ワイがバスケで全国優勝したるわww   作:暇です

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次話を掲示板にするか第三者にするか悩み中
決まんなかったら意見とか活動報告の方で聞くかも


加速するパス・廻

 金崎君の視線はさっきと同じように、いやそれよりもはるかに鋭く、強かった。青峰君の発言に怒っているのだろうか。

 

「へぇ、まだ楽しめそうだな」

 

 青峰君がそう言って笑う。一瞬その目が、その顔が昔の頃に戻ったような気がした。

 しかしすぐに僕の横を通り、ゆっくりと歩いて自分のゴールへと帰っていく。

 

 未だに金崎君はこちらをじっと見つめている。また、何かを伝えようとしているのだろう。でも……青峰君を破る手立てはもう無い。

 いや、正確にはあるのだが、無意識に頭から遠ざけているのだ。加速するパス(イグナイトパス)・廻を使えば青峰君のブロックを破る事はできるのだろう。

 しかし、その場合金崎君が絶対に取れない。さっきのただの加速するパス(イグナイトパス)でもギリギリだったのだ。

 恐らく金崎君はまだ手が痺れている事であろう。オマケに体力も無くなって来ている。

 

 金崎君の力の根源はその技術力だ。ボールコントロール能力、ドライブ技術、パス技術……筋力が凄いというわけではない。勇敢というにはあまりにも無謀な挑戦だった。

 

 仮に成功して点を取れたとしても勝敗は変わることがない。青峰君を倒そうとしたいのは僕のバスケを認めさせるため──自己満、ただのエゴだ。下手したら怪我をする可能性もある、そこまでのリスクを背負ってする必要は一切なかった。

 

 その事を視線で訴えかけるが、金崎君の目は一切変わる事なく、こちらを見つめている。

 

 そうですか、それでも君は……

 

 仲間ができると信じたのだ。ならば、僕も信じなくては。

 コクリと頷いて返事をする。その瞬間、金崎君の視線が柔らかくなり、ピリピリするような威圧感も消えた。僕が了承したのを見て、安心したようだ。

 

 ……どうやら何がなんでも譲る気はなかったらしい。

 

 

 

 

 試合が再開する。ちょうど目の前に青峰君がいるところで僕にボールが回って来た。加速するパス(イグナイトパス)・廻の構えを取る。

 

「おいおい、勝負を捨てたか? 同じ手は通用しねぇって言っただろ?」

 

 青峰君の言葉には耳を貸さず、全神経を集中させ、ボールの一点を見つめる。

 

加速するパス(イグナイトパス)・廻!」

 

 発射されたボールは螺旋状に回転しながら、青峰君の手を吹き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

 それでも尚勢いを失う気配のないパスは金崎君の方へと向かっていく。

 

「アイツ、ゾーンが深くなってやがる……!?」

 

 ゾーンが深くなる? 聞き慣れない言葉に気を取られそうになるが、視線は金崎君から外さない。

 しかし、金崎君はボールを取らなかった。

 

 ──取るのではなく、ボールの軌道を変えたのだ。

 

 流石に軌道を変えるのも一苦労だ。金崎君は苦悶の表情を浮かべながら、全力を込めてボールの軌道を変える事に成功した。

 

 そのまま嘘のようにボールは一直線にリングへと向かっていく。そしてそのままシュートと呼んで良いかもわからない代物が決まる。

 

「なっ……!?」

 

 彼は、あんなシュートが出来たのだろうか。いや、それならばさっきの加速するパス(イグナイトパス)で使っているはずだ。

 恐らく、この土壇場で成長して成功させたのだろう。

 

「レフェリータイム!」

 

 そんな声と共に思考が中断させられる。見ると、金崎君が手を押さえている、恐らく怪我をしたのだろう。当然だ、ゾーンとは肉体強度が上がるわけではない、あくまでリミッターを外すだけだ。

 罪悪感と申し訳なさが僕を襲う。仲間達も金崎君を心配しているようだ。そのまま、金崎君は交代した。

 

 もはや勝ちは絶望的だ。金崎君も火神君もいない、ミスディレクションも切れている。けれど、チームに諦めているものは一人もいなかった。

 

 

 

 

 

「30点差か……色々とあったがもう決まりだな。俺の勝ちだ、テツ」

 

「まだ、……負けていません」

 

「おいおい、バスケに一発逆転は─」

 

「それでも! まだ終わってません! いくら絶望的でも、諦めなければ勝つ可能性は残っている。ゼロになるとしたら、それは諦めた時です」

 

「っ……!」

 

「皆から、金崎君が繋いでくれたこの試合を諦めるわけにはいかないんです。だから諦めるのだけは絶対、嫌だ!」

 

 そう言うと青峰君が少し下を向き、口を閉じる。そしてドライブで僕を抜き去っていき──

 

「一つだけ、認めてやる。──諦めの悪さだけは」

 

 誰一人諦めず、全員が最後まで戦った。それでも点差は開き続けた。涙は出なかった。その日僕達は、それほど圧倒的に──負けた。

 

 

 

 

 帰り道、止めどなく思考を巡らせる。

 たしかに、金崎君と協力して青峰君を破る事はできた。しかし、それは本当に僕の力なのだろうか。金崎君一人でも、青峰君を破れたのではないか? そんな疑問が溢れ出て来る。

 

 唇を噛み締める。感じる痛みが身体的なものなのか、精神的なものなのかすら分からない。

 

「つっ……!」

 

 

 




我ながらシリアスなss書いてるな〜

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