その街はごった煮の様相を呈している   作:オラクルMk-II

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おまたせしました。ちょっとチャージしてきたので溜まった文章をくらえっ

ついでに感想·評価·ここすきもヨロシクぅ!


ピコリコ星人ホームシック〜その1

 

 

 

 

 起こったことを嘆いてもしょうが無い、というのが空木の行動理念の1つにある。ポチョムスと名乗った宇宙人と共に、彼女は手早く片付けを済ませることにした。

 

 まずは駐車場に刺さった宇宙船をどうにかしなければいけない。これは、彼の助力ですぐに終わった。

 

 魔法陣を展開し、かかる重力を弱める術を対象へかけたところ、この宇宙人は「私も手伝わねば」と言って念力で物を浮かせ始めたのである。唖然としつつ、空木は邪魔にならないコンビニの屋根に置くように指示を出した。

 

(念話と念力か。超能力が発達してる種族なんだな)

 

〔これで良い、であるか?〕

 

「えぇ、結構です。ありがとうございます」

 

〔失礼をかけたのは当方にある。礼は無用、である〕

 

 壊れたもの·設備と、作業中の宇宙人とを交互に見る。この町に来てもう6年になるが、さすがの空木も宇宙人に遭遇するのは初めてだっただけに、気を損ねたりしないよう丁寧な対応を心掛ける。

 

 空木は、町の守護者としてこちらへ来るのは11代目だった。少なくとも空木の知る悪魔は人間とそう変わらない寿命のため、この役目を担う悪魔は何度も第代わりしているのである。

 

 ポチョムスについて色々と書き込みながら、彼女は辞典並みに分厚い前任者の記録を引っ張り出してきて調べる。流石に100年単位で集まった記録の中なら1人ぐらい宇宙人とか対応した人居るよね? 淡い期待を胸に抱く。

 

「AST-007星雲系の、ピコリコ星人?? って言いましたよね」

 

〔そうである。にしても、地球……と言ったかこの星は。失礼ながら、珍妙な乗り物や建物や動物((人間))が多いのである〕

 

 それは私からすれば貴方の方なんだけどな……とか思うように、向こうは私のことを見て思うんだろう。言いたいことをぐっと飲み込み、とりあえずはと空木は簡単な今後の方針を話してみた。

 

「先程話したとおり、私は仕事でここに居る悪魔です。今簡単に調べましたが、ちょっと貴方のような宇宙から迷い込んで来る方は珍しくて、該当するケースもなかなか無いんです」

 

〔なるほど〕

 

「申し訳ありませんが、数日間私の家で過ごして頂くほか無いかもしれません。大丈夫でしょうか?」

 

〔当方には備蓄や帰還の手段もない。加えて衣食住まで確保して貰えるとなれば、そこまで贅沢をいう選択肢など無いのである〕

 

「そうですか。ごめんなさいね、ポチョムスさん」

 

〔礼を言わなければならないのはこちらである。ウツギ殿〕

 

 良かった。どういう理屈かは知らないが会話は通じるし、倫理観も普通の人間と変わらない。後は食生活や文化などだが、それは追々聞きながら調整するか……。

 

 と、そんなように考えていたときだった。ふと、周囲の風向きの変わるのと、自分のよく知る魔力の流れを感知する。空木が振り向くと、呼んでいたエイムが来ていた。

 

「あ、早いねエイムくん。ちょっとお願い、駐車場直しておいて貰える?」

 

「お安い御用でござ―――」

 

 言い終わらないうちに。彼の視線が、空木の横にいたポチョムスへ向く。まぁ、そうなるよな。彼女は短いため息をつく。

 

「んぉ!? な、なんでござるかこの謎の生物は……」

 

〔失礼な。当方にはポチョムスという個体名がある〕

 

「うわぁ!? こっ、コイツ!! 脳に直接ッ!」

 

 空木も思っていた事だが―――この宇宙人の脳内に直接話しかけて来るようなテレパシーは、何とも気持ちが悪かった。同じことをエイムが感じたらしく、彼は「うおぉうおぉ!?」頭を抑えて変なことを(のたま)っている。

 

 あちゃー……そんなにヤだったか。この妙な感覚に猛烈な拒否反応を示すエイムを見て軽い頭痛を覚える。失礼を承知で、空木はポチョムスにそれとなく頼んでみた。

 

「ポチョムスさん、すみません。筆談ってできますか?」

 

〔? 出来るがなんであるか〕

 

「その……我々にはテレパシーというのはあまり体感したことが無い感覚で、なんか「酔う」んです。良ければ、なんですけど、これからコミュニケーションは書面でも大丈夫ですか」

 

〔!! そ、それは申し訳なかったウツギ殿〕

 

 制服のポケットに挟んでいたボールペンと愛用の手帳を渡すと、一体どうやっているのか。ポチョムスは物を浮かせて、スラスラと何か(つづ)ってみせた。

 

【これでよろしいか】

 

「!! え、えぇ、ちゃんと読めます」

 

【それは良かった】

 

「立ち話もなんですし、中に入りましょう。後3時間ほどで私も仕事が終わります。家まで送りますので」

 

【何から何までかたじけない。お世話になるのである】

 

 ポチョムスが最初に出して来たメモには、アルファベットが書かれていた。宇宙人って英語で話すのか……なんて思ったが、よく見たらそれはエスペラント語で書かれており。宇宙の公用言語ってエスペラントなんだ……と、空木は彼をコンビニに招き入れながら、カルチャーショックを感じた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 狼狽えながら駐車場を整備していたエイムを横目に、勤務時間が終わって交代の者が来た空木は着替えを済ませて外に出る。

 

 当然、このコンビニに勤めている物は彼女が悪魔であることを知っていた。変な事に巻き込まれまくるのにも慣れていることもあり、もはや空木が「ピコリコ星人」なる妙ないきものを連れている事を気にする者すらいない。

 

 これは良いことなのか悪い事なのか……複雑な思いを胸に、自分の車に乗り込む。気を使って助手席のドアをあらかじめ開けておき、ポチョムスに乗るように促す。

 

「どうぞ、乗ってください」

 

【失礼する】

 

 乗り方がわからない、何てことは言われなかった。彼はキッチリとシートに腰掛けて落ち着く。

 

「さっきはあまり話せなかったですし……簡単に打ち合わせしましょ。……そのどうしたいですか、ポチョムスさんは」

 

【というと】

 

「貴方が元の居場所へ帰りたいというのであれば、全力で支援します。この場所が気に入ったというのであれば、定住するための手続きをする予定です」

 

【定住。そんな事ができるのであるか】

 

「えぇ。もともと変な場所から色々迷い込んでくる町ですから。」

 

 空木がそこまで言ったとき。それとなく、悩んでいるような仕草を見せてから、ゆっくりと彼は筆を走らせた。

 

【帰りたい……のである】

 

「…………わかりました」

 

【母星には、私の帰りを待っている家族がいるのだ。当方は、このような場所で倒れるわけには行かぬのである】

 

「手伝います。時間かかるかもしれませんが、一緒に直しましょう……えぇと、あれは宇宙船ですか?」

 

【ゼビディウス級·高速巡航船、シリアルナンバーは20200522番、個体名を「フォービウス」。当方自慢の自家用船である】

 

「そ、そうですか」

 

 ぜんっっっぜん、聞いた事もない等級の船だな……大丈夫だろうか。

 

 空木はSNSアプリで自分の知る限りの、メカに強い知り合い全員にメッセージを飛ばす。彼らに直せるだろうか。一抹の不安が消えなかった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「な、何だコレは……見たこともない基盤に見たこともない部品が……」

 

「何スかこの電流の流れ、なんでショートしないんだ??」

 

「分子同士がすげぇ結合の仕方だ、こりゃ材料工学に革命が起きちまうなぁ!?」

 

「弄りがいがあるってもんだ、色々と試してみよう」

 

 時刻は昼の2時頃。場所は変わり、現在空木は知人の町工場に来ていた。

 

 目の前ではここに運び込まれたフォービウスに、何か専用の工具で、悪戦苦闘しながら分解する整備士や研究者が群がっている。中には空木がロータスを任せているツバキも混じっている。

 

「ちらほらそれっぽい部品ありますけど、これ勝手に交換して大丈夫ですかね??」

 

「マテマテ、テストしろって。何かあったら大事だ」

 

「にしてもダメージが酷いな。しかも外板が硬い、普通の金属カッターで切れるのか?」

 

「さぁな。やってみない事には―――」

 

 やはりというべきか。予想していた事だが、補修作業は難航している。オーバーテクノロジーの塊であるこの宇宙船は凄まじく堅牢な装甲に包まれており、ひしゃげた部分を切除するのも一苦労らしい。ハンマーやら何やらで強引に叩いたりこじ開けたりして、汗水たらしながら部品を外す彼らに、空木は渋い顔になる。

 

 ポチョムスの方はというと、異文明の建物や道具などに興味津々だった。こんな物に乗っていた彼からすれば、縄文時代の土器か何かに見えているのだろうか? などと思っていると。見知った顔がもう一人、ガレージに入って来た。

 

「お邪魔しまーす。まだやってるんですか?」

 

「あれ、マユミちゃんもう学校終わり?」

 

「はい。午前中で終わりです。お昼も食べてきたから、まだやってるのかなぁって。様子見に来ました」

 

 初めは吸血鬼(アグラーヤ)。その次は悪魔(フェレス)に誘拐されてここ最近不運続きだったマユミだ。幸いフェレスに何かされていた訳でもなく至って健康体だったため、今日も普通に通学している。

 

「どうなってるんですか」

 

「そう簡単には直せないみたい。宇宙人の船だしねぇ」

 

「見れば見るほど、私のお父さんが喜びそうな形です」

 

「ねー。なんだかガン○ムとかマ○ロスに出てきそうだもんね」

 

 昨日は夜で薄暗かったのもあって、フォービウスの外観はあまりわからなかったが。日の当たる今日の朝、改めて見ると、ゴツゴツと鋭角的な見た目がなんとも全国の男の子に刺さりそうなデザインをしている。

 

 空気抵抗が凄そうな角張った見た目が、なんとも現代の航空力学を無視していそうなところに。やはり異文明の技術を感じるな、などと、マユミと並んでぼんやり見ていると。また来客が1人増える。

 

 開いていたガレージの入り口にピッタリとドアをつけ、1台の車がやって来た。だれだ?と空木が視線を向けると、中から大柄な男が降りるのが見える。

 

 「貴族」とかそういう言葉を連想しそうな、装飾の入ったカジュアルな黒いスーツ。肩ほどまでの白髪と、きれいに整えられた同じく白い立派な髭に、シワがあるが整ったダンディな顔立ち。昨日行った収容所で吸血鬼のまとめ役をやっている男……伯爵だった。

 

 運転手に何か礼を言ったあと、日傘を差した彼は空木を見つけて近寄って来る。

 

「ありがとう。帰るときは電話で呼ぶ、頼む」

 

「了解です」

 

「ん……む、空木? なぜここに居るのだ?」

 

「ちょっと用事があって。伯爵様は?」

 

「なぁに、道楽で買った車をここに預けてあるのでな、様子を見に来たのだよ。ついでいつも世話になっとる経営者に差し入れもな……こちらの可憐なお嬢さんは?」

 

 伯爵が指差す先には、傷一つなく磨き抜かれたシルバーのポルシェが停めてある。明らかに車好きの人間のものだろうと触らないようにしていたがこの人の物だったか、と納得する。空木は考え事混じりに、マユミの事を紹介した。

 

「バザロフに襲われた子です。何かあったら困るから、最近は私の近くに居るように言ってます」

 

「し、十二月田まゆみです。え、えぇと……」

 

「おぉ、貴女が十二月田さんかね。同族が失礼を働いた、申し訳無い」

 

「んぇ!? いや、そんな」

 

「これはほんの気持ちだ。つまらない物だが受け取っておくれ」

 

 紙袋から彼は何か取り出す。「あ……」思わず空木の口から声が漏れる。出てきたのは、フェレスが前に渇望していたお菓子専門店のチョコレートバウムクーヘンだった。

 

「わわわっ!? ぶ、ブランド品!」

 

「なぁに、貰い物なのだが、私は甘い物は苦手でな。それならばと他の者へ渡しに来たのだが、どうだろうか。美味しく頂ける者へ施したほうが生産者も浮かばれる」

 

「貰っときなよマユミちゃん。ここのやつ美味しいらしいし」

 

「わ、わかりました……わぁ」

 

 高身長で険しい顔立ちの男に気圧されていたが、落ち着いた物腰に警戒を解いたようだった。マユミはお高いお菓子を受け取ってソワソワしている。

 

「おっと。名を、名乗っていなかったな。ケンシー·フリードという。十二月田さん、重ねるが同族のアグラーヤが迷惑をかけた」

 

「はい……あの、空木さん」

 

「ん?」

 

「えっと……その、フリードさんは貴族の方、なんですか?」

 

「「ん??」」

 

 何の話? 空木と伯爵はどこか間抜けな顔をマユミに見せる。

 

「え、だってさっき「伯爵様」って……」

 

「あぁ……あれね。」

 

 ただのアダ名なんだけどな。空木はマユミに説明した。

 

「いやさ、ホラ。見るからに「ドラキュラ伯爵」って見た目でしょ?」

 

「そういう意味だったんですか!?」

 

「ははは。よく言われるよ。」

 

 役職でもなんでもない、本当にただ外見からの呼び方だったのが予想外だったようだ。マユミは物を落としそうになって慌ててバウムクーヘンをキャッチする。

 

 この子が年相応な振る舞いをしていると和むな、なんて思っていると。やはり気になっていたようで、伯爵は自己紹介のあと、空木の背後にあったフォービウスについて聞いてきた。

 

「しかし先程から気にはなっていたが、あれはなんだ? 見たことがない乗り物だ」

 

「昨日宇宙人の方が迷い込んで来たんです。自家用の宇宙船だとか」

 

「ほぅ、興味深いな」

 

 唸り声を上げたり不機嫌そうに声を上げてあーでもないこーでもないと言っている一団に伯爵が近づく。すると、眉間に手を置いて難しい顔をしていたツバキが彼に気付く。

 

「ん゛〜……ん?? あっ、ふ、フリードさん」

 

「こんにちは、椿くん。何をしているのかね」

 

「宇宙船の修理だって空木さんに呼ばれたんです。全く管轄外(かんかつがい)だってのに……」

 

「少し見ても良いかね? 何か助言できるかもしれん」

 

「は、はぁ……どうぞ」

 

 どれどれ、と興味津々に伯爵は脚立に登り、フォービウスの船体に足をつける。まじまじと何か見ている彼を、空木とマユミはぼうっと眺めていた。

 

「……私の世界にあったものと、少し似ている部分があるな。もう少し、詳しく拝見させては貰えないか?」

 

「!? な、なんですって!」

 

「ペンライトを借りる…………これは、冷却システムの一部か。ペルティエ素子に近いな。恐らく、似たような機構のものをより改良·圧縮して組み込んであるのだろう。となれば、性質が似通っている可能性は充分にある」

 

「見ただけでわかるものなんですか?」

 

「伊達に200年も生きとらんよ。どれ、これは弄りがいがありそうなマシンじゃあないか」

 

 気になって2人が機体に近づき、様子を見ていると、何か発見があったようだ。色々と各部の部品について喋っている伯爵に、うんうんと頷いている整備士や研究者が見える。

 

 そういえばこの人、昔は車の改造は自分がやってるって言ってたな……機械に詳しいのか。盲点だった。少年のように目を輝かせている伯爵に、空木がそう思っていると、工場見学をしていたポチョムスが戻ってきた。

 

「ん、見学はもう良いのですか」

 

【大変勉強になったのである。…………この星の文明は、機械工学については我々の母星と数世代ほど遅れているようである】

 

「なるほど……」

 

【しかし驚くべきはその精度だ。このような道具でほとんど手作業でありながら、緻密な工業製品を作るなど、我々にはできない芸当である】

 

「! ちょっと意外です。ピコリコ星なら普通じゃないんですか」

 

【我が故郷では、オートメーション((機械による自動化))が進んでいる。おそらく、こちらの原住民族が念話(テレパシー)を行えなかったりという相違点があるのも、そういう違いの重なった結果なのだろう】

 

「はぁ」

 

「へ、へぇ???」

 

 自分よりも頭一つ分ほど背の低い異星人の言う事に、マユミは全くちんぷんかんぷんそうな顔になった。正直、空木も彼の言うことは100%解っていたわけではないが、とりあえず地球人の手先の器用さはピコリコ星人よりも上を行くようだ。

 

「文明が遅れてる……か。直るのは時間がかかるかもしれません……すみませんね」

 

【何度も言うが、謝るのはこちらである。気長に待つだけである。それと】

 

「?」

 

 空木に渡した紙に。ポチョムスは念力で浮かせているペンを走らせる。

 

【よし良ければ、当方は飛び切り塩味の効いたスナックを所望する。ポテトチップス、といったか。あの菓子は気に入った、かなり故郷の味に近い。この星の食料品に、私は強く興味が湧いたのである!】

 

 ………………………。ピコリコ星の料理はバター醤油味のポテチの味がする、と。

 

 空木は、離れた場所のテーブルの上にパーティ開けされた袋菓子を見る。それがかなり気に入ったらしく、どこか興奮しているようにも見える彼に、彼女は帰り道にスーパーでお菓子を買って帰ることに決めた。

 

 

 

 




前回がドタバタバトルだったので今回はほのぼのギャグに振ってみたいと思います。(予定)

見たいお話の大まかなジャンルをお選びください。1番多いやつがフワッと増えます。

  • ほのぼの日常
  • ドタバタコメディ
  • ギャグバトル
  • 真面目な戦闘シーン
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