エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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安心して下さい。
まだ死にませんよ。


(非)日常編④

楽園生活3日目。

 

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。

何が今日も元気に殺し合いましょうだ、俺はむしろお前に対して殺意が湧いてるんだがな。

 

今日も8時に食堂に集合して生存確認も兼ねた朝食を取りに行く事になっていたので、俺は準備を済ませて食堂に向かった。

やはりと言うべきなのか、神崎と弦野は今日も来ていなかった。

仕方がないので、来ていた14人だけで朝食を取った。

 

「アイツら、今日も来なかったな。」

 

「昨日も一応お食事をお部屋まで運んだんですけど…一切召し上がっていらっしゃいませんでした。」

 

「円!奉子!もうあんな奴ら放っとこうよ!あっちが単独行動取りたいって言ってるんだしさ!」

 

「それは…そうだけどよ。でも、万が一何かあったら…」

 

「一応チャットは既読になってたから、生きてるとは思うけどね。ただ、健康面で問題がないかどうかまではわからないからなぁ。衣食住とか、自分達で管理できてるといいんだけど。」

 

「そっか、死んでないのね。それはとりあえず良かった。」

 

「別にどうでもいいじゃんあんな奴等!」

 

「速水さん、言い過ぎだよ。神崎君と弦野君だって、僕達の大事な仲間なんだ。誰一人だって欠けちゃいけないんだよ。」

 

「あ…そうだね、ごめん…」

 

 

 

すると、一が唐突にボソッと呟く。

 

「…あのさ。今日で3日目だよね?」

 

「ああ、そうだな。」

 

「…ボク達、やっぱりここで一生過ごすしかないのかな。」

 

「な…おい一!!何でそんな事言うんだよ!?」

 

「だって!!3日も経ってるのに何で何もないのさ!!ずっと脱出の手がかりを探してるけど、結局何もナシじゃん!!」

 

「そうよ!アンタ達が真面目に手がかりを探さないからいつまで経ってもゆめが家に帰れないじゃない!」

 

「お前らなぁ…ずっとビビってばっかで何もしてねぇくせにワガママばっか言うなよ!!」

 

「何ようるさいわねぇ!アンタこそ、ただの幸運のくせに生意気なのよ!」

 

一と宝条が声を荒げると漕前が反論してきてヒートアップしてきたので、俺とジョンが漕前を、安生と速水が一と宝条を止めに入った。

 

「おい、cool downしろよミナト!」

 

「漕前。気持ちはわからなくもないけどよ。一や宝条だって、ずっとここに閉じ込められててピリピリしてるんだよ。」

 

「…っ、悪い。」

 

俺達が宥めると、漕前はようやく落ち着いた。

 

「二人とも落ち着いて。いつか必ず、外に出られるから。ね?」

 

「そうだよ!アタシらは超高校級なんだよ?そんな弱気になっちゃダメだよ!」

 

「…う、ごめんなさい…」

 

「ふんっ、だったら早く脱出口を見つけなさいよね!」

 

一と宝条も、不満はまだあるようだがとりあえず騒ぎ立てるのはやめてくれたみたいだ。

 

 

 

「…あのさぁ。ちょっといい?」

 

唐突に、黒瀬が手を挙げて口を開いた。

 

「ボクちょっとわかんないんだけどさぁ…みんなはどうしてそんなに外に出たいのー?」

 

黒瀬がそう言うと、その場にいたほぼ全員がポカンとした。

 

「どうしてって…お前は外に出たくないのか?」

 

「んー…ぶっちゃけ、ボクはどっちでもいいんだ。ここにはクラスメイトのみんながいるし、奉子ちゃん達がおいしいご飯作ってくれるし、逆に何がそんなに不満なの?」

 

「黒瀬さんには、外で待っていらっしゃる方や会いたい方はいらっしゃらないんですの?」

 

「うーん、いないかなぁー。確かに仲のいいスタッフさんと作品のお話ができないのは寂しいけど、そこまで追い詰められてるわけじゃないし。…ってかさ。そんな事を聞くって事は、香織ちゃんにはいるんだ?ここにいる誰かを殺してまで会いたい人が。」

 

「な…!何を仰るんですの!?」

 

「マシロ!Take it back!!カオリがmurderなんて考えてるわけないだろ!!」

 

「だって事実でしょ?ここにいる誰かを殺さないと出られないよーってクマちゃんが言ってたじゃない。他のみんなだって、外に出たいって思ってる人は心のどこかで誰かを殺そうと思ってるんでしょー?ねえねえそうなんだよねー?うわぁ、どうしよう!ボク殺されちゃうかもー!キャーこわーい!」

 

その言葉を聞いた殆ど全員が顔を見合わせていた。

認めたくはないが、黒瀬の言っている事は核心を突いていた。

実際、俺だって早く外に出て帰りたい。

でも、今のところこの中の誰かを殺す事でしかそれは叶わない。

もちろん、誰かを殺したところで本当にモノクマが外に出してくれるのかといえばそんな保証はどこにもない。

でも、それでも、それが外に出られる唯一の方法だというのなら、それに縋ってしまわないと言い切れる自信もどこにもない。

口では仲間を信じると言いつつも、俺達は心のどこかで疑念を抱いていたのだ。

 

「黒瀬、貴様…!!」

 

 

 

「もうやめて!!」

 

突然声を荒げたのは、今まで温厚だった筆染だった。

 

「…もう、やめよう?…そりゃあ、あたしだって家に帰りたいよ…でも、それは誰かを殺したいとかそういう事じゃない。あたしはただ、当たり前の日常を取り戻したいだけなんだよ…!」

 

「筆染…」

 

「何でよ、あたし達が何をしたっていうのよ…!会いたいよぉ…お父さん、お母さぁん…うぅっ、ふぅっ…」

 

筆染は、両手で顔を覆ってその場で泣き崩れた。

床に座り込んで啜り泣く筆染を見て、誰も何も言えなくなってしまった。

そう思った、その時だった。

 

「筆染さん…大丈夫だよ。僕達で見つけるんだ。誰も死なずにここから脱出する方法を。」

 

「…うん。」

 

泣き崩れる筆染を安生が慰めると、筆染は力なく頷いた。

…そうだ。

まだ生きて出られる方法がないと決まったわけじゃない。

みんなで協力すれば、きっと16人全員で外に出られるはずだ。

 

 

 

「…希望を打ち砕くような事言うて悪いんやけど、ウチはそないに簡単にいくとは思えへんな。」

 

ため息をつきながら発言したのは枯罰だった。

 

「どういう事だ?」

 

「よぉ考えてみぃ。ウチらは超高校級やぞ?有名人が一度に16人も攫われたら、誰かしらが騒ぐやろ。少なくとも、家族や友達が心配して今頃警察に通報しとってもおかしないやろ?」

 

「…確かに。」

 

「んー、そうなんだよねぇ。特にボクのSNSのフォロワーさんとか、スタッフさんも含めてストーカーじみてる人が多いからボクがここにいるって事をとっくに特定してるはずなんだけどなぁ。…って事は、外部の情報をボク達が入手できないように、外部の人もボク達の情報を入手できていないって事?」

 

「御名答。要は、あのクマ公も外で騒ぎが起こるんを重々承知の上でウチらを誘拐したっちゅうこっちゃ。」

 

「あ…」

 

「な?あのクマ公がどないに厄介かわかったやろ?まあ希望を持つなとは言わへんけど、ウチら以外の人間をアテにしすぎんのも考えモンやっちゅう事は頭の片隅に置いとき。」

 

そう言って、枯罰は席を立って食堂を後にしてしまった。

その後は各自楽園内を自由探索する事になり、その場で流れ解散となった。

 

「そういやまだ診療所には行ってなかったな。ちょっと調べてみるか。」

 

俺は、早速診療所に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あ。」

 

診療所に行くと、既に安生と黒瀬がいた。

これはまた珍しい組み合わせだな。

 

「円くんおいーっす。」

 

「赤刎君。何か用かな?」

 

「ああ…ちょっと診療所を探索しておこうと思ってな。お前らはここで何をしてるんだ?」

 

「診療所の備品を整理して、リストを作ってるんだ。中には毒薬や危ない薬もあるから、ちゃんと管理しておかないとね。」

 

「ボクは、特にやる事がなかったので心くんをお手伝いしてるのですー。」

 

「そういう事なら、俺も手伝おうか?」

 

「いいのかい?」

 

「ああ。ちょうどここの探索をしようと思ってたところだしな。」

 

「ありがとう。じゃあ向こうの棚の薬品を整理して、この紙に種類別にリストアップしてくれるかな?」

 

「おう。」

 

俺は、棚の薬品のラベルに書かれていた内容を、安生に渡されたルーズリーフに書き込んでいった。

色々あるな…痛み止めに痒み止め、酔い止め、睡眠薬、胃薬、止血剤、造血剤…うげっ、媚薬まであんのかよ。

何考えてんだあのクマは。

…お。

棚の奥にメダルが転がってるぞ。

拾っておこう。

 

「毒の種類も色々あるねぇ。青酸カリに塩化カリウム、ヒ素、水銀、テトロドトキシン…うわぁ、ヤバいお薬まであるよ。コカインにマリファナ、モルヒネ、あとはー…」

 

黒瀬がさっきからものすごく物騒な事を言っているが正直これ以上聞きたくない。

あのクマめ、毒ならまだわかるが何故ヤバい薬まで置いてるんだ。

ハイになった勢いで誰かを殺したりするのを期待してんのか?

 

「そんなに危険なものまであるのか…でも、薬の廃棄は禁止されてるしな。どうしようか?」

 

「一箇所にまとめて隠すなり棚ごと封じるなりすればいいんじゃないか?」

 

「あ、そっか。その手があったかぁ。」

 

毒やヤバい薬、あとは媚薬や大人のオモチャなども一箇所にまとめて木箱に入れて隠し、念のため箱に金具を打ち付けて封印する事にした。

媚薬と大人のオモチャを隠したのはアレだ、ここには18歳未満の奴もいるし教育上良くないからだ。

 

「ふぅ。とりあえず、これで毒殺の心配はなくなったか。」

 

「そうだね。それじゃあ、調査を再開しようか。」

 

俺達が再び診療所を調べ始めると、輸血パックを調べていた黒瀬が突然声を上げた。

 

「…あ。」

 

「どうした?」

 

「心くんってさ、ボクと血液型同じなんだねー。」

 

「え?」

 

「ほら、この輸血パックって、全員の血液型に対応してて同じ血液型の人同士でまとめてあるからさー。」

 

「へぇ、そうなのか。」

 

「ボクの血液型ってものすごく珍しいから、同じ人がいてビックリしたよー。」

 

「あはは、僕も自分と同じ型の人は初めて会ったよ。」

 

「そうなのか?」

 

「うん。僕、黄金の血液って呼ばれてる型でね。輸血の時とか困るから、普段から出来るだけ大怪我しないように気をつけてるんだよね。」

 

「あー、ボクも一緒ー。」

 

「ふーん…」

 

そういや、そういう血の型があるって話を結構前に報告書で読んだ事があるな。

コイツらがそれだったとは。

 

「円くんのもあったよー。ほら…あっ。」

 

黒瀬は、俺の分のパックを持ってくる時に誤ってパックを破いて中に入っていた血を服にブチ撒けてしまった。

 

「うわっ!?」

 

「あーあー…やっちゃったー。」

 

「ちょっ…ちょっと黒瀬さん!?何してんの!?」

 

「全くだよ。やっちゃった、じゃねぇだろお前…」

 

「ごめんなさーい。」

 

「それ、早く洗わねぇと落ちねぇぞ。続きは俺達がやっておくからランドリールームに行ってこいよ。」

 

「はぁーい。」

 

そう言って、黒瀬はランドリールームへと向かっていった。

…アイツ、マイペースすぎて一緒にいるだけで疲れるな。

 

「うう…僕、どうしても血を見るのは無理なんだ…情けない話だよね、血糊ですら気分悪くなっちゃうんだもの…」

 

普段は冷静な安生が、顔を真っ青にして怯えている。

コイツにも弱点があったんだな。

 

「別に情けなくはねぇよ。弱点は誰にだってある。」

 

「そ、そうかい…?」

 

「そうだ。…あーあ、床にも垂れてるぞこれ。しょうがねぇな、俺が拭いとくから安生はリストを作っててくれ。」

 

「面目ない…」

 

「いいんだよ別に。」

 

「ありがとう。じゃあ、お願いね。」

 

俺は黒瀬がブチ撒けた血の後始末をし、安生はリストを作成した。

安生がリストを作成し終わり、時間も丁度良くなったので一度集まって昼食を取る事になった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

昼食の後は、再び自由探索の時間となった。

俺は、早速拾ったコインを持ってプレイルームに行ってみる事にした。

 

「お。」

 

プレイルームには、宝条と筆染がいた。

 

「はぁっ、もうサイアク!」

 

「まあまあ…」

 

宝条がイラついてスロット台を蹴り、筆染が宝条を宥めていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「ああ…えっとね。宝条ちゃ…ゆめちゃんが、なかなかいい目が出ないってキレてるの。」

 

「んもう、ふざけんじゃないわよあのクマ!!よくもゆめを騙したわね!!」

 

「騙す…?モノクマに何か言われたのか?」

 

「えーっとね…『メダルを入れれば入れるほどいい目が出やすくなる』ってアドバイスされたらしくてね。さっきからコインを大量に入れてやってるんだけど、うまくいかないみたい。」

 

「…ちなみにどれぐらい入れたんだ?」

 

「んーっと、さっきは50枚入れたって言ってたよ。」

 

「50!!?」

 

よくそれだけ集められたな…

さすがは【超高校級の収集家】ってところか。

逆にそれだけ入れていい目が出ないって事は、もっと入れないとダメって事か。

やっぱり、そんなクソゲー早々に切り捨てて正解だったな。

 

「…で、赤刎くんは何しに来たわけ?」

 

かなりイラついた口調ではあるが、一応宝条の方から声をかけてくれた。

 

「えっと、メダルを拾ったからガチャを引こうと思って。」

 

「ふぅん。ま、頑張れば。」

 

ふぅんって…随分と投げやりだな。

 

「筆染はこれからどうするんだ?」

 

「んーっと…まだ見落としてるところがあるかもしれないし、あたしもメダル探しやろっかな。ここでちょっと遊んでみたいけど、メダルが無い事にはゲームとかできないもんね。」

 

「そっか。」

 

「あのね赤刎君!このガチャ、景品に高級なペンもあるんだって!あたし、ペン欲しいな〜。」

 

「ははは…」

 

おいおい、筆染。

完全にモノクマに乗せられてないか?

 

俺は、二人と少し話をした後ガチャを引いた。

出てきたのは、先端に星が付いておりローマ数字で17と書かれたヘアピンだった。

 

「ヘアピンかぁ…」

 

正直使い道に困るし、前回みたいに誰かにあげてみるか。

俺は、ヘアピンを持ってプレイルームを後にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

さてと…これでとりあえず全部の建物に入った事になるのかな?

でも、倉庫は広すぎて回りきれなかったからもう一度倉庫に行ってみるか。

 

「あ。」

 

倉庫に行くと、枯罰と札木がいた。

 

「…………あ、赤刎くん。」

 

「よぉ。お前とはよぉ会うのぉ。」

 

「ははは、確かに…で、お前らは何やってるんだ?」

 

「見てわからへんのか?倉庫内の在庫を確認しとったんや。安生に頼まれてもうてのぉ。あんのド阿呆、ウチにこないな雑用押し付けよってからに。身体弱なかったらどついとったわ。」

 

「…引き受けなきゃよかっただけじゃないのか?」

 

「…。」

 

俺がそう言うと、枯罰が一瞬固まった後鬼のような形相で俺を睨んできた。

 

「お前ぇ…ドチビのくせにどのツラ下げてウチに指図しとんじゃこんボケェ!!誰にも言うなや!?言うたらどつくぞコラァ!!」

 

「痛い痛い痛い!わ、悪かったって!誰にも言わねぇから!」

 

枯罰は、女子とは思えない程の怪力で俺の頭を掴んできた。

明らかに理不尽な話なのだが、枯罰にものすごい剣幕で脅された俺は首を縦に振るしかなかった。

どうやら俺はコイツの地雷を踏んでしまったらしい。

それにしても、引き受けなければいいって考えに至らなかったって事は初めから協力する前提だったって事か。

コイツ、案外と律儀なんだな。

 

「…………枯罰さん。」

 

「…おぉ、せやった。こないな事しとる場合やなかったな。」

 

札木のおかげで、枯罰の圧が止まった。

グッジョブ札木!

 

「ほんなら続きやるで。」

 

で、結局続きやるんかい。

やっぱり何だかんだ言って真面目なんじゃねぇか。

 

「1階はウチらで終わらせといたさかい、次は2階や。お前は向こうの文房具コーナーと雑貨コーナー調べぇ。」

 

そう言って、枯罰は俺にルーズリーフを渡してきた。

 

「やり方はわかっとるよな?在庫調べてここに書き込むんや。」

 

「…待て、俺もやる前提か?」

 

「何や、文句あるんか?」

 

「…いえ、別に。」

 

俺は、渋々二人の仕事を手伝う事になった。

 

「えーっと、鉛筆にシャーペンに消しゴム、マーカーに糊にコンパスに…」

 

本当に何でも揃ってるな。

こりゃあ調べるのも一苦労だぞ。

 

 

 

そして5時間後、ようやく指定されたコーナーを調べ終わった。

無限に感じられるほど品揃えが豊富だったせいで、1コーナー調べるだけでも1時間以上かかった。

 

「うぇー…疲れたぁ。」

 

「お疲れさん。飲みモン飲むか?」

 

「…ああ。ありがとう。」

 

枯罰がペットボトルの経口補水液をくれたので、キャップを開けて一気に飲み干した。

少し温くなっていたが、疲れていたので身体が水分を欲していた。

 

「ぷっはぁ。あー、生き返るー…それにしてもお前ら、こんな広い倉庫をよく二人で調べたな。」

 

「…まぁ昨日から少しずつやっとったし、こないな地味な作業は苦手やないからのぉ。」

 

「…………わたしも、身体使ったりするよりはこういう作業の方が得意…」

 

要はこの二人に適任だったって事か。

 

「ほんなら、時間もちょうどええし飯にするか。」

 

「………うん。」

 

そう言って二人は厨房に向かっていった。

今日もまた美味い物作ってくれんのかな。

楽しみだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後、俺達はいつもの3人と漕前が作ってくれた夕食を取った。

飯の後はちょっとしたミーティングを行い、安生は診療所の探索結果を、枯罰と札木は倉庫の探索結果を発表していた。

その後は翌日の予定を互いに確認し合い、その場で流れ解散となった。

 

「あー、美味かった。」

 

夕食の後の散歩をしていると、庭に札木がいるのが見えた。

 

「…あれ?札木?」

 

札木は、庭の花壇に向かって何かをしていた。

…何をやってるんだ?

 

「札木?」

 

「………あ、赤刎くん。」

 

俺が声をかけると、札木が振り向いた。

札木は、手にジョーロを持っていた。

 

「もしかして、花に水をやってたのか?」

 

「…うん。この子達も、わたし達と同じだから………」

 

「そっか。」

 

札木は優しいんだな。

 

「…なあ札木、まだ時間あるし少し話さないか?」

 

「………。」

 

「ごめん、ダメか?」

 

「…ううん。でもわたし、面白い話とかできない…」

 

「そんなの気にしてねぇよ。俺、人の話聞くの好きだし。」

 

「…………。」

 

俺が笑うと、札木は俯いたが微笑んでいるように見えた。

喜んでくれたみたいだな。

 

「………研究室で話そっか。」

 

札木は、そう言って俺を研究室に案内した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺と札木は、【超高校級のタロット占術師】の研究室に入った。

 

「…………どうぞ。」

 

「サンキュ。」

 

テーブルにつくと、札木が温かい麦茶を出してくれた。

 

「…………何から話す?」

 

「えーっと…あ、そうだ。実は、お前にプレゼントがあるんだ。」

 

「…………?」

 

「はい。」

 

俺は、ガチャでゲットしたヘアピンを渡した。

 

「……………!」

 

すると、札木は僅かに目を見開く。

 

「…………これを、わたしに?」

 

「ああ。お前に似合うんじゃないかと思ってな。」

 

「…………ありがとう。すごく嬉しい。………早速付けてみてもいいかな?」

 

「もちろん。つけてみてくれるか?」

 

札木はコクリと頷くと、早速ヘアピンをつけた。

 

「…………どう、かな?」

 

「うぉっ。」

 

ものすごく似合ってる。

札木の奴、こんなに可愛かったっけ?

これならきっと武本も気に入るだろうな。

 

「メチャクチャ似合ってるよ。やっぱりお前にプレゼントして正解だった。」

 

「……………ありがとう。」

 

喜んでくれているな。

俺のプレゼントが気に入ったようだ。

 

 

 

プレゼントを渡したところで、俺は本題に入る事にした。

 

「なあ、札木。お前がタロット占いをやり始めたきっかけって何だ?」

 

「……………。」

 

「あ、いや…お前とはクラスメイトだけど、そういう話はあんまりしなかったなーって思って。」

 

「………そうね。少し長くなるけど、いい?」

 

「別にいいよ。だって俺が頼んでるんだからよ。」

 

「…………じゃあ話すね。わたし、今の家族とは血が繋がってないの。わたしの本当のお父さんは誰かわからなくて、本当のお母さんはわたしが産まれてすぐに自殺しちゃったんだって。それで、わたしは今の家族に養子にしてもらったの。…でも、小さい頃から未来予知ができたわたしは、両親に気味悪がられて無視されるようになった。『こんな子引き取らなきゃ良かった』って暴言も吐かれたわ。」

 

「酷い親だな。引き取っておいて虐待するなんて、何考えてるんだ。許せねぇ…!」

 

「…そうね。でも、わたしの家族はひどい人だけじゃなかった。わたしには8つ離れたお姉ちゃんがいてね。お姉ちゃんだけはわたしを本当の妹みたいに可愛がってくれた。まともにわたしの学費を払ってくれない親の代わりに自分でお金を稼いで学費を払ってくれて、バイトをいくつも掛け持ちしてて忙しいのに夕ご飯の時には必ず帰ってきてくれるの。」

 

「いいお姉さんを持ったな。」

 

「………うん。わたしの自慢のお姉ちゃんよ。でね、お姉ちゃんが、わたしの高校の合格祝いに占いの本を買ってくれたの。『アンタにはすごい才能があるんだから将来は占いで食べていきなさい』って言って、色んな占いを紹介してくれてね。その中で一番わたしに向いてたのがタロットだったんだ。試しに高校でタロットをやってみたらすごく評判になって、お姉ちゃんがネット上で宣伝してくれた事もあって【超高校級のタロット占術師】としてスカウトされたというわけ。」

 

「そうだったのか。良かったな、お姉さんに才能を活かす方法を見つけてもらえて。」

 

俺がそう言うと、札木は微笑んで続けた。

 

「………あのね。…わたし、赤刎くんにも感謝してるんだよ。」

 

「え?俺に?なんで?」

 

「…………覚えてない?高校の入学式の時、わたしの入学式について来てくれてたお姉ちゃんが、通学路の途中で過労で倒れちゃって…その時たまたま同じ高校に入学する予定だった赤刎くんが救急車を呼んでくれて、自分も入学式に出なきゃいけないのに病院まで付き添ってくれたんだよ。あの時赤刎くんが助けてくれなかったら、お姉ちゃんはどうなってたか…」

 

「…そういやそんな事あったな。」

 

「………赤刎くん、あの時は本当にありがとう。」

 

「いいよ別に。俺の入学式なんかより、お前のお姉さんの命の方が大事だもんな。」

 

「赤刎くん………」

 

「うん、俄然やる気湧いてきた。お姉さんに会うためにも、生きて一緒にここから出るぞ。3日もここにいるし、お姉さんもお前の事心配してるだろうからな。脱出できたら家に帰って、お姉さんに無事を報告してやれよ。」

 

「………うん。……それに、生きてここから出なきゃいけない理由なら他にも…」

 

「他にも、何だ?」

 

「……………ううん。何でもない。こっちの話。」

 

何だよ、今絶対何か言いかけたよな?

何を言おうとしたのか気になるじゃねーかチクショウ。

 

「って、ヤベッ。もう夜時間まで1時間切ってるじゃねーか。早く部屋に行かねぇと風呂入れなくなるぞ。」

 

「………そうね。そろそろ戻ろうか。」

 

俺達は、一緒にホテルへと戻っていった。

 

「……………今日はありがとう。」

 

「いやいや、こっちの台詞だよ。」

 

あれ?

何か大事な事を忘れてるような…

…って、そうだった!

札木の欲しいものを聞いておくって武本に約束したんだった!

いかんいかん、危うく忘れるところだった!

 

「あ、あのさ!」

 

「………?」

 

「札木…さ、何か今欲しいものとかあるか?」

 

「……………特に。さっきヘアピン貰ったし…」

 

「まあそうなんだけどよ…ほら、お前の好みとか知っておきたいなーって…」

 

「…………赤刎くんがくれるものなら何でも嬉しいよ?」

 

違う、そうじゃない。

何でもいいっていう回答が一番困るんだよ、札木!

 

「いや、でも強いて言うならこれ、とか…あるだろ?」

 

「…?」

 

札木は、少し困惑したような表情を浮かべて首を傾げた。

…ちょっと強引に聞きすぎたかな?

でも、ここで何の収穫もナシじゃ武本に悪いし…

 

「………そうね。強いて言うなら…お花が欲しいかな。部屋に彩りが少ない気がするし…」

 

「そうか、花か!サンキュー札木!」

 

「………うん。」

 

よっしゃあああ!!

有力情報ゲット!

 

俺が嬉しさのあまり札木の両手を掴んで上下に振ると、札木は困惑して目をパチクリさせた。

…ん、流石に引かれたかな?

 

「あ、悪い。」

 

「………ううん。」

 

「それじゃ、また明日な。」

 

「……………うん。」

 

俺は、札木と分かれて自分の個室へと向かった。

こうして、楽園生活の3日目が終わった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「………。」

 

その頃、物陰から何者かが姿を現し【超高校級のタロット占術師】の研究室に侵入した。

 

「……………。」

 

その人物は、衣服のポケットからタロットカードの束を取り出すと、テーブルの上に置かれていたタロットカードの束とすり替えた。

そして、ニィと口角を上げると何事もなかったかのようにその場を後にし、そのままホテルへと戻っていったのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の天才】神崎帝

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の幸運】漕前湊

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級のタロット占術師】札木未来

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級の武闘家】武本闘十郎

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上16名ー

 

 

 




黄金の血液についてはここで詳しくは書かないので各自で調べてみて下さい(投げやり)
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