ワイがバスケで全国優勝したるわww   作:暇です

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あぴょっ!?

「くそっ!」

 

 そう叫びながら灰崎は座っているベンチの手すりを殴りつける。しかし、物に当たってもまだ怒りがおさまらないようで、不機嫌な表情で貧乏ゆすりをしていた。

 

 灰崎は試合後の黄瀬を狙って、試合に出場できなくなるまで痛めつけようとしていた。しかし、青峰の渾身の一撃によってその目論見は阻まれた。

 

 程なくして目を覚まし、近くにあったストリートバスケのベンチに腰を下ろした所だったのだ。

 

 すると、そんな灰崎の元に一人の青年が近づいてきた。

 

「す、すいません灰崎君ですよね? あ、あの僕ファンなんです!」

 

「あぁん?」

 

 急に話しかけてきてそんな事を言うものだから灰崎は怪訝な声を上げる。

 しかし、自分も全国大会ベスト8まで出場しており、またキセキの世代でもあるのだからファンぐらいいるだろう。そうなるとそこまで不自然な話では無いかとすぐに思い直す。

 

「で、あの少しだけでいいので……1on1してもらえませんか? 僕も大した実力はないんですけど、一応バスケ部なんです」

 

「……」

 

 灰崎は頬杖をつき、いくらか考えを巡らせた。いつもの灰崎なら速攻で断ったであろう。けれども、今の灰崎は非常にストレスが溜まっており、この青年をボコボコにすればいくらか鬱憤も晴れるだろうという考えに至った。

 

 背丈から明らかに高校生以上であることは確定だが、そこらのバスケ部員など自分の敵ではない。簡単に手玉に取れるだろう。

 

「ああ、いいぜ。付き合ってやるよ」

 

 ニタニタした薄気味悪い笑みを浮かべながら、灰崎はその申し出を了承する。

 

「ほ、本当ですか!? 嬉しいです」

 

 青年の無邪気な反応を見て灰崎はさらに口角を釣り上げる。彼が純粋であればあるほど、希望に満ち溢れているほど絶望した様子を見るのが楽しいからだ。

 

 コートで二人は互いに向かい合う。そして、青年が1on1についての説明を始めた。

 

「じゃあ……2本先取、僕が先攻でいいですか?」

 

「何でもいいから早く始めろ」

 

「分かりました。じゃあ、行きますね」

 

 青年の説明に対して灰崎は開始を急かす。正直言って、灰崎にとってはどんなルールだろうと関係なかったからだ。青年はその言葉を受けて、すぐさま1on1を始める。

 

 すると、青年は初っ端からフェイダウェイを打った。これは灰崎としても予想外だった。

 フェイダウェイはそこそこ技術がいる上に、今は憧れであろう選手との1on1だ。半分入るかの運ゲーのような勝負を少年がするとは思わなかったのだ。

 

 元々灰崎は何かしら青年が技を使うまでは戦いを引き伸ばすつもりだったので、反応が遅れてしまう。

 

 そのままボールは綺麗な弧を描き、リングをくぐった。

 

「やった!」

 

 青年は単純にシュートが決まったことを喜ぶ。一方灰崎は自分の思い通りにならなかったことに対して苛立ちを覚えていた。

 

 まあ、灰崎としてもただのバスケ部員がすごい技を持っている可能性は低い認識はしていたけれど、何かしら持っているだろうとは思っていた。

 

 今回は運が良かったのと、そこらのプレイヤーとしては少しばかり技術が高かっただけだ。

 

 灰崎は考えを当初から少し変更した。

 

 次の自分のOFで青年のフェイダウェイを奪って華麗に決める。次のDFでは存分に青年との実力差を見せつけて、わざとフェイダウェイを打たして自分の技が使えなくなってることを認識させる。次のOFでは言葉による攻撃も含めて相手にとどめを刺す。

 

 これが灰崎のプランだ。

 

 早速実行しようと攻守を入れ替えて1on1を再開する。

 

 予定通りに開始直後に灰崎はフェイダウェイをお見舞いする。多少技術がいるとはいえ、灰崎の手にかかれば一瞬で模倣できる。ボールは灰崎の予想通り綺麗な弧を描いてリングに──入らなかった。

 

「あぁ!?」

 

 ボールがリングに当たってゴンという鈍い音が鳴り、ボールが灰崎の方へと転がってくる。

 

 予想外の出来事に灰崎は声を荒げる。いくら名プレイヤーだったとしてもシュートは外す。緑間などは例外だが誰にでも凡ミスはある物だ。しかし、今回のシュートに関しては完全にフリーだったし距離もそれほどない。灰崎がこのシュートを外す確率はゼロに近かった。

 

「クソッ!」

 

 そんなはずはないと近くにあったボールを拾ってもう一度フェイダウェイを撃つ。

 またもやボールはリングをくぐることはない。ボールがリングに当たる音だけが虚しく響くのみだ。

 

「何で入らねぇんだよ!」

 

 灰崎にとってはフェイダウェイなどもはや飽きるほど見ている。正直言って青年のプレイなど見ずとも簡単にこなしてみせたはずだ。

 

 灰崎の技は一見強力で何もデメリットがないように見える。しかし、灰崎の技を奪うという行為は相手の技が技として成り立っていることを前提としていた。

 

 灰崎は基本的には見たプレイを忠実に再現し、リズムやテンポだけを変える。

 

 そもそも、いわば正解、教科書と言えるようなプレイが根底からおかしかった場合には逆効果なのだ。

 

「あ、次俺のターンですね」

 

 ふと灰崎の耳にそんな声が聞こえた。もはや1on1などどうでも良くなりかけていた灰崎だったが、声に反応して顔を青年の方へと向ける。

 

 その瞬間──

 

「あぴょっ!?」

 

 灰崎は自分の急所にとてつもない衝撃を感じた。それからすぐに体を痛みが襲った。あまりの苦痛に立っていられなくなり、膝をついてしまう。

 段々と意識が遠のいていき……

 

「……やっべ」

 

 そんな声が微かに聞こえ、灰崎の意識は闇に落ちた。




※いい子は真似しないでね
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