「化け物ね……黄瀬涼太」
一瞬見ただけで火神君の技をコピーするなんて、しかもキレもパワーも火神君より上。
流石にキセキの世代の名は伊達じゃないわね。
「ほいっと、こんな感じっすかね……?」
ゴン!
いきなり黄瀬君が無茶苦茶なフォームでシュートを打つ。もちろんボールはデタラメな軌道を描き、リングに弾かれる。
(うん……? 何をしているの)
キセキの世代と言えどもシュートを外すことぐらいあるだろう。しかしフォーム等があまりにも無茶苦茶だ。
「もー! アレどうやってるんすか。そこの……黒髪の人!」
「は?」
金崎君に向けて黄瀬君が話しかける。まさか今のは金崎君のシュートをコピーしようとしたのだろうか。
それならば、シュートが入らなかったこと、フォームがメチャクチャだったことも、黄瀬君がコピー出来なかったと納得できる。
(たしかに……あのシュートは一番意味が分からないわ)
金崎君のシュートは、フォームが独特とか変というレベルではない。毎回フォームと軌道がランダムなのだ。高弾道の時もあれば、バックボードに勢いよく直撃させて、入れるようなシュートもある。何か規則性や種類でもあるのかと思いきや、それすらもない。
アレをブロックするのは面倒極まりないだろう。予測ができない以上、変則的なシュートに咄嗟に対応するしかないのだから。
これに片手のシュートも加わるとなると、敵だったら思考停止したくなる。
一回日向君が自主練中に指導しに行ったが、ほぼ百発百中で、正しいフォームに直させたら一発も入らなくなったので辞めたらしい。
聞いても適当ですとしか言わないし……どうしたものかしら?
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現在、海常高校と練習試合の真っ最中ーーだが、私は完全に思考が停止していた。
何とか黒子君と火神君の連携プレイで黄瀬君と渡り合えるようになったと思ったら、金崎君が奇声を上げながらハーフコートラインからシュートを決め、ファールを取られていた。
……よし、一つ一つ整理していくわ
ハーフコートラインから片手でシュート。
まずこの時点で意味がわからない。ハーフコートラインからシュート決めれるやつがそもそもいない。ましてや片手なんて不可能だ。
さらに単純に筋力の問題がある。金崎君の力では、届くといえば届くが、とにかく全力で投げなければそもそも届かない。
しかし、そうなった時ボールをコントロールする余地はない。
なのに決めた。……もういいや。
次はファールを取られるほどの奇声を上げた。
……何で? ……いや何でよ?
その時、あることにふと気がついた。
「黒子君のミスディレクションが戻ってる……?」
たしかにミスディレクションの効果は弱まっていたはずなのに、それが戻っているのだ。
(そういえば、今回妙に金崎君は存在感がなかったような……)
まさか、黒子君のミスディレクションを戻すための布石? 元からある光ではなく、急に大きな光が現れたなら必然的に現れた光に目が行き、影など霞んでしまう。
それを読んでいたの? だから奇声を上げた……?
確かにファール一つより、より黒子君が機能するようになった方がメリットは大きい。理屈的にはそうだ。
(だからと言って……それを実際にやるなんて)
技術だけでなく、メンタルと知能まで兼ね備えているの?……
後日、シュートに関してはしらを切られるので、奇声を上げたことについて問い詰めた。
返答は「心が叫びたがってました」だった。シバいといた。
メンタルに関しては正しいですね