やはり葉山の親友が武内Pなのは、間違っているだろか 作:阿保パンマン
夏休みになる少し前
「隼人君!隼人君!キャンプいなない?」
「なんだよ急に・・」
「いやー、なんか、タダでキャンプできるみたいなのがあってさー!これは、もう行くしかないっしょ!」
「戸部、それマジ?」
「マジ、マジ」
「ふーん・・なら、あーしも参加しようかな。隼人も参加するっしょ?」
説明になっていない説明をされて困惑する葉山をよそに話が淡々と進んで行く
「葉山君と戸部君が参加するんだ・・・腐腐」
「妃菜の落ち着けし」
身の危険を感じた葉山は戸部に何を見てキャンプの話になったのかを簡潔に聞き出して教室から出て行った
「成程・・泊りがけのボランティア活動か」
学校の掲示板の隅に隠すように張り出されている内容を見て納得する
自分のグループでこの話を聞いていないのは奉仕部で雪ノ下と昼食を取っている由比ヶ浜だけ
「結衣には伝えなくてもよさそうだな」
このプリントを作成した人物を見て判断する
そうなると・・・
真っ先に頭に浮かんだのは武内だった
他のメンバーとも関りがあるし誰も嫌だとは言わないだろう
しかし、この内容に彼を呼んでいいものか考えてしまう
(アイツ・・・結構、繊細な所があるからな)
けれど、こういった経験が武内には必要なんじゃないか?
そう考えた葉山は、彼を誘うことに決めた
千葉村にある集いの広場という所に100人近い小学生が集まっていた
これだけの子供が一同に集まっていれば騒がしくなって当然
教師方もどれくらいの時間で騒ぎが収まるのか計算に入れて計画を立てていた
しかしーー
「み、みんな、偉いわね!今日は、先生が注意する前から静かにできて!」
子供たちは何も反応せずに俯いている
教師も悟ったのか淡々と、これからの予定を説明する
「ーーでは、最後にみんなの手伝いをしてくれる、お兄さんお姉さんを紹介します。まず挨拶をしましょう。よろしくお願いします」
「・・・よ、よろしくお願いします」
ぼそぼそと小さな声で挨拶をする
チラチラと目をやるが、すぐに目を逸らす
その空気を変えようと葉山が一歩前に出た
「これから3日間、みんなのお手伝いをします。何かあったらいつでも俺達に相談して下さいね」
拍手が巻き起こった
教師陣から数は少ないけれど力強い拍手が・・・
「では、オリエンテーリング。スタート!」
教師の掛け声で子供達は、逃げるように散らばった
武内はなるべく子供たちの視界に入らないように後ろに下がった
葉山もそれに続くと武内は頭を下げた
「・・・・すみません。私のせいで子供達を恐がらせてしまいました」
武内の言っていることは事実である
現に武内が子供たちの前に現れるまでは、辺りで鳴いている蝉の声にも負けない程、騒がしかったから
「誘わなかったほうが良かったか?」
チラッと横目で武内の様子を伺う
その表情は、暗い
「いえ、葉山さんが気に病むことは・・参加することを決めたのは私自身ですから」
「なら、暗い顔はそこまでにしてさ、ここからは、お前の好きな笑顔でいこう」
葉山は指で口角をあげて笑顔を作る
真似るように武内も笑顔を作る
「どう・・でしょうか?」
それは、笑顔とは言い難いひきつったものだった
しかし、葉山は頷いた
「いい笑顔です」
それは自分の真似なんだろう
けれど、葉山は自分が言うよりも様になっている
それがなんだか可笑しくて武内は笑みを零した
「お、今度こそ良い笑顔だな」
葉山に指摘されて武内は照れたように首に手を当てる
「・・私、このボランティアに参加してよかった」
「いいから鼻血ふけし」
そう言いながら三浦は海老名の鼻血をハンカチで拭く
「あ、あはは・・あたし、武内君よりも妃菜の方が心配かも」
力なく笑う由比ヶ浜に戸部は苦笑いを浮かべながら頷いた
そんなやりとりを遠目で見ていた比企谷に雪ノ下が近づいていく
「羨ましそうね」
「は?んなわけねぇだろ。だれが武内たちの関係なんか・・・」
「別に武内君達とは一言も言っていないのだけど?」
「あ」
雪ノ下は、勝ち誇った顔をして比企谷を見る
「いや、話の流れ的に武内たちだったろ」
動揺していたのか少し大きな声を出してしまった
それに気が付いた武内と葉山が比企谷達の方へとやって来る
「あの・・」
素知らぬ顔をしている雪ノ下を睨み付ける
しかし、睨み返されて比企谷は、視線を逸らした
「私がどうかしましたか?」
「あの感じだと俺もだろ」
「あー・・」
男二人に囲まれながら言い訳を考える自分の姿が昔、ヤンキーにカツアゲされた苦い思い出と重なって泣きそうになった
「お兄ちゃん、この後、小町たちって何すればいいの?」
そんな比企谷の危機を救ったのは彼の妹だった
「あ、初めまして。比企谷小町です」
「俺は、比企谷のクラスメートの葉山隼人です。よろしくね、小町ちゃん」
「私は武内です。よろしくお願いします」
年下の小町にも躊躇いなく武内はお辞儀をした
小町は、驚いたように一歩引く
「固すぎだ。小町ちゃんが困ってるだろ」
そう言って葉山は武内を小突いた
すみませんと言って武内は頭を下げる
「ほら、また」
「あ」
再び指摘されたのが恥ずかしかったのか武内は大きな体を丸くして手を首に当てる
その仕草が大きさもあってマスコットのようで愛らしく見えた
「ふふ・・・なんだか武内さんって可愛いですね」
「「え?」」
小町の発言に比企谷と武内が驚いた
「ちょ、こ、小町?」
「武内さん、葉山さん・・兄のことをよろしくお願いします」
妹の発言に動揺するブラコンと、どう反応したらわからないマスコットを置き去りにして、ぺこりと頭をさげる
「こちらこそ」
「よ、よろしくお願いします?」
「あ、首を傾げる武内さんも可愛い」
「は、はぁ・・」
面白い玩具を見つけた子供の様に武内をからかって遊ぶ小町
横から茶々を入れる葉山
完全に3人の空間が出来上がっており取り残された比企谷
ボッチになるのは慣れている
だが、小町を取られることになれていないブラコンボッチは、小町を2人から引き離そうと話題を振る
「つ、次、何したらいいか平塚先生に聞きに行こうぜ」
「あ、それもそうだな」
「では平塚先生を呼びに行きますか」
「・・小町と雪ノ下は、連れて行かなくても良いんじゃないか?ほら、長旅で疲れてるだろうし」
妹を護る為、なけなしのコミュ力で必死に頑張る比企谷に雪ノ下は侮蔑の視線を送る
どうやら自分の名前をダシに使われたのが気に喰わなかったらしい
「えー・・小町、別に疲れてないよー」
「ちょ、小町!」
そんなやりとりをしている間に平塚先生がやってきた
どうやら戸塚が呼びに行っていたらしい
皆が平塚先生の周りに集まっていく中、比企谷は小町に目を向ける
すると小町はウィンクをした
それで戸塚が平塚先生を呼びに行ったことを知っていたと理解できたのは、お互いのことをよく理解しているからだろう
「はぁ・・・」
比企谷は溜息を吐く
これだから女は恐いんだと、しみじみ思いながら平塚先生が説明を始めるのを待った
「このオリエンテーションでの仕事だが、君達にお願いするのは、ゴール地点での昼食の準備だ。生徒たちの弁当と飲み物の配膳を頼む。私は車で先に運んでおくから」
「俺らも車に乗ってけばいいんですか?」
比企谷が聞くが平塚先生は、首を振る
「そんなスペースはないよ。きりきり歩け。勿論、小学生より早くな」
そう言うや否や平塚先生は車を走らせて去っていった
急がなければ間に合わなくなると感じた一同は、文句を言う暇もなくゴールに向かって歩き出した