我が名、嘴平伊之助が子分・嘴平一子!   作:悪魔さん

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ついに無惨戦。
黒死牟戦は省きました。


第二十二話 夜明け

「ハァ、ハァ……何て広いんだ……」

「クソ、紋次郎の奴はどこだ!?」

 伊之助と一子が無限城のあらゆる部屋を破壊しながら、はぐれた仲間を捜索する。

 カナヲの肩を借りて移動するしのぶは「元気が有り余ってますね……」と笑った。

(まさか生きて仇を討てるなんて……)

 しのぶは未だに実感が湧かなかった。

 実姉・カナエの命を奪った〝上弦の弐〟。多くの鬼殺隊の柱を屠った怪物中の怪物を、まさか倒せたなんて。本当なら自分が殺したかったが、何の因果か嘴平一家と同じ仇であり、彼らの奮戦のおかげで生き残った。終わり良ければ総て良しだ。

「しかし、あいつらどこにいった!?」

「やはり、御陀仏無惨と相対しているんでしょうか」

「ウガーーーッ!! 御陀仏無惨の頸は俺が取るんだってのによォ!!」

「残念ですが、無惨は日光以外では殺せませんよ」

 しのぶはそう言うが、伊之助は「()()()()とは言ってねェだろーが!!」と声を荒げた。

 その時、部屋が静かに振動を始め、やがて地鳴りのような音を立てて大きな揺れになる。

「な、何じゃこりゃあ!?」

「まさか……崩壊する!?」

 嫌な予感がしたその瞬間。

 凄まじい浮遊感と共に、四人は真上へと吹き飛ばされた。

 

 

           *

 

 

「いてて……」

「大丈夫ですか、親分」

「あ、ああ! 屁でもねェぜ!」

「それは何より……しかし、まさかこんな所に出るとは……」

 四人が放り出されたのは、地上の市街地。

 どうやら無惨の根城――無限城は崩壊したようだ。

「……!」

「っ! 炭治郎!」

 嘴平一家は、慌てて駆けつける。

 視線の先には、深手を負った炭治郎達と疲弊した柱達が倒れており、彼らを庇うように狛治が警戒をしていた。余力が十二分にあるのは、鬼である一子と狛治だけのようだ。

「っ……伊之助、一子さん……!」

「炭治郎、今はどうなってる?」

「……一子従者、それは俺が代わって言おう……」

 ふと、刀を杖にゆらりと立ち上がる男が。

 炎柱・煉獄杏寿郎だ。

「戦局で言えば……残るは鬼舞辻無惨だけだ」

「……それ以外は倒せたが、相応の手負いという訳か」

 その言葉に、杏寿郎は無言で頷いた。

 上弦の壱・黒死牟戦では、狛治と獪岳が身を呈して戦ったのもあり、誰一人死ぬことなく討伐できた。ただ無傷という訳にはいかず、多くの隊士が四肢のどれかが欠損するという凄まじい被害を被った。柱でも無一郎が左腕を、宇髄が左目と左手を失い、炭治郎の同期でも玄弥が四肢を切断された。玄弥は幸いにも鬼化していたため、再生に手間取り戦線離脱したが息はある。

 上弦の壱は、まさしく怪物だったようだ。

「御陀仏無惨さえ倒せば、全て終わるんだな」

 一子は強い気配を感じ取り、振り返って睨んだ。

 視線の先には、白色の長髪を流し、血のように赤い紋様が浮かんだ筋肉質な肉体に禍々しい牙を生やした口を無数に備えた、邪悪なバケモノがいた。

 鬼舞辻無惨だ。

「しつこい鬼狩りどもめ……まだ息があるか」

「無惨っ……!」

 炭治郎をはじめ、まだ力が残ってる者達は何とか立ち上がる。

 そんな鬼殺隊を見た無惨は顔を顰めると、今度は拳を構える狛治に目を細めた。

「猗窩座、貴様には失望した。私を裏切り、鬼狩りどもと手を組み、黒死牟を――」

「フンッ!」

 

 ガンッ!!

 

「ぐわっ!!」

『……』

 一子は問答無用で棍棒で殴った。

 雷撃も追加で叩き込まれ、無惨は身体中の口から黒い煙をゲホッと吐いた。

「こ、小娘! 私がまだ喋って――」

「〝嘴平神楽・霹靂神〟!!」

 

 ドゴォ!!

 

「ギャアッ!!」

 棍棒を振り上げ、続けざまに脳天に叩きつけた。

 勢い地面に顔が減り込み、放電と砂塵が嵐のように吹き荒れる。

 そんな一子の奮戦ぶりを見て、伊之助は「フンガーーーーーッ!!!」と鼻息を荒くして奮起。親分としての威厳を見せようと、無惨に特攻した。

「俺様がいることを忘れんじゃねえ!!」

「親分!」

 伊之助は一子に気を取られる無惨を斬りつける。

 が、本来狙うべき頸を狙わず、背中や太ももから生える触手を切断する。

 無惨は日光以外では死なないが、体力を削ることはできるからだ。

(この娘の電撃を浴びると、身体の動きにズレが生じるのか……!)

 一方の無惨は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。

 一子の血鬼術の真髄は、雷撃。その凄まじい電圧は無惨の筋肉や神経をマヒさせ、本来なら柱すら見切ることが難しい攻撃速度のはずが、伊之助に完全に見切られている程に遅くさせている。

 如何なる生物も「全くの無傷」は存在せず、何かしらの損傷を抱える。無惨は最強の肉体を有するが、内部攻撃――それも電撃雷撃は毒と違って中和ができず、時間経過で治すしかない。しかも一子は自然界の電気を貯めることができる体質であり、放つ雷撃は鬼の異能だけではなく()()()()()()()()()()()()()()も含むため、無惨の鬼由来の力であれば何でも吸収できる異能もあまり意味を成さない。

 しつこい鬼狩りどもは、珠世だけではなく、自然を味方につけたのだ。

「小賢しいわぁ!!」

 無惨は新たに触手を生やし、一子と伊之助を血祭りに上げんとする。

 が、一子の雷撃の影響は想像以上で、生やしても動きは早くならない。

「〝鳴神〟!」

 一子は伊之助を脇に抱えて後退すると、棍棒を振るって雷撃を射出。

 無惨に貫通させ、再び感電させた。

「ゲホッ……貴様ぁ……!」

()()()、余所見は禁物ですよ」

「猗窩座!?」

 

 ――〝破壊殺・滅式〟!!

 

 一瞬の隙を突いて懐に狛治が飛び込み、一子をも仕留めた絶技を放つ。

 衝撃音が鳴り響き、無惨の胴がごっそりと抉れた。

「よくやった狛治!」

 

 ――〝全集中 火雷天神〟!!

 

 肉体から造り上げた棍棒に棘を生やし、雷の如き速さで肉迫。

 両手持ちで豪快にフルスイングし、無惨に強烈な一撃を見舞う。

「がぁっ……!」

 身体中の口から黒い煙を吐きながら、立ち眩みする無惨。

 無限城にいた頃より、明らかに弱体化している。

 今が好機と定め、杏寿郎は声高に叫んだ。

「皆! 鬼舞辻は一子従者と()()()()の攻撃で消耗し始めている!」

『!!』

 その言葉に、全員がハッとなる。

 無惨は一子の血鬼術の影響で、動きがマヒしやすくなり鈍くなっている。

 狛治は鍛え抜いた強さで、無惨を削っている。

 今この瞬間こそ、千年以上も人々を苦しめ狂わせてきた惡鬼を滅殺する、千載一遇の好機だ。

「心を燃やせ!! 今こそ鬼滅の刃を振るう時だっ!!!」

『おおおおおおおっ!!』

 杏寿郎が叫び、炭治郎たちは声を揃えて無惨に斬りかかった。

 

 

           *

 

 

 戦いは熾烈を極め、凄まじさに拍車がかかった。

 鬼殺隊の必死の攻撃と一子の雷撃、狛治の捨て身の攻撃に、無惨はじわじわと追い詰められていた。

 何より、無惨は珠世によって薬を投与されている。その薬には老化や分裂阻止などの無惨を弱体化させる効果がてんこ盛りで、毒と同じく激しく動けば動くほど回りやすくなり、本来ありえないはずの息切れや汗が目に見えるようになった。

「いい加減死にやがれ!!」

「禰豆子ちゃんを苦しめた罰だ!!」

「百万回死んで償え!!!」

 復活した玄弥が発砲し、善逸と伊之助が斬り込む。

 その直後に、無惨は触手を振るうが、獪岳が雷の呼吸の技で斬り伏せた。血鬼術を行使しないあたり、無惨の特性を理解しているようだ。

「畳み掛けるぞ!!」

「上等だァ!!」

「僕だって……!!」

 義勇、実弥、無一郎がそれぞれの得意技で無惨の手足と胴を斬り裂く。

 反撃しようとする無惨に、すかさず宇髄が跳びかかって〝音の呼吸〟で追撃する。

「嘴平一子! 感謝するぜ、お前のおかげで譜面が完成しそうだ!!」

「譜面とやらはわからないが、もはや不要だろう! 俺たちがここまで削れば!!」

「それもそうかもな!!」

 凄まじい攻撃の嵐に、無惨も反撃がしづらくなってきた。

 大技は当然あるが、本来可能なはずの連発はできず、しかも一子の雷撃のせいで神経伝達に異常をきたしている。脳の信号から実際に攻撃が出るまでに僅かな時差が発生しており、ネズミの穴のように小さいが大きな隙だ。

「――くそっ!!」

 もはやこの場での鬼殺隊殲滅は不可能と判断したのか、無惨は全力で逃走を始めた。

 すぐに追いかけねば、このまま逃げられる。

 だが一子は冷静に、棍棒を振るった。

「〝全集中 天満大自在天神〟!!」

 棍棒を大きく振るい、扇状に広がるように無数の雷撃を放つ。

 逃走する無惨もこれは避けきれず、次々に被弾。転倒してしまう。

「おのれ……!! いい加減に――」

「〝全集中 奥義〟!!」

「何ぃ!?」

 起き上がったその時には、一子が限界まで雷撃を棍棒に纏わせ、頭上で旋回させながら飛び上がっていた。

「〝嘴平神楽・降三世〟!!」

 

 ドガァン!!

 

 遠心力で底上げした衝撃を、雷撃と同時に渾身の力で叩き込む。

 こればかりはさすがの無惨もかなり効いたようで、白目を剥いて一瞬だけ卒倒した。

「〝奥義 玖ノ型 煉獄〟!!」

 その隙を見逃さず、杏寿郎が一瞬で無惨に迫り、炎の呼吸の奥義を叩き込んだ。

 灼熱の業火の如き威力で猛進し、轟音と共に相手を抉り斬る、極限まで焚き上げられた炎の剣戟。全集中の呼吸を極めたからこそ放てる斬撃は、無惨を大きく損傷させた。

「アガッ……」

 一子と杏寿郎によって、大技を二連続も食らった無惨。

 それでも日光以外で死なない肉体ゆえ、まだ生きているが、再生は明らかに遅い。

「伊黒さん!!」

「ああ!!」

 そこへ、続けざまに甘露寺と伊黒が斬りかかる。

 まともな反撃もできなくなった無惨は、耐えるしかない。

「――〝終式・青銀乱残光〟!!」

 さらに二人の間を割いて、狛治が百発の乱れ打ちを放つ。

 ダメ押しと言わんばかりに、悲鳴嶼が鉄球を振り下ろして追撃。

 弱体化と猛攻によるダメージの蓄積で、無惨は口を利くことすらままならない。

 そして、ついに待ち望んでいたものが現れた。

「御陀仏無惨! 時間切れだ!」

「っ!!」

 一子の言葉に、無惨は戦慄した。夜明けである。

 満身創痍となった鬼の始祖は、最期の悪あがきに巨大な赤ん坊のような姿――肉の鎧を生み出して引きこもり、死に物狂いで暴れまわった。

 しかし一子達から見れば、動きは大振りで避けやすく、何より日光という防御不能の攻撃に晒された強敵など、恐れるに足らなかった。

 頸を落とす必要はない。この場から逃がさなければ勝ちなのだ。

「〝万雷太鼓〟!!」

 一子は得意技を叩き込む。

 打撃は効かずとも、雷撃は貫通する。

 肉の鎧を纏った無惨は、口から黒い煙を吐いてもんどり打った。

 

 ――〝ヒノカミ神楽〟!!

 

 ――〝水の呼吸 拾ノ型 生生流転〟!

 

 そこへ炭治郎と義勇が飛び込み、肉の鎧を削り、少しでも中にいる本体(むざん)に日光を届かせようと攻撃した。

 それが功を奏したのだろう。

「ギャアアアアアアアアアア!!!」

 断末魔の叫びと共に、無惨は肉の鎧ごとボロボロと崩れ消滅した。

 平安の世より罪無き民を貪り続けた、憎き鬼の始祖は討たれたのだった。




次回、ついに最終回!
刀鍛冶の里のアニメの前には終わらせます。
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