我が名、嘴平伊之助が子分・嘴平一子!   作:悪魔さん

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妓夫太郎お兄ちゃんのCVが逢坂さんでしたね。
アニメ見て、「なああ」とかピッタリでした。

本作での扱い、どうしよっかな……。

それと魘夢が炭治郎に「汽車と融合した」ってバラしたの、結構致命的な気がします。アレ死亡フラグじゃないですか?(笑)



第十一話 悪夢

 鬼の体内と化した車内では、触手に噛みついて電撃を流し込んだ一子により肉の動きが感電して痙攣。護る対象が多いために劣勢と思われた鬼殺隊は、一子の雷撃によって押し始めていた。

「〝雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃〟!」

「むんっ!」

 鼻提灯を揺らし、神速の居合を繰り出す善逸。

 足で蹴り破り、爪で切り裂く禰豆子。

 その活躍ぶりを眺めていた炎柱・煉獄杏寿郎は感心した様子で闘気を放出する。

「後れをとるわけにはいかんな!! 煉獄杏寿郎、参らん!!」

 痙攣を起こしながらも己に迫る触手だけでなく、床や窓、天井に浮き出た鬼の肉にも斬撃を入れた。

 列車全体が揺るぐ程の衝撃が発生し、炭治郎達は思わず通路を転がった。

(な、何だ今の!? 鬼の攻撃!?)

「竈門少年!! 猪頭少年!! 一子従者!!」

「煉獄さん!!」

「ここに来るまでにかなり細かく斬撃を入れてきたので、鬼側も再生に時間がかかるとは思うが余裕は無い!! 手短に話す!!」

 杏寿郎は片手を広げ、指揮官として命令した。

「この汽車は八両編成だ。後ろ五両は俺が、残りの三両は黄色い少年と竈門妹が守る! 君と猪頭少年、そして一子従者はその三両の状態を注意しつつ鬼の頸を探せ!」

「親分、黒モヤシはこの汽車と融合したと言っていました。汽車を操れるところが怪しいと考えるのが妥当かと」

「要は先頭ってことか! よくやった、褒めてやる!!」

 愉しそうに伊之助は賛辞を送り、一子は顔を赤らめ顔を背けた。

「そ、そんな……俺は別に……ただ、親分の為に……」

「乙女だな!!!」

 武人肌と忠義の心を持つ一子の一面に、杏寿郎は笑った。

「親分、行きましょう!」

「おうっ!」

 そう言うや否や、一子は跳び上がって天井を殴り破り、伊之助と共に屋根に乗った。

 それを見た杏寿郎は、炭治郎に「君も気合を入れろ!」と喝を入れ、大きな振動と共に姿を消した。

(これが、柱……って感心している場合じゃないぞ!)

 俺も役に立たなければ、皆を護らなければ――そう強く決心し、炭治郎は伊之助と一子の後を追った。

 

 

 デッキの縁に手をかけ、風圧に負けじと屋根の上に飛び乗る炭治郎。

 すでに二人は、先頭車両に着いている頃だろうか。

「伊之助……一子さん……!」

 炭水車まで移動したところで、二人の姿が確認できた。

 動くのに邪魔だったのか、運転室の屋根は引き千切られていた。

 この列車を動かす運転手もいるが、青褪めて震えている。それはそうだろう、猪の皮を被った少年と長身の鬼女が殴り込んできたのだから。

「グワハハハハ!! 怪しいぜ怪しいぜ、この辺り!!」

「親分! 床下から気配が……!」

「よぅし!! ぶった切ってやる!!」

 好戦的に意気込む伊之助が、刀を構える。

 そのまま大きく振り下ろすが、運転室の至る所から鬼の肉がボコッと浮き出た。一気に膨れ上がったそれが伊之助に襲い掛かるが、一子が割って入った。触手が一子の四肢を掴み、とどめとばかりに顔へ伸びる。

 しかし、一子はそれを待っていた。鬼特有の怪力で強引に体を動かして躱し、横からガブッと嚙みついた。

「一子!」

「おあふん、ひあへふ!!」

 触手に噛みつきながら、一子は全集中の呼吸で体内の電圧を高め、先程と同じように高圧電流を流し込んだ。

 バリバリと音を響かせ、再び感電させ、痙攣を起こさせる。これでまた、思うように動かなくなるだろう。

「グワハハハハ!! 俺様の一子を甘く見てたな!!」

「伊之助!! 一子さん!!」

「あぁ! やっと来やがったか三太郎!!」

 炭治郎は運転室に乗り込むと、鼻をスンスンと蠢かせ、しゃがみ込んだ。

 鬼の臭いが一際強い。やはり急所――鬼の頸は、一子の読み通り運転室の真下のようだ。

「やっぱりそこか! どけ、子分共!」

 伊之助は跳躍すると、腕を交差させて急降下した。

「〝獣の呼吸 弐ノ牙 切り裂き〟!!」

 落下による衝撃を加えた伊之助の斬撃が、運転室の床を斬り裂いた。

 その直後、むせ返るような鬼の臭いと共に、真っ白い蒸気のようなモノが噴き出た。

「ふんっ!」

 一子は愛用の棍棒を取り出し、一薙ぎ。

 一瞬で振り払うと、床に空いた穴から巨大な頸の骨が大きく脈打っているのが見えた。

 これを斬れば終わる――炭治郎は〝水の呼吸 捌ノ型 滝壷〟を繰り出し、上段から真下へ刀を振り下ろした。

 しかし、一歩遅かった。斬り裂かれた床下から数多の腕が生え、刃が止められたのだ。

(防がれた!)

 炭治郎は奥歯を噛み締める。

 次の瞬間、鬼の腕が破裂するかのように四方に伸びた。

 動揺する運転手を抱えつつ、三人は次々に襲い掛かってくる腕を掻い潜り、石炭の上に着地する。すると四方に伸びていた腕は戻っていったかと思えば、頸の骨の周りの肉が盛り上がり、腕と重なり合うように固く閉ざしてしまった。

 その再生力の速さに、炭治郎は険しい表情で眉を顰め、伊之助は舌打ちをし地団太を踏んでいる。そこへ一子が声を掛けた。

「親分、炭治郎。ここは俺が」

「一子?」

 ゴトリと棍棒を置いた一子は、呼吸の精度を高めた。

 それと共に身体からゴロゴロという雷鳴が響き始め、肌に電紋が浮かび輝き始め、目からも光が漏れた。静電気の影響か、長い金髪も逆立つように浮き始める。

 そして一子は口を大きく開け――

 

 ドォッ!!

 

「「んなぁっ!?」」

 口から雷撃状の光線を射出。

 吐かれた光線は、床下に直撃。放電と火花を散らし、焼き尽くしていく。

「ギャアアアアアアアアアアッ!?」

 光線は〝核〟を徹底的に攻撃。高圧電流による感電は神経をも焼き切らんとし、魘夢は断末魔の叫びを上げた。

 本来なら斬りかかったところで血鬼術を発動し、強制催眠させる腹積もりだった魘夢は、またもや出鼻を挫かれた。

「ふしゅうううう……」

 光線を吐き終えた一子は口を閉じ、床下を覗き込んだ。

 頸の骨は再び剥き出しとなっていた。先程の光線の影響か、黒く炭化しており、再生が目に見えて遅い。

「ハハァ! あとはアレを斬れば終わりってことだな! でかした一子!」

 子分の働きを称え、鼻息を荒げる伊之助。

 その時、一子の背後で運転手がよろりと動いた。その手には、鈍く光る錐のような何かが。

「夢ぇの邪魔をするなああああああ!!」

「一子さん!!」

「一子、危ねぇ!!」

 血を吐くような叫び声と共に、運転手が一子の背中に錐を突き立て……。

 

 バキィン!

 

「ん?」

「ひいぃっ!?」

「うえぇっ!?」

 何と錐が、ポッキリとへし折れた。

 実はこの錐、炭治郎達は知らないが魘夢の身体を素材とした代物。持ち手は骨、切っ先は歯を使用し、刺突に用いることで鬼殺隊の隊服すら貫通できる――のだが、一子の強靭な肉体には一切通じなかったのである。

 これには運転士どころか、目の当たりにしていた炭治郎ですら絶句。伊之助は「そういやコイツの身体、ヤケに硬かったな」と呑気に呟いているが、人間よりもはるかに頑丈な鬼の身体を素材にした武器すらへし折る一子の強靭さには驚くしかない。

 

 ゴンッ!

 

「はぶっ」

 呆然とする運転手の脳天を、一子は棍棒で叩き意識を奪う。

 頭にできた大きなタンコブが、鬼の臭いが酷いこの戦場ではとても場違いに思える。

「よし! 伊之助、呼吸を合わせて鬼の頸を斬るんだ!! どちらかが肉を斬り、すかさずどちらかが骨を断とう!!」

「連撃ってことか! いい考えだ、褒めてやる!」

「ありがとう!! 行くぞ!!」

 互いに顔を見合わせ、炭治郎と伊之助は跳んだ。

 最後の足掻きか、一子の攻撃によって痙攣を起こしつつも触手が一斉に襲い掛かった。二人はそれを斬り裂きながら急降下し、床下に狙いを定めた。

「行くぜ!! 〝獣の呼吸 肆ノ牙〟――」

 空中で構える伊之助。

 頸を護っていた腕が危険を察知し、その数を増やすが……。

「〝切細裂き〟!!」

 素早い六連撃により一つ残らず砕け散り、頸の骨が露出した。

 炭治郎は日輪刀の柄を握り締め、刃を振るった。

(〝ヒノカミ神楽 (へき)()(てん)〟!!)

 刀を両腕で握り、腰を回す要領で空に円を描くように振るう。

 垂直方向の強烈な斬撃は、汽車の車体ごと魘夢の頸椎を両断した。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 汽車と一体化した魘夢の断末魔の叫びが響き渡り、車体が激しく揺れた。

 まるで頭部を失い、のたうち回っているかのようだ。

 わずかに残った運転室の壁を掴み、炭治郎と伊之助は何とか足場を保つ。

「親分! このまま横転します! 衝撃に備えて下さい!」

 運転手を脇に抱えた一子が叫んだと同時に、轟音と共に列車は脱線した。

 

 

           *

 

 

「いたたた……」

 脱線した無限列車の炭水車の隣で、一子は腰を叩きながら辺りを見回した。

 脱線直後、一子は衝撃の余り車体から投げ出された。

 咄嗟に運転手を抱いたため、彼は無傷だ。当然異様なまでの頑丈さが取り柄の一子も無事だが、受け身に失敗して地面に叩きつけられてしまい、少々腰を痛めてしまった。もっとも、この程度のケガはさすがに秒で治るのだが。

「大丈夫か!! 一子!!」

「一子さん、無事ですか!?」

「親分! 炭治郎!」

 どうにか無事に着地した二人に、一子は思わず安堵の笑みを漏らす。

 曰く、「鬼の肉でばいんばいんして助かった」とのことだ。

「……一子さん、運転手の方は」

「そこで寝ている。当分は起きないだろうな」

 頸の傍にいた運転手も無事と知り、炭治郎は笑みを浮かべた。

 一方の伊之助は「アイツ死んでいいと思う!!」と言い放ち、ぶりぶりと怒っている。一子に手を出したことが許せないようだ。

(……夜明けが近づいている。ケガ人を助けないと……)

 善逸と禰豆子はどうしただろうか?

 煉獄さんは?

 皆無事だろうか?

(いや、きっと無事だ……信じろ)

 そう己に言い聞かせ、疲弊しきった身体に鞭を打って乗客の救助にあたった。

 そんな彼らを、近くの車体の影から覗き見ているモノがあった。頸を斬られ、中型の獣程度の大きさの肉塊となった魘夢だ。

(馬鹿な、馬鹿な! 俺は全力を出せていない!!)

 肉塊と成り果てた魘夢は、嘆きながら崩れ始めていた。

 彼は汽車と一体化し、一度に大量の人間を食う計画を企てていたが、結果はこの有様。獲物は自分の腹の中同然だったのに、人間を一人も食うどころか血の一滴すらも取り込めなかった。鬼の始祖・鬼舞辻無惨から血を分け与えられた上、用意周到に時間も手間もかけたのに、鬼狩り達に敗北した。

 こんな姿になってまで、彼は人間に勝てなかったのである。

(アイツだ!! アイツのせいだ!! 二百人も人質を取っていたようなものなのに、それでも押された、抑えられた)

 脳裏によぎるのは、炎のような髪色をした柱の男……煉獄杏寿郎。

 炎の呼吸を極めた彼の先手を打つことができたのに、即応されてしまった。

(アイツ……アイツも速かった、術を解き切れてなかったくせに……!! しかもあの娘!! 鬼じゃないか!! 何なんだ、鬼狩りに与する鬼なんて……どうして無惨様に殺されないんだ)

 眠ったまま刃を振るう我妻善逸と、人を護る鬼の娘・竈門禰豆子。

 眠った状態で戦闘可能の鬼狩りなど想定外であり、ましてや無惨の支配から外れた鬼と共闘など夢にも思わない。

(あの耳飾りのガキに術を破られたのがケチのつき始め……いや、違う!! アイツだ!! 全部あの鬼の女のせいだ!! アイツが殴り込んだからじゃないか!!!)

 そして、無惨から抹殺対象にされていた耳飾りの鬼狩り……竈門炭治郎。

 だが、彼が術を破るのは予想だにしていなかったが、魘夢自身は個々なら確実に殺せていたと見積もっていた。現に幻惑系の攻撃は物理攻撃よりも厄介な代物で、状況的にも柱でも単騎突破は困難を極めていただろう。

 そんな魘夢に圧倒的有利な戦局を、一瞬でひっくり返してしまったのが、嘴平一子だった。

 

 一子が推参してから、魘夢の運命は決まった。

 彼女の血鬼術である雷撃は、純粋な威力に関しては鬼の中でも間違いなく最上位に近かった。感電の対処など全く考えなかった魘夢はモロに食らい、身体の動きを著しく制限された。しかも再生力や血鬼術の威力・効果を低下させる特性でもあったのか、二度食らっただけで自分の血鬼術の行使が困難な状態となった。

 鬼として、自分よりも桁違いに優れていた。

 

(そうだ、あの猪もだ!! アイツがあの鬼の女を従えていた!!)

 そして、一子の主君・嘴平伊之助。

 並外れて勘が鋭い彼は、一子と絶妙な連携を披露し、頸の位置を特定してみせた。

(負けるのか……死ぬのかァ……!!)

 身悶えしようにも、ボロボロと肉が崩れ落ちていく。

(ああああ!! 悪夢だ、悪夢だああああ!!)

 崩壊する肉塊から、目玉が一つ、ボトリと地面に転がり落ちた。

 数字が刻まれていない方の眼球だ。このことで、下弦の鬼は上弦の鬼から常に蔑まれてきた。

 

 鬼狩りに殺され続けるのは、いつも底辺の鬼達。

 しかし上弦の鬼は、ここ百年顔ぶれが変わっていない。

 鬼を山程葬っている鬼狩りの柱さえも、彼らは葬っている。異次元の強さなのだ。

 

(あれだけ血を分け与えられても上弦には及ばなかった……ああああ……やり直したいやり直したい……!)

 

 ――何という惨めな悪夢だ。

 

 自身を倒した者達への恨み節を吐き。

 悔しさで気が狂いそうになりながら。

 罪無き人々を夢で苦しめてきた鬼は、悪夢のような現実に打ちのめされ絶望しながら塵となった。




【大正コソコソ噂話】
一子の理想のタイプは、以下の三つの条件が全て当てはまる人間。

・闘争心が強い
・常に自信に満ち溢れている
・自分の気持ちに忠実で、気を配ったり取り繕ったりしない

なお、一子としては全て当てはまるのは伊之助だけだと思ってます。
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