エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
プロローグ①
私立希望ヶ峰学園。
そこは超高校級の才能を持った希望溢れる生徒達が入学する、世界でも有名な名門校だ。
この学園に入学する条件は二つ。
現役の高校生である事、そしてある分野において超高校級である事。
希望ヶ峰学園の卒業生は将来を約束されるとも言われており、事実卒業生達は世界中で偉大な功績を残している。
俺の名前は
俺も、実はあの希望ヶ峰学園に入学する事が決まったのだ。
そして今、俺は希望ヶ峰学園の前に立っている!!!!
「うぉお、マジか!!ヤベェ、興奮してきた!!」
俺は、緊張や興奮、そして希望を胸に希望ヶ峰学園への一歩を踏み出した。
その瞬間。
「…あれ?」
突然視界が歪み、世界の色がグシャグシャに撹拌されていく。
そして、俺の意識は途絶えた。
この時、俺はまだ知らなかった。
俺が踏み出した一歩は、希望への一歩なんかじゃなかった。
それは、絶望への一歩だったのだ。
…え。
…ねぇ。……て。
………ねぇってば。
「ん…?」
俺は、聞き覚えのある女の声で目が覚めた。
目をゆっくりと開くと、小柄な女の子が俺の顔を覗き込んでいた。
………ん?女の子?
「あ、よかった…死んでたらどうしようかと思った…」
女の子がほっとしてため息をついたようだが、それどころじゃない俺は思わず大声を上げて跳び上がった。
「うぉあああっ!!?だ、誰だ!?」
「わっ……お、落ち着いて、赤刎くん。」
「な…何で俺の名前を知ってんだ!?…って、あれ?」
薄紫色のサイドテールで深緑のボレロを着ているその子がはっきりと俺の名前を言ったので、俺はさらに混乱した。
だが一旦落ち着いてその子の顔をよく見てみると、俺がよく知っている顔だった。
「………お前、札木…
「うん。よかった…思い出してくれて…」
思い出した。
この子は札木未来。
俺の高校のクラスメイトで、【超高校級のタロット占術師】として希望ヶ峰学園にスカウトされたんだった。
確かタロット占いが得意で100%当たるって有名だったはずだ。
【超高校級のタロット占術師】
おっと、ついでにここで俺の自己紹介もしておこう。
俺は【超高校級の講師】赤刎円だ。
幼少期を孤児院で過ごした俺はよく下の子に勉強を教えていたんだが、その経験を生かして近所のこじんまりとした学習塾で講師のアルバイトをしていたらそれが話題になってスカウトされるに至ったというわけだ。
【超高校級の講師】
ちなみに俺は赤毛を後ろでまとめてて紺のロングコートを着てるんだが、多分一番の特徴はこの絶望的な背の低さだろう。
何しろ、俺は女子小学生の間違いだろうというツッコミが飛んできそうな外見なのだ。
努力はした。セ●ビックしこたま飲んだし、ありとあらゆる健康法を試して背を伸ばそうと頑張ったんだ。
だが悲しいかな、小3から1cmも伸びませんでした。
…さて、自己紹介をして大分落ち着いてきたし、現状把握といこうか。
どうやら俺達は今、電車の中にいるらしい。
レトロな雰囲気な車両には監視カメラが設置されており、場違いなタッチパネルが目に留まる。
「札木、ここどこなんだ?俺達は何でこんな所にいるんだ?」
「………ごめん、わたしにもわからない。私も、目が覚めたらここにいたの…」
「そっか…まあ、そうだよな。とりあえず、ずっとここにいるのも何だし何か無いか探すか。」
「…そうね。」
俺達が車内を歩き始めた、その時だった。
ピロリロリーン♪
突然、今まで何の反応も無かったタッチパネルからデジタル音が聞こえてきた。
パッと画面が付くと、そこには『希望ヶ峰学園新入生のオマエラ!おはようございます!突然ではありますが、至急ホープステーションの改札口にお集まり下さい!』と書かれていた。
汚い字だな。
…いや、じゃなくて。
まず、タイミング良くパネルの画面が付いた事から考えて、このパネルは監視カメラで俺達を見てる奴が遠隔で操作してるとみて間違いないだろう。
それはいい。
だがここは一体どこで、このパネルに書かれてる事は一体何なんだ?
俺達が希望ヶ峰学園の新入生だって知ってるって事は、このパネルの文字を書いた奴は希望ヶ峰学園の関係者なのか?
ホープステーションとやらに俺達を向かわせて、一体何がしたいんだ?
…ああクソッ、考えれば考えるほどわけわかんなくなってきた。
何もかもわかんねーし、親か警察に電話した方がいいんじゃ…
俺は、ふとコートの胸ポケットを漁った。
…あれっ?
これ、俺の携帯じゃないぞ。
「どういう事だ?こんな携帯見覚えねぇし、で、肝心の俺の携帯はどこ行ったかわかんねぇし…」
「………赤刎くん。」
「ん?どうした、札木?」
「…わたしの方にも、わたしのじゃない携帯が入ってた…」
そう言って、札木は俺が持っている携帯と同じ携帯を見せてきた。
「…同じだな。」
「うん。何なんだろうね、これ…」
「…。」
このままでは埒があかないので、俺はとりあえず携帯の電源を入れてみる事にした。
すると、画面には『赤刎円クン ご入学おめでとうございます!』と表示され、その直後ホープステーションとやらの改札口と思われる場所の地図が表示された。
「うわ、何か地図出てきたぞ。ここに行けって事か?」
「…行っても大丈夫なのかな。」
札木は、不安そうな表情を浮かべて少し俯いた。
…そっか。
冷静さを保とうとしてるけど、やっぱ札木もいきなり知らない場所に連れて来られて怖い思いをしていたのか。
そりゃあそうだ。目が覚めたら知らない場所にいて、札木と俺以外の誰もいないなんて状況、怖いに決まってる。
せめて、俺が少しでも不安を取り除いてやらねぇと。
俺は、そっと札木の手を取ってニコッと微笑んだ。
「大丈夫だ。何かあったら、俺が守ってやるから。」
「…。」
札木は、僅かに目を見開いて口をぽかんと開ける。
…ん、やっぱ俺みたいなちんちくりんに言われたところで気休めにもなんねぇか。
「…はは、やっぱこの見た目じゃ説得力ねぇか?」
「………ううん。すごく嬉しい。……ありがとう、赤刎くん。」
「それじゃ、行こっか。」
「………ぅん。」
俺達は、手を繋いだまま電車から降りてホープステーションの改札口へと歩いていった。