エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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Chapter.2  人はその妻エバを知った
(非)日常編①


楽園生活6日目。

俺は、朝の4時頃に目が覚めた。

俺はあの裁判の後、食事なんて取る気になれなかったし、ろくに眠れなかった。

 

たった一日で二人も死んだんだ。

冷凍庫の中で文字通り冷たくなっていた札木、そして札木を殺しモノクマに無惨に殺された武本。

あの光景が脳裏に焼き付いて離れない。

…どうして。

どうしてあんな事になったんだ。

武本にだって生きたいっていう思いはあったはずなのに。

札木も、生きてさえいればどこかに救いはあったはずなのに。

 

「…まだ時間があるな。」

 

昼時間まで3時間ある。

正直眠れる気は全くしなかったが、俺はベッドに潜り込んで目を閉じた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

「…。」

 

モノクマの不快なモーニングコールが部屋中に鳴り響く。

ただでさえ精神的に参っているのに、朝から大音量でアナウンスするのはやめてほしい。

そんな事を思いつつ、支度をして食堂に向かった。

8時前、食堂に向かうと既に安生、聞谷、黒瀬、漕前、ジョン、一、筆染、宝条の8人、そしてどういうわけか弦野もいた。

 

「…おはよう。」

 

「おはよう、赤刎君。」

 

「おはよ。」

 

「Morning.」

 

「ごきげんよう。」

 

「…おはよー。」

 

「お、おはよ…」

 

「おはよぉー。」

 

宝条と弦野以外は返してくれた。

 

「あれ、速水は?今日朝飯当番だったっけ?」

 

「ああ…速水さんは、枯罰さんと仕田原さんを手伝ってるよ。『あんな事があって二人とも辛い思いしてるから、アタシも手伝わなきゃ』って…」

 

そうだったのか。

強いな、アイツらは…

 

「弦野、今日はお前も来たんだな。」

 

「…チッ、あんな事があったからな。」

 

俺が席に座ろうとすると、ふと札木と武本の席に花瓶が置いてあるのに気がつく。

 

「…あれっ?これ、誰が置いたんだ?安生、お前か?」

 

「僕じゃないよ。」

 

「じゃあ聞谷?」

 

「わたくしではありませんわ。」

 

「じゃあ漕前?」

 

「いや、俺でもねぇよ。俺が最初に来たはずなんだけど、来たらもう置いてあったんだよ。」

 

「じゃあ誰が…」

 

 

 

「ウチや。」

 

ちょうどタイミング良く、料理を持った枯罰が現れた。

 

「枯罰…お前が…?」

 

「せやで。…何やお前、ウチが花置くんがそないに悪いんか?」

 

「いや、そうじゃないけど…そういう事するの、意外だったなーって…」

 

「失礼なやっちゃのぉお前。札木や武本とはまあまあ仲良うさせてもろたし、せめて供養だけでもしたろ思てな。」

 

枯罰は、二人の席の花瓶に目を移すとボソッと呟いた。

 

「…ホンマ、目の前で人が死ぬっちゅうんはなんぼ経験しても慣れへんモンやなぁ。」

 

「今何か言ったか?」

 

「何も言うてへん。ほら、飯並べるさかい早うテーブル片せ。お前らが肉だけは食いたない言うからムニエルにしといたで。」

 

う…確かに、今は肉は食べる気になれないな。

食べてる時に二人の死がフラッシュバックしてしまいそうだ。

枯罰に言われて俺達がテーブルセッティングを始めた、その時だった。

 

 

 

「フン、今日も凡愚共が雁首並べていてもはや絶景だな。そんなに群れるのが楽しいのか。」

 

札木と武本の命を弄んだアイツ…神崎が来た。

すると、漕前がテーブルをバンッと叩いて立ち上がった。

 

「お前…!!どのツラ下げてここに来たんだよ!?」

 

「吠えるな莫迦が。無能が感染る。」

 

「お前なぁ…ホンマ何なん?さっきも何も手伝わへんクセにフラッと厨房に来よったと思ったらウチらの事ガン見しとったしのぉ。キショいんじゃボケ。キモすぎて殺虫剤撒いたろ思たわ。」

 

「マジか…」

 

「貴様ら凡俗の飯など何が入っているかわからんからな。見張らせてもらったのだよ。」

 

「でしたら召し上がらなければ良いだけの話では?」

 

「そうしたい所だが、生憎そういうわけにもいかないのでな。」

 

「さよか。ほんで用件は?用がないなら早う帰ってくれるか?」

 

「フン、用ならあるさ。今日からは俺も貴様らと一緒に行動させてもらう。」

 

「はぁ!?ふざけんな!!誰がお前なんかと…」

 

「まあ聞け。俺は、学級裁判を乗り越えて思ったのだ。人が人を殺し、糾弾し、絶望の淵に叩き落とす様はこの上なく滑稽なのだとな。もちろん殺されたり勝手に犯人にされたりするのを防ぐためでもあるが、貴様らの醜い様を眺めるのも悪くないと思ったのだよ。そういうわけで非常に癪だがこれからは共に行動する事にしたからよろしくな。」

 

「オマエ…!!」

 

すると安生が、ギリッと歯を食いしばって神崎を睨みつける漕前とジョンを制止して言った。

 

「神崎君、協力してくれてありがとう。君が仲間になってくれるのは心強いよ。…でも仲間になると決めたからには、最低限秩序を守った行動をしてね。」

 

安生が念を押すようにそう言うと、神崎は「当然だ」と言って案外素直に受け入れドカッと席に座った。

ここで約束を破るような事をすれば、それこそ学級裁判で不利な立場になる事は避けられない。

神崎も、そんな真似をする程馬鹿ではなかったようだ。

 

 

 

神崎のせいで台無しになってしまったが、残すのも仕田原達3人に悪いので出された朝飯は完食した。

結局弦野だけは飯を食わなかったが、残りの13人で朝食を取った。

 

「弦野君、ちゃんとご飯食べないと身体壊しちゃうよ?」

 

「うっせーな、放っとけよ。」

 

「頑なだな…」

 

筆染が心配するが、弦野は冷たく突っぱねた。

何か、この6日間で弦野が少し窶れているような気がする。

思い返してみれば弦野が何かを食っているのを見たのはパーティーの時だけだし、パーティーの時も調理されてない菓子とかしか食ってなかったな。

流石にちょっと心配になってきたぞ…

 

 

 

食事が終わった後は、今後の対策を兼ねたミーティングをする事になった。

聞谷がお茶を淹れてくれたのだが、これがまあ美味かった。

さすが伝統芸能で有名な名家のお嬢様ってだけあって、茶道の心得もあるらしい。

 

「うん、美味い。ありがとな聞谷。」

 

「ふふ、ありがとうございます。」

 

「はっふぅ…落ち着くなぁ。こうやってずっと穏やかに過ごせたらいいのに…」

 

 

 

『そうは問屋が卸さないよ!!』

 

突然、イロモノ…もといモノクマが現れた。

 

「ぎゃあ!出た!!」

 

「誰か殺虫剤持ってきてよ!!」

 

「ちょっと待って、まず殺虫剤効くの?」

 

『何ですかその態度は!!せっかく人が親切にオマエラにご褒美をあげようとしているのに!』

 

「人じゃなくてクマね。」

 

黒瀬、もうめんどくさいからそこはツッコむな。

 

「オマエ…よくもミライとトウジュウロウを!!」

 

『え、何言ってんのジョンクン?札木サンを殺したのは武本クンだし、武本クンはルールを破ったからオシオキしただけだよ?ボクにキレるのおかしくない?』

 

「それは、そうだけど…それでも、武本には生きて罪を償ってほしかった!!なのにお前は…!!」

 

『はいはい、そういうのいいから。そんな事よりボクはオマエラに朗報があって来たのです。』

 

「さっき言うとったご褒美か。」

 

『ご名答ー!!学級裁判を乗り越えたオマエラのために、新しいエリアを開放しました!!』

 

「新しいエリアだと?」

 

『そうでーす。マップも更新されてるから確認しておいて下さいね。ああそれと、冷凍倉庫に転がってた邪魔なものは処分しておいたので普段通り使ってね!』

 

「お前…邪魔なものって、まさか札木の事か!?」

 

「札木ちゃんを物みたいに言うんじゃねぇ!!」

 

『いいじゃん。どうせ死んでるんだしさ。それにいつまでも死体が転がってたら使えないでしょ?オマエラの代わりに掃除しといたから感謝してよね。それじゃバイバーイ。』

 

モノクマは、それだけ言って去っていってしまった。

 

「クソッ…アイツ…」

 

「死者を冒瀆するような態度…許せないね。でも、今はまずこの楽園の事をできる限り知っておかないと。」

 

「まあ言うまでもあらへんけど、まずは探索しよか。」

 

「そうだね。新しく開放されたのは…ええと、図書館、ミュージアムエリア、それから大浴場だって。それから研究室が3つ。」

 

「大浴場ですか…広いお風呂があるのは嬉しいですわね。」

 

聞谷の奴、嬉しそうだな。

 

「んー、どうやって班分けしようか?」

 

「あ、はいはいはい!!ミュージアムエリアはあたしが行ってもいい!?」

 

興奮気味に言ったのは筆染だった。

ミュージアムエリアには美術館もあるだろうしな。

…夢中にならないといいけど。

 

 

 

話し合いの末、図書館の探索は俺、黒瀬、漕前、ジョンの4人。ミュージアムエリアは神崎、枯罰、弦野、速水、筆染の5人。温泉は安生、聞谷、仕田原、一、宝条の5人で探索する事になり、それぞれの班が研究室を一つずつ探索する事になった。

 

「それじゃあ今は9時だし、13時になったら一旦食堂に集合ね。それからお昼ご飯にしよう。」

 

「さんせー。」

 

集合時間を決めた俺達は、早速班ごとに行動する事になった。

 

「不束者ですがよろしくお願いしますー。」

 

俺達の班に加わる事になった黒瀬は、深々と頭を下げた。

チーム分けであぶれてしまったので俺の班に誘ったが、正直マイペースすぎてコイツのテンションにはついていけん。

まあ見た目はふわふわしてて可愛いので漕前とジョンは満更でもなかったみたいだが。

 

「図書館の探索楽しみー。ボク本好きなんだー。」

 

そういえば、黒瀬は脚本家だったな。

 

「俺も本はよく読むぜ?」

 

「Me too!」

 

二人は、黒瀬の気を引くために話題に乗ってきた。

…いやお前ら、絶対読書好きじゃないだろ。

漕前なんか、この前勉強嫌いだって言ってたしな。

 

「…えっちな本と漫画でしょ?」

 

「何でバレた!?」

 

「いやそこは否定しろよ。」

 

やっぱりか。

そんな事だろうと思ったよ。

漕前があまりにもあっさり認めたので、思わずツッコんでしまった。

 

「まあボクはどんなジャンルの本も好きだけどねー。」

 

そう言って、黒瀬はルンルン歩きでホテルの外へ出て行った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「うぉ…!!」

 

外に出た俺達は、すぐに目を見開いた。

何とホテルの東側にあった壁が無くなっており、その先へ行けるようになっていたのだ。

 

「一気に敷地が倍近く広くなったな…」

 

「図書館図書館…あ、アレじゃない?」

 

「Yikes,けっこう遠いな…」

 

「まあ仕方ない。行ってみるか。」

 

俺達は、速水の研究室から少し歩いた所にある建物に向かった。

 

 

 

図書館に入ると、目の前には天井にも届く程の本棚がズラリと並んでいた。、

 

「わー、すごーい!」

 

「これ全部本棚か!?」

 

「Amazing!!」

 

図書館内の本はほぼ全てと言っていいジャンルが網羅されており、1000年以上前の古文書から最近発売された新書までありとあらゆる本が揃っている。

その中には黒瀬が書いた本もあった。

 

「あ、これボクが書いたやつー。」

 

「おい見ろよ!漫画もあるぞ!!それに雑誌も!!」

 

「Really!?」

 

読書家ではない漕前とジョンも楽しそうだ。

…ここなら参考書も充実してそうだな。

後で何冊か持ってくか。

しかし、これほど種類と数が多いと探すのが大変そうだな…

 

『ご心配には及びません!』

 

「うわっ!!?ビックリしたぁ!!」

 

「あ、クマちゃん。」

 

「またオマエか!!Buzz off!!」

 

「急に出てくんなよお前!心臓に悪いだろ!つかしれっと心を読むな!」

 

『そんな、みんなしてひどいなぁ。なんか赤刎クンがボクを呼んでる気がしたから来てあげたんだけどなー。』

 

「呼んでねぇよ!」

 

『あ、そう?せっかくこの図書館の便利な機能を教えてあげようと思ってたのに、聞かないんだ?』

 

「待ってクマちゃん、ボクは聞くよー。」

 

『うぷぷ、黒瀬サンは後ろの3人と違って素直でいいね!それじゃあお教えしましょう。そこの検索機で検索をかけると読みたい本がすぐに出てくるよ!検索方法はキーワード、ジャンル、タイトル、作者名、本文、発行年数、出版社などなど様々対応しているので良かったら使って下さいね!』

 

それだけ言い残して、モノクマは去っていった。

 

「チッ、アイツ…どこまでも不快だな。」

 

「まあでもせっかく検索機を紹介してくれたんだし、使ってみる価値はあると思うよー。」

 

「まぁ…そう、だな。」

 

いざって時に困らないように操作に慣れておかねぇと。

俺は、モノクマのように白と黒に分かれた機械の前に立ってタッチパネルを操作した。

 

「えーっと…ジャンルは…」

 

あ、やっぱり学習参考書もあるな。

後で探しやすいようにいくつかピックアップしておくか。

んーと、あとは…

 

げっ、何でR-18指定の本まで置いてあんだよ。

エロ本も妙にマニアックなヤツまで置いてあるしよ。

そこを無駄に豊富にする事ないだろ。

あのクマ何考えてんだ。

 

…何かバカバカしくなってきた。

今は脱出の手がかりになるものを探してるんだっつーの。

ん?脱出?

 

 

 

「…あ。」

 

「?円くんどーしたの?」

 

「…いや、ここって図書館だよな?それも、古今東西ありとあらゆる本がある…」

 

「それがどうしたんだ?」

 

「もしかしたら、外の世界に関する情報もあるんじゃないか?」

 

「あ、それだ!!」

 

「確かthe date of publicationでsearchできるんだよな!?」

 

「ああ、だから入学式が行われるはずだった日から6日後の新聞や雑誌で調べれば…あれっ?」

 

「どうした?」

 

「検索結果0件だって。」

 

「えっ!?」

 

「ちょっと待ってろ、入学式の日から今日までに出版された書物で調べれば何か出るかも…」

 

俺は何度も検索をかけた。

だが、いずれも検索結果は0件だった。

 

「クソッ、やっぱり外の事は知らせる気ねぇぞって魂胆か…!」

 

「まあこんな簡単に出てきたら逆にビックリだけどねー。」

 

「確かにな…」

 

「じゃあさ、希望ヶ峰学園について調べるのはどう?ルールにも調べるのはOKって書いてあったしさ。」

 

「…なるほどな。じゃあちょっと調べてみるか。」

 

検索をかけると、数十件ほど出てきた。

 

「希望ヶ峰学園極秘資料か…」

 

「ご丁寧に置いてある場所の地図も表示されたな。」

 

「どうやら希望ヶ峰学園の資料は同じコーナーに纏めてあるみたいだし、探してみるか。」

 

「I agree!」

 

俺達は、早速希望ヶ峰学園の資料を探す事にした。

 

 

 

俺、黒瀬、漕前、ジョンの4人は手分けして探し出した資料を読んだ。

 

「えーっと、極秘資料は…あった。」

 

俺は、ちょうど目の高さに置かれていた極秘資料を手に取る。

バッと開いたページに、俺は思わず目が釘付けになった。

 

「…え。」

 

そこには【超高校級の爆弾魔】について書かれていた。

2年ほど前から俺もニュースで見た事がある爆発事故を裏で起こしていた人物がおり、とある極秘ルートを使って調べ上げた結果犯人は『爆弾魔』と呼ばれる殺人鬼で、実は高校生だったので超高校級としてスカウトしたとあった。

犯人は事故に見せかけて爆発を起こし不特定多数の民間人を殺害しており、現場や現場付近に『BOMBER』という文字を残している事がわかっている。

犯行手口があまりにも巧妙で完全犯罪に見せかけた犯行であるため警察ですら手掛かりを掴めず、顔や名前はおろか性別や年齢すら判明していない。

【超高校級の爆弾魔】は俺達と同じ76期生として入学予定だったと書かれている。

 

「マジか…あの連続殺人鬼が俺達の同級生だったのかよ。」

 

こんな事は考えたくはないが、俺達の中に紛れ込んでる可能性も0じゃないな…

…まさか、枯罰が…?

…いや、そんなわけが無い。

モノクマのオシオキに誰よりも激怒して亡くなった二人に花を供えていたアイツが爆弾魔のはずがない。

これ以上仲間を疑うのはよそう。

 

 

 

「ん?」

 

ふと、近くに置かれていた新聞のスクラップが俺の目に入った。

そこには英語だが翻訳すると『5年続いた戦争が終結 伝説の将軍現る』という見出しで記事が書かれていた。

読んでみると、何でも海外の軍に所属しており数十年前に【超高校級の将軍】としてスカウトされた経験もある勅使河原雷人中将が5年続いていた紛争に終止符を打ったという内容だった。

たった1日で戦車を3ダース沈めたとか、頭を狙撃しても死ななかったとか、流石に盛ってるんじゃないかってレベルの伝説を数多く残しているのだが、実際にインタビューをする事に成功した記者の証言によると『今回の勝利は息子の活躍によるものだ。彼はいずれ私をも凌駕する軍人となるだろう』と述べていたという。

 

伝説の将軍か。

顔写真も載せてあるけど、ものすごい厳めしいオッサンだな。

右眼に眼帯とかしてていかにもって感じだ。

…あれ?でもこのオッサン、誰かと似てるような気がするんだが…?

まあでも今は関係ないか。

俺がスクラップを元に戻そうとした、その時だった。

 

 

 

「わ!」

 

「え?」

 

突然、脚立に登って上を調べていた黒瀬が脚立から落ちた。

 

「うわぁっ!?」

 

ドシン、という音が鳴り響く。

その直後、俺の目の前は突然真っ暗になった。

そして、顔を柔らかいもので挟まれたような感触がした。

 

「うーっ、いたぁい…」

 

この声は…黒瀬か?

さっき脚立から落ちてたけど大丈夫かよおい!?

てか、もしかしてこれ…上に乗られてる?

 

「お、おい黒瀬…大じょ…」

 

直後、俺は自分の状況に思わず目を点にする。

 

「あ、円くん。良かったー、お怪我がなくてー。」

 

「!!?」

 

俺の顔に覆い被さっていたのは、黒瀬の胸だった。

突然の出来事で数秒フリーズしてしまったが、黒瀬の方も怪我が無いらしいので起き上がろうとする。

だが、黒瀬は俺を放すどころか腕と脚を俺の身体に絡み付けてきた。

コイツ、この見た目で何つー馬鹿力だよ…!

全然振り解けないんだが…このままだとマジで窒息する…!

 

「円くんが無事で良かったよー。かわいいお顔に傷がついたら台無しだもんねー。」

 

「ちょっ…おい、放…苦し…」

 

「あ、ごめーん。」

 

俺が弱々しく黒瀬の腕をポンポンと叩きながら訴えると、黒瀬はやっと放してくれた。

 

「じゃ、ボクは向こうの棚見てるねー。」

 

そう言って、黒瀬は反対側の本棚へと走っていった。

 

「はー…」

 

死ぬかと思った…

 

 

 

「「…。」」

 

「うおっ!?」

 

漕前とジョンがものすごく恨めしそうな目で俺を見てくるので、思わずビビって飛び上がってしまった。

 

「おい赤刎ぇ…いいよなお前はよぉ。見た目が小学生だからって女の子に可愛がってもらえて…」

 

「え、いや…あれはたまたま…」

 

「黒瀬ちゃんの爆乳はそんなに気持ちよかったのかって聞いてんだよ!!」

 

「I envy you!!」

 

うわ…

コイツら、さっきのをそんな目で見てたのか。

 

「で、どうだったんだよ!?ええ!?」

 

「…かったよ。」

 

「Huh?聞こえねーぞ?」

 

「すげー柔らかかったよ!何かいい匂いしたし、アイツマシュマロでできてんじゃねぇのって思ったよ!」

 

観念した俺は、本音を二人に打ち明けた。

正直に言おう。さっきのハプニングはとてもおいしかった。

大きくて柔らかいおっぱいはいいぞ。顔を挟まれるとすごく幸せだ。

だってしょうがないだろ。男の子なんだもん。

たまたまとはいえあんな事されたら悶々とするよ!

 

…とまあ黒瀬が離れていったのをいい事におっぱいトークで盛り上がっていると、時刻は既に11時を過ぎていた。

 

「Oh,もう11 o'clockか。」

 

「っつー事は2時間くらいここにいたのか。時間も丁度いいし、研究室行ってみようぜ。」

 

俺達は図書室を後にし、研究室に向かう事にした。

 

 

 

図書室を出てすぐの所に、何の変哲もない小屋があった。

ドアを見てみると、トランプとサイコロの絵が書かれている。

 

「トランプとサイコロ?ここは何の部屋なんだ?」

 

「あー、多分俺の研究室だと思うわ。」

 

そう言って手を挙げたのは漕前だった。

あ、そっか。

【超高校級の幸運】だから…

 

「まあ【超高校級の幸運】っつっても、別に運にまつわる才能があるわけじゃないんだけどよ。んじゃ入るぜ。」

 

そう言って、俺達は漕前の研究室に入った。

 

 

 

「「「…。」」」

 

漕前の研究室は良く言えばシンプル、悪く言えば地味だった。

窓とドアが一つずつあるだけの真っ白な部屋の中心に学習机がポツンと置かれているだけの部屋で、特に気になる所があるとすれば机の上にノートやペンが置かれているだけだった。

 

「何もないねー。」

 

「so commonだぜ。」

 

「はは、まあそうじゃないかとは思ってたけどな。どうする?ここでやる事も無いだろうし、他の班の様子見に行くか?」

 

「そうだな。」

 

 

 

漕前の研究室を後にした俺達は、他の班の様子を覗きに行く事にした。

ちょうど真東に向かって歩いていると、クラシック調の建物が見えてきた。

建物全体が大理石でできており、なかなか凝ったデザインをしている。

高級感のあるヨーロッパ風の扉には洒落たサムラッチ錠が付いており、紋章のようなものが書かれていた。

 

「紋章?何だこれは。」

 

「えーっとね、あ、思い出した。これは神崎財閥のマークだね。」

 

「って事は…」

 

俺は、少し嫌な予感がしつつもドアをノックした。

 

「し、失礼しまーす。」

 

俺は、恐る恐るドアを開けた。

 

 

 

「うおっ…」

 

中は西洋の城のような内装になっており、アンティーク調のシャンデリアがまず目に留まった。

部屋にはありとあらゆるジャンルの専門書が並んでおり、パイプオルガン、油絵、花、ティーセット…様々な物が置かれていて見るからに多趣味だという印象を受けた。

 

「おい子供、あまりうろちょろするな。目障りだ。」

 

声が聞こえた方を振り向くと、高級感のあるデスクについた神崎がこちらを睨んでいた。

 

「やっぱりオマエの研究室か。」

 

「如何にも。」

 

「それより他の4人はどうしたんだよ?」

 

「奴等なら他の場所の探索を任せている。長い事居座られるのも不愉快なのでな。」

 

なるほどな、だから他の4人がいなかったのか。

…まあ筆染はともかく枯罰と弦野は元々神崎の事嫌いだろうし速水も札木の事で神崎を相当恨んでるから、別行動にも特に不満はなかったのだろう。

 

「貴様らもだぞ。」

 

「えっ?」

 

「早く出て行け。無能が感染る。」

 

「ったく…はいはいわかりました。出て行きますよー。」

 

俺は、少し不快な気分になったので3人を連れて神崎の研究室を後にした。

漕前とジョンも同じ気持ちだったのか、特に何も言ってこなかった。

黒瀬も俺達の後を追う形で研究室を後にした。

 

「ったく、嫌な気分になったぜ。」

 

「帝くんは相変わらずだねー。

 

「あんなヤツignoreしよう。それより、もう一つlaboratoryがあるんだろ?行ってみようぜ。」

 

「そうだな。」

 

 

 

ジョンの提案で南西へと進んでいると、白く清潔感のある建物が見えてきた。

建物の周りには綺麗な花が咲いており何とも心を落ち着ける雰囲気になっていた。

部屋のドアはガラスでできており、扉には二人が向き合って座っているピクトグラムが描かれている。

 

「ここ、何かクリニックっぽいよねー。」

 

「って事は、安生の研究室かな?」

 

「そうじゃねぇか?入ってみようぜ。」

 

俺はガラスのドアを開けて研究室の中に入った。

 

 

 

「へぇ…」

 

研究室の中はクリニックの診察室のようになっており、明るすぎず暗すぎない照明が暖かい雰囲気を生み出していた。

アロマの香りと部屋に置かれた観葉植物が心を落ち着けてくれる。

 

「あ、赤刎君達いらっしゃい。」

 

すると、中にいた安生が声をかけてきた。

 

「あ、赤刎君…」

 

同じ班だった一も、研究室にあったソファーに座っていた。

 

「あれ?聞谷と仕田原と宝条は?」

 

「あ、えっと…女子のみんなには…まだ女湯を調べてもらってるんだ。その…男子は女湯に入れないから…」

 

「入れないっつーか…普通男は女湯に入らないだろ。」

 

「いや、そうじゃなくて…異性のお風呂や脱衣所に入るのはルールで禁止されてるんだ。破ったらオシオキだってさ。」

 

「マジかよ…」

 

漕前とジョンは見るからにガッカリした顔をしていた。

お前ら、逆にルールがなかったら入る気だったのか。

 

「ルールが追加されてるから、後で確認しておきなよ。」

 

「うぃっす。」

 

俺は、すぐにパスポートを確認した。

すると、やはり

 

 

 

ーーー

 

十三、男子が女湯に、女子が男湯に入る事を禁じます。違反を発見し次第、処刑用マシンガンが作動します。

 

ーーー

 

 

 

という項目が追加されていた。

物騒だなオイ…

 

「まあ、モラルを守った行動をしろって事だろうね。異性のお風呂に入らない、なんて常識だし。」

 

「はは…」

 

やはり思い当たる節があるのか、漕前は苦笑いしていた。

 

「そっちも研究室を調べたんだよね?」

 

「ああ、俺の研究室だったよ。」

 

「そっか、漕前君の…」

 

「まあ研究室って名前がついてるだけで何もなかったけどな。」

 

俺達が安生や一とちょっとした情報交換をしていると、探索を終えた女子組が合流してきた。

ちょうど時間もいい感じになっていたので、俺達はミーティングの準備をしに食堂へ向かった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の天才】神崎帝

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の幸運】漕前湊

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上14名ー

 

 

 

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