女は中学時代に女子テニス部に所属しており、県選抜に選ばれたほどの腕前
それに加えて本人は自覚していないが面倒見のいい性格をしている
指導者として中々の逸材であった
「ん?武内君も優美子のこと知ってるの?」
「えぇ、私と三浦さんは去年、同じクラスでしたので」
「ちなみに俺も一緒だ」
「へー!じゃあ、もしかしたらあたしたち一年の時に知り合ってたかもしれないんだ」
「そうですね」
自分の知らない二人を知っている友人に、ちょっとだけ嫉妬してしまう由比ヶ浜であった
「結衣、今日も部活あるのか?」
「うん。今日もさいちゃんの練習に付き合う予定だから」
「では、今日の昼休みに相談を持ち掛けましょう」
武内の案に二人とも頷いた
「それでは葉山さんと由比ヶ浜さん、頑張ってください」
「なんで自分は参加しない風な口ぶりなんだよ?」
がしっと葉山は武内の右肩を掴む
「・・・初対面の私が加わらない方が円満に進むかと」
「なんか仲間外れみたいで嫌じゃん」
がしっと由比ヶ浜は武内の左肩を掴む
最早、逃げられないことを悟った武内は早々に降伏した
由比ヶ浜に呼び出してもらい
奉仕部で話し合いをすることになった
「久しぶりだね。雪乃ちゃん」
「えぇ・・久しぶりね。葉山君」
少し気恥ずかしそうにしている葉山を見て、少し困った顔をする雪ノ下
「そして貴方は・・」
「武内です」
簡潔に名前だけ告げて武内は頭を下げた
「・・・・・・」
「あの・・なにか?」
雪ノ下の視線に気が付いた武内が質問する
「いえ、何でもないわ」
「はぁ・・・」
相手の意図が掴めず困ったように武内は首を触った
それを見て葉山がクスリと笑う
「私は雪ノ下雪乃よ。よろしく」
「はい。よろしくお願いいたします」
「では、早速本題に入りましょう」
大方の話は由比ヶ浜から聞いていたらしく説明は不要であった
「戸塚君のコーチを三浦さんに任せたいという話だけれど二人には許可をとったのかしら?」
「まだだよ」
「先に君達の許可をとっておきたかったからね」
「君達?」
「雪ノ下さんと比企谷さんです」
「え?俺?」
自分のことが話題に出るとは思わずに聞き返してしまった
「はい。貴方です」
武内は比企谷の目を見て告げる
いつもおざなりな扱いを受けてきた比企谷にとって武内の振る舞いには戸惑いを覚えるが、嬉しくもあった
自分のことを対等に扱ってくれることが・・
こんなことを考えるなんてボッチエリート失格だな
そう自笑しながら武内を見る
「・・・サンキュー」
「?」
あの反応からしてわかってない
本当にわかりやすい奴だ
だからこそ、背中を押されてしまったんだろう
そう比企谷は思った
「つまり、私達が許可を出さなければ協力を要請しないということかしら?」
「うん。俺と武内は奉仕部のメンバーじゃないからね。無理に自分たちの案を通すつもりはないよ」
「・・・・・・」
雪ノ下は目を閉じて自分の考えをまとめる
どうするべきか
どうしたいのか
「・・・由比ヶ浜さんはどう思う」
「あたしは賛成だよ。あたしも一緒に考えて出した案だし」
「・・・・そう」
一つ間をおいて比企谷を見る
「一様、聞くけど貴方は?」
「まぁ・・いいんじゃねぇか?このままやっても意味ないだろうし」
比企谷の案を聞いた雪ノ下は葉山と武内に向かい合った
その時、武内は微かな違和感を感じた
まるで度の合っていない眼鏡をかけているような違和感を
「貴方達の案を採用しようと思うわ」
「・・・・わかった」
葉山は静かに頷く
「それじゃあ、早速さいちゃんに聞いてみるね」
言うのと同時に由比ヶ浜は戸塚に電話をかける
事情を説明すると戸塚は二つ返事で了承した
同じく三浦もテニスを教えることに乗り気らしく、葉山と戸塚が直接、頼みに行くと、すぐに引き受けてくれた
そしてーー
現在、比企谷と戸塚でラリーをしている
「どうかしら三浦さん」
「基礎はそれなりに出来てるけどプレースタイルがあってないわ。あれじゃあ、上手くなる以前の問題っしょ」
「成程・・参考までに、どのようなプレーが戸塚君に合うのか聞いてもいいかしら?」
「んー・・あーし的にはーー」
コートの外で戸塚の育成方針を議論し始める雪ノ下と三浦
「ねー」
そしてーー
邪魔にならないスペースで体育座りをしている三人
葉山、武内、由比ヶ浜はテニスコートの中で走り回っている二人を見守る役に徹していた
「あたしら・・いらなくない?」
そんな悲観的なことを言う由比ヶ浜の言葉に葉山は首を振るって否定した
「・・いや、優美子と雪乃ちゃんは相性が悪そうに見える。きっと言い争いになる筈だ。結衣は、その時の為のストッパー。俺と武内は比企谷の体力が切れた時の控え選手。ほら、みんな必要だろ?」
そう言って葉山は笑う
だが、無理やり笑っている為、口元が引きつっている
いつもの爽やかスマイルには遠く及ばない
「ピーーッ!」
雪ノ下が笛を鳴らすと比企谷と戸塚はラリーを止めて三浦たちの所に集まる
三浦が戸塚に合ったラケットの振り方やプレースタイルを実技を交えながら説明していく
その間、雪ノ下は比企谷から戸塚の癖など気になった点を聞き出しながら要点をまとめる
「優美子ってさ・・・結構、世話焼きなんだ」
「・・・あぁ」
「そう・・ですね」
「だからかもしんないんだけど・・割と相手の変化に気付くんだよね」
由比ヶ浜の言う通り三浦は二人が疲労の色を見せると休憩を挟む
言動はキツイが練習自体は相手のコンディションなどを考えながら組み込んでいる為
練習を始めてから今までプレーの質は殆ど落ちていない
つまりーー
「隼人君と武内君の出番なくない?」
「・・・・・・」
「・・・空が・・綺麗ですね」
武内がぼーっと空を眺めているのを真似するように葉山も見上げた
「今、いいかしら」
「何?」
戸塚の練習を見ていた三浦に雪ノ下が話し掛けた
「比企谷君から戸塚君の癖などを聞いて練習メニューを考えてみたの。確認してもらえないかしら?」
それを聞くと戸塚に練習指示を出して三浦は雪ノ下からノートを受け取った
「ふーん・・まぁ、悪くないわね。でも、此処はいらなくない?」
「そう?私はこの練習は戸塚君にとって必要な練習だと思うのだけれど・・」
「それ今の段階でやったら悪影響出るっての。まずは此処の練習で下半身を鍛えてからーー」
葉山の言う通り衝突はしているものの喧嘩に発展する程のものじゃない
つまりーー
「私の出番なくない?」
「・・・・あ、あの雲、ソフトクリームみたいだぞ」
「・・・・本当ですね。その隣はキャンディーに見えませんか?」
「・・・・・・」
最早、ここに由比ヶ浜をフォローする者はいない
ふぅ・・と息を吐き
先人に倣うように由比ヶ浜も空を見上げた