我が名、嘴平伊之助が子分・嘴平一子!   作:悪魔さん

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今更ですけど、もしも本気で上弦が鬼殺隊に寝返ったら、無惨様はどういう反応するんだろう……。
腰抜かすんかな?ww

今回は短めです。


第十七話 下戸

 産屋敷邸にて、緊急の柱合会議が行われた。

 お館様――産屋敷耀哉は体調こそ優れないが、今回ばかりは是が非でも出席せねばならないとして、妻の産屋敷あまねに支えられる形で出席した。

「皆、よく集まってくれたね……それと、初めましてだね……元上弦の参・猗窩座……いや、今は狛治かな……?」

「呼び方はどちらでも構わない」

「そうかい……じゃあ、一子。話をしておくれ」

 耀哉に促され、同席した一子は口を開いた。

 

 先日の一騎打ちにおいて、猗窩座は一子の怒号によって人間の頃の記憶を思い出した。

 これによってか、猗窩座は無惨の支配下から外れ、自責の余りに自決しようとしたが、鬼であるゆえか再生はするし、日光へ身を晒そうにも本能が忌避してできない。

 そんな中、彼は一子を頼った。鬼舞辻無惨を殺したら自分も殺せと。このあたりは、おそらく一応女性である一子への謝罪も兼ねているのだろう。本人は伊之助の影響を強く受けすぎてるので気にも留めてないが。

 そこへ炎柱の煉獄杏寿郎が偶然二人が会話しているところを目撃し、事実関係を確認してから中枢へ判断を委ねた。

 

 これが一連の流れである。

「……鬼殺隊への全面協力は惜しまない。無惨討伐後は頸を斬ってもいい」

「信用ならんな。情報の真偽が曖昧だ、間違っていた場合は俺たちの方が追い込まれる。そもそも鬼は大嫌いだ。上弦の鬼と共闘など反吐が出る」

「その程度で疑念を持つようでは、器の大きさもたかが知れるな」

「……驕るなよ、鬼風情が」

 ピリッ……と伊黒と一子が睨み合う。

 しかし圧迫感は柱の伊黒よりも、長身の一子の方が遥かに上だった。

「蛇柱、可能性など考えればキリがない。例えばすでに御陀仏無惨は狛治の処遇に目を向けている間に俺たちの居場所を把握し、今夜総出で本丸であるこの屋敷を攻め落とす……なんてこともある」

『!!』

「心配はするだけ無駄だ。考えるなら()()()()()()()()()()()()()だ。謀略にしろ、運の良し悪しにしろ、な」

 一子の言葉に、一同は唸る。

 鬼に言われるのは癪に障るが、言っていること自体は間違いない。

「それに上弦一体で最低で柱三人分というのがお前達の理屈なんだろう? ここで狛治を殺せば、最低でも柱三人分の兵力の損失ではないのか?」

「てめェ、俺たちがそいつより(よえ)ェって言いてェのかァ……?」

「面目もないが、俺は狛治との一騎打ちは全戦全敗だ」

 一子の戦績を聞き、実弥は苦い顔で舌を打つ。

 彼女の実力を知ってる分、余計に実力差を感じたのだろう。

「ただ鬼を狩りたいか、倒せば全ての鬼を道連れにできる無惨か……二兎を追う者は一兎をも得ずだ。どうする?」

「一子は助命をしないのかい?」

「親分に仇なした男だ、どうなろうが問題ない。狛治をここで殺しても()()()()()()()()()()()()だからな」

 そう、そこである。

 狛治の裏切りは、どうも無惨側にはまだバレてないらしい。元々鬼特有の縄張りをもたず、ある程度優遇されてることもあるが、ここで狛治を討伐するのはあまりよろしくない。

 上弦の陸を討伐してから、捕らえた上弦の参を処刑――鬼殺隊の士気は上がるが、同時に今まで鬼殺隊を甘く見ていた無惨も全力で潰しに来る可能性があるからだ。陸で宇髄が柱引退、参で杏寿郎と一子が敗北したという現実を考えると、未知の新しい上弦が生まれたり無惨が残りの上弦を引き連れて攻めてきたら、鬼殺隊全滅は避けられない。

 慎重な判断を求められる耀哉に、狛治は口を開いた。

「産屋敷。少なくとも上弦と無惨は一騎打ちで勝てる相手ではない。この先の敵の出方や鬼殺隊の打つ手によって、戦局は大きく変わる。どうせ俺を殺すなら使い潰してから殺す方がいいだろう」

「そう……だね。向こうの動きは制限した方がいいかもね」

「それに生かすか殺すかという選択肢を与えられたら、まず生かすを選び、そこからどう扱うかを考える方が楽だと思うが」

 狛治に続き、一子も提言する。

 耀哉の勘は……悪くないと告げている。

 ならば、使えるものは何でも使うのが一番だ。

「私個人としては、上弦の参……いや、狛治を戦力に迎えようと思っている」

『お館様!?』

「ほら、親分が白と言ったんだから従え」

 唖然とする柱たちに、一子は上下関係を重んじるよう告げる。

 しかし耀哉は、ある条件を付けた。

「ただし、必ず柱と共にいることだ。他の剣士(こども)たちを委縮させるわけにも行かないからね」

「構わない。俺の生殺与奪の権はお前たち鬼殺隊にあるからな」

「それはありがたい。――さて、問題は誰の預かりになるかだね」

 その言葉に、煉獄以外の柱は一斉に目を逸らした。

 極力一緒に行動したくないのが本音なのだろう。

「言い出しっぺは俺だから、親分に預けようか?」

「馬鹿野郎、んな危険なマネできるかァァ!!」

 くわっ! と言わんばかりに一子を怒鳴る実弥。

 ――上弦の参と、彼とタメを張る鬼女を従える平隊士がいてたまるか!

「じゃあ、誰が担うんだ」

「ならば俺がその役を買おう!!!」

 ビリビリと部屋を震わすほどの声圧を放ったのは、杏寿郎だった。

 人望や実力、何より無限列車での関係を加味すると、確かに一番の適役と言える。元々狛治も猗窩座の頃から杏寿郎に一目置いていたので、良好な関係を維持できるのは彼以外にいないだろう。

「わかった。じゃあ炭治郎達も然り、狛治のこともよろしく頼むよ」

「了解!!」

「煉獄さんのところ、新人と鬼しかいないね」

「わははは!」

 無一郎のボヤきに、杏寿郎は快活に笑った。

 

 

           *

 

 

 柱合会議を終え、杏寿郎は狛治と一子を連れて実家へ戻っていた。

 隊士達を委縮させまいと、彼なりに考えた末、実家に置くのが一番という結論に至ったようだ。

 しかし、ここで思わぬ事態が起きてしまった。

「うわあああああああん!! 折られたらその内戻ると思ってたのに~~~!!」

「うるさいわ鬼風情が!! ――仕方ない女だ、鬼の目にも涙とはこのことか、くだらんっ」

 酒壺片手に号泣する一子と、それを一蹴しながら浴びるように酒を飲む杏寿郎に似た男。

 一家の大黒柱である煉獄(しん)寿(じゅ)(ろう)である。

「ついに鬼殺隊も恥を極まったな!! 鬼の手を借りねばならぬとは……」

「その鬼ですら手に負えない奴がいるんだよぉぉぉ……!!」

「泣くな!! 酔いが醒めるだろうが!!」

 何という体たらく。

 狛治の痛い視線が、杏寿郎に向けられる。

「すまん、父上は母上を亡くして以来、この状態なのだ……」

「だからと言って、あそこまで放置するな。お前は強いんだ、実力でどうにかなるだろう」

 頭を抱える杏寿郎に、狛治は何とも言えなくなる。

 が、それ以前にあまり目に入れたくない光景があった。

「嘴平一子、貴様下戸だったのか」

「酒癖も悪いとは……猪頭少年に何と言うべきか……」

 そう、一子の酒癖が悪いことだ。

 元々一子は通常の鬼と違って人を喰わず、人間と同じ食事ができる。当然飲酒・喫煙も可能であり、喫煙は親分の肺を患わせると避けてきた。

 ただ、酒は一度だけ飲んだことがある。その際にベロンベロンに泥酔して後始末が大変だったため、伊之助が酒を飲まないように禁じていたのだ。

 が、酒に溺れていた槇寿郎に言いがかりをつけられ、一子と売り言葉に買い言葉となり、戦うわけにはいかないからと飲み比べで白黒つけるという訳のわからない展開になった。最終的には槇寿郎の勝ちと言えば勝ちだが……。

「あー、もう! 今日は自棄酒だぁぁ!」

「付き合うぞ、小娘」

「小娘じゃない! 俺は嘴平一子だってんだよぉぉ!」

「小娘は小娘だ、阿呆が」

 酒の席で、変に仲良くなった。

 酒のチカラは恐ろしい――杏寿郎と狛治は、酒臭さを纏った二人に何とも言い難い眼差しで見据えるしかなかった。

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