エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

15 / 65
非日常編④(オシオキ編)

午後2時頃、札木の研究室では。

 

「武本くん………」

 

「…どうしたんだ札木、急に呼び出したりして。」

 

「…………お願いがあるの。」

 

「…お願い?何だ、言ってみろ。俺でよければ力になるぞ。」

 

「…………うん。あのね…………

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

VOTE

 

武本闘十郎 15票

 

 

 

『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級のタロット占術師】札木未来サンを殺したのは、【超高校級の武闘家】武本闘十郎クンでしたー!!』

 

「……………すまないっ。」

 

「あ…」

 

ようやくわかった。

捜査の前、武本が札木に対して『すまない』と言っていた意味が。

俺はその時札木を守れなかった事を悔やんでいるのかと思ってたけど、本当は殺した事を悔やんでいたんだ。

…でも、どうして札木だったんだ。

あんなに仲が良かったのに。

武本は札木の事が好きだったのに、どうして…

 

「ねぇ、武本君…どうして!?どうして札木ちゃんを殺しちゃったの!?」

 

「そうですわ!!武本さんは札木さんと仲良くしていらしたのに、どうして…!!」

 

「………それを話すには、言っておかなければならない事がある。………赤刎。お前の推理だが、トリックはあれで合っていた。」

 

「トリックは、っちゅう事は間違っとる部分もあるっちゅう事か?」

 

「……………そうだ。殺人計画を立てたのは俺じゃない。……………札木だ。」

 

 

 

 

「…え?」

 

どういう事だ?

札木は、自分が死ぬための計画を立ててたっていうのか?

そんな、どうして…

 

「札木ちゃんが殺人の計画をたてただと!?そんな…意味わかんねぇよ!!ちゃんと説明しろ武本!!」

 

『はいはーい、ここからはボクが話した方が早いかな?まずね、武本クンの動機DVDの映像をご覧頂きましょう!VTRスタート!!』

 

モノクマがそう言ってリモコンのボタンを押すと、モニターに映像が流れる。

 

 

 

 

 

『【超高校級の武闘家】武本闘十郎クンの動機映像!』

 

映像が始まると赤い舞台幕が映り、そこには文字が書かれていた。

そして、幕が両側に開き幕の向こうに隠されていた映像が映る。

映ったのは、田舎の小さな一軒家だった。

そこには、まだ幼い男の子が3人、女の子が2人、そして子供達に囲まれている男性と女性が映っていた。

おそらく武本の弟妹達、そして両親だろう。

 

『おい、これ映ってるのか?』

 

『あなた、ちゃんと映ってますよ。本当にもう、機械音痴なんですから…』

 

『やっほー!兄ちゃん元気ー!?』

 

『私達は元気だよー。』

 

『闘十郎!!寮生活にはもう慣れたか!?そっちでは楽しくやれてるんだよな!?』

 

『ふふふ。もう父さんってばあなたが希望ヶ峰学園に進学する事が決まった時、それはもう号泣して入学通知を何度も読み返しててねぇ。』

 

『だ、だって…俺の息子があの希望ヶ峰学園に入学したんだぞ!?良かったなぁ闘十郎!お前、ずっと武道でみんなに楽させてやるんだって頑張ってたもんな!』

 

『闘十郎、私達はいつでもあなたの事を応援してるわ。だから、私達に気を遣わないで自分のやりたい事を一生懸命やるのよ。』

 

『でもたまにはウチに帰って来いよなー!』

 

『学校でのお話聞かせてね!』

 

慎ましくはあるが、楽しそうな武本の家族の姿がそこにはあった。

そして映像が切り替わり、今度は道場の映像が映る。

そこに映っていたのは、道着を着た老人だった。

おそらく、この人がこの前言っていた武本の師匠なのだろう。

 

『闘十郎君、元気かな?学園での生活はどうだ?楽しくやれているかい?』

 

『師匠、まず先に言う事があるでしょう。』

 

『おお、そうじゃったな。オホン、闘十郎君。希望ヶ峰学園への進学おめでとう。君のご両親から入学通知を見せてもらった時は本当に嬉しかったよ。本当に立派になったな。君は私の自慢の弟子だ。だから胸を張って精進していきなさい。』

 

そう言って武本の師匠は穏やかに笑った。

とても優しい人なんだろうな、と思った。

 

だがすぐに映像が途切れ、画面が暗転する。

次に映った時には道場はボロボロに破壊され、マシンガンや金属バットなどの凶器を持ったモノクママスク達が土足で道場を荒らしていた。

道場の床や壁には血がはねており、画面の端には武本の師匠の手が映っていた。

 

そして再び画面が切り替わり、今度は道場と同じように荒らされた一軒家が映る。

家の中ではモノクママスク達が暴れ回っており、血で真っ赤に染まった床には壊れた人形が落ちていた。

そのすぐそばには、血塗れになった小さな女の子の腕と髪の毛が映っていた。

 

するとそこで再び画面が暗転し、文字が現れる。

 

『優しい家族と師匠のもとで武の道を歩んできた武本クン!いやぁ、微笑ましい限りですねぇ。ではでは、ここで問題です!武本クンの師匠と家族は一体この後どうなってしまったのでしょうか!?正解発表はー…失楽園の後でっ!!』

 

 

 

 

 

映像を見せられた俺は、モニターを呆然と見ていた。

 

「おい…何だよこれ…」

 

「武本君…これを見て不安になっちゃったんだね…」

 

「…………そうだ。もちろん、初めは捏造を疑いもした。だが、もしこれが現実だとしたら…今ならまだ外に出て家族と師匠を助けられるかもしれない、そう考えてしまったんだ………!!」

 

「うんうん、まあそこら辺の下りは大体予想できてたよ。気になるのは未来ちゃんの方だよ。クマちゃん、未来ちゃんの映像を流してくれない?」

 

『そうですね、では次にこちらの映像を見ていただきましょう!VTRスタート!!』

 

 

 

 

 

モノクマがそう言ってリモコンのボタンを押すと、モニターに映像が流れる。

映ったのは、札木の研究室だった。

札木の研究室には、札木と武本がいた。

 

「武本くん………」

 

「…どうしたんだ札木、急に呼び出したりして。」

 

「…………お願いがあるの。」

 

「…お願い?何だ、言ってみろ。俺でよければ力になるぞ。」

 

「…………うん。あのね…………」

 

 

 

「…………わたしを、殺してほしいの。」

 

「………えっ?」

 

「……武本くん、家族と師匠がいるんでしょ。わたしを殺して外に出て、早く助けてあげて。」

 

「おい、冗談でもそんな事を言うのは許さんぞ。俺は、仲間を殺して外に出るような事はしない。そんな事をすれば、家族や師匠に顔向けができなくなる。」

 

「………そんな事言ってる場合なの?映像が本物なら、早く助けに行ってあげないと…………」

 

「だが………お前にだって、お前の事を待っている人がいるはずだ。」

 

「………………わたしはいいの。……わたしの事を待ってくれている人なら、もういないから。」

 

「………。」

 

「………武本くんはいいよね。生きて外に出なきゃいけない理由があって………あのね、わたし……やめた方がいいってわかってはいたけど、自分の事を占っちゃったの。………そしたら、何て出たと思う?」

 

「……さぁ。」

 

「……………わたしね、近いうちに死んじゃうんだって。……それも、仲間の誰かに殺されて死ぬって………」

 

「………それは占いの結果だ。そうなると決まったわけじゃない。」

 

「……わたし、占いを外した事がないの。だから、今回の結果も現実になると思う。」

 

「…………だったら俺がお前を守る。コロシアイなど起こさせない。全員でここから出るんだ。」

 

「……そういうの、いいから。」

 

札木は、深くため息をつくと項垂れてボソッと呟く。

 

「……………ほんと最悪。お姉ちゃんはあんな事になっちゃうし、占いでは死ぬって結果が出るし、…………ずっと好きだった人に八つ当たりしちゃったし…………………もう、死んで楽になりたい。」

 

「…!!それは駄目だ!!そんな事をすれば、赤刎だって………」

 

「うるさい!!」

 

札木は、突然声を荒げて肩で息をするほど呼吸が乱れていた。

 

「みんな口を揃えて生きようって言うけど、わたしがどんな気持ちであの場にいたかなんて全然わかってくれなかった!!わたしは……外に出る事なんてもうどうでもいいの!!わたしは、早くお姉ちゃんに会いたい………」

 

「っ……」

 

「………ねぇ武本くん。もうこれしか方法が無いんだよ。家族や師匠の命と死にたがってるわたしの命、どっちを切り捨てるべきかなんて考えるまでもないよね?」

 

「……………。」

 

「………わたし、計画を立てたの。武本くんは、わたしの言う通りにするだけだから何も悪くないよ。」

 

 

 

そしてそこで画面が切り替わり、厨房の映像が映る。

厨房には、武本とその場で作った即席のロープを持った札木がいた。

 

「………武本くん。毒はちゃんと持ってきた?」

 

「……………札木。やっぱりこんな事やめよう。赤刎達だって、ちゃんと話せばお前を助けようとするはずだ。」

 

「それで武本くんの大切な人が死んじゃったらどうするの?わたしの事はいいから早く大切な人を助けてあげて。」

 

札木は、武本から無理矢理毒の小瓶を引ったくると毒を口の中に流し込んだ。

 

「っ………ゲホッ、ゴホッ…!!」

 

毒を飲んだ札木は、瓶を落としてその場で苦しみ出した。

 

「!?おい、札木!!お前、何を…!!」

 

「………ケホッ、た…武本くんが躊躇するのはわかってた…だからこうするしかなかったの………」

 

「札木…」

 

「…苦しい………は、やく……ころし…て………」

 

「っ……!!」

 

武本は、ギリっと歯を食いしばりながら冷凍倉庫の扉を開けた。

そして札木を抱えると、そのまま倉庫の中に入っていった。

 

「…お、おね……ちゃ……いま………そっ…ち…………いく…か、ら…………」

 

「っ…すまないっ、すまないっ………!!」

 

札木は、武本の腕の中で意識が途絶えた。

武本は、札木に謝罪の言葉を繰り返し投げかけながらトリックの準備をした。

 

 

 

 

 

『うぷぷぷぷ!これが事件の真相だよ!』

 

「そんな…酷いよ!こんなのあんまりだよ!!」

 

「クソッ…札木ちゃん…!!」

 

「札木さん、ごめん…僕達がもっと君をわかってあげられれば…」

 

「あの…札木さんが言ってた『お姉ちゃん』って…」

 

俺は、一の言葉にグッと拳を握りしめて答えた。

 

「…札木には血の繋がりは無いけど誰よりも大切に想ってる姉ちゃんがいたんだ。外に出たら姉ちゃんに会いにいくんだって言ってた。」

 

「では、札木さんが見た映像というのは…」

 

「多分、その姉貴が無惨に殺される映像っちゅうとこやろな。それで姉貴の後追おうとしたんやろ。」

 

「そんな…」

 

「クソッ…!!何で…何でだよ札木…!!何で、俺に相談してくれなかったんだよ!!俺達、クラスメイトだろ!?親友だろ!?なのに、何で…!!」

 

「…親友だからだよ。きっと。」

 

「え…?」

 

「一番仲がいい赤刎君だからこそ、死ぬ計画を立てるほど追い詰められてるなんて言えなかったんだ。」

 

「そんな…クソッ、チクショウ…!!チクショウ…!!」

 

俺は、席に拳を叩きつけて泣き喚いた。

いくら嘆いても札木は帰ってこない。

俺は、アイツに何もしてやれなかった自分を責める事しかできなかった。

 

『オマエラ、何で札木サンに肩入れしてんの?札木サンは勝手に絶望して、武本クンの家族を助けたいからとか何とか言って自分だけあの世に逃げようとしたんだよ!ホント身勝手だよね!オマエラ、札木サンのワガママのせいで危うく死ぬところだったんだからさ!』

 

「な…それはアンタのせいでしょ!?アンタが学級裁判の事を先に説明しなかったから…!!」

 

「That's right!!ミライだってtrialの事を知ってればmurderのplanなんて考えなかったし、トウジュウロウだってミライを殺さなかったはずだ!!」

 

『うるさいなぁ、ボクにそんな事言ったって札木サンが武本クンに殺させた事実は変わりませんよ!』

 

「………すまないっ。俺は、どうしても家族と師匠を助けたかった…!!だから札木を殺し、犯人である事を隠して俺だけ生き残ろうとしたんだ…!!お前達に迷惑をかけるつもりはなかったんだ…すまない、すまないっ……!!」

 

武本が泣きながら謝ると、枯罰が額に青筋を浮かべて席をバンッと叩いた。

 

 

 

「喧しいわド阿呆。お前の謝罪なんぞ聞きたないねん。実行犯が言い訳こくなやボケ。」

 

「枯罰…」

 

「迷惑かけるつもりはなかったやと?阿呆ぬかせ。お前それアイツを腹痛めて産んだ母親の前でも同じ事言えんのか?お前の家族と師匠も札木がお前に殺すように頼んだ事もどうでもええねん。どないな理由があっても殺しは殺しや。同情の余地なんぞあらへん。」

 

「枯罰、言い過ぎだぞ!!武本だって、モノクマの被害者なんだ!!悪気があったわけじゃない!!」

 

「何言うとんねん。むしろ言い足りないくらいやろ。悪気があるとか無いとかそういう問題ちゃう。お前らは札木が殺されたんを許せるんか?ウチは札木を殺したコイツを絶対許さへんけどな。」

 

「っ…」

 

「中途半端な覚悟で人殺すからこないな事なんねん。人を殺した奴は永遠にたった一人で罪に追われ続ける。人を殺すっちゅうんはそういう事やぞ。その覚悟が無いんやったら人殺すなや。」

 

「…。」

 

「もちろん、それはウチらも同じやぞ。ウチらも自分が生き残るために武本を見殺しにした立派な殺人犯。ここで人を糾弾するんやったらそれ相応の覚悟はせぇよ。その覚悟が持てへん奴は、金輪際この場で発言させへん。」

 

枯罰の言葉を聞いた俺達は、何も言い返せなかった。

生き残るためだなんて言い訳は通用しない。

武本を見捨てた時点で、俺達も人殺しだ。

俺達は、その罪を一生背負って生きていかなければならないんだ。

 

 

 

『うぷぷぷ、全くもってその通りです!どんな理由があろうと殺人は殺人!悪い事した子にはオシオキするよー!』

 

「…ああ、始めてくれ。」

 

「ま、待ってくれモノクマ!!」

 

『待ちません待てません待ちたくありませーん!!それじゃ、景気良くヤっちゃいますか!!』

 

「クソ!!やめろ!!やめてくれ!!」

 

「お願いモノクマ!!武本君を殺さないで!!」

 

「札木………武の道を外れ外道な方法を選んだ俺を許してくれとは言わない。だが、せめて謝らせてくれ。」

 

『今回は、【超高校級の武闘家】武本闘十郎クンのために!!スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

「武本ぉおおおおっ!!!」

 

「守ってやれなくて…苦しい思いをさせて、本当にすまなかった………!!」

 

『ではでは、オシオキターイム!!!』

 

武本は札木の遺影に向かって謝罪の言葉を述べた。

だがその直後、無慈悲にも罪人の処刑を宣言するモノクマの声が響き渡る。

モノクマはピコピコハンマーを取り出して、一緒に出てきた赤いボタンをハンマーで押した。

ボタンに付いている画面に、ドット絵の武本をモノクマが連れ去る様子が映っていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

タケモトくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

武本は、冷や汗をかき顔を真っ青にして立っていた。

すると背後からアームのようなものが武本の首を掴み、そのまま裁判所の外へと引きずっていった。

武本が連れて来られたのは巨大な正方形のリングが用意された闘技場だった。

そこで画面上に文字が現れる。

 

 

 

ーーー

 

死々奮迅!!天下一絶望武道会

 

【超高校級の武闘家】武本闘十郎 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

武本の前には、袖のないオレンジ色の道着を着たマッチョモノクマが黄色い雲に乗って現れる。

観客席では、大量のモノクマがギャアギャアと騒ぎ立てている。

審判役のモノクマの試合開始の合図と同時に、モノクマは金色に輝いた。

 

モノクマは猛スピードで武本に詰め寄ると、棘付きのメリケンサックを装着した拳を武本に振るった。

武本は、咄嗟にそれを躱す。

だが、モノクマの攻撃は止まらない。

モノクマの攻撃は次第に速くなっていき、武本も躱し切れなくなる。

そしてついに、モノクマの拳が武本の左頬にめり込んだ。

武本は顔面がひしゃげ、鼻や口から血が噴き出る。

さらに、モノクマは棘付きのブーツで武本の腹を蹴り、追い討ちをかけるように全身にパンチとキックを叩き込んだ。

棘が刺さった部分からは血が滲み出て道着に赤い滲みが広がり、武本は棘で殴られた痛みで悶絶する。

 

何百発もの殴打を受けて満身創痍になった武本は完全に戦意を喪失し、リングの外に逃げようとする。

だがそうはさせまいと目の前にモノクマが現れ、思い切り上へと蹴り上げられる。

モノクマは、猛スピードで武本の上へ移動すると棘付きの如意棒で武本の後頭部を殴りつけリングに叩き落とした。

武本は上空から石のリングに叩きつけられ、ヒビ割れたリングの上で蹲る。

武本は、意識を取り戻すと身体を引きずってモノクマから逃げようとした。

 

だがモノクマは、両手にエネルギーを貯めるとそれを容赦なくリング上の武本目掛けて撃ち込んだ。

エネルギー砲を直に喰らった武本は、もはや虫の息だった。

砲撃の衝撃で腕や足がおかしな方向に曲がり、顔も潰れ道着も焼け焦げ元が誰だったのかわからない程ボロボロになっていた。

それを見たモノクマは、不気味な笑みを浮かべながらパチンっと指を鳴らした。

 

すると、今までただ騒ぎ立てていただけだった観客席のモノクマ達が一気にリングへと押し寄せた。

リング上はあっという間に数万体ものモノクマで埋め尽くされる。

モノクマ達は何体か潰れて壊れるのを全く気にする事なくおしくらまんじゅうをし、リングの中心からは真っ赤な飛沫が上がる。

モノクマが再び指を鳴らすと、リング上にいたモノクマ達は蜘蛛の子を散らすように去っていった。

リング上には潰れて壊れたモノクマの残骸が転がっており、中心には血溜まりが広がっている。

血溜まりの端には、赤い瞳をした目玉が転がっていた。

 

 

 

 

 

『エクストリーーーーーム!!』

 

「いやぁあああああああああああっ!!!」

 

「Ahhhhhhhhhhhhhhhhh!!!」

 

「ひぃいいいいいいいいいいいっ!!!帰る帰る帰る帰る!!!」

 

「あっ、あぁあああっ…ああああああ…!!」

 

「いやぁ!!もういやぁああっ!!」

 

「そんな…武本さんが…!!」

 

「う゛ぅっ…お゛ぇえええっ…」

 

「マジかよ…こんな殺し方するなんて聞いてねぇぞ!!」

 

「そんな、嘘でしょ!?闘十郎が…闘十郎が…!!」

 

「うぅっ、なんて事を…酷すぎるよ。」

 

「うえぇええん…ボクの大好きな闘十郎くんがぁあああ…!」

 

『いやー最高だよね!!この快感は男女に備わったアレとソレがそんなこんなで起こるハプニングよりずっと刺激的だよね!!』

 

「お前…よくも武本を…絶対許さねぇ!!」

 

『そんな事を言われましても、ボクはルールに則って殺人犯をオシオキをしただけなのでー。文句も苦情もコンプレインも受け付けませーん。ではではオマエラには裁判を乗り越えたご褒美にメダルを差し上げますので、ジャンジャン有効活用して下さいねー!』

 

 

 

「…くくく、これがオシオキというものなのか。デザインのセンスは相変わらず壊滅的だが、処刑方法は十分及第点だ。」

 

そう言って、神崎は笑いながら大袈裟に手を叩いた。

 

『神崎クン!さっきはよくもクロの事前把握なんて興醒めなマネした上に現場を荒らしてくれたね!おかげで記念すべき第一回目の学級裁判が台無しになっちゃったじゃんか!!せっかく裁判でお互いが醜く罵り合って投票で決まったクロがみんなに罵倒されながら死んでいくっていう展開が見られると思ってたのに!!オマエ、覚悟はできてるんでしょうね!?』

 

「覚悟?何を覚悟すれば良いのだ?言っておくが、俺はルールを破ってなどいない。故に、貴様に俺を裁く事は出来ない。クロの事前把握と現場荒らしが駄目なら初めからルールにそう書けば良かったのだ。別に今ここで俺をオシオキしてもいいが、そうなればルール違反をするのはお前の方だとは思わんか?」

 

『ムッキー!!』

 

モノクマは、怒りながらその場を去っていった。

モノクマが去っていった後、裁判所に取り残された俺達は呆然として動き出す事すらできなかった。

 

「くっくっく、茶番である事には変わりないが少しは楽しませてもらったぞ。まさかあんな小細工をするだけであの女が死を選ぶとは思わなかったがな。」

 

「小細工だと…!?」

 

「ああ。あの無口女は占いで自分が死ぬという結果が出たと言ったが…そう誘導したのは俺だ。」

 

 

 

………………は?

 

「な…んだ…と…!?」

 

「あの女の叫び声を聞いて、何とか事件に発展させられないかと考えてな。だからそれとなく自分の事を占ってみるように勧めたのだ。そしてあの女は、俺が細工をしたカードを使って自分を占った。そしたらどうだ?占いを真に受けたあの女は見事に俺の思惑に嵌ってくれたのだよ。くっくっく、生きようと努力すれば運命などいくらでも変えられたはずなのにな。」

 

「な…」

 

「…くくく、つくづく皮肉な話だよ。人を不幸から救うための占いで自分が不幸になんてなぁ。」

 

「お前…!!札木の事を何だと思ってるんだ!?」

 

「占いしか能のないただのメンヘラだと認識しているが?おっと、勘違いするなよ。俺はきっかけを与えてやっただけだ。死を選んだのはあの女自身だし、あの女を殺したのはデカブツ自身だ。どう足掻いてもその事実は変わらんぞ。」

 

「ッ…!!」

 

コイツは絶対許さない。

武本は確かに札木を殺したが、アイツの命に、それまでの人生に敬意を払っていた。

だがコイツは違う。

札木の命を弄んで、俺達の命までもを振り回しやがった。

武本よりずっと卑劣で、狡猾で、悪質だ。

でも、俺にはコイツを懲らしめる力も方法も無い。

俺は、拳を握りしめて神崎を睨む事しかできなかった。

すると速水が涙目で神崎を睨みながら声を荒げた。

 

「アンタ…どういうつもり!?未来の命を弄んで…アンタは絶対許さない!!」

 

「フン、許さないならどうするのだ?ジャージ女よ。俺のヒントが無ければ真犯人に辿り着けなかったくせに偉そうな口を叩くな低脳が。」

 

「まぁそらそうやけどなぁ。神崎、あのクマ公に一泡吹かせた事は素直に評価したるわ。せやけどやり方がゴミすぎるやろ。」

 

「何とでも言え。俺はこのゲームを楽しめれば満足だからな。」

 

「こんちくしょうが、何で札木ちゃんと武本が死んだのにお前は生きてんだよ!!」

 

「そんなの決まっているだろう。あのデカブツは実行犯で俺は実行犯じゃないからだ。ああ、もうデカブツではないな。潰れて原型が無いから。」

 

「っ、お前…!!」

 

「何だその目は。まさかとは思うが、幸運の分際で俺に殺意を抱いているのか?なら、俺を殺してみろ。まあこの場で俺を殺せば貴様も道連れだがな。そもそも何の取り柄も無い貴様に俺を殺せる道理が無いとは思わんか?」

 

「くっ…!!」

 

「くくくく、せいぜい次回も楽しませてくれよ凡愚共。」

 

そう言って神崎は一人でエレベーターに乗っていった。

 

「次回なんかあってたまるか!!」

 

俺は、去っていく神崎にそう吐き捨てた。

 

「チッ、付き合ってられるかっつーの。」

 

「いや!!ゆめ、もうこんな所にいられないわ!!」

 

「ボクもうねむーい。裁判で頭使ったから疲れちゃったー。」

 

「お前ら…!!」

 

「だって眠いものは眠いんだもん。ちゃんと寝ないとキレやすくなるんだよー。それじゃお先におやすみー。」

 

弦野と宝条、黒瀬もエレベーターに乗って去っていった。

 

「ウチも帰るわ。もうオシオキは済んだしのぉ。」

 

「おい、待てよ枯罰!!」

 

「…何や、アイツらの事は止めへんかったクセにウチの事は止めるんかいな?」

 

「お前、さっき言ってたよな。札木を殺した武本を絶対許さないって。だったら武本を殺したモノクマは許せるのか?」

 

俺が聞いた、その直後だった。

 

 

 

「………それ、ホンマに聞いとんのか?」

 

一瞬で枯罰の纏う空気が変わった。

気迫とか威圧感とか、そういうレベルじゃない。

 

…これは、殺気…?

 

「許すわけ無いやろ。ウチは、武本をあないな方法で殺したあのクソッタレを許さへん。どないな手を使うても生き延びて、絶対にあの阿呆面の向こうでほくそ笑んどるド阿呆に一発叩き込んだる。」

 

枯罰は拳を握りしめ、額に青筋を浮かべて鋭い眼光をモノクマの席に向けた。

ここまで感情を露わにした枯罰は初めて見た。

枯罰も、札木や武本が殺された事は許せなかったんだ。

 

「せやけど、なんぼ嘆いた所でアイツらは帰って来ぇへん。もう今更後戻りも出来へん。ウチらに出来る事は前に進む事だけや。」

 

そう言って、枯罰はエレベーターへ乗り込んでいった。

俺は、アイツみたいに強くはなれない。

だけどアイツの言う通り、俺達は前に進み続けなければならないんだ。

もう札木と武本で最後にしたい。

今度こそ、14人全員で生き残る方法を見つけるんだ。

それが唯一、若くして死んでいったアイツらにできるせめてもの償いだから。

 

 

 

 

Chapter1.運命の赤い糸 ー完ー

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『空手家の手甲』

 

Chapter1クリアの証。

武本の遺品。

師匠から譲り受けたもの。

武の道を進んだ少年が最期まで身につけていた。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の天才】神崎帝

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の幸運】漕前湊

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上14名ー

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。