やはり葉山の親友が武内Pなのは、間違っているだろか 作:阿保パンマン
オリエンテーリングに勤しむ小学生たちに葉山が声をかけるようになると他のメンバーもつられるようにして「頑張れー」、「ゴールで待ってるから!」などと声をかけ始めた
そんな気さくなお姉さん、お兄さんに子供たちが懐かない訳もなく気付いたら向こうの方から気軽に話しかけてくるようになっていた
そんな光景を離れた所で眺めている3人
武内、比企谷、雪ノ下
あちらのお姉さん、お兄さんグループとは違い誰も寄り付かない所か子供の方から避ける程
その原因は、九割九分、武内の顔であったが・・・
「あの・・お二人とも葉山さん達のグループに加わってみては、どうでしょうか?」
申し訳なくなってきた武内は遠回しに自分から離れることを勧めてきた
しかし、二人の反応は鈍い
「あの・・・」
「お前の影に隠れて目立ってないけど、俺も子供達から恐がられてんだよ」
「確かに白昼堂々、ゾンビがかっ歩していたら恐いものね」
「人のトラウマを刺激しながら納得しないでもらえます?」
「確かに、そうかもしれません・・・」
「・・・え?お前も俺のこと、そう思ってんの?」
「あ、いえ!違います!!」
若干、傷ついた顔をしている比企谷に全力で否定する武内
「なら、どういうことかしら?」
「その・・比企谷さんがご自身で言う通り子供から恐がられていると・・・そう思いまして」
「あー・・まぁ、うん」
自分で言うのは平気だが他人から改めて言われると傷つくものなんだなと比企谷は、再認識した
隣で肩を震わせながら笑いを堪えている雪ノ下の姿を見てさらに傷つく
ゴール地点に到着する前に俺のライフポイントがゴールしちゃいそうなんですけど・・
そんなことを考えている比企谷にずいっと近寄る武内
驚いて比企谷は一歩後ろに後ずさった
「ですが、貴方は、私達の中で年下の扱いに長けている。比企谷さんと比企谷さんのやり取りを見ていて感じました」
武内の真っ直ぐな目が比企谷さんの目を捉えて離さない
「最初は多少、距離を置かれてしまうかもしれません。けれど、貴方の言動に子供たちは次第に心を許してくれると私は、そう思います」
「お、おう」
あまりの勢いに比企谷は思わず頷いてしまった
すると、思わぬところから弾が飛んできた
「腐腐、私の見込み通り比企谷君はヘタレ受けだ。同じ受け属性の武内君が相手でも迫られたら即墜ちしそう」
「妃菜!少しは自重しろっての!」
いつの間にかやってきていた海老名は、三浦に引きずられる形で戻っていった
その光景を唖然として見詰める3人
「なにやってるんだ。置いてくぞ」
葉山に声をかけられて我を取り戻した三人は小走りで彼らの後を追いかけた
「ん?」
横に折れて行く道に入ると女子五人の小学生グループと遭遇した
そのグループは元気のいい活発な子が多い
おしゃれが好きなのか葉山や三浦、由比ヶ浜などに羨望の眼差しを送っていた
「あ、あの!一緒にチェックポイント探してくれませんか?」
積極的に話しかけてくる少女たちを無碍に扱う訳にもいかず、葉山達は彼女達に付き合うことに決めた
「じゃあ、ここだけ手伝うよ。でも、他のみんなには内緒な?」
お姉さん、お兄さんグループの代表である葉山が言うと小学生たちは元気よく返事をする
秘密の共有
葉山の手腕に感心している比企谷の横で苦虫を嚙みしめたかのような表情をしている雪ノ下
葉山が横目で武内を見る
武内は黙って頷いた
それを確認すると葉山は少女たちに話し掛けた
楽しそうに葉山の話を聞く4人
その2、3歩後ろを歩く1人の少女
5人班で、一人だけつまらなそうに首にかけているカメラをいじる
その様子を他の4人がチラチラと見て笑う
少女は、何も反応せずにカメラをじっとみつめる
その姿は、明らかに周りから浮いていた
「・・二人とも少しよろしいでしょうか?」
比企谷が気付いたのを確認すると武内は小声で二人に呼びかける
「グループから1人浮いている子がいます」
「・・・・そうね」
「・・・・・」
「あとで・・あの子に話しかけてあげてくれませんか?」
お願いします
武内は頭を下げて二人に頼み込んだ
「・・・どうして私たちなのかしら?」
「葉山さん達のグループは子供から人気です。自由時間に誰かから誘いを受ける可能性が高い。そんな中、孤立した子に話し掛ければ、少なからず周りから反感を買ってしまいます」
そこで一端、話を区切った武内は少し悲しそうな顔をして口を開いた
「その点・・・貴方達は私と行動を共にしていたので子供たちは近寄ってこないでしょう。私と合流してしまうかもしれませんから・・・」
口には出さなかったが、二人とも納得してしまった
どうやら顔に出ていたらしく武内はプルプルと震え出す
何を我慢しているのか語るまでもないだろう
「あー・・でも、それってあの子が一人にならなきゃ意味なくねぇか?」
思いついた疑問を投げかける比企谷に追撃するように雪ノ下が続く
「そうね。私達が相手でも反感を買う可能性はけして低くないと思うわ」
「いえ、その心配は必要ないかと・・」
二人の視線が武内に集まる
すると武内は、寂しそうに目を細めた
「もし、私がクラスから孤立していたら・・自由時間は1人になれる場所で過ごすと思いますので・・・・」
根拠はない
しかし、二人とも経験したことがあった
楽しそうにはしゃいでいるクラスメートから逃げるように1人遠ざかっていった苦い思い出が・・・
「ありがとうございます!」
元気のいい挨拶をする小学生たちと別れた葉山たちは一足先にゴール地点に向かう
少し遅れて武内たちも、その後に続く
武内の表情は、憑き物が落ちたように晴れやかであった
木立の間を抜けていくと開けた場所に出た
山の中腹に位置する地点がゴールらしい
「遅かったな。早速だが、これを下ろして配膳の準備を頼めるか?」
平塚先生が車から降り、車のトランクを開けると弁当と飲み物の類が折り込みコンテナに入って山の様に積まれている
その一つを武内は、持ち上げて指示された場所に持って行った
あまりにも軽々と持ち上げていたので比企谷もさっさと仕事を終わらせようと持ち上げる
「っ!!?」
持ち上がったが予想以上に重く運ぶどころではない
「ちょ、む、無理っ」
生まれたての小鹿のように足をプルプルと震わせている比企谷は、恥も外聞も捨てて周りに助けを請う
近くにいた戸部が笑いながら比企谷の助けに入る
「ちょ、比企谷君、力なさすぎーーっておもっ!?」
洒落にならないと騒ぐ戸部だが運べない程の重さではないようでせっせと運んで行った
「武内君って凄い力持ちなんだね!」
「い、いえ・・」
戻ってきた武内に戸塚は尊敬の眼差しを送る
子犬のように愛くるしい表情で迫られた武内は少し顔を赤らめて首を触る
それを見ていた海老名の目が煌めく
と同時に三浦にひっ叩かれてあえなく撃沈
「武内、戸塚、運ぶの付き合ってくれ」
「は、はい」
「うん!」
葉山に呼ばれて残りのコンテナも運びだした
「それとデザートに梨を冷やしてある」
そう言って平塚先生は後方をくいっと親指で指示した
ちょろちょろと小川のせせらぎが聞こえてくる
どうやら流水に浸かっているらしい
「包丁類もあるから、皮むきとカット、よろしくな」
ぽんとカゴを叩く平塚先生
そこには、果物ナイフにミニまな板がいくつかと紙皿に爪楊枝などが入っていた
1学年分の梨と配膳となるとかなりの労働量になる
「手分けした方がよさそうだな」
葉山が言うと三浦は、自分のネイルを見詰める
「あーし、料理パス」
「俺も料理は無理だわー」
「私は、どっちでもいいかなー」
戸部、海老名と続き、葉山はしばし考える
「んー・・配膳は、そこまで人いらないだろうし・・・俺達、4人でやるか」
「んじゃ、あたしたちで梨やるよ!」
由比ヶ浜が答えて二手に分かれる
「・・・・お前、配膳の方じゃなくていいのか?」
小川に梨を取りに行きつつ比企谷は由比ヶ浜に訊ねる
「・・・もしかして、気を使ってくれた?」
見上げるように見つめる由比ヶ浜の視線に耐えられなくなった比企谷は、顔を逸らした
「まぁ・・お前、三浦たちと仲いいし」
「ヒッキー、ありがとう」
顔を逸らしたままの比企谷は、由比ヶ浜がどんな表情を浮かべているのか、わからない
けれど、クッキーの感想を言った時や誕生日プレゼントを贈った時のような笑顔を浮かべているんじゃないかと思う
「・・・・おう」
考えただけで顔が熱くなる
これ以上、熱くなったら倒れかねない
そう考えると顔を背けておいて正解だと比企谷は思った