その街はごった煮の様相を呈している   作:オラクルMk-II

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おまんたせ 着々と増える参加者に嬉しくて初投稿です(支離滅裂な発言


ピコリコ星人ホームシック〜その2

 

 

 ポチョムスが不時着してから早くも1週間が経つ。空木は今、過去の記録を調べるため、半年ぶりに魔界に戻ってきていた。

 

 魔界。知らない人間は皆、紫色の瘴気の霧が満ちていて、ファンタジー世界の悪魔の城みたいなのが建っている荒野みたいなものを想像するそうだが。少なくとも空木の出身のここは、そういうのを期待した人間がガックリするような世界だ。

 

 人間界との明確な違いは日照時間が短くて、天気が悪く多少薄暗いことか。道行く者の頭から角が生えていたり、背中から羽が生えていたり、またまた別のものは下半身が蛇だったり腹が裂けて口があったり、たまに空木のように人間と見分けがつかない者も居たりとその程度だ。

 

 道は整備され、路肩には街路樹が植えてあり、ビル群があって、その壁にある大型モニターにはビールのCMなり詐欺の注意勧告なんかが流れている。人種以外、現世とそんなに変わらない。妄想が好きな者なら落胆して涙を流しそうな「魔界」が、彼女の生まれ育った故郷だった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「計算によると、窓は22時間後にまた開きます。時間までに戻ってきてくださいね」

 

「わかりました。これ、お土産です。みんなで食べてください、まだありますから」

 

「あぁ! いつもありがとうございます……おぉ、美味しそうなバウムクーヘンだなぁ」

 

 魔界には、複数人の魔法を使って現世へとつながる窓を作る「門」がある。事前の連絡通り、自分のワゴンRと共に魔界入りした空木は顔見知りのゲートの職員に伯爵から貰ったお菓子を渡し、早速目的地の図書館へと向かう。

 

(持っている資料だけじゃ限界があった。やっぱり、調べ物ならここしかないよな……)

 

 あのあとも、空木は書斎にあった先人達の日記なんかをひっくり返したが、宇宙人に会った、なんて記録は見つからなかった。

 

 最悪、自分よりも過去に守護悪魔をやっていた者達は、宇宙人なんてものの対処をしたことが無いなんて可能性もあるが……。母星へ帰りたいと言うポチョムスの願いを尊重する彼女としては、その力になるべく限界まで調べるつもりでいた。

 

 ぼんやり考え事をしながらハンドルを握る。こっちのラジオを聞くのも久しぶりだな。流していたカーラジオに、一時的とはいえ帰郷してきたことを噛み締めていると、目的地が近づいてくる。

 

 ささっと車を停めて、身分証とご先祖さまの記録を手に、空木は足早に図書館に入る。司書を勤める悪魔へ、手短に用件を話した。

 

「合田町の守護悪魔を勤める深尾です。調べ物に来たんですが、今、時間いいですか」

 

「大丈夫です。どのような資料をお求めですか?」

 

「歴代の守護悪魔の記録が見たいんです。あと、できれば宇宙人に関する本ってありますか?」

 

「調査報告録と……宇宙人、ですか……う〜ん、ちょっと付いてきてください」

 

「ありがとうございます」

 

 眼鏡に着崩していないスーツ姿と、見るからに真面目そうな格好の彼に続く。平日の昼という事もあって、あまりここは混んでいない。暇を持て余していそうな老人の悪魔ばかりで、館内放送以外の音はなく静かだ。勉強するには快適な環境といえる。

 

「つきました。こちらの棚が、守護者の方々が認めた記録を元にした本が並べてあります。あと少し離れていますが、あちらの棚に占星術や宇宙に関する書籍をまとめてあります」

 

「そうですか。すみません、何から何まで」

 

「いえいえ。守護悪魔の記録ですが、こちらは貸し出しサービスの対象外となっております。申し訳ございませんが、当館からの持ち出しは禁止されておりまして……」

 

「了解です。何かあったら呼びますね、ありがとう。」

 

 予想はしていたがやっぱり貸し出し禁止かぁ。空木は内心落胆しつつも、ポチョムスの母星、「ピコリコ」や、AST007星系なるものの手がかりや記録がないかを探し始めた。

 

(合田町を専門にしてた悪魔の調査記録は……ここか。うわ、全部で20冊ぐらいある……)

 

 本棚にレールで固定された梯子をスライドさせて登り、早速目当ての本を見つける。手始めに4冊ほど掴んで、まずはそもそも先人が宇宙人と接触したことがあるのかを調べる。

 

(先代様は……無いな。吸血鬼と亜人ばっかり。その前も……ん!)

 

 ぱらぱらと索引と目次だけに目を通して1冊を済ませて次へ。そんな彼女は、気になる文言を見つける。

 

 「未知との遭遇•宇宙人との対話」……見てみるか。これだけ変な者が来る町だ、過去に宇宙人の1人や2人来ただろうと空木が思ったのは正しかった。割と早くに、彼女は異星人と接触したらしい先人の記録を探し当てる。

 

「…………………………、全然違うな」

 

 が、内容を読んでみると徒労に終わった。「ボイド星人」なる攻撃的で粗暴な異星人とのコミュニケーションに苦労した、などと書かれている。もしかすれば今よりも古い記録なので、種族としての名前が違ったり、星系の名前が違うなどはあるかもしれない。しかしここまで生態や文化が違うと、流石に違う種族かと諦めた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ボイド星人、ピルポ星人、ベルバロイド……なんだか空木には聞いたことも無いような種族が外宇宙には沢山いるらしい。

 

 こちらでいうタコ•イカみたいなだったり、肌の色以外は人間そっくりだったり、またどう見てもクリーチャー然とした容姿ながら、平和主義な宇宙人が居たり。読み物として見れば楽しいのだが、どれもがピコリコ星人とは結び付かず、空木は途方に暮れる。

 

 気がつけばもう図書館に籠もって6時間が経つ。合間合間で飲み物を飲んだり、久しぶりに親と電話したりして休憩を挟んだりもしたが、あまり進展は無かった。聞き出せるだけのことはポチョムスから引き出したが、いずれのどんな情報にも掠りすらしない。

 

「ん゛ぁ゛〜……だめだ、頭痛くなってきた……」

 

 気晴らしも兼ねて、途中、宇宙関連の本にも手を付けた。しかし、やはり彼に関する有力な手掛かりは無い。仕方がない、やっぱり引退した先輩方を直接尋ねるか独学で調べるかして返す方法を模索(もさく)するしかないかな……。額に冷却シートを貼って、山のように積み上がった書物に目を向ける。

 

 そんなときだった。1、2冊、まだ読んでいない本を彼女は山から見つける。

 

「……遠い星系のお話。ピェク•リュカ人との文通、生態調査……?」

 

 …………………。ピェク•リュカ、ピェコリュコ、ピコリコ……はは、まさか。どことなく響きは似ているが、名称の違う宇宙人との交流を綴った本だ。一応、目を通しておこう。次の巻を取る前に、空木はそれを見た。

 

「……………………!」

 

 SPT006星系•ピェク•リュカ星。

 

 体の手足は退化し、代わりに念動力や思念を相互に交わす事によるコミュニケーション等、超能力に長ける原住民が住む。

 

 塩辛さの強い食べ物や、歯応えのある食べ物を好む傾向にあり、郷土料理はまるでスナック菓子のよう。文明としては、その高いエスパーとしての能力を用いた機械工学が発展しており、主要な工業は自動化が進んでいる。

 

 反面、機械と能力に頼ることが多い歴史を辿ってきたため、肉体強度はあまり高くない。病原菌などから身を守るために基本的には防護服を着ており、手作業による仕事なども不得意なようだ。

 

「……………………。」

 

 偶然、で片付けるには合致する特徴が多い宇宙人だ。関連性があるのだろうか―――たまたま見つけた本のピェクリュカ星人に興味を持ったその時だった。

 

 マナーモードにしていたスマートフォンが震える。誰かが電話をかけてきたようで、画面を見た。相手はマユミだった。

 

 ひとまず本を置いて、空木はテラス席がある外に出る。何かあったのか、相手は焦っている調子だ。

 

「もしもし、空木だよ。マユミちゃんどうかした?」

 

『あっ、繋がった! ……えっと、今、私の家にポチョムスさんを寝かせているんですけど……』

 

「??? どういうこと? なんであの人がマユミちゃん家に……」

 

『あっ、ご、ごめんなさい! あの、えっと』

 

「落ち着きなよ。私は逃げないから」

 

『はい! あの―――』

 

 疲れ目を擦っていた空木へ。緊急を要する案件をマユミは言う。

 

『ポチョムスさんが、熱を出して倒れていたんです。いま、私が看病していて……………』

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 この星の人々は優しい。が、しかし――

 

 これは贅沢だ。間違っても空木殿の目、耳へ入れてはならない私の我儘(わがまま)である。

 

 同族は、居ないのか。

 

 寂しい。ここまで孤独を感じた事は無い……心細いのだな。同じ種族が見知らぬ土地で自分一人というのは

 

「「…………………………」」

 

 ベッドで寝ているポチョムスと、彼が持っていたという日記とを空木とマユミは交互に見る。読み進めるほど表情が曇る空木だったが、エスペラント語の知識がないマユミにも通訳すると、彼女も似たような顔になった。

 

 窓が開く時間は決まっているため、空木は予定の時刻まで悶々と過ごした後に現世に戻っていた。大急ぎで十二月田家まで車を飛ばし、今に至る。

 

 そうだよな。家族が居るんだ、心配だよね―――。見分けが付かないが、日記に挟まっていた家族写真に写るピコリコ星人を見て空木は考える。

 

 伯爵やアグラーヤは「吸血鬼」と人間とは種族が違うが、見た目は人とそう変わらない。フェレスにしたって、別世界出身とはいえ自分やエイムなんかと同じ人種だ。

 

 他の空木の知り合いでも、あそこまで技能や体型などが人型からかけ離れた者はいない。それはつまり、彼がシンパシーを感じられるような者が周りに誰もいないわけで。心細く思っていたのは想像に難くない。

 

「熱ってどれぐらい?」

 

「39.4でした。ただの風邪だといいんですけど……」

 

「なんとも言えないな……もしも、ピコリコ星人の平熱が20度とかだったりしたらものすごい高熱ってことになるし……」

 

 空木の得意な魔法は、いつも使う攻撃呪文と、火を使うものだ。あまり治療や物を治す類の魔法は苦手で、何か壊れたとなったらエイムを呼んで対処している。

 

 だが今はタイミングが悪かった。初めに空木が受けて不快感を感じたポチョムスのテレパシーだが、予想以上にあれはエイムの体に悪影響があったらしく、彼は今魔界に戻って休養を取っていた。止むなく、彼女は応急処置に取り掛かった。

 

 宇宙服を着たまま眠っている彼の体に、3枚の緑の御札を貼る。そこに白いインクをつけた筆で印を書き、空木は癒やしの魔法を唱えた。

 

「平穏の初段・維持。」

 

 ぼんやりと、ポチョムスの体が赤みを帯びたやわらかな光に包まれる。すると、汗を流してうなだれていた彼の呼吸音が落ち着いた。

 

「ポチョムスさんの病気を治したんですか?」

 

「いや、私はこの手の魔法は苦手でさ。「これ以上悪化しない」魔法をかけてあげただけ。いつもならエイムくん呼べば解決なんだけど……今、彼休みでこっちに居ないからさ」

 

「そうなんですか……」

 

「で、さ。ゴメン、マユミちゃんにはちょっと手伝って欲しい事があるんだ」

 

「はい! なんでも言ってください!」

 

「ありがと! ………さっきさ、一緒にこの人の日記見たよね?」

 

「帰れなくて、寂しい、って書いてありました……」

 

「うん。その事なんだけどさ」

 

 空木は持ち込んでいた分厚いファイルから、一枚の札を取り出して言う。

 

「この御札を、マユミちゃんの体の好きなところに貼って欲しいんだ」

 

「……? わかりました」

 

「コレに文字や絵を描いた人と同じ種族に変身できる魔法の御札。つまり、貼ると……えぇと、ピコリコ星人と同じ見た目になるの」

 

「わ、私があのタコさんウインナーみたいになっちゃうんですか!?」

 

「そ。でも、貼ってる間だけ、ね。ご機嫌取りというかなんとゆーか。一人で寂しいらしいから、看病ついでに話し相手になってあげてほしいの……私はやらなきゃいけない事が増えたから」

 

「…………はい!」

 

 少し考え込んだ後、彼女は御札を自身の額に貼った。数秒後、マユミの体が光り始め、その姿を包み込んで隠す。

 

「わ、わ、わ!?」

 

「お、うまくいったかな」

 

 光の塊となった彼女の体が段々と縮む。数分後、体の発光が収まり、変化したマユミの姿が(あら)わになった。

 

〔どうでしょう? 空木さん〕

 

「かっ……!?」

 

〔か? どうかしましたか?〕

 

 話し言葉にエコーがかかったような……不思議な喋り方でマユミが問いかけてくる。が、それよりも、変身した彼女に空木は思うことがあった。

 

(か、かわいい!!)

 

 そうなるように作ったのだから当たり前だが。御札の効果でマユミは、少なくとも空木から見ればピコリコ星人そのものな外見に変わる。

 

 ポチョムスとの違いは、ゆでダコのような赤ではない、鮮やかなオレンジ色の体色だ。ついでに目にも女性らしくまつ毛が生えている。こうした違いが出るあたり、やはり彼は男性なのか?と空木は思った。

 

「す、すごくカワイイ。ぬいぐるみみたい」

 

〔そ、そうですか?〕

 

「ほら、鏡見てみなよ。今のマユミちゃん」

 

〔わっ! ほんとだ!〕

 

 さて、準備が1個終わったな。空木はすぐさま彼女にポチョムスに付くよう言うと、少し離れた場所である場所へ電話をかけた。

 

 ここからが肝心だ……ほんの少しの祈りを込めて、スマートフォンを握る。2コール目で、相手は電話に出てくれた。

 

『はい、こちらカラービア宇宙空港でございます。』

 

「すみません、今から2〜3時間以内に向かいますので、予約が取りたいんです。空いてる席とか、船ってないですか」

 

『少々お待ち下さい―――今出航できるのは……そうですね、ロア級輸送船が空いています。申し訳ございません、現在はこちらだけですね』

 

「う……ろ、ロア級ですか……わかりました。すぐ向かいます。飛び込みの料金は?」

 

『お客様、お名前と、目的地はどちらでしょうか?』

 

「あ! え、えぇと〜深尾 空木と言います。行き先は医療惑星サイラーラでお願いします。あと、人数は私含めた4人で、車も一緒に載せます」

 

『サイラーラですね、かしこまりました。……車両とお客様の運行料金は、合計で片道25000カルセとなります』

 

(たっけぇ!!)

 

『? 何かおっしゃいましたか?』

 

「あ、あぁいえ。すみません、いま持ち合わせが無くて。申し訳無いんですが円かドルで先払いしても良いですか?」

 

『問題ありません。お急ぎなんですよね?』

 

「! ありがとうございます! 無理言っちゃって……急いでそっち行くので。準備しておいて頂けると……」

 

『お待ちしております、よい宇宙の旅を。空木様。』

 

 痛い出費だな……項垂れながら通話を切った。そんな空木にマユミは質問する。

 

〔どなたとお電話ですか?〕

 

「宇宙空港。詳しいことは後でね。とりあえず、この人を病院の星まで送ってあげることにした」

 

〔う、宇宙空港……? 空木さんの住んでる場所には宇宙船とか普通にあるんですか〕

 

「うん、ポチョムスさんみたいな立派な船は無いけどね。安物のプライベートジェットみたいな、粗末な奴が飛行機ぶってるだけのちんまい空港だよ」

 

 さて、と。準備3つ目、行くか。空木はハンガーにかけていた薄手のコートを羽織る。

 

「ちょっとフェレスと面会してくる。マユミちゃん、ポチョムスさんのことお願い」

 

〔ふぇ、フェレスさんですか!?〕

 

「うん。ま、心配しないで。すぐ戻るからさ」

 

 足早に、彼女は十二月田家から出ていった。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 マユミの家からそう遠くないこともあって、収容所には10分もかからず到着する。時間が無いので駆け足で中に入り、速やかに面会手続きを済ませると。空木は紙袋にある物を持ってフェレスと対面した。

 

「つくづく思うわ。貴女とは「波長が合わない」ってね、レディのコーヒーブレイクを邪魔するだなんて、いい度きょ」

 

「長話する気はありません。時間が無いんです、フェレスさん」

 

「がっ……!? に、2度ならず3度まで……ふん、まぁいいわ。何よ、かしこまっちゃって」

 

 ガラス越しの相手がまた性懲りもなく言いたい放題言いそうだったのを、無理やり遮って空木は話した。

 

「単刀直入にいいます。これから一仕事あるんですが、手伝ってください」

 

「嫌よ」

 

「言うと思ったよ」

 

「あら、話が早いわね。それじゃあまたね〜」

 

「待ってください。私は貴女が来てくれた場合の報酬も用意しています」

 

「………………ちゃっちゃとすませなさいよ」

 

「私から貴女と面会したちょうど1週間前ぐらいに、とある宇宙人の方がこの町に不時着しました。乗り物も壊れてしまって、今どうにか修復作業に取り掛かっています。直るまで滞在して頂くことになったのですが、彼は今、熱を出して倒れたんです」

 

「それで?」

 

「私の仕事は、迷い込んできた者の犯罪を防止したり、捕まえたり、保護して元の世界へ送り返す事です。その際、事の大きさや送った種族によって魔界から報酬を得ています」

 

「……………………」

 

「今回のような「宇宙人」を丁重におもてなししてお繰り返した場合、報酬としてこちらのお金で500万円出るから。分け前は渡します……どうか」

 

 さて、1個目のカードは切ったぞ。どう出る? 空木は頭を下げて水を飲む。その下では、フェレスの顔を睨んでいた。

 

「その報酬の80%、私に譲渡しなさい?」

 

「ふっぐ!? 冗談じゃない!!」

 

 手心ってものが無いのかこの悪魔は?? 空木は思わず飲んだものを吹き出しそうになった。

 

「あら、それじゃあやっぱりバイバイ」

 

「わかった、40%! それ以上は……」

 

「OK、60%ね〜♪」

 

 なんて金にガメつい女だ……。軽い頭痛を覚えつつ、空木は説明を続けた。

 

「フェレスさんには車を出して欲しいんです。貴女のロールスに私とその宇宙人、あとマユミちゃんの4人でまずは私の魔界に行きます。そこに宇宙船の空港があるので、そのまま私が予約した船に車ごと乗り付けてください」

 

「ふ〜ん……この私をタクシーにしようっての?」

 

「……もう一つ、お金以外の報酬もありますよ。こういう物ですけど」

 

 やっぱりまた吹っ掛けてきたな。そう思った空木は、この女への切り札を見せた。

 

 彼女は紙袋から黒い箱を取り出す。それは、フェレスが喉から手が出るほど欲しがっていた「アレ」だ。

 

「!? ちょ、ちょっとそれどこで!」

 

「貴女の隣の伯爵様から頂いたんですよ。貴女と違って彼は信頼されていますから、こういう差し入れが届くそうです」

 

「ふ、ふふ! こ、この私を物で釣る気なのね……」

 

 おいおい声が震えているぞ。どうやらよっぽど食べたかったみたいだな。空木が出したのは、フェレスがアツく語った例のバウムクーヘンだ。

 

「ごちゃごちゃ言わずについてくるならこれも渡しますし、刑期も縮めて、ついでにお金もあげます」

 

「…………………………」

 

「…………断ったらまた直したての車壊しますよ」

 

「ちょっとぉ!? まだ何も言ってないわよ! し、しかもなんで断ったら壊すのよ!」

 

「なんかムカついたから」

 

「む、む……ぐっ!」

 

 俯いて、フェレスはぷるぷると震え始める。そんなに頭下げたくないのか……。空木は早く決めてくれないだろうかと、目を瞑って椅子に深く腰掛け直した。

 

 

 

 




なんだか毎回1エピソードが4話構成になりそう

見たいお話の大まかなジャンルをお選びください。1番多いやつがフワッと増えます。

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