やはり葉山の親友が武内Pなのは、間違っているだろか 作:阿保パンマン
梨を運び、包丁類を準備を終えて作業に取り掛かった
皮むきは、雪ノ下と由比ヶ浜と武内
比企谷と小町と戸塚は、紙皿に並べて爪楊枝を刺していく
手際よく梨をむいていく雪ノ下の隣でやる気十分の由比ヶ浜
そんな由比ヶ浜を心配そうに見ている武内
「あの・・大丈夫でしょうか?」
「ふふーん!あたしも相当腕を上げたからね!」
「凄い自信ね。お手並み拝見といったところかしら?」
任せてー!と言う由比ヶ浜の愛くるしさに雪ノ下は、頬を緩ませた
「ま、待ってください」
由比ヶ浜が梨の皮を包丁で切り始めてすぐにストップがかかった
「どうしたの?武内君?」
不思議そうに武内を見る由比ヶ浜
「見て下さい」
そう言って武内は、由比ヶ浜の持っている梨を指さした
見ると梨からは皮だけでなく中身もそぎ落とされていた
このまま放っておいたら食べる所が皆無になっていただろう
「あ、あれ?おっかしーな・・包丁の使い方、ママに教えてもらったのに・・・」
「包丁の使い方は上手でした。貴女の努力は無駄ではありません」
「へへ、そうかな?」
照れくさそうにしている由比ヶ浜に武内は「しかし」と続ける
「皮のむき方は・・その、今の由比ヶ浜さんには厳しいかと・・・」
武内から重々しく告げられた戦力外通告に由比ヶ浜は、肩を落とす
「・・ごめん。他に皮むき出来る人いない?」
へこみながら由比ヶ浜は比企谷達に訊ねる
「あ、じゃあ、小町がやります」
「うん、おねがいねー」
そう言って小町とバトンタッチした由比ヶ浜
その隣で比企谷が意外そうな顔をして由比ヶ浜を見ていた
「お前・・料理できなかったんだな」
「う、うん・・・別に隠してた訳じゃないんだけど・・・あはは、なんか恥ずかしいかも」
照れくさそうに頬をかきながら告げた
「その割には・・・あのクッキー・・美味かったけどな」
「えへへ・・ありがと。でも、あれも武内君がいなかったら上手くできなかったと思うし」
それを聞いてズキズキと胸が痛むのを感じた
比企谷は、悟られないように梨に目線を向ける
機械のようにぷすぷすと梨に爪楊枝を刺してゆく
こういった痛みには慣れている筈なのに・・・
初めて女子から拒絶された時の様に胸が痛むのは何故だろう?
わかっている
けれど、それを認める勇気が今の比企谷にはなかった
「ヒッキー?どうしたの?」
由比ヶ浜に声をかけられて顔をあげる
すると間近で由比ヶ浜と目が合った
「っ」
焦った比企谷は思いっ切り後ろに後ずさった
その反応が気にくわなかったのかジト目で比企谷を見る由比ヶ浜
「お、おま!近すぎるだろ!なんなの!?ビッチなの!?」
「ビッチじゃないし!」
むー!と比企谷に威嚇する由比ヶ浜を庇うように戸塚が前に出た
「今のは八幡が悪いよ」
戸塚に断言された比企谷はこの世の終わりのような顔になった
それでもむ!っと怒った顔を崩さずに戸塚は話し続ける
「由比ヶ浜さん、八幡が元気なさそうにしてるから心配して声をかけたのに・・ビッチ呼ばわりは幾らなんでも酷いよ」
それを聞いた比企谷は、ばつの悪そうな顔をして由比ヶ浜を見る
すると由比ヶ浜は、べー!と舌を出してプイっとそっぽを向いた
「・・・・・」
そんな由比ヶ浜の様子を見て、さっきまで自分の中に渦巻いていた薄汚い感情がいつの間にか消えてることに気が付いた
比企谷は、何とも言えない顔をして頭をがしがしと掻きながら由比ヶ浜へと一歩踏み込む
「由比ヶ浜、その・・悪かった・・・心配してくれたのにビッチとか言っちまって」
「・・・もう言わないって約束してくれるなら許してあげる」
チラッと由比ヶ浜が上目遣いで比企谷を見ると高速で顔を逸らされた
「ちょ!ヒッキー、なんで今、目を逸らしたの!?」
「な、なんでもない」
「その反応、傷つくんだけど!?」
頑なに由比ヶ浜の方に顔を向けない比企谷
すると由比ヶ浜は比企谷の顔を無理やりむけようとする
「ちょ、お前!やめろ!マジやめろってっ!!」
「むむ!だったらヒッキーがこっち向けばいいじゃん!」
どちらも引く気はないようで均衡状態が続いている
しかし、それも長くは続かなかった
「由比ヶ浜さん、比企谷君」
名前を呼ばれて二人同時に振り返るとそこには、包丁を片手に持った雪ノ下が立っていた
笑みを浮かべているが怒っていることが一目でわかる程、恐ろしい顔をしていたと後に二人は語る
「遊んでないで手伝って欲しいのだけれど?」
「「は、はい!」」
約2名が悲鳴をあげながら綺麗に切られた梨を紙皿に並べて爪楊枝を刺してゆく
途中から見てられなくなった、武内と戸塚が手伝おうとしたが氷の女王の前に敗北
なんとかギリギリ間に合わせることの出来た2人は、作業を終えるのと同時に力尽きた
こうして梨剥きは無事に終わったのである
昼食の配膳を終えた武内たちは殆ど休む暇なく自分たちの夕食を作り始めた
メニューはカレー
日常的に料理をする人間が4、5人いた為、何か問題が起こることもなくスムーズに進んだ
周囲を見渡すと炊きの煙があたりに散見できる
小学生たちの中には苦戦してるグループもあるようで順調とは、お世辞にも言えない
「暇なら見回って手伝いでもするかね?」
平塚先生は冗談交じりに投げかける
「そうですね。小学生と話し機会なんてないし」
すると三浦をはじめとする葉山メンバーが参加の意思を見せ始める
「では、私達が鍋を見ています」
「頼んだぞ。武内」
そう言って葉山達は、小学生グループに話し掛けに行った
「君達も行ってくると私が見ててやる」
比企谷の方を見てニヤニヤと笑う平塚先生
千葉村で葉山達と合流した時に言われた「うまくやる」為の訓練を比企谷たちにやらせようとしているのだろう
「いや、結構です」
けれど、断った
「ほぅ・・理由を聞いても構わないかな?」
「あー・・此処じゃなんなんで向こうで話してもいいっすか?」
「あぁ、いいさ。何かあったことくらい君の行動からわかるからな」
そう言うと平塚先生と比企谷は、何かを話しながら炊事場から離れて行った
一瞬、平塚先生は武内に視線を向けたが彼は気付くこともなく、鍋の中のルーをかき混ぜている
そんな彼の横で鍋の中身を見る小町と戸塚
「いい感じだね」
「はい。いい感じです」
ニコニコと話しかける戸塚に相槌を立てる武内
そんな二人を見て微笑ましいなと思いながら小町は会話を投げかける
「武内さんって本当に料理上手ですよね」
小町に話し掛けられた武内は頬を緩ませながら告げる
「食には関心がありますので」
料理をしている時の彼は、いつもの鉄仮面のような顔が、いつもよりも柔らかい
本当のことなんだろうと小町は思う
「ですが、比企谷さんも料理上手だと思いますよ」
「あ、僕も小町ちゃんは料理上手だと思う」
「そうですか?小町的には、まだまだかなーと思いますけど・・」
武内と戸塚に褒められて照れくさそうな顔をする小町
そんな小町を見て武内は小さく頷いた
「?どうしました?武内さん?」
「いえ、小町さんはいいお嫁さんになれると思いまして」
「へ?」
唐突に投下された爆弾の威力にこの場にいた全員が固まる
「貴女のように向上心が高く、笑顔の素敵な女性と結婚出来たら、きっと幸せでしょうね」
優しい笑みを浮かべながら武内は小町に語りかけるように囁いた
「も、もー!武内さん!小町が年下だからって、からかわないでくださいよー!」
頬を赤らめながら小町は武内を軽く注意する
しかし、武内はきょとんとした顔をした
「総て私の本心ですよ?」
瞬間ーー
「~~~~~~っ!!!??」
トマトのように顔を真っ赤にした小町は、その場から勢いよく走り去っていった
「ひ、比企谷さん!?」
「ま、待って!」
追いかけようとする武内を戸塚が止める
「と、戸塚さん!で、ですが・・」
「僕が追いかけるから武内君は此処にいて!」
それだけ言うと戸塚は小町が逃げ出した方に向かって走り出した
この場にいるのは、武内と雪ノ下のみ
おたまを置いて雪ノ下の方に振り向く武内
武内と目が合った瞬間、雪ノ下は身構える
それを目の当たりにした武内は勢いよく頭を下げた
「すみませんでした!」
「は?」
突然の謝罪に流石の雪ノ下も困惑した
「貴方は・・何に対して謝っているの?」
「私が気付かぬ内に比企谷さんを怒らせるような発言をしてしまい、場の空気を悪くしてしまったので・・・」
本当に申し訳なさそうに頭を下げる武内
雪ノ下から見ても嘘を吐いているようには見えなかった
「・・・・小町さんのことを口説いていたという自覚は?」
「比企谷さんを口説く?そのようなことはしていませんが?」
不思議そうに雪ノ下の顔を見る武内
それを見て雪ノ下は理解した
目の前の男は素であんな台詞を恥ずかしげもなく言ってのけたのだと
思わず頭を抱えた
「雪ノ下さん、大丈夫ですか?」
「・・・えぇ、大丈夫よ」
頭を抱えた雪ノ下さんを見て心配そうな顔をする武内
他意がない
純粋に身体の心配していることが感じられる
だからこそ、タチが悪い
雪ノ下は堪えられず、大きなため息を吐いた
「貴方・・色魔かしら?」
「え?」
「あまり、無節操に優しくしない方がいいわ。でないといつか刺されるわよ」
「は、はぁ・・ありがとございます?」
葉山とのやり取りなどから武内は、それなりに察しがいい方だと思っていた雪ノ下だったが・・
女心については鈍感という言葉で済まされない程の酷さ
それは天然な由比ヶ浜を更に凶悪にしたようなものだ
雪ノ下は再び溜め息を吐いた
それは先程とは比べられない程、大きな溜め息だった