ワイがバスケで全国優勝したるわww   作:暇です

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今日も連日投稿です。


目を瞑った

 熱気に包まれる会場。止むことなく歓声が鳴り響き、誰もが興奮に包まれている。中でも、コート中で戦っている選手は脳髄に染み渡るような興奮を感じていた。

 

 コート内では、誠凛高校対桐皇学園の試合が行われていた。現在は第2Q、残り時間は30秒だ。

 

 青峰は驚異的な瞬発力で誠凛の選手二人を抜き去った後、金崎の前で立ち止まる。金崎と青峰に注目が集まる。

 

 誠凛の選手は皆、金崎がカントクを無理矢理説得して出て来たのには何か理由があると思っていた。そして、残り時間が僅かな状況から、仕掛けるなら今しかないというのも予想がついていた。観客もまた、キセキの世代である青峰と最近話題になって来た金崎が対面した事に関心を寄せている。

 

 ある意味予想通りに、金崎は仕掛けた。金崎は青峰の目の前でおもむろに目を瞑ったのだ。

 

 金崎の行動はあまりにも自然だった、その行為が当然であるかのように目を瞑った事に、一瞬青峰は呆気に取られる。

 

「……あん?」

 

 その後、すぐに我に帰って青峰は怪訝な声を出す。

 当たり前だ。バスケの試合は高校生と言えども全国レベルとなればコンマ数秒の差が勝負を握る。それも相手は青峰だ、そんな化け物の前で目を瞑るなど自殺行為に等しい。

 

 金崎もそれは当然分かっているはずだ。そうなれば、可能性は一つしかない。

 

 先程の黒子の消えるドライブを破った青峰の手法、それを模倣しているのだろう。まあ、とは言ってもあの方法は黒子と青峰の長年の付き合いがあってこその物だと。ましてや、消えるドライブを相手にしていない今、目を瞑るメリットなど一切ないのだが。

 

 しかし、もしこれで青峰を止めたとなると、流れを持って行ける上にチームの士気も上がる事になるだろう。

 そう考えると、無意味というわけではない。それに、黒子の仇討ちというのも含まれているに違いない。

 

 青峰も同じ思考に辿り着き、気を引き締め直す。

 

「舐めんてんじゃ……!」

 

 そう青峰が口にした瞬間──

 

 ベリベリ! バキン! ギギギギガ! ベリ! バキバキ! ガキギギ! ベリベリ! バキン! バキバキバキバキバキバキ!

 

 以前と似ているが、新たなオノマトペがいくつが加わった音。そんな音が一瞬で青峰の頭に流れ込む。

 

 あまりの轟音に、青峰の意識が逸れて集中が途切れる。

 

 そして、金崎の雰囲気が変わった。体を刺すような圧が、青峰にのしかかる。

 

 その圧の正体は他でもない、ゾーンだ。

 

 呆気に取られた青峰の隙をついて、金崎の手が高速でボールへと迫る。目を閉じているのにも関わらず、その手は正確にボールへと向かっていた。青峰はとっさに避けようとしたが、間に合わず弾かれてしまう。

 

 更に大きな歓声で包まれる会場。地震でも起きているのかと思えるほどまで、会場が揺れる。

 

 誰もが興奮に包まれている中、青峰だけは何とも言えないような気持ちを抱えていた。

 

「それ……何かずるくねーか?」


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