「これで金崎は封じたか……」
俺が味方へのパスを見せた後、木吉と火神が俺にダブルチームでついた。流石に火神一人では分が悪いと踏んだのだろう。
だが、それではインサイドの弱さが露呈し、攻撃を防ぐことはできない。そのため相手は攻撃力に特化したラン&ガンで、点取り合戦に持ち込んできている。
そのため、金崎にダブルチームを付けることになった。黒子を抑えることはほぼ不可能なため、金崎の方が都合がいい。もちろんダブルチームのデメリットもあるが、それよりも今は金崎だ。
このダブルチームには金崎も少し顔を顰めている。格段に動きづらくはなっているはずだ。金崎のパターンとしては基本的にパスかシュートなのでその二つ両方とも防ぐためにはやはり二人はいる。
懸念材料としては……金崎が新技を生み出している可能性があることだが、それはいくら考えてもキリがない。
普通は金崎にダブルチームが付けば金崎へのパス、ボールを持つ機会は減るはずだ。しかし、ダブルチームが開始してからすぐに黒子から金崎へとパスが放たれた。
(何!?)
金崎の手がボールに触れる。そのままシュートか、パスか、はたまたドライブか。
金崎がのけぞり、半ば後ろに倒れるような姿勢となる。その姿勢のまま金崎が手をリングの方向へと動かし、手のひらでボールを前方に押しだす。
恐らくシュートだ、放たれたシュートはブロックの手の隙間をすり抜けリングの方へと向かっていく。しかし……明らかにおかしい点がある。
明らかに弾道が低いのだ。これでは入ることなど万が一もないだろう。ブロックが遅れたのもそれが理由だ。流石にその弾道は予想外だった。
ガンッ! という一際大きな音とともにリングによってボールが弾かれる。よほど強い力で投げつけたようだ。ボールはそのままリングに弾かれて飛んでいき……ちょうど火神の手の中へと収まった。
「なっ!?」
そんな声がどこからともなく響く。ボールを取った火神自身でさえ驚いている様子だ。このパスの事は伝えていなかったのか?
金崎のことを考えるとぶっつけ本番で成功させたという可能性が高い、ダブルチームを破る方法を即座に思いついたのだろう。
不安が的中してしまった。ダブルチームと言えど、金崎を防ぎ切る事は難しいのか。
そして、俺を驚かせた要因はもう一つあった。
試合が再開して、俺にボールが回ってくる。
前にいる火神に対して、シュートのフェイクからパスを仕掛ける。しかし、驚異的な反射神経でボールを弾かれてしまった。
……やはり、火神の動きが良くなっている。気のせいではない。原因は、考えたくはないが金崎のパスだろう。
その場、その人に合った最適なパスを繰り出すことで味方の集中力をさらに上げる……
理論上は不可能ではないかもしれない。そのぐらいなら金崎ならば出来る可能性もある。しかし、今回はそれとは格が違う。直接ではなく、リングに弾かせてパスを繰り出すプレイだ。難易度は比べ物にならないほど違う。
恐らく、今まで金崎が見せた中でも最上級レベルの技だろう。だが、こんな技を何発も打てるわけがない。
耐えていればチャンスは必ず来るはずだ。
またもや金崎へとボールが渡る。またもやシュートを打とうとし、ブロックに相手が飛んだ瞬間──ボールを背中の後ろに回しパスを繰り出した。
金崎は異常なまでにパスとシュートのフェイクが上手い。技術的な面も言えるが、なによりもその雰囲気や気迫だ。フェイクの瞬間まで完全にシュートを打つ気でボールを動かしているように見える。
しかも未だに金崎は合宿の時に見せた技を使っていない。その辺りも考慮すると、奴を止める事は難しいかもしれない。
しかし、あのシュートは何らかの理由で乱用はできないはずだ。シュートではなくシュートのフェイクからパスを防げばいずれは抑えられる。
しかし、次のシュートは金崎自身が直接入れ、その次のシュートはリングを使ったパスを繰り出した。
これで金崎のスーパープレイは3回連続。まさか上限が上がっているのか……!?
よく考えれば、何か条件があるとは言え身体能力や技術が上がっていくごとにプレイの上限回数も上がっていくのは当たり前だ。そこを失念していた。
しかし、次のシュートはリングに弾かれた。またあのパスかと思ったがそのボールは金崎の方へと向かう。何をするつもりだ……!? と思ったのも束の間、吸い寄せられるようにボールは金崎の顔面へと直撃した。
……自分の限界を超えてあのプレイをしたせいで失敗したということか? 回数、もしくは制限時間の問題なのか。身体能力の問題ではない可能性が高いかもしれない。
ゾーンの亜種のようなものなのだろうか?
金崎が交代してしまった今、その謎を解明する術はなかった。
ちなみに原作より緑間は強化されてます
青峰はまだ未強化、黄瀬も理由があって若干強化されてます。
紫原はまだ言えませんが、赤司は色々とアレになっています