絶剣と闇騎士でヒーローアカデミア   作:name future

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お待たせしました。今回は講評とクラスと少しのコミュニケーション回です。

ではどうぞ。


絶剣と闇騎士の講評

 

 自分達の勝利を知らせるアナウンスが響く。自分達の勝利を告げるアナウンスが響き、一息つく隼人に木綿季が歓喜の声を上げながら駆け寄る。

 

 

「やったー!!隼人!!勝ったよー!!」

 

 

元気よく声を上げながら、木綿季は隼人に正面から抱きついた。隼人はそれを受け止めるとすぐに木綿季に離れるように促す。

 

 

「分かったから少し離れてろ。治すから。」

 

「はーい。分かった。」

 

 

隼人の意思に気づき、木綿季は素直に離れた。離れたのを確認すると、

 

 

【必殺リード!ジャアクフェニックス!】

 

 

【月闇必殺撃!】

 

 

【習得一閃!】

 

 

闇黒剣から淡紫色の炎が放出され、それを振るうと炎が轟と爆豪を包み込んだ。すると彼らに壁や床に叩きつけられた時に付いた傷や外傷はないが斬られた時の痛みがが引いていく。

 

 

「……っ…ああ?」

 

「……俺は……?」

 

「起きたか?」

 

 

2人の意識が戻ったかのを確認すると隼人は声をかける。轟と爆豪は2人に負けたことを確信した。

 

 

「怪我を治した。運ぶのが面倒だからな。講評聞いてけ。行くぞ。」

 

 

隼人はそう言うとモニタールームへ歩いて行った。

 

 

「隼人はああ言ってるけど、なんだかんだ優しいからね。やり過ぎちゃって心配してただけだから。気にしないで。」

 

 

木綿季は2人に説明すると、隼人の後を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では講評を始めよう!」

 

「今戦のベストは敵チームってことだけど……正直ここまでとは私も予想外でね。実はまだちょっと驚いてるんだよね。……それはそうとなぜ今回はチームがベストなのか理由は分かる人いるかな?」

 

「はい。先生」

 

 

オールマイトの問いかけに手を挙げたのはまたしても八百万だ。今の数秒で調子を戻したのか、オールマイトがいつもの様子で八百万を当てて説明を促した。

 

 

「はい、またしても八百万少女だね!では、説明を頼むよ!」

 

「はい。ですが、私も参加した者ですので完全理解は出来ません。なので今回は、神村さん側の説明を交えて評価したいのですが、お2人はよろしいでしょうか?」

 

 

八百万は隼人と木綿季のほうを見てそう答える。

 

 

「いいぞ、俺も言いたい事があるしな。お互い意見を言いつつ講評しよう。」

 

「ありがとうございます。今回の試合は敵側、つまり神村さんと紺野さんの完全な作戦勝ちと言えるでしょう。お二人はヒーローチームの方々の個性からある程度の予測をして戦法を組み立てていたように見えます。合っていますか?」

 

「完璧だ。そう、今回俺らのチームはある程度相手の個性が把握出来ていたからな。そしてお前らのチームがどう動くかも大体予測出来た。木綿季には俺のワープで不意打ちしてもらうために待機してもらったんだ。」

 

 

八百万の案を了承し共に評価をする。八百万の考えに答え、隼人も自分たちが立てていた作戦の内容を述べていく。そこに八百万は1つの疑問が生まれた。

 

 

「失礼。我々の動き、つまり我々が全員で動くことも予測されていたのですか?しかしなぜ?」

 

「どうせ爆豪がいる時点で策を立てても言うとおりにするわけがないからだ。さしずめ、一人で突っ走って皆がそれについていった形だろ?1回戦からそうなると予測出来た。」

 

「っ!」

 

 

隼人は1回戦の戦いで爆豪の動きを見ていた。会話は聞こえないが飯田や爆豪の口の動きから大体の会話を把握し、爆豪のようなプライドが高過ぎる人物が他人の指図を受けるはずがないと予想。今回の作戦も爆豪が先行、周りがその後をついていくことを前提で考えたのだ。

 

 

「とにかく俺たちが最初にやることは、個性が厄介で対処が難しい八百万、そして物間のどちらかを俺が最初に捕獲して、そしてそのまま俺の闇で移動した木綿季の不意打ちで残った方の捕獲する。その後は俺が“こぶた3兄弟”で増やした分身でこの中で戦闘能力が高い方の爆豪と轟を分離させ、俺と木綿季で残った奴らの制圧。それまでに分身が倒していなかったら再び向かって2人で相手する。―――これが俺たちが考えた策だな。」

 

「鉄哲君が物間君のガードに入っちゃうとかの少し予定が変わったこともあったけど、後はこの作戦に事が進んだからね。ある程度の想定外でも問題なかったんだよ。」

 

 

そう言って、自分達の作戦の概要説明を締めくくった隼人だが、クラスメイト達を見渡して気づく。多くの生徒が驚いたような表情を浮かべていたのだ。まさか、あれだけの短時間でここまでの作戦を思いついたのもそうだが、今回の試合の動きのほとんどが2人の作戦通りに進んでいたこと、相手チームの個性や心理をよく理解し、殆ど全てが彼の掌の上だったことだ。2人を相手したほとんどはそれをよく理解しており、完全に踊らされていたのだと悔しさ半分驚愕半分で絶句していた。

 

 

「因みに、爆豪さんが作戦通りに動いたとして、その場合の作戦もありましたの?」

 

「そんなことがあるとは思えないが、仮に爆豪が作戦を聞いたとしても、ああいう周りにちやほやされてきた人間は少し煽っただけですぐに癇癪起こすだろうから、分断何て簡単にできる。爆豪のおかげで、作戦が立てやすかったよ。お前の行動は分かりやすいからな。ガキを相手するようなもんだな。」

 

「……っ」

 

 

八百万の質問に隼人は爆豪を見ながら煽りを混じえて発言する。爆豪は何か言おうとするが、隼人が言うことが事実なために何も言い返せない。隼人の言うとおり爆豪が作戦通りに動いても、戦闘中に煽られたらすぐに相手を叩き潰そうとしていただろう。隼人は爆豪の性格を完全把握した上で行動して追い詰めたのだ。

 

 

「1つだけ言っておこう。今のままじゃあ、一生俺にも木綿季にも勝てない。それが嫌なら、とにかくその腐った性根と何か自分の思い通りに行かない度に癇癪を起こすのを直せ。それができればマシになるだろう。……それはそうとお前もだ轟。」

 

 

そう淡々と告げると小さく息をついて話を締めくくると、爆豪から身体ごと視線を背ける。続けて隼人は、轟の方へ顔を向けると轟に指摘する。

 

 

「ハッキリ言おうか。今回このチームで一番問題があったのはお前だぞ轟。何度も単純な攻撃を繰り返して、大雑把で芸も工夫も無い。あんな動き、すぐに見切られてしまうぞ。んで、煽られたらすぐに否定するように氷結した。それで爆豪のが巻き込まれそうになったな?分かってるか?いや、そんな訳無いか。最初の氷結も、爆豪と共に離れたときも一切協力していない。()()()()()()()()()()が分かる訳が無いか。」

 

「んだと……。」

 

 

最初は隼人の指摘を聞いていたが、最後の言葉にカチンときたのだろう。ここまでずっと黙っていた轟から怒り混じりで言葉が漏れる。

 

 

「爆豪も一人で突っ走ったじゃねぇか。それは俺だけの問題じゃねぇだろ。」

 

「お前よくそんなこと言えるな?俺が拘束したときに爆豪に助けられたくせに。まぁ爆豪的には自分の拘束を解くために行ったんだろうが、あんな形でも爆豪はお前を助けた。爆破を防ぐように促した後での行動だ。正直あそこは手荒だが最低限の協力はしていたな。……でも、お前はどうだ?一回でも()()()()()になるよう動いたか?」

 

「………。」

 

「あの場面だと明らかにお前が足を引っ張った。自覚あるだろ?できない事を互いに補い合う事はチーム戦において一番重要な事だ。オールマイトみたいに1人で……って思っているなら、ぶっちゃけ自信過剰も良い所だ。しかも全力を出さずにやろうとは、人を舐めるのも大概にしておけ。」

 

 

轟が反論するも隼人は正論で返す。何も言い換えない轟にさらに追い打ちをかけてるように説明していくと、突然隼人は轟の胸ぐらを掴み上げて持ち上げる。その行動に周りも驚き、隼人の顔を見ようとすると、彼の顔を見た者だけでなく、その場にいたほぼ全てがビクゥッと体を震わせる。

 

 

「……ぐっ!?」

 

「「「「……ッッ!!?」」」」

 

 

苦悶の声をあげる轟の顔に自分の顔を近づけた隼人。その顔はニコリと小さく笑っているが、瞳からはハイライトが消えており一切笑っていない。彼の周りの空気も修羅のオーラによって重くなり、顔を見なくとも、今彼は激怒してるのが分かる。どこからかドゴゴゴゴゴゴと効果音が聞こえてきそうなほどに隼人の顔の凄みが増しつつある。もはやその笑みからは地獄の閻魔大王を感じられた。

 

 

「お前が誰を恨んでいようと妬んでいようと勝手だ。そんなの俺らには一切関係ない。全部お前の問題だ。………でもな、授業であっても、全力で挑んでいるやつがいるんだぞ?訓練であっても、本気で勝とうとしている奴がいるんだぞ?分かるか?………

 

 

 

お前が今日したのはな、この場にいる全員に対する侮辱だ!雄英に入って半端やってんじゃねぇよ!全力でやんなきゃ、ヒーロー目指す意味なんてねぇだろうが!みっともねえ試合すんじゃねえよ巫山戯んな!!!

 

「っ!」

 

 

最初は優しくも圧を掛けるように怒気のこもった低い声で話していたが、話している内に怒りが湧き上がってきたのだろう。顔からはだんだんと笑みが消えていき、変わりにその顔からは激情を滲ませていた。最後には怒鳴るように叱責すると、そのまま轟を荒っぽく突き放す。轟はよろよろと後ろに蹌踉めいて尻餅をつくと視線を床に落としたまま魂が抜け切ったかのような様子で座り込む。それを見下ろしながら、隼人は更に告げた。

 

 

「……テメェ、やる気無ぇんだったら、とっとと雄英から出てけよ。お前なんかが推薦枠なんて勿体無さ過ぎる。この中じゃあ雰囲気的にお前が一番強いと感じて期待したのに、期待外れだな。」

 

 

吐き捨てるように轟に告げた。轟は何も言わない。隼人に散々言われたことがきたのだろう。講義する余力が、今轟には残っていなかった。

轟に怒りをぶつけて少し落ち着いた隼人は、周りの空気を戻すため軽く咳払いしてから、

 

 

「………すまない。取り乱した。この2人以外だと、特にこれと言って悪いところは無かったかな。八百万が切島と考えた奇襲も良かったし、骨抜の柔軟な対応で戦線離脱させる判断力、そして骨抜の考えをすぐに読み取った取蔭と物間もいい動きをしていた。鉄哲もすぐに捕まったが守るための行動ができていたからダメダメという訳じゃないから自身持って良いぞ。市民を守ってこそのヒーローだからな。」

 

「し、しかしその奇襲も神村さんに破られてしまいました……。私もまだまだ詰めが甘いですわ。」

 

「そんな否定しなくてよくね?あたし何て、木綿季に手も足も出なかったのに、捕らえたってだけでも十分じゃん。」

 

「俺はほとんど善戦出来なかったからさ。自身持って良いよ。神村もありがとな。」

 

「八百万の作戦無かったら、俺そのままやられてたかもしんねぇからさ!あんがとよ!」

 

「……ホントによく見てるね。それだけ余裕だったてことかい?」

 

「俺全然活躍してねぇから不安だったけどしっかり言ってくれた!あんがとな!!」

 

 

彼らに自身の殺気の余波を当ててしまったことを謝罪すると隼人は講評を再開する。爆豪や轟と違い、すぐに改善させるべき問題点がない6人は今回の訓練中の動きで良いところを挙げる。隼人の評価に対して否定的になる八百万を、取蔭と骨抜は前向きに受け取るように促す。切島は八百万が作戦をたててくれたことに、鉄哲は自身はあまり活躍できずに退場したことを気にしていたが、しっかりと講評してくれた隼人に感謝する。物間は皮肉なことを発言するが内心は隼人の講評を聞き入れてる。

 

 

「後は……そうだな……木綿季は何かあるか?」

 

「ん?僕?そうだなぁ?僕が言えることは、やっぱりチームを作って少人数で対処するべきだったかなってことかな。何人かのチームにして、八百万さんの個性でインカムを作る。最初のチームがある程度戦ったら、一旦離脱して情報共有。次に別のチームが戦闘するでしょ。そして、もう一回離脱して情報共有。これをを何回か繰り返せば、僕達の個性をある程度の把握が出来るから、対策もたてやすくなるじゃん。」

 

 

隼人は自身だけでなく木綿季の意見も聞くために木綿季に話を振る。木綿季は数秒考えると自身の意見を言う。木綿季が考えたのはヒット&アウェイで情報を暴いていく作戦だ。取蔭や物間といった厄介な個性がいるからこその作戦だ。相手に個性を多用させるのも、離脱もお手の物だろう。

 

 

「それに、こっちは皆の個性をある程度知っているから対処できるけど、そっちは僕達の個性をほとんど把握してないじゃん?ゲームでもさ、何してくるか分からないボス相手にぶっつけ本番で挑まないでしょ?」

 

「……確かに。私達は、神村さんと紺野さんの個性を完全に把握出来ていない。しかし、御2人は我々の個性をある程度把握している。それだけでも我々を対処するには十分……」

 

「相手のことをよく知らないのに味方人数が多いと、その分相手だけじゃなくて味方にも気を使わないといけないから相手に集中出来ないでしょ。鉄哲君のときも、物間君を守るのに気を使っていたから隼人に捕まったじゃん。」

 

「……確かにな。あん時は物間を守んなきゃと思って、神村のこと一瞬考えてなかった。」

 

「……。」

 

 

木綿季の話を聞いて八百万が納得する。更に付け加えると鉄哲もその説明を聞いて少し曇った表情をする。物間も鉄哲程ではないが自身が注意を怠ったことで鉄哲が捕まったことを悔やんでいるのだろう。表情が少し歪んでいた。

 

 

「情報は立派な武器になるんだ。それは、人数差なんて簡単にひっ繰り返せるほどの強力なものだ。それに、プロになったら個性が把握されるなんて当たり前だ。敵は自分の事を知っている前提で活動するんだぞ。」

 

「敵の個性や周りの状況とかが分からないときは、とにかく今の自分に出来る情報収集をすることが大事だと思うな。分かることが多いと、その分しっかりと考え込まれた良い動きが出来るはずだよ。」

 

 

最後に2人は講評のまとめを聞き、素直に感心した者や畏敬を抱いた者、多種多様の反応を見せる中、刺激を受ける者もいた。

オールマイトは、第一試合の時と同じように「また思ってたより言われちゃったよ……」と微妙な表情を浮かべながら顔を引き攣らせそう小さく呟いたのだ。

 

 

「ではオールマイト先生。自分達は終わりました。」

 

「え!?ま、まぁ…その通りだね!うん……!……だけど、私からも少し聞きたいことがある。君がやっていた自傷行動と、その後の蘇生?についてだ。君はあのとき、一体何をしたんだい?」

 

突然隼人がオールマイトに話を振るのに驚きながらも、オールマイトは先程隼人が行った自殺について皆の思いを代弁する形で隼人に質問をする。

心なしかその話を始めたオールマイトを見るクラスメイトたちの眼差しが期待に満ちていた。

 

「…それはこれの力です。ディープフェニックスは、『不死鳥』の力を宿したワンダーライドブック。炎、そして鳥を模した炎で攻撃、自己再生、蘇生することが出来る。俺が蘇ったのは、闇黒剣に蘇生能力を纏わせていたからだ。」

 

 

 隠す理由も無い隼人はそれを肯定し、ディープフェニックスを取り出して説明した。その強力な能力にクラスメイトたちが一気にざわめいた。だが、その中でオールマイトは大きな声で隼人に注意を促す。

 

 

「なるほど理解した!しかし神村少年!いくら蘇生するからと言ってもあのやり方はNGだ!惨烈な戦闘はヒーロー活動としては正しくとも、見る者に凄惨さを印象づけてしまうから、自分の命を投げ捨てるような行為は絶対しないように!」

 

「分かっていますオールマイト先生。今回はあくまで全員に説明のための自殺ですので、軽々しくはしないよう肝に銘じています。」

 

 

 隼人は頭を下げてその言葉を受け入れる。トップヒーローとして、そして1人の教師として放たれたその言葉には強い説得力があった。オールマイトも素直に聞き入れた隼人に一安心し、心の中でホッと息を吐く。

 

 

「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我も無し!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば。皆は着替えて教室にお戻り!」

 

 

 オールマイトはそう言い残して颯爽と走り去っていった。

 

 

 

「オールマイトスッゲェ!」

 

「何であんなに急いで……」

 

「かっけぇなぁ」

 

「……?(何か慌てているような感じだったが……何でだ?)」

 

オールマイトの余りの速度に単純に驚いたり、なぜあんなに急いだのか疑問に思ったら、その後ろ姿にかっこいいと思ったりとオールマイトに対してさまざまな事を思いながら、彼らはゲートを抜けて更衣室へと戻っていく。

 急ぐように走り去っていった。実際、オールマイトの活動時間は授業時間でギリギリであった。落ち込む爆豪を気にしながらもオールマイトは医務室へと急ぐ。

 

 

 隼人は男子と共に更衣室に向かおうとすると、一佳が隼人の前に移動して、右手で拳を構えていた。

 

 

「隼人。」

 

「……」

 

「歯ぁ食いしばれ。」

 

「……はい。」

 

 

 一佳が右腕を振り被って、全力で隼人をぶん殴った。

 

 

「おお!?」

 

「け、拳藤……さん?」

 

「え?え?どゆこと?」

 

 

 泡瀬や回原がややパニックになり、円場も一佳の行動に純粋に驚いていた。

 

 

「二度するなって言ったよな?」

 

「……すまん。さっきも言ったが今回は教えるためにやっただけだ。やりすぎたと自覚してるが、念の為、皆には知っておいて欲しくてな。許してくれ。」

 

「………ホントに悪いと思っているなら別にいいよ。でも、今回だけだぞ。次は無いから。というか、絶対やめろよ。」

 

「分かってる。」

 

 

一佳は隼人に怒っていた。話の内容から、先程やった自殺のことのようだ。確かに目の前で同中の親しい友人が説明のためとはいえ、死んだのだ。一佳が怒るのも分かるが、彼女が怒っているのは、自殺したことだけでは無さそうだ。木綿季はクラスメイトに事情を説明する。

 

 

「実は隼人、一回、一佳前でアレをやったことあるの。」

 

「アレって、あの蘇生のこと?」

 

「うん。敵に襲われた時にね。と言っても、一佳の前でやったのは右の肩から思いっきり右腕を引き千切ったことだけど、その時に一佳がすごい発狂しちゃってね。それで無茶な蘇生、………自分をわざと傷つけるような手段での蘇生は控えるようにしてって怒ってね。それで今怒ってるの。」

 

 

木綿季の説明に一同が納得する。確かに今回は一回死んでからの蘇生だ。しかも自分で腹を刺して切腹状態からの爆発。自ら手脚を引き千切るのと同じ、否、死んでいるからそれ以上だろう。一佳があれほど怒っているのも理解できる。今回はクラスの説明をしやすくするための自殺のため、隼人自身も今後はとてものことがない限りはしないだろう。隼人もクラスに説明すると皆は今度こそ更衣室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、神村おめぇ本当強いな!!あんなに圧倒的なの初めて見た!!」

 

「それな!しかも、轟の氷もスパスパ切っちまうしヤベェなんてもんじゃねぇよ!」

 

「紺野もそうだが……おめぇら結構容赦なく斬り掛かっていてすげぇ格好良かったぜぇ。」

 

「木綿季ちゃんもすごかったよ!爆豪君の攻撃を軽々避けてカウンターでバッサバッサと斬っていくのがすごい綺麗に決まっていたよ!」

 

「一つ一つのスキルもアメイジングでビューティフォー!とてもステェキでシタ!」

 

 

更衣室で着替えを終え、A組B組の親睦会も兼ねて今回の戦闘訓練の反省会をするためにA組の教室に集まっていると回原、上鳴、鎌切が感心混じりにそう呟いた。葉隠と角取も興奮混じりで発言する。特に鎌切は個性が“鋭刃”と隼人と木綿季とは同じ刃系統なので興味があった。

今回の訓練での見どころは、やはりというか隼人達の試合だ。あそこまで凄まじい戦闘、コンビネーションはあまり見たことがない上、同世代であそこまで戦えるものがいた事に驚きを隠せなかったのだ。それに加え、推薦組という一般通過組とはレベルが違う4人をたった2人で圧倒したという事実が、尚のこと彼らを湧き上がらせたのだ。

 

 

「確かになぁ!あんだけ強ぇと普段どんなトレーニングしてんのかとか気になっちまうぜ!」

 

「……歴戦の猛者の強さの秘密……確かに興味湧く題材だな。」

 

「猛者……」ソワ

 

 

砂藤に続も黒色もそう呟いた。黒色の言葉に常闇が反応する。そんな中、木綿季の机で本を読んでいた隼人はそれを閉じて優しく答える。

 

 

「…俺と木綿季は親戚でな。基本は俺の母さんにお願いして実践訓練しているよ。一応プロヒーローだから自分の所有地内なら個性使っても大丈夫だしな。」

 

「え!?神村のお母さんプロヒーローなの!?」

 

「うん!“ワンダーヒーローLibrary”、【桃焔楼】の女将“神村紙本”さんっていえば分かるかな?」

 

 

その名前を聞いてほぼここにいる全員が神村に目を向け、驚きの表情を見せた。今木綿季が言った名前は、一度は聞いたことがあるであろう名前だからだ。

 

 

「Libraryって、あの!?」

 

「元No.6で10年前に引退した女性ヒーロー!?」

 

「【桃焔楼】って確か100年位前から続いている温泉旅館だよな?そう言えばLibraryの実家でもあるって聞いたことある。」

 

「ニュースで一回その人見てるけど、あの人が神村のお母さんかぁ。」

 

 

“Library”と【桃焔楼】、日本でも有名な2つの名をこの場所で聞くことになるとは誰が予想しただろうか。特に当時No.6だったヒーロー“Library”の引退は誰もが驚いたニュースだった。今の時代は副業をしているヒーローも多く存在する。昨今の日本はヒーローが多すぎる“ヒーロー飽和社会”。ヒーロー業一本だけでやっていくには大変な時代だ。そんな時代にトップ10に入る程の実力派ヒーローが実家のためにヒーローを引退をしたのは今だと考えられない行動だ。

 

 

「母さんは元々、ずっと前から旅館の引き継ぎはしていたんだけど、ヒーローの仕事が多くて中々旅館にいる時間が無くて少し悩んでいたんだよね。最近はリューキュウとかホークス自分より優秀な若手実力派ヒーローが増えてきたから、『私も、いい加減桃焔楼のために力を入れたいから!』って引退を決めたんだってよ。」

 

「へぇ。そういえば君が変身する時も本を使っていいるね。そこは少し似てるかも。」

 

「確かに、把握テストの時と違う姿に変身するし……結局神村君てどんな個性なん!」

 

「それには僕も興味がある!君が使っている小さな本は一体何なんだ?」

 

 

 物間が隼人の個性の特徴、戦闘中によく使っていたライドブックの存在を改めて認識すると、それに合わせて入試や戦闘訓練の姿に変身した隼人の個性を知ろうとグイグイと物理的に押し寄せてくるクラスメイト。

 

 

「分かった、分かった。話すから落ち着け。」

 

 

 苦笑いを浮かべて両手を頭上に上げ、降参の姿勢を取った。話すと言っても流石に全ては話せない。なので、この世界で登録されている“個性”として話すことにする。

 

 

「俺の個性……名前は暗黒剣。闇の力を纏った聖剣とその力を発揮する本を使える。」

 

「「闇の力………」」ソワッ

 

「2人でソワッとすんな。」

 

「本の力って、具体的には?」

 

 

 隼人の説明を聞いてソワッとなる中二病コンビにツッコミをいれる泡瀬とハテナを浮かべる芦戸。詳しく説明するために、隼人はジャアクドラゴンとニードルヘッジボック、ピーターファンタジスタのライドブックを取り出し机に並べる。そのうちのジャアクドラゴンを手に持ちクラスに見せる。

 

 

「それって、よく使っている本だよな?」

 

「そ、これは“神獣ジャアクドラゴン”の力を宿しているライドブックだ。」

 

 

そう言うと隼人はジャアクドラゴンのページを開いて起動させる。

 

 

【かつて世界を包み込んだ暗闇を生んだのはたった1体の神獣だった…。】

 

 

「いつ聞いても敵っぽい朗読だな。」

 

「ダークヒーローと呼べ。これが暗黒剣と一番相性が良いライドブックなんだ。そして………」

 

 

上鳴の感想に隼人がツッコミをいれると続けてニードルヘッジボックとピーターファンタジスタのページを開く。

 

 

【この弱肉強食の大自然で、幾千もの針を纏い生き抜く獣がいる…】

 

【とある大人にならない少年が繰り広げる、夢と希望のストーリー…】

 

 

「一つは聞いての通りピーターパン、もう一つはグリム童話のハンスハリネズミぼうやと哺乳類図鑑で見たハリネズミをモデルにしたライドブック。“かつて”が神獣、“この”は生物、“とある”は物語で各々に対応する伝承を封じ込めている。この本は自分が今まで読んできた本を元にして作成が出来るんだ。」

 

 

説明しながら隼人は一部を除いたワンダーライドブックを机に出現させる。

 

 

「これが現状俺が持っているワンダーライドブックだ。」

 

「結構あるんだな。」

 

「物語すげぇ多いのに生物少なッ! 2冊だけかよッ!」

 

「生物は意外と本にするは難しいんだぞ。」

 

 

隼人が見せたライドブックの量に驚く泡瀬。物語と生物の量の差に困惑する瀬呂に隼人は私情を説明する。

 

 

「さるかに合戦でさるかにウォーズ。一寸法師で一寸武士とかさ………なんか元ネタからかけ離れてるのないか?」

 

「マジじゃん!月の姫かぐやんに西遊ジャーニーとかはギリギリ分かるけど、おしゃじぞうさんとか、お地蔵さんはおしゃれしてないじゃん。」

 

「ブレーメンのロックバンド?音楽隊じゃないの?」

 

「絵本でも図鑑でも良いと言う事は、読んで知る度に強くなると言う事ですか。それに………これは中国の神怪小説の“封神演义”(ふぇんしぇんやんい)が元ですね。」

 

「まじで?神村って中国語とか読めるのか?」

 

「海外文学も好きだから。一度原文で読んでみたいって思ってたから、その時に母さんと勉強した。一応一通り読めるぞ。“アラビアンナイト”とか“ハムレット”は特に読んでいたな。」

 

「て事はエロほ「ケロッ」ブヘェッ!?」

 

 

 元ネタと何かが違う事にツッコむ骨抜と取蔭。ブレーメンのロックバンドというパワーワードに疑問を抱く耳郎。封神仮面演義を手に持ち、隼人が作ったライドブックについて考えを巡らせる八百万。八百万の言葉に反応して隼人に質問する鱗とそれに答える隼人。皆それぞれの反応を示していた。峰田は何か言おうとするが蛙吹が舌ビンタで遮った。

 

 

「これ全部使いこなせるのって結構大変そうだなぁ。そう言えば、神村と紺野は一緒に特訓してるんだよな?どっちが強いとかあんのか?」

 

「それはy「隼人だよ。」……木綿季。嘘つくな。そんなわけ無いだろ。」

 

「嘘じゃないよ。隼人は僕より全然強いよ。間違いなく、そう言える。」

 

 

円場の素朴な疑問に隼人が答えるのを遮るよに木綿季が言う。隼人は木綿季の答えを否定するが、木綿季は真剣な表情で答える。これだけでも2人は信頼しているのが感じ取れる。

 

 

「…おい爆豪、ずっとそこに聞いていねぇで、お前も来いよ。気になってんだろ?神村の個性。」

 

「…………。」

 

 

切島が自分の席からずっと隼人と木綿季のことを見ていた爆豪に声をかけるも、彼は暗い表情のまま無言で鞄を持って他の者達の制止も聞かずに教室を出てしまった。

 

 

「おいっ!……って、あぁ、帰っちまったよ。……試合のこともあったし、まぁいいかってあれ?轟ももう帰るのか?」

 

「悪いな、用事がある。」

 

「おうそうか!じゃあ、また明日な!」

 

「……ああ」

 

 

そう短く答えて轟も帰ってしまった。

 

 

 

そんな時、教室の扉が開かれ外からボロボロのコスチュームのままで更には右腕をギプスで固定している緑谷がすれ違いで入ってきた。

 

 

「おお!緑谷来た!おつかれ!」

 

 

最初に気づいた切島を筆頭に何人かが彼の元へと集まっていった。そうして急に囲まれて慌てる中、チームだった麗日や庄田も彼に気付き近づいていった。そして一言二言話した緑谷はすぐに教室を飛び出していった。聞こえた会話から察するに爆豪の後を追ったのだろう。

 

 

「………あいつあの怪我で向かったのか。」

 

 

隼人はそう呟くと席を立ち、ライドブックをしまうと扉を開けて教室から出ようとする。

 

 

「隼人?」

 

「緑谷の怪我治す。少し行ってくる。」

 

「あ、じゃあ僕も行く!」

 

「……怪我治しに行くだけだぞ?それ以上は何もしないぞ?」

 

「だったら付いていっても問題ないでしょ?ただ、隼人に付いていきたいだけ。ダメかな?」

 

「…………分かった。好きにしろ。」

 

「勝手にしま〜す!」

 

 

隼人が緑谷の怪我を治しに向かおうとすると木綿季も同行しようとする。隼人は疑問を投げるが木綿季の気持ちは変わらない。断る理由もないため隼人は木綿季と共に向かうことにする。2人はそんな会話をしながら緑谷の後を追いかけて行った。

 

 

「……ねぇ一佳、あの2人付き合ってるの?戦闘訓練の時もそうだけど妙に距離近くない?」

 

「付き合って無いよ。それに、あれがいつも通りだから今の内に慣れといた方良いよ。」

 

「どんな時でも共にいようとするのは仲の良い証。仲良き事は素晴らしいことです。」

 

「ケロッ。確かにそうね。それに、神村ちゃんと話してる時の木綿季ちゃん、とっても楽しそうにしているわ。」

 

「仲良しさんやねぇ。」

 

 

そんな仲結ばしい光景を見ていた取蔭の疑問に一佳が少し呆れ気味に答える。塩崎が2人の仲を褒めていると蛙吹と麗日がそれに同意する。遠目で見ていた芦戸と葉隠は「アオハルだぁ〜!」と興奮している。その様子を少し離れた席で見ていた峰田は血涙を上げながら殺気に満ちていた。

 

 

「……ちくしょう……やっぱイケメン何か滅んじまえ……っ!」

 

「峰田落ち着け。まぁ羨ましいけど、お前じゃ一生無理だ。」

 

「何であんなボクっ娘美少女と仲良いんだよ……っ!胸は無いけど腰周りや尻から脚の曲線は完璧で舐め回したいのに………っ!」

 

「最低かよ!」

 

 

血涙を流す峰田を静止させようとする上鳴だがその程度で峰田は止まらない。峰田の堂々としたゲス発言に砂糖がツッコむ。その様子を見ていた女性陣は心底侮蔑の視線を向け、男性陣はなんとも言えない表情になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷を追って、階段を降りて玄関に出た隼人と木綿季は、正門に続く通路で緑谷と爆豪の姿を見つけると、緑谷が爆豪に話しかけているのを目撃する。2人は、話が終わるのを待っていようと下駄箱の影に隠れて二人の会話に密かに耳を傾ける。

 

 

「———僕の個性は、人から授かった“個性”なんだ。」

 

「……?」

 

「……っ!?」

 

「……えむぐぅ!?」

 

「落ち着け!」

 

そんな言葉が2人の耳には確かに聞こえた。

 

爆豪は緑谷の言葉に彼を睨んだまま、何を言ってんだこいつはと言わんばかりの表情を浮かべる。だが、その一方で、隼人は彼の言葉に密かに大きく目を見開いて、驚きの声を上げようとする木綿季の口を急いで塞いだ。木綿季も突然のことで驚くが、すぐに落ち着くと彼の手をゆっくりとおろして緑谷の話を聞く。そんな2人の存在に気付くわけがなく、緑谷はとにかく必死に言葉を紡ぐ。

 

 

「誰かからは絶対言えない!言わない……でも、コミックみたいな話だけど、本当で……!」

 

「…………!?」

 

「おまけにまだ楽に扱えもしなくて………全然モノに出来てない状態の“借り物”で……!だから……使わず君に勝とうとした!けど結局勝てなくて、それに頼った!僕はまだまだで……!だから———!」

 

 

爆豪と目を合わせず視線を下へ俯かせたまま、必死に言葉を紡いでいく緑谷に爆豪は青筋を浮かべ、歯を食いしばりながら怒りに震え始める。そして、怒りのままに叫ぼうとした瞬間、緑谷がバッと顔を上げて試合の時にも見た強い意志の光が秘められた瞳を爆豪へと向けて、はっきりと言った。

 

 

「いつかちゃんと自分のモノにして、“僕の力”で君を超えるよ」

 

「……?……!?」

 

 

爆豪は緑谷が言ったことを心底理解できないというふうに唖然と口を開けながら目が点になり、体の震えがピタリと止まった。緑谷は緑谷で、彼には個性のことで騙してたんじゃないと伝えにきたはずなのに、どうしてこんなことを言ったのだろうかと今更ながらにハッとしていた。

 

 

「………。」

 

「……ッ!?」

 

 

少しの沈黙のうち、ふらりと身体を動かして緑谷へと振り向いた爆豪に、緑谷はまた暴言を吐かれるんじゃないかと身体をビクッとさせる。

 

 

「何だそりゃ…?借りモノ…?訳わかんねぇ事言って……これ以上コケにしてどうするつもりだ……なあ!?」

 

 

だが、彼の口から出たのは暴言ではなかった。暴言の代わりに出てきたのは、荒っぽい怒りの言葉だ。

 

 

「だからなんだ!?今日…‥俺は、てめぇに負けた!そんだけだろが!そんだけぇ……っ!!」

 

 

爆豪は怒りや屈辱、さまざまな感情で肩と声を震わせながら荒い口調で話を続ける。

 

 

「氷の奴見てっ!敵わねぇんじゃって思っちまった……!クッソォ!ポニーテールの奴の言うことにも納得しちまった……!」

 

 

思い出すのは自分が無様な試合をした後に試合をした者の姿。推薦入学を果たした二人の生徒の姿だ。2回戦で見せた轟のビルを丸ごと凍結させれるほどの圧倒的な氷結の力や、八百万の容赦ないが的を射ている厳しい講評の言葉に、爆豪のプライドが打ちのめされたのだ。

 

そして、今回彼にとって一番の極め付けが………

 

 

 

「剣女や変身野郎には……どんだけ足掻いても、何も出来なかった………!足元にも及ばなかった………!今のオレじゃあどっちにも勝てねぇってのを………思い知らされちまったっ!!」

 

 

 

隼人と木綿季の圧倒的なまでの実力差に、静かな怒りが込められた言葉に、爆豪の肥大化しすぎたプライドが根本からへし折られたのだ。入学初日から今日のたった二日間で、爆豪は自分よりも格上と認めざるを得ない存在を目の当たりにし、自分の弱さを散々思い知らされた。

 

 

 

「クソが!クッソ!クソクソクソクソォッ!!なぁ!テメェもだ……!デク!!」

 

 

 

爆豪は行き場のない怒りをぶつけるかのように左手を何度も振り下ろすような仕草をしながら、顔を上げた。

 

………彼の瞳には涙が浮かんでいた。

 

完膚なきまでに打ちのめされた爆豪は泣いて声を振るわせながらも、何とか言葉を紡ぎながら宣言する。

 

 

 

「こっからだ!俺は…!こっから…!いいか!?俺はここで、1番になってやる!!誰よりも、強くなってやる!!」

 

 

 

泣きながらも力強く宣言した爆豪は緑谷から完全に背を向けると、涙を乱暴に拭いながら言う。

 

 

 

「俺に勝つなんて、二度とねぇからな!クソが!!」

 

 

 

そうして再び帰路を進める爆豪とそれを見ながら、緊張が解けて脱力しかけている緑谷だったが、彼のそばを一人の男が声を張り上げながら走り抜ける。

 

 

 

「いた———!爆・豪・少年!!」

 

 

 

走り抜けたのはコスチューム姿のオールマイトだ。彼は緑谷との試合以降、明らかに意気消沈していた爆豪に、教師としてしっかりカウンセリングせねばと思い探し回っていて今ようやく彼を見つけたのだ。オールマイトは彼の両肩を掴むと荒くなった息を整えると、爆豪に慰めの言葉をかける。

 

 

「言っとくけど…!自尊心ってのは大事なもんだ‼︎君は間違いなく、プロになれる能力を持っている!君はまだまだこれから……「放してくれよ、オールマイト、歩けねぇ。」……ん?」

 

 

慰めの言葉をかけて彼を立ち直らせようと教師の責務を果たさんとしていたオールマイトだったが、予想外の爆豪の反応に首を傾げる。爆豪は涙を拭いながらも、オールマイトへと振り向いて、強い意志が宿った瞳でオールマイトを見返すとはっきりと言った。

 

 

「言われなくても!俺はあんたをも超えるヒーローになる!!」

 

(あれ———!?立ち直ってるぅ———!?)

 

 

オールマイトのイメージ的には自分が慰めて立ち直らせるつもりだったのに、どう言うわけか、彼は既に立ち直っており、自分の事を呆気なく振り払ったのだ。

 

 

(…………教師って、難しいな……。)

 

 

そのまま立ち去る爆豪の背中を見送りながら、オールマイトは何とも言えない様子でそう思っていた。

 

そして、緑谷へと振り向くと、二人が何を話していたのかを聞くために彼へと近づいていく。ことの一部始終を陰から見聞きしていた隼人は完全に彼らから背を向けて、教室へと戻るために歩き出した。木綿季も隼人の後を追う。隼人は歩きながら、口の端を小さく吊り上げておもしろそうに笑った。木綿季も隼人の気持ちを理解したが、あえて聞いてみる。

 

 

「どうしたの?嬉しそうだね?」

 

「爆豪の奴……煽りすぎて少し心配だったが、自分一人でも立ち直れてんじゃねぇか。よく今日で持ち直したもんだ。」

 

 

隼人は爆豪は肥大化しすぎた自尊心のせいで一度折れれば、立ち直るのに時間がかかると思っていたが、よもやその日のうちにあそこまで持ち直せているとは、いい意味での予想外だったのだ。

 

 

「……爆豪はこれから、確実に強くなるな。」

 

「……だね。」

 

 

挫折を経験し、立ち上がったものは強くなる事を隼人は知っている。言動はともかく、挫折を経験するというのは、大きな意味があり、それを糧にすれば大きな成長へと繋がるからだ。爆豪もそうであり、これから彼は大きく成長することだろう。木綿季も隼人の気持ちを理解してそれに同意する。

 

 

「……フフッ、あいつのこれからが楽しみだな。」

 

「うん!僕ももう一度戦いたいな!」

 

 

隼人と木綿季は彼が再起したことに感心し、これからに期待しながらも、その次には困ったような表情を浮かべた。

 

 

「とにかく問題は緑谷の事だ。この事は、黙っとくべき奴だよなぁ。」

 

「少なくとも、緑谷君本人から言う気がないならそうだね。僕達が簡単に言っちゃまずいね。」

 

 

こんな話、おいそれと話していい物ではない。

もしも世間に知られて仕舞えば、力を奪おうとする輩が溢れかえることは明らかだからだ。社会の混乱を防ぐためにも、ひいては緑谷自身の身を守るためにもこれは秘密にしておかなければいけない物だった。その危険性を理解している隼人は、秘匿しておく事を密かに誓うとともに、暗い表情を浮かべた。

 

 

「(………しかし、『授ける』個性か………こんな偶然あるんだな。)…………俺らと()()だなんてな。」

 

 

個性の種類はまさしく千差万別であるのだと、隼人は改めて()()()()は不思議だと思った。

 

 

「!!」

 

 

———その時、隼人の脳裏にある映像が不意によぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに見えたのは、途方のない悪意

 

 

 

 

「………子供を殺せば来るのかな?」

 

「かの平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その悪意が人を襲いかかる

 

 

 

 

「個性を消せる。確かに素敵な個性だけど、なんてことはないね。だって、圧倒的な力の前ではつまり、ただの、無個性だもの」

 

 

「ぐぁ……‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………そこに見えたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりお前か………!会いたかったぜ………!隼人………!!それじゃあ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れられない大切な…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴホッ!ハ、ハァ……ハァ……ハァ……」

 

「隼人!大丈夫!?」

 

 

そのまま膝をつき、咽せながら息を吐き出す隼人を木綿季が心配する。顔は汗だく、疲労し切った表情をしている。

 

 

「………フゥ……大丈夫、突然で驚いただけだ。」

 

「そっかぁ。………隼人、()()()()()教えて。」

 

 

隼人はゆっくり呼吸をもどしながら答えると、木綿季は安心してホッと息を吐く。しかし、木綿季は無事が分かるとすぐに表情を変える。それは今までの木綿季からは考えられない程真剣な表情だ。隼人は木綿季の顔を見て呟いた。

 

 

「今見たのは………」

 

 

隼人が口を開くと強い風が吹き、2人の会話が聴き取れなくなった。しかし、2人は会話を続ける。隼人は木綿季の顔を真剣に見て答える。木綿季も時々驚いた表情を見せるがそれでも真面目に聞く。

風が吹き荒れると2人の会話が終わったのだろう。会話は聞こえなくなった。2人共何も言わずに見つめ合っていた。そんな時、木綿季が先に口を開いた。

 

 

「……内容は分かったよ。………それで隼人は、どうしたいの?」

 

 

隼人を真剣に見つめる木綿季。嘘つかないで言って欲しい。表情からそう言っているのが分かるほどの顔つきで真っ直ぐジィっと隼人を見ていた。

 

 

「………俺は……どうすれば……」

 

「これは、隼人の問題だよ。……隼人は……どうしたいの?」

 

 

隼人は答えが決らず顔を下げて考え込むが、木綿季は隼人に再び問いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は………あいつに会う…会いたい…!会って……ちゃんと話がしたい!!」

 

「…………そっか。」

 

 

隼人は顔を上げて答える。その表情は覚悟の決まった、気が引き締まった良い表情だ。隼人の答えを聞いて木綿季もいつもの楽しげな笑顔を見せる。そのまま2人は緑谷の怪我を治すために教室へ向かう。オールマイトがいたからおそらく軽く会話をして、今頃教室に戻っている頃だろう。2人が教室へ歩いていると、突然木綿季が話しかけた。

 

 

「隼人。約束したよね?覚えてる。」

 

「覚えているよ。忘れてないさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減進まなきゃいけないんだ。俺も、あいつも。だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、俺に力を貸してくれ。相棒。」

 

 

「もちろん!」

 

 

 




本日はここまでです。最後2人は意味深な会話をしてましたね。
隼人が見たものと、木綿季の気持ちに2人の約束。色々ありますけど、それが明らかになるのは少し先の話です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
感想と評価をお待ちしています。







「お前達に……学級委員長を決めてもらう!」


「こういうのはお前が向いている。」


『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外に避難してください』


「マスコミがこんなこと、出来るわけない……!」


次回

絶剣と闇騎士と委員長決めとマスコミ事件







「分岐点は………ここだな。もうすぐ会えそうだな。………俺の未練。」


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