我が名、嘴平伊之助が子分・嘴平一子!   作:悪魔さん

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ヒノカミ血風譚をプレイしてるんですが、伊之助が一番のお気に入りです。
今後は累と猗窩座がバーサスモードに参戦するようですが、個人的には矢琶羽や愈史郎、キメツ学園の煉獄さんとか使って見たいです。(笑)


第七話 子分ならば

「お館様のお成りです!」

 いつの間にか屋敷の襖が開かれており、振袖の少女達が二人、そこに膝を突いていた。

 やがて、一人の男性が姿を現した。

「よく来たね。私の可愛い剣士(こども)たち」

 穏やかに声を掛けるのは、産屋敷耀哉。お館様と呼ばれる鬼殺隊現当主であった。

「おはようみんな、今日はいい天気だね。空は青いのかな? 顔ぶれが変わらずに半年に一度の柱合会議を迎えられたことを嬉しく思うよ」

(傷……? いや、病気か? この人がお館様?)

(何だこれ……ホワホワする……)

(鬼狩りの総大将か……)

 呆気にとられていた炭治郎たち。

 刹那、一子が凄まじい速さで動き、禰豆子の箱と伊之助と炭治郎を回収し庇った。

「っ……てめェ!! お館様の前だぞ!!」

「俺がひれ伏すのは伊之助親分一人だ」

 炭治郎と伊之助を縛る紐を引き裂きながら、一子はギロリとガンを飛ばす。

 彼女にとって、鬼殺隊はあまり重要ではない。親分である伊之助が興味関心を持ってるから付いているだけであり、何より一子は伊之助の子分であって耀哉の子分ではない。ゆえに耀哉に頭を垂れる義理はないと判断しているのだ。

 お館様なんぞ知ったことか――そう態度で示す一子に、実弥は刀の柄を握るが、耀哉がそこへ待ったをかけた。

「待ちなさい、実弥」

「お館様、しかし……!」

「これ以上殺伐とするのはよろしくない。私に頭を下げるか否かで血を流すことになるのは不本意だ」

 耀哉の言葉に、実弥は渋々引き下がった。

 改めて耀哉は柱一同に向き直ると、杏寿郎が快活に謁見の口上を述べた。

「お館様におかれましても御壮健で何よりです!! 益々の御多幸を切にお祈り申し上げます!!」

「ありがとう、杏寿郎。……さて、色々と驚かせてしまったことについては、すまなかったね。まず、その子たちのことは私が容認していた。そして、皆にも認めてほしいと思ってる」

 その言葉に、柱達はざわついた。

 一子の言う通り、耀哉は全てを把握していたのだ。もっとも、鬼殺隊の全てを把握している者が竈門兄妹と嘴平一家という特異な存在を見逃すはずもないのだが。

「……私としては承知しかねるが、隊士が鬼を御し、共闘しているのは事実……慎重な判断が必要だろう……」

「俺は派手に反対するぜ。鬼を連れた鬼殺隊員など認められない」

 年長である悲鳴嶼は、内心は反対だが中立寄りな意見を述べ、続く宇髄はカッコつけながら反対する。

「私は全てお館様の望むままに従います」

「僕はどちらでも……すぐに忘れるので……」

 一方の甘露寺と無一郎は、お館様の勅命ならば従う姿勢を見せる。

 義勇としのぶは押し黙ったままだ。

「信用しない、信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ、しかも片方が日光を克服している以上、すぐにでも始末するべきだ」

「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門ら四名と冨岡の処罰を願います」

 強く反対を訴える実弥に、一子は棍棒を強く握った。

 黙って聞いていた耀哉は、杏寿郎に顔を向ける。

「杏寿郎はどう思ってるのかな」

「理解できないお考えだ――と言いたいが、俺を日の出まで庇ったのは事実!! 猪頭少年に対する忠誠心も紛れもなく本物だ!! 竈門少年たちの援護だけでなく、先行隊士をも救った彼女を、鬼だからと敵扱いするのは些か早計だと思う!!」

 その力強い言葉に、他の柱たちは押し黙る。

 本当に鬼殺隊と敵対するのならば、鬼殺隊士を一人でも多く殺し討ち取るはず。そうしなかったのは、一子が確固たる理性と伊之助に対する忠義の心を持ち、手を差し伸べたことへの恩に報いろうと生きているからだ。

 鉄壁とも言える信頼関係を築いている伊之助と一子を否定するのは、柱とて容易ではない。否定するとしたら、その時は間違いなく殺し合いになる。

「杏寿郎の言う通り、二人を否定するために剣士(こども)たちが大勢傷ついては、本末転倒だ。それに彼女の力の強大さは、必ず私たちのためになると思う」

 反対意見を述べていた宇髄・伊黒・実弥は、その言葉に黙りこくった。

 実際、杏寿郎は一子と一度戦闘になった時、劣勢に立たされた。柱の中でも上位の実力者である炎柱ですら倒せなかった鬼となれば、少なくとも今の鬼殺隊では柱以下の面々は歯が立たないだろう。

 ならば、敵対するより戦力として迎え入れ、人を護るための戦いに投じさせた方が利がある。鬼殺隊としては掟破りだろうが、損得で考えれば一目瞭然だ。

「伊之助と一子の件は、ここで一区切りしよう。次は炭治郎と禰豆子だね……では、手紙を」

 そう言うと、隣に控えていた少女が手紙を取り出した。

 その手紙は、元水柱である育手・鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)から頂いたものだという。

「お読み上げます。「炭治郎が鬼の妹と共にあることを、どうか御許しください」――」

 

 炭治郎が鬼の妹と共にあることを、どうか御許しください。

 禰豆子は、強靭な精神力で人としての理性を保っています。

 飢餓状態であっても人を喰わず、そのまま二年以上の歳月が経過致しました。

 俄には信じ難い状況ですが、紛れもない事実です。

 もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します。

 

 その言葉を聞いた時、炭治郎は胸がいっぱいになった。

 元柱、そして現水柱がそれ程の覚悟で庇っていることに、涙があふれた。

「勿論、これだけでは人を襲わないという保証にならないと思うだろう。だが二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり、禰豆子のために三人が命を懸けている」

 つまり、禰豆子を否定するには、二年以上人を喰わずにいる事実と三人の命を上回るモノを差し出さねばならないというわけだ。それに付け加えて伊之助と一子も否定するとなれば、かなりの〝見返り〟を求められてしまうことになる。

 反対派の面々が唸る中、耀哉は言葉を紡ぐ。

「それに炭治郎は鬼舞辻と遭遇している」

『!?』

 その言葉に、柱達は色めき立った。

 何を隠そう、鬼の始祖・鬼舞辻無惨は柱ですら今まで一度も会っていないのだ。その上、炭治郎に対しては追手すら放っている。この小さな綻びに加え、人を喰らわない二体の鬼の存在を考え、耀哉は考察を述べた。

「いいかい? この大正の世において、鬼殺隊の歴史上初と言える事態が立て続けに起こっている。しかも全て私たちに利のある事態だ」

「お館様……」

「今の今まで影すら見えなかった鬼舞辻の尻尾を、私は放したくない。伊之助の件も、運命じみた何かを感じる。おそらく今、鬼舞辻にとって予想外の出来事が重なっているのだと思うんだ。――わかってくれるかな?」

 柱達は、それぞれ考えを巡らせる。

 それでも、実弥は声を上げた。

「わかりません、お館様! 人間ならば生かしておいてもいいが、鬼は駄目です。承知できない!」

「実弥……」

 実弥は日輪刀を抜くと、自分の右腕に刃を滑らせた。

「お館様……!! 証明しますよ俺が! 鬼というもののみにく――」

「やかましい!!!」

 

 バキィッ!!

 

『えーーーーーっ!?』

 何と一子が実弥の言葉を遮り、鉄拳制裁。

 突然の暴挙に、一同は驚愕の声を上げ、耀哉も目を丸くして驚いている。

「てめェ……何しやがる!!」

「口答えするな、ヤクザ者!!」

「なっ――」

 目を血走らせて殺意を剥き出しにする実弥。

 しかし一子は実弥の殺意を上回る怒気を放ち、ヤクザ呼ばわりにしながら拳を握って叱りつけた。

「親分が白と言えば白!! 黒と言えば黒!! 親分が白と決めたことに因縁をつけるなっ!!!」

 その鬼気迫る顔に、一同は息を呑む。

 目に見えて怒り心頭な一子に、実弥は思わず怯んだ。

「お前達の心に巣食う怨毒を承知の上で、この男は願い出てるというのがまだわからないのか!! 子分ならば親分の願いを受け入れて応えろ!! 〝人の下に付く〟とはそういうことだ!!!」

 この身の程知らずがっ!!! と怒鳴る一子。

 親分子分という上下関係を重んじる一子にとって、耀哉が不問(シロ)と決めたことにしつこく食い下がる実弥が非常に癪に障ったようだ。

「……一子があそこまで怒ったのは初めて見たぜ……」

「えっ!? じゃあ村田さんへの態度って、まだ優しい方だったのか……!?」

 伊之助の呟きに、炭治郎は驚愕する。

 那田蜘蛛山での村田に対するヤクザみたいな態度は、何と優しい方だったのだ。

 これでもし怒りが頂点に達することがあったら……。

「人を喰わないという割には、血の気が多いな……」

「アイツの方がヤクザじゃねェか」

 散々な目に遭っている風柱に同情しつつ、一子の凶暴な一面に伊黒と宇髄は顔を引きつらせた。

(あの鬼、俺の血に見向きもしねェじゃねェか……!! どうなってやがる!?)

 一方の実弥は、顔には出していないが混乱していた。

 彼は鬼にとって御馳走である稀血の持ち主で、その中でも群を抜いた希少性である。肉体や血の栄養価が極めて高く、その血の匂いを嗅いだ鬼は人間が泥酔したかのような症状に陥る程である。

 鬼であれば必ず本能的な反応するというのに、一子はその様子を一切見せない。手を出したと言えば手を出したが、それは稀血と全く関係ないことだ。

「どうやら実弥の血の匂いを嗅いでも問題なかったようだね……じゃあ、禰豆子にも試してみよう」

「!? ま、待ってください!! 妹に何するつもりですか!? 俺が何でも答えますから!!」

 炭治郎は必死に懸命に訴えるが、伊之助は鼻息荒くして叫んだ。

「うるせー! ギャーギャー喚くな紋次郎!」

「でも、伊之助……!」

「親分の言う通りだぞ、炭治郎」

 一子はそう言うと、一歩前に出て耀哉を問い質した。

「何をするつもりだ」

「実弥は稀血という人喰い鬼にとって御馳走となる血を持っている。君は耐えるどころか無反応だったから、人を食べないと証明できた。ここまで言えばわかるんじゃないかな?」

 つまり、禰豆子に人を食べない証明をしろということだ。

 一子は一瞬考えると、禰豆子が入った箱を抱えて歩み寄った。

「禰豆子は嘴平一家の末の子分だ。慰み者にされるわけにはいかない」

「いや、そんなつもりはありませんよ……」

「黙れ女狐! ……で、どうなんだ」

 しのぶの言葉を一蹴し、耀哉を睨む。

 すると、耀哉は安心してほしいと穏やかに笑った。

「禰豆子が人を食べないと証明できたら、私の名の下に身柄を保障しよう。君たちも同じだ」

「二言はないな?」

「勿論」

 一子は箱を降ろし、中の禰豆子に声を掛けた。

「……兄の窮地だ。お前の行い次第で死人が出る。救いたければお前自身が覚悟を示すしかない。いいな?」

 一子の言葉に答えるように、内側からカリカリと音が鳴った。

 腹は括ってるようだなと微笑むと、実弥に投げ渡した。

「……てめェ」

「あまり余計なマネはするな。怪我人を増やすと面倒なんだ」

「……お館様、失礼仕る」

 遠回しに禰豆子に刃を向けるなと釘を刺された実弥は、座敷の奥、日の当たらない暗がりまで跳ぶと箱の蓋を跳ね上げた。

 ゆっくりと、禰豆子が起き上がる。鬼の本能が反応しているのか、顔には太く血管が浮き、瞳も猫のように縮んでいる。

「フゥ、フゥ、フゥッ……!!」

 竹の口枷を嵌めた口から荒い息が漏れ、ポタポタと唾液が垂れる。

 しばらくすると、プイッと顔を背けた。

「――どうだったかな?」

「鬼の女の子はそっぽ向きました」

「目の前に血塗れの腕を突き出されても、我慢して嚙みませんでした」

「ではこれで、禰豆子が人を食べないと証明できたね」

 穏やかに告げられた言葉に、炭治郎はホッと安堵した。

「炭治郎、伊之助。禰豆子と一子のことを快く思わない者もいるだろう。ゆえに証明しなければならない。鬼殺隊として戦い、役に立てることを」

(何だ……? ホワホワが止まらねェ……)

(これが、鬼殺隊の当主……)

 耀哉の声を聞いていると、不思議と心が高ぶってくる。

「俺は……俺と禰豆子は!! 鬼舞辻無惨を倒します!!」

 いつの間にか、炭治郎は叫んでいた。

「俺と禰豆子が必ず!! 悲しみの連鎖を断ち切る刃をふ――」

「ちょっと待て権八郎!!」

 振るうと言い切る直前、伊之助が炭治郎の胸倉をつかんだ。

 ふしゅううううう、と鼻息を荒くし、指を突きつけて叫んだ。

「いいか!? その()()()()()とやらは俺様と一子の〝獲物〟だ!! 横取りは許さねェぞ!!」

「ブフッ!!」

 伊之助の名前間違いに、甘露寺は思わず吹き出した。

 他の柱たちも小刻みに肩を震わせ、耀哉や傍の子供達も笑いを堪えている。

「フフ……今回の合格者は、とても楽しい子たちだね」

 満面の笑みを浮かべつつ、耀哉は炭治郎たちに柱への口の利き方をやんわりと注意する。

「では、裁判はこれで終わり。――と言いたいけど、伊之助、一子を借りてもいいかい?」

「あん!?」

「コラ、伊之助!!」

 メンチを切る伊之助に、炭治郎は慌てて諫める。

 一方の一子も、少し不満気に見据えた。

「どうしても彼女と面と向かって話したいことがあるんだ。とても大切な話だ。大丈夫、危害は絶対に加えない」

 耀哉は続いて、一子に声を掛けた。

「彼らはしのぶに任せることにする。蝶屋敷は診療所だからね……話が終わり次第、すぐに向かわせるよう手配するから、少し話に付き合ってくれないかい?」

「……親分」

「……早く済ませろよな!!」

 一子は伊之助に頭を下げ、鬼殺隊当主との会談に臨むのだった。

 

 

           *

 

 

 伊之助達が診療所を兼ねた蝶屋敷へ運び込まれるところを見届け、一子は玉砂利の上で胡坐を掻いた。

 柱一同の警戒の眼差しが集中するが、意にも介さず構えている。

「改めて挨拶しよう。承知の通り、私は鬼殺隊の当主・産屋敷耀哉だ。申し訳ないが、いくつか訊きたいことがあるから答えてほしい」

 一子は無言で頷くと、耀哉は早速質問を投げかけた。

「まず一つ……伊之助との出会いを教えてほしい」

「親分との出会いは、人里に初めて下りたあの日が始まりだった……」

 一子は伊之助との運命の出会いを語った。

 食料を求めて彷徨っていたところを、指差して警戒する伊之助と出会った。一触即発となったところで、自身の頭上に雷が落ち、意識不明となったところで伊之助と彼が世話になっていたたかはる家に介抱され。目が覚めた時にドングリを与えられた。

 この時の恩義を一日たりとも忘れたことは無いと一子は語り、一同はなぜ伊之助に忠節を誓っているのかを理解した。

「命の恩人、という訳なんだね。ならばその忠誠心の厚さも伺える……では次に行こう。君は普段、何を食べているかな?」

「基本的には親分と同じ物だ。食料が少ない時期は、親分に栄養価が高いモノを全部あげてるが」

「えっ!? じゃあ、あなたどうやって……」

「雪や野草、親分が食事の際に残した骨で()()食い繋いでいるが?」

 平然と言い放った一子の衝撃的な食事内容に、甘露寺は卒倒しそうになり、慌てて伊黒が支えた。

 鬼じゃなかったらとっくに死んでるような生活だ。しかし、伊之助のあの鍛え上げられた肉体と高い戦闘能力の礎となった要因の一つとも解釈でき、何とも言い難い。

「あとは寝るに徹する。下手に動けば余計に腹が減るし、親分に迷惑をかけるからな」

「禰豆子さんと同じ体質でもあるということですか……鬼として、いや、生物として特異な体質ですね」

 伊之助と共に厳しい自然環境で生きてきたがゆえに、鬼としては〝別の方向〟へ進化していることが発覚し、しのぶは興味津々だ。

「そうか。では最後に一つ。那田蜘蛛山において、剣士(こども)たちの何名かが「女の鬼に助けられた」という報告があったが、君のことで間違いないね?」

「俺はあくまで喝を入れたまでだ。俺にとって親分の足を引っ張る小便漏らしなど、どんな末路を辿ろうが知ったことか。戦意と覚悟が足りなすぎるからいけないんだ」

「鬼に言われちゃ地味にお終いだな……」

「ちっ……」

 ちゃっかり隊士の質に言及する一子に、柱たちは参った様子を見せる。

 近年の鬼殺隊隊士の質の低下については、後の柱合会議で議題として挙げるつもりだったが、まさか鬼の一子が一番先に言及するとは。

 もっとも、一子が忠節を誓っている伊之助は闘争心が非常に高いため、彼と比較すると周りの隊士が消極的に見えるのかもしれないが。

「……用件は済んだのか? 早く親分と合流したいんだが」

「そうだね。君とのお話はこれで終わりだ。時間をとって悪かったね」

 ――これからよろしく頼むよ。

 耀哉は一子にそう告げ、隠たちに蝶屋敷へ案内するよう命じた。

 

 

 一子が蝶屋敷へ連行されてから、耀哉は柱たちに告げた。

「嘴平一子は、おそらく私たちにとっても鬼舞辻にとっても想定外の存在だろう。彼女を手中に収めたのは、鬼舞辻と十二鬼月に対する切り札になるんじゃないかと、私は思うんだ」

「お館様……」

「彼女は伊之助への忠義が行動原理だ。伊之助がいる限り、彼女は鬼殺隊を裏切らないだろうし、むしろ伊之助を介すれば彼女の力を利用できるかもしれない」

 鬼を利用して、鬼を討つ……鬼殺隊としては掟破りのやり方だが、一子が日光を克服した鬼であるということで考えると、その判断は正しいだろう。

 鬼が日光を克服した――それだけで鬼殺隊の士気は大きく揺れ動くからだ。

「それと、彼女の強さを近い内に確かめてほしい。十二鬼月との下稽古という観点では、彼女は君たちにとっても利となるだろう」

 一子の強さを知る者は、非常に限られている。

 鬼殺隊の戦力としてどれほどの技量かを把握するのは、とても重要だろう。

(炭治郎のおかげで鬼舞辻の尻尾を掴んだ。伊之助のおかげで、日光を克服した鬼を手中に収めることができた。――この機を逃したら、鬼舞辻を討つのは不可能になるかもしれない)

 その予測は、あくまでも耀哉の勘に過ぎない。

 だが、今になって起こったこの「変化」を逃してはならないと勘が訴えてるのは事実である。現に産屋敷の一族は、未来予知に近い〝先見の明〟を持っており、これにより一族は幾度もの危機を回避してきたのだから。

「さあ、柱合会議を始めよう」

『御意』

 耀哉は今までの泥沼の均衡が崩れることになると確信し、口角を上げるのだった。




【大正コソコソ噂話】
嘴平一家は伊之助・炭治郎・禰豆子・善逸・一子で成り立ってると一子は考えてます。
伊之助は親分、一子は長女、炭治郎は次男、禰豆子は三女、善逸は末っ子という認識です。
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