その街はごった煮の様相を呈している   作:オラクルMk-II

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4話じゃ終わんなかった♡


ピコリコ星人ホームシック〜その4

 

 

 医療惑星サイラーラ。名前の通り、優れた医療機関が有名な星……どころか、この惑星そのものが1つの巨大な病院である。

 

 水と大地の割合はおよそ6対4と多少地球よりも海が小さいが、環境そのものはあまり変わらない。大きな特徴は、地表から絶えず放出されている桃色を帯びた霧だ。このガスはどういうわけか、ありとあらゆる生命体の代謝を促進、怪我の治りなどを早める効能があった。

 

 当然、星間航行の技術がある宇宙人には知らぬ者はいない有名な星となり。様々な星の腕利きの医療従事者の移住や、特にテラフォーミング技術に優れた宇宙人の主導による星そのものの改造が行われた結果、銀河有数の「病院惑星」が誕生したのだった。

 

 

 …………と、いうようなことを、フェレスは後部座席でポチョムスの面倒を見ていた乗務員の悪魔から教えてもらう。因みに隣のマユミはというと、道中で「地球人の観光客向け」と置いてあったパンフレットを呼んでいる。

 

 フェレスの個人的見解としては、「ここ」は空木の出身地よりも遥かに異質で楽しい場所と言えた。

 

 様々な惑星からの者に対応するためだという虹色に光る信号機、ベルトコンベアみたいに車を運ぶ道路。訳のわからないことを言ったかと思えば、目的地を言った瞬間、自分にもわかる言語で返事が帰ってくるアナウンス看板。少なくとも、自分が元いた地球よりも遥かに文明の進んでいるらしい事を理解すると少しワクワクした。

 

 一体どういうことか検討もつかないが、どぎついネオンカラーで見やすいが、かといって何故か目に痛くは感じない何かのビル群をのんびりと眺める。時々交差点でハンドルを切る以外は全く操作の必要がないので、フェレスはのんびりと乗務員の話を聞く。

 

「フェレスさんとシワスダさんは宇宙旅行は初めてなんですよね」

 

「えぇ、言った通りよ。連れ回されただけだもの……でもいいもの見せて貰ったわ。景色もきれいだし、空気も澄み切ってて、何より楽ね、この道は」

 

「うふふ。宇宙でもかなりのハイテク惑星でもありますから。色んな星から、患者さんが訪れるんですよ。因みにホテルの温泉とかも効能がすごいと聞きます、高いんですけどね」

 

「なんとなく想像つくわ。なんだか目に映る物が非現実的だもの……」

 

〔さっき魔法の絨毯(じゅうたん)で飛んでいる人がいました……〕

 

「それぐらいなら私の居た天界で天使共がやってたけれど」

 

〔そうなんですか!?〕

 

 それぞれの居た世界での常識なんかで世間話をしていると、目的地の病院が近づいてくる。遠目にもわかる巨大な建造物だったが……なんというか、こちらもなかなかインパクトがあるデザインをしている。

 

 一言で言うなら箱だ。おそらくはきれいな正六面体と思われる、真っ白な立方体。その壁面には窓らしき物が並び、そしてデカデカと赤十字が、意味がわからないが、「赤と感じる虹色」で書かれている。あっ、病院マークって銀河共通なんだ。フェレスは自分の知る世界でもよく見た、普遍的なその記号に少し意外に思った。

 

 そのまま道路に運ばれること数十分後、車は駐車場の入り口らしき場所から病院の中に入る。

 

 更に自動的にロールスロイスは右に左に流れていき、最終的に立体駐車場と思われる場所の空いたスペースに自動的に停められた。建物の天井からモニターが出現し、「お疲れさまでした。駐車を確認、乗員の方は降りてください」との文字が出力される。3人は車から降りた。

 

 「着きましたね。では、私はこれで」 唐突にそう言って帰ろうとする悪魔へ、え、とフェレスは生返事混じりに問い詰める。

 

「一緒に来るんじゃないの?」

 

「いえ、施設の案内はロボットがしてくれますよ。私は先に船に戻ります」

 

「帰るときはどうすれば良いのよ。悪いけど私、道なんて覚えていないけれど」

 

「問題ありません。この星の道が「覚えて」います。それに後で合流する空木さんから教えて頂けるはずですよ」

 

「そうなの? ……ならいいけど」

 

「それでは、お疲れさまでした。ポチョムスさん、お大事に。」

 

 にこにこ笑顔を絶やさずに彼女は去っていった。さて、どうしよう。魔法の影響で背の低くなっているマユミの2人で病人を引っ張り出し、フェレスがその身をおんぶして抱えたときだった。3人の前に、3体の浮遊している円筒型をしたロボットが現れた。

 

「な、なにこれ」

 

『私は当院の自動ナビゲーション・消毒システム、スマートボットと申します。本日のご要件をお聞かせください』

 

 あ、乗務員の言ってたのはこれか。フェレスは口を開く。

 

「えぇっと、この……何星人だっけ?」

 

〔ピコリコ星人です〕

 

「ピコリコ星人が風邪引いたから来たわ。診断やら何やらお願い」

 

『かしこまりました。当院の診察カードはお持ちですか?』

 

「これ、でいいの?」

 

『認証しました。受付までご案内します』

 

 電子カード決済の機械みたいな物を出してきた相手に、彼女は空木から貰っていた診察券をかざす。あっていたようで、誘導を始めた、ふよふよと浮いている機械についていく。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 体の消毒と称して、案内ロボットから絶えず霧状の薬液をかけられながら3人は受付へ。高度に自動化・最適化されたシステムによって、なんと数十秒と待たずに診察番号を呼ばれ、一行はまたロボットの誘導でエレベーターに乗る。

 

 てっきり数時間待つのが当然かと思っていたのが挫かれてぼんやりしていると。フェレスとマユミは、医師が待っているという診察室まで到着した。

 

「入っていいのかしら?」

 

『どうぞ。中の者が応対致します』

 

「そ。じゃ、遠慮なく」

〔お邪魔します〕

 

 人を抱えていたフェレスに代わり、マユミが引き戸を開けた。あ、自動ドアじゃないんだ、なんて思いながら2人は中に入る。

 

 中に居たのは、恐らくピコリコ星人と思われる水色の宇宙人だった。ポチョムスが身に付けている物に近い宇宙服の上から、白衣を羽織っている。

 

〔本日、ポチョムスさんの担当医となりました、パンチェレと申します〕

 

「初めまして。フェレスと言います」

 

〔その方がポチョムスさんですね、こちらのベッドへ。どうぞ、おかけください〕

 

「えぇ、では」

 

 言われるままポチョムスを寝台に寝かせる。2人が椅子に座ると、パンチェレはパソコンみたいな機械を操作し、それに反応して部屋の壁が開いて、スキャナーか何かを思わせる形状のマシンが姿を表す。

 

 おぉ、なんだかSFっぽい! ちょっとした感動を覚える女2人をよそに、医者はタイピングを続ける。すると今度は、下半身がタコの触手みたいになっている女の宇宙人(服装から看護師と思われる)が来て、機械に配線コードを大量に差し込みはじめる。

 

 パンチェレが緑色のボタンを押すのが見えた。すると、機械からオレンジ色のレーザー光線が放射され、それがポチョムスの体を包み込む。触っていた機械のモニターを見ていたタコ宇宙人の女性が言う。

 

「これは地球型アデノウイルスですね」

 

〔そうだね。うん、こりゃ夏風邪だな〕

 

〔「風邪!」〕

 

 え、それだけ? 大事にならなくて良かった・意外と大したことなかったな、との両方の感想を抱いた2人に看護師とパンチェレは続ける。

 

「ピコリコの方多いんですよ〜お肌とか体が弱い方多いので」

 

〔防護服が手放せない種族なものでね。聞けば船で地球に不時着したと聞いたが?〕

 

「あぁ〜まぁ、私はあまり詳しく聞いてませんけれど。そうらしいですね」

 

〔どれ……ん! やはり服に小さいが穴が。ここから病原体が入ったな〕

 

「売店に宇宙服の手配をしておきます」

 

〔頼むよ。薬は……うーむ、2〜3日はかかるか。母星から取り寄せだからねぇ〕

 

 嘘は言ってないもんな、うん。フェレスが適当な返事をしている間にもどんどん話は進む。眠るポチョムスの服に傷を見つけ、処方箋(しょほうせん)と新しい服の用意を慣れた様子で進める2名を、悪魔と女子高生は無心で見ていた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 とりあえずは、とポチョムスは点滴と院内にある薬で治療を受けると話がつく。なんだか意外と大したことなかったな。そう思いながら、フェレスとマユミは受付まで降りる。

 

 同族も多いようだと感じ、付きっきりの看病をする必要も無くなり、マユミは貼っていた札を剥がして元の姿に戻った。

 

 色々と見てきたがこうも多彩な魔法を使うあたり、能力は自分よりも高いのかな。やはり空木の事を出し抜くのは面倒そうだ。こっそりと自分を監視する相手からどう逃げようかなどとフェレスが算段を立てていると、2人はエントランスに着いた。ちょうど今しがた来たのか、ソファに空木が居るのが見える。

 

「あ」

 

「早かったね。もう診察終わったの?」

 

「さぁね。ただあの宇宙人向けの薬が届くまで遅いと一週間はかかるそうよ。それより、船酔いはもう大丈夫なの?」

 

「まぁ、なんとか……そっか、一週間か」

 

 手帳を開いて何か確認する彼女の隣に座り、フェレスは気になっていたことを聞いた。

 

「ねぇちょっと」

 

「なんです」

 

「貴女も阿呆なのね。ここ沢山宇宙人居るんでしょう? 初めから来ればあの船だって直せたでしょうに」

 

「どういうこと?」

 

「いやだから、ピコリコ星人?が沢山居るなら、母星とやらに取り次いでくれるやつが一人は居るでしょ。さっさとここ来れば、あのウインナーみたいなのが風邪引く前に返せたでしょう?」

 

「いやわかってましたよ」

 

「わ……………は??」

 

 別にポチョムスを心配していた訳ではないが、迷ってきた人間を保護すると言うには変な行動をしていた空木をフェレスが突っ込み、もっともだとマユミも同意してうんうん頷いていると。相手の予想外の返事に2人は変な顔になった。

 

「わかっててなんでしないのよ。わざわざ地球の人間にどうこうさせるなんて遠回り………」

 

「高いんですよ運賃」

 

「え」

 

「さっきも見てたでしょ? 星間航行はだいたい星から離脱する距離で100万円ぐらい。そこから別の星まで行ける距離だとどんどん膨れ上がって、ここまででもだいたい550万円ぐらいかかってる……………地元で解決できるならそうしたほうが安上がりです」

 

「安上がりってアナタね……」

 

「こっちだって色々あんの。調べ物やらガソリン代やら、人によっては宿代に食費、時間だって取られるから副業絞ったり………」

 

「………………なんか思ったより貴女ってお金持ちじゃないのね」

 

「出費がかさむと1000万なんてすぐ溶けてなくなりますよ。あんなの自分の金であって自分の物なんかじゃない」

 

 よく観察すれば、空木が書いていたのは帳簿だった。覗き込むと、おびただしい数の0が並んだ数字と、入金と出費が慌ただしい過去の記録が並んでいる。

 

 実のところ愛車以外にはあまり金をかけず、ささやかな贅沢に留める生活をしていたフェレスには、初めは報酬の数百万円というのは魅力的に思えたが。こんなのと付き合ってたらアッという間に消し飛ぶんじゃないかと不安になった。

 

 そんな考えを忘れようと、彼女は強引に話題を切り替えるべく、再度口を開く。

 

「さ、用事も済んだでしょ。さっさと地球まで帰してちょうだい」

 

「帰れませんよ」

 

「一緒じゃないと返さないって? 残念ね、私は「宇宙人を運べ」って言われただけで最後まで付き合えなんて言われた覚えはないけれど。いいから迎えの船をよこして」

 

「いや、だから私含めて誰も帰れませんよ」

 

「あっそ。とりあえず宿で―――は??

 

 聞き捨てならないと思わずフェレスは立ち上がる。流石のマユミも、空木のこの発言には額に冷や汗を浮かべながら問い詰めるしかなかった。

 

「え、えっと、空木さん……?」

「ちょっとどういうことか説明しなさいよ」

 

「帰れませんよ」

 

「は?? だからなんで???」

 

「お金使い切っちゃったもん。とりあえずバイトなりして稼がないと」

 

「は? は?」「う、嘘ですよね??」

 

 青ざめている2人に、空木は逆さまにひっくり返した財布をパタパタと揺らして答える。落ちてきた免許証やらのカード類以外にはコイン1枚すら出てこない。

 

「わ、悪い冗談でしょう!? ねぇ、そうよね? 通帳からお金引き出したりなんだり」

 

「冗談言う場面じゃないじゃん」

 

「あれでしょう!? 私のこと嫌いだから嫌がらせで言ってるとか」

 

「流石にそこまで性格悪くないもん私」

 

「今すぐ悪くなって頂戴!」

 

「え、ヤダ」

 

 肩を揺すぶられながら空木は淡々と答える。動揺していたフェレスはヘナヘナとその場に座り込んでしまった。

 

 そんな彼女をよそに、近くに浮いていたスマートボットに近づき、空木はタッチパネルを操作する。何か嫌な予感に、フェレスはへたり込んだまま相手を問い詰める。

 

「だいたいバイトって何よぉ、いかがわしいお店じゃないでしょうね……?」

 

「ただのメイド喫茶ですが」

 

「め……―――は?

 

 もう聞き返す気力すら起きず、フェレスは何かの手続きを済ませる空木を涙で潤む瞳で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 




執筆速度あげてぇなぁおれもなぁ

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